平和外交研究所

2月, 2025 - 平和外交研究所

2025.02.26

ウクライナ侵攻問題と鉱物資源取引

2月24日、プーチン露大統領がウクライナへの「特別軍事作戦」を開始してから3年になるが、戦闘はまだ終わっていない。ウクライナ・ロシア双方の死傷者は増え続けている。ウクライナでは4万人以上の民間人が死傷し、領土は約11%で支配権を失った。数百万人のウクライナ人が自宅を離れ、国内の別の場所や国外へと避難している。

トランプ氏は大統領就任後、ゼレンスキー氏を批判し続けた。

「戦争を始めたのはロシアではなくウクライナだ。」

「ゼレンスキー氏は外国援助のうまい汁を吸い続けたいのだ。」

「ゼレンスキー氏は独裁者だ。ウクライナの政界は腐敗している。」

「ゼレンスキーは早く動いた方がいい。でないと国がなくなるぞ。」

一方、トランプ大統領とプーチン大統領は2月12日に長時間の電話会談を行った。ゼレンスキー氏抜きであった。

今やトランプ氏は、ロシアの言い分をこだまのように繰り返しているといわれている。またプーチン氏はトランプ氏を「ドナルド」とファーストネームで呼ぶなど、親近感を示している。

これらはいずれも聞くに堪えない言葉であり、ほっておけないが、今日のところはこれだけにしておく。

一方、国連総会では、2月24日、ウクライナとEUが提出した決議案と、米国の提案に修正が加えられた決議案がともに93カ国の賛成で採択された。ウクライナ・EU案にはウクライナの領土保全を支持する文言が入っていたが、米国が反対し、賛成国が減った。日本は賛成した。

一方、トランプ米大統領の方針で米国が独自に提出した「ロシアとウクライナの紛争の早期終結を求める」決議には、日英仏など93カ国が賛成し、ロシアや北朝鮮など8カ国が反対、米国や中国など73カ国が棄権した。この二つの決議をどう読むか、国連らしい駆け引きが含まれているので、難しい。双方が激しく対立し、ロシアは喜んだようだが、深読みはできない。

 国連での動きと並行して、ウクライナはアメリカとの鉱物取引の条件に合意したと、ウクライナ政府の高官がBBCに語った。ゼレンスキー大統領は28日に訪米し、合意文書に署名する見込みだという。

FT紙などによると、24日付の合意文書の最終版には、ウクライナの経済復興事業に使う基金を創設することなどが盛り込まれた。基金には、ウクライナが将来的に石油やガスを含む地下資源から得る収入の50%を拠出し、米国の拠出額は今後の交渉で決めるという。

 ウクライナの高官はFTに「(安全保障の確保より)もっと有利な条件について交渉した」、「合意は米国との関係を深めるためのものだ」、「いくつかの良い修正を加えた上で合意に至り、これを前向きな結果と見なしている」などと述べたと報道された。

この合意には、ウクライナが強く求めていたウクライナに対する安全保障の保証は与えていないといわれており、そうであれば、ウクライナ側はどのような考えで合意したのか不可解に思えるが、一方、トランプ大統領はゼレンスキー大統領がワシントンでこの取引に署名することを期待していると述べている。それまで両首脳はこの問題について、互いに強い言葉でやり取りしていたので、本当のところはまだよくわからないが、これまでのトランプ大統領の発言などとかなりトーンが異なっていると解する余地がある。また、これも趣旨不明のところがあるが、トランプ大統領は24日、「この取引の見返りとして、ウクライナは『戦い続ける権利』を得るだろう」とか、「彼らは非常に勇敢だ」とも述べている。また、アメリカは装備や弾薬をウクライナに供給し続けるのかという質問には、「ロシアとの合意が成立するまでかもしれない。(中略)合意が必要だ。でなければ、この状況は続くだろう」と答えた。

トランプ氏はさらに、いかなる和平合意の後でもウクライナには「何らかの形の平和維持活動」が必要だ、それは「全員に受け入れられるものでなければならない」と付け加えたという。

これだけのことで楽観的になれないが、ワシントンでのゼレンスキー・トランプ会談の結果が待たれる。
2025.02.01

国連女性差別撤廃委員会への拠出停止

国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は昨年10月、8年ぶりとなる日本への勧告の中で、男系男子の皇位継承を定めた皇室典範の規定は条約の目的や趣旨と相いれないとして、改正を勧告した。政府はこれに抗議し、さらに同委員会に日本の拠出金は使わせないと決め、国連側に伝えた。この発表は本年1月29日に行われた。

日本は国連中心主義を外交の原則として掲げており、今回の措置はこの原則に反する暴挙である。国連には日本政府の考えと相いれないことは、残念ながら存在する。一方、国連があるために日本が助かっていることはいくつもある。このようなことは日本だけでなく、他の国にもある。どの国も利害得失を呑み込んで国連と協力しており、長い目で見れば、そのように柔軟に対応することが国益を守ることになる。

日本政府の主張を聞き入れず、また抗議にも耳を傾けないからといって、実力行使に出ることは許されない。日本政府があくまで主張を貫く必要があると考えるなら、説得を続けるべきであり、そうするしかない。国連や他国から見れば、日本の拠出金停止は強引な方法と映っているのではないか。

今回の措置により、日本政府は女性差別をなくす取り組みに積極的でないとみられる懸念を抱く向きもあるが、実態はもっと厳しい。日本は女性差別の撤廃に積極的だとは思われていない。だから、女性差別撤廃のため、これまで多くの日本人が尽力してきた。女性差別撤廃委員会の議長として国際的に貢献したこともあった。今回の措置はそのような努力に水を差すことになる。

世界を相手に、日本の主張を聞け、そうしないと実力行使も辞さないということがどれほど危険で、国益を害することであるか、第二次大戦で苦しんで、苦しみぬいて経験したはずである。二度とカネの力で国際組織に圧力をかけるようなふるまいをしてはならない。

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