平和外交研究所

8月, 2018 - 平和外交研究所

2018.08.29

「旧ユーゴスラビア」問題を伝える難しさ

「旧ユーゴスラビア」の大使を務めた経験をもとに、同国のことを日本に伝える難しさについて書いた一文をTHE PAGEに寄稿しました。
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2018.08.22

中国の台湾孤立化工作

 エルサルバドルは8月、台湾との関係を断絶し、中国と外交関係を結んだ。中国が同国に対し、経済協力を餌に圧力をかけた結果であろう。
 台湾で蔡英文政権が2016年5月に発足して以来、サントメ・プリンシペ、パナマ、ドミニカ共和国、ブルキナファソに続いて5カ国目である。中国は最近、台湾を孤立化させる工作を強化しており、今年に入ってからだけで3カ国が台湾と外交関係を断絶している。
 
 これにより、台湾と外交関係を残す国は以下の17カ国になったが、この中からもさらに続く国が出るかもしれない。
(中米)ニカラグア、グアテマラ、ホンジュラス、ベリーズ
(カリブ海地域)ハイチ、セントクリストファー・ネイビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン
(南米)パラグアイ
(オセアニア)キリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ソロモン諸島、ツバル
(アフリカ)スワジランド
(欧州)バチカン

 小国が台湾との関係を断って中国と外交関係を樹立する場合にはパターンがある。小国から台湾に対する経済・資金協力の要請が先にあり、それが大きすぎて台湾が対応しきれないと、中国が小国にとって魅力的な条件を提示する。小国はそのほうが得なので台湾から中国に乗り換えるのである。
 中国は民主的な国でないので、政府が決めればそのようなことも可能になるのであり、中国の大国主義の表れともいえるだろう。

 中国はこのほか、ヨルダンにある台湾の代表事務所に「中華民国」の表示があるのに目を付け、ヨルダン政府に対しその4文字を消去するよう求め、ヨルダン政府はそれに従ったそうだ。このように、台湾の代表事務所の名称に中国がクレームをつけるケースが他の国でも起こっている。

 ヨルダンでは文化イベントの際、台湾の「国旗」が中国当局者に引きずり降ろされる事件まで起こった。これは国際慣行にもとる暴挙である。

 台湾が各国でどのような名称を用いるかは、それぞれの国との合意に従っているはずだ。日本では「台北駐日経済文化代表処」、米国では「台北駐美國經済文化代表處」、その他の国でも同じ方式の名称が多く、「中華民国」の4文字はない。
 ヨルダンでどのような名称が用いられているか、詳細は不明だが、名称の一部に「中華民国」の4文字が残っていたのだろう。

 また、中国は各国の民間航空会社に対し、「台湾」の表記を使用しないよう求めている。これは、政治的主張を民間に半ば強制的に求める行為であるが、多くの航空会社はそれに従わないと中国からどのような制裁を受けるかわからないので従わざるを得ないようだ。
 もっとも、航空会社でよく使う名称は行き先の都市名あるいは飛行場名であり、台湾の場合、一般人の目に触れるのは「台北」や「高雄」などである。パンフレットなどには「台湾」が出てくる可能性がある。

 世界保健機関(WHO)においては、台湾は従来オブザーバーとして毎年の総会に出席していたが、2~3年前から中国が圧力をかけはじめ、今年はついにオブザーバー参加もできなかった。
 WHOは広範囲に影響が拡大する感染症などに対する対策を協議し、必要な措置を講じる機関である。状況によっては台湾が重要な役割を果たすことにもなる。そんなところへ政治問題を持ち込むべきでないが、中国は腕力で主張を通したのである。
 
 2002年、中国の広州でSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生した。翌年3月11日までに広州地域の患者数は300人に達していたが、その時点まで中国はWHOに報告しなかった。3月に入ると、中国国内および周辺の複数の国から相次いでWHOに報告されるようになった。SARSはその後アジアはもちろん、世界各地に拡散、短期間の内に患者数が激増し、大きな社会不安が引き起こされた。WHOの集計によると、最終的には感染者数8098例、死亡者数774例で死亡率9・6%に達した。中国政府の隠蔽により対応策が遅れたことが、急拡散の要因であった。

 1990年代に、中国でSARSと同じ感染症であるHIV/AIDSの感染拡大が起こった。しかし、中国政府が情報を隠匿したため対応が遅れたと言われている。1990年代後半になって、産婦人科医を中心として複数のグループから内部告発がなされ、明るみに出てきた。国際的な批判を浴びる結果にもなった。中国自身HIV感染患者の激増で苦しんだはずである。

 中国は一党独裁であり、目標を決めればあらゆる手段を使って達成しようとする。結果を生み出すのには効果的かもしれないが、そのために生じる犠牲の大きさには注意が払われないのではないか。
2018.08.14

W杯ゴールパフォーマンスが波紋 「コソボ紛争」を振り返る

昨日に続いてサッカーWC関係です。
スイスとセルビアの試合において、スイスの選手がセルビアにとって侮辱的ととられる恐れのある行動をしました。そのスイスの選手はセルビアが認めないコソボからスイスに移住した人だったからです。THE PAGEに寄稿しました。
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