平和外交研究所

中国

2019.07.31

中国における3種類の親日派

 7月28日、中国各地で「精日」と呼ばれる親日派の一斉摘発が行われたと、在米の中国語紙『多維新聞』が29日に伝えている。各地とは、遼寧、安徽、湖北、江蘇の各省である。

 中国の親日派には、「親日」、「哈日」および「精日」の3種類がある。

 「親日」は、日中友好を重視し、日本に好意を持つ人たち(こと、以下同)である。「親日」はその時々の政治情勢によってその意味合いが変化し、「親日」であることを隠そうとすることもあろうが、基本的には否定されているわけではない。

 「哈日」は、日本のアニメや服装、J-POP、電化製品など、日本の文化を好む人達を指す。元々台湾で現れた現象であったが、最近は香港や中国でもかなり増えている。「哈日」は中国でも事実上黙認されているという。
 
 「精日」はごく最近(二、三年前から?)現れた人たちであり、日本の軍国主義に関心を持ち、称揚する。
 「日本の軍国主義」は現在の中国が目の敵にしていることであり、「精日」というような中国人が本当にいるのか、にわかには信じられないだろうが、実際に存在することを『多維新聞』のこの報道が示している。
 日本通として知られる王毅外相は、「精日」のことを「中国人のクズ」と非難したという。中国の立場に立つとそう見るのはもっともであろう。
  
 「精日」については次のような問題行動が指摘されている。
 南京大虐殺記念館で中国人同胞を侮辱する内容の言葉をネットに流し、また拘留された(2018年2月)。
 旧日本軍の軍服を着用して写真を撮った。
 国外において反中国的な漫画を配布した。
 中国国外から反中国思想を国内に吹き込み、中国の青年に「精日」集団に加わるよう誘った。
 ネット上で非合法な組織を立ち上げ、日本の軍国主義の浸透を図った。

 「精日」はごく少数だといわれている。また、日本人から見ても特異な行動であるが、非合法化が検討されていること、中国各地で一斉取り締まりの対象となっていることなどにかんがみれば、無視できないほどの問題になりつつあるのかもしれない。
2019.07.10

中国軍による南シナ海でのミサイル発射実験

 中国海軍は7月初め、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島周辺の人口施設からミサイルを発射した。米国防総省が提供した情報に基づき、3日の米メディアが報道した。中国政府はそのことを発表していないが、6月29日から7月3日にかけ、同諸島の北側海域で軍事訓練を行うとし、付近の船舶航行を禁じる通知を出していたので発射実験はその間に行ったとみられる。

 中国外務省の耿爽副報道局長は3日の会見で、実験へ直接の言及はしなかったが、「南シナ海に空母を派遣しているのは米国だ。誰が南シナ海の軍事化を進めて、波風を立てているのかは明らかだ」と述べ、米国を批判したという。

 ミサイルの発射実験については、2つの問題がある。

 1つは、発射実験は軍事目的であることだ。中国は南シナ海で陸地の造成や飛行場などの建設を進めた際、軍事目的でないと繰り返し説明していたが、そのような説明は真実でなかったことを今回のミサイル発射実験が証明したのである。

 もう1つの問題は、中国が政治的な意図から発射実験を行った可能性である。

 この点では、さらに2つの問題があり、第1は米国による台湾への武器供与との関連である。米政府は7月8日、台湾にM1A2エイブラムス戦車108両など22億ドル(約2400億円)相当の武器を売却することを承認し、米議会に通知した。
 台湾がかねてから強く欲しがっていた新型のF16V戦闘機についても、トランプ大統領は、非公式ではあるが、すでに売却を承認したという。これが事実ならば、戦車とは比較にならないほど大きな軍事戦略的な意義がある決定が行われたことになる。

 このような米国の動きに中国は強く反発した。中国外務省の耿爽副報道局長は9日の定例会見で「強烈な不満と断固たる反対を米側に伝えた。「主権と領土を守り抜く(中国の)決意を過小評価すべきではない」と発言している。

 第2は、香港で「犯罪人引渡条例案」に関し6月9日以降続いている激しいデモとの関連である。中国は不満であり、必要になれば強い態度で鎮圧することも辞さないことを武力をちらつかせながら香港に示そうとしたのではないか。

 台湾への武器供与も香港での激しいデモもミサイル発射実験とは別問題であるが、関連があるのではないかという仮説を立てることは必要だと思う。中国は1990年代の中葉、台湾の総統選挙の直前、台湾近海にミサイルを発射したことがあった。そのときも総統選とミサイル発射は関連していたのではないかと推測された。それ以来20年以上が経過したが、その推測が誤りであったこと示すものはない。中国が選挙結果を左右留守為発射実験を行ったことは今や常識になっている。今回も同様のケースではないかと考えるのは無理のないことであると思う。

 中国は大国であり、その軍事行動のもたらす影響力は大きい。中国は余計なお世話だと反発するかもしれないが、その行動には慎重であってほしい。
2019.06.22

習近平主席が突然の訪朝 歓迎ばかりではない中朝関係改善

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