5月, 2025 - 平和外交研究所
2025.05.17
4日後の7日には、機関砲を搭載した海警局船2隻が、尖閣諸島付近の領海に侵入し、そのまま領海内にとどまったので、海保の巡視船が領海の外に出るよう警告した。
さらに4日後の11日、日本の排他的経済水域(EEZ 沖縄県付近)内で、中国の海洋調査船「海科001」がパイプのようなものを海中に下ろしているのが目撃された。日本が同意していない海洋調査であり、海保の巡視船が無線で中止を要求した。
今年のゴールデンウイークでは中国の動きが特に目立ったのだが、中国の艦船による尖閣諸島周辺での最近の問題行動をあらためて概観しておきたい。
中国海警局の艦船は2024年1月から、尖閣諸島周辺の日本領空を飛行する自衛隊機に対して、中国の「領空」を侵犯する恐れがあるとして退去するよう無線で警告し始めた。同年中、警告は数回に上った。日本の自衛隊機は中国の領空を侵犯したことはないし、その恐れを生じさせたこともないが、にもかかわらず、中国側ではそのようなことを言っているのである。
この問題に関連して、見過ごしてはならない点を二つ挙げておく。
第1は、尖閣諸島付近で日本側に極めて非友好的な行動を取っているのは中国の軍(海警局を含め)であり、中国政府は軍の行動を抑制しようとしてもできないのではないかということである。中国政府は日本政府に対して、時に意見を異にしたり、対立したりするが、原則として友好的であり、また両政府はお互いに友好的であることを重視している。しかし、中国の軍は日本に対して友好的であったことはほとんどないどころか、非友好的な行動を何回も起こしている。特に尖閣諸島周辺でその傾向が強い。日本の領空を飛行している自衛隊機に対して、中国の「領空」を侵犯する恐れがあるとして退去するよう無線で警告してくるのはまさに非友好的な行為である。日本の領土である尖閣諸島を中国領だと主張するのは強盗のような行為である。
第2は、習近平主席がどこまで中国軍の行動を掌握しているかである。それを肯定する報道もあるが、その真偽は疑問である。「習近平主席は独裁者である」という言説が中国の内外にあり、それを理由に習主席はすべてのことを掌握しているとの見方があるが、それはあまりにも安易であろう。軍においては習氏を「独裁者」として認めてない可能性がある。
習主席と中国軍の間にはかなり激しい緊張関係がある。2023年にはそれが表面化し、中国軍のナンバー3であった何衛東副主席と李尚福国防相が解任された。前者については正式の発表はまだないが、失脚はほぼ間違いないとみられている。何衛東副主席と李尚福国防相はもともと習主席と関係が緊密であり、その失脚を認めざるをえなかったのは習主席にとって大きな譲歩であったはずである。現在、軍を掌握しているのは張又侠副主席であり、習近平主席としても軍の意思を無視できなくなっている(当研究所HP 2025年4月24日付「習近平総書記と中国軍」を参照されたい)。
福島原発の処理水についても中国政府と軍は対立している可能性がある。中国政府としては漁民や一般人の考えを考慮して輸入規制を緩和しなければならない状況になっているが、軍が同意しないため規制を撤廃できないのではないか。
また、ブイの問題についても軍は政府と意見を異にしているのではないか。2023年7月、中国側は日本の排他的経済水域(EEZ)内に無断でブイを設置したため日本政府は抗議した。かなり時間がかかったが、最初のブイはすでに撤去された。だが、完全な撤去でなく、日本のEEZ内の別の場所(四国海盆海域)に移動したにすぎなかった。中国側の行動は執拗である。
以上の見解についてはさらに吟味が必要であるが、中国側は繰り返し問題行動を起こしており、また、問題は近年さらに悪化する傾向がみられるのは明白な事実である。日本としては従来以上に中国軍の行動を監視し、また、習近平主席と軍の関係を観察していくことが必要であろう。
中国軍(海警局を含む)の問題行動
2025年5月3日、中国海警局のヘリが日本の領空を侵犯した。中国機による日本領空の侵犯を確認したのは2024年8月以来4回目で、尖閣諸島ではこれまでドローンなどの飛行はあったが、海警局のヘリの飛行はなかったという。4日後の7日には、機関砲を搭載した海警局船2隻が、尖閣諸島付近の領海に侵入し、そのまま領海内にとどまったので、海保の巡視船が領海の外に出るよう警告した。
さらに4日後の11日、日本の排他的経済水域(EEZ 沖縄県付近)内で、中国の海洋調査船「海科001」がパイプのようなものを海中に下ろしているのが目撃された。日本が同意していない海洋調査であり、海保の巡視船が無線で中止を要求した。
今年のゴールデンウイークでは中国の動きが特に目立ったのだが、中国の艦船による尖閣諸島周辺での最近の問題行動をあらためて概観しておきたい。
中国海警局の艦船は2024年1月から、尖閣諸島周辺の日本領空を飛行する自衛隊機に対して、中国の「領空」を侵犯する恐れがあるとして退去するよう無線で警告し始めた。同年中、警告は数回に上った。日本の自衛隊機は中国の領空を侵犯したことはないし、その恐れを生じさせたこともないが、にもかかわらず、中国側ではそのようなことを言っているのである。
この問題に関連して、見過ごしてはならない点を二つ挙げておく。
第1は、尖閣諸島付近で日本側に極めて非友好的な行動を取っているのは中国の軍(海警局を含め)であり、中国政府は軍の行動を抑制しようとしてもできないのではないかということである。中国政府は日本政府に対して、時に意見を異にしたり、対立したりするが、原則として友好的であり、また両政府はお互いに友好的であることを重視している。しかし、中国の軍は日本に対して友好的であったことはほとんどないどころか、非友好的な行動を何回も起こしている。特に尖閣諸島周辺でその傾向が強い。日本の領空を飛行している自衛隊機に対して、中国の「領空」を侵犯する恐れがあるとして退去するよう無線で警告してくるのはまさに非友好的な行為である。日本の領土である尖閣諸島を中国領だと主張するのは強盗のような行為である。
第2は、習近平主席がどこまで中国軍の行動を掌握しているかである。それを肯定する報道もあるが、その真偽は疑問である。「習近平主席は独裁者である」という言説が中国の内外にあり、それを理由に習主席はすべてのことを掌握しているとの見方があるが、それはあまりにも安易であろう。軍においては習氏を「独裁者」として認めてない可能性がある。
習主席と中国軍の間にはかなり激しい緊張関係がある。2023年にはそれが表面化し、中国軍のナンバー3であった何衛東副主席と李尚福国防相が解任された。前者については正式の発表はまだないが、失脚はほぼ間違いないとみられている。何衛東副主席と李尚福国防相はもともと習主席と関係が緊密であり、その失脚を認めざるをえなかったのは習主席にとって大きな譲歩であったはずである。現在、軍を掌握しているのは張又侠副主席であり、習近平主席としても軍の意思を無視できなくなっている(当研究所HP 2025年4月24日付「習近平総書記と中国軍」を参照されたい)。
福島原発の処理水についても中国政府と軍は対立している可能性がある。中国政府としては漁民や一般人の考えを考慮して輸入規制を緩和しなければならない状況になっているが、軍が同意しないため規制を撤廃できないのではないか。
また、ブイの問題についても軍は政府と意見を異にしているのではないか。2023年7月、中国側は日本の排他的経済水域(EEZ)内に無断でブイを設置したため日本政府は抗議した。かなり時間がかかったが、最初のブイはすでに撤去された。だが、完全な撤去でなく、日本のEEZ内の別の場所(四国海盆海域)に移動したにすぎなかった。中国側の行動は執拗である。
以上の見解についてはさらに吟味が必要であるが、中国側は繰り返し問題行動を起こしており、また、問題は近年さらに悪化する傾向がみられるのは明白な事実である。日本としては従来以上に中国軍の行動を監視し、また、習近平主席と軍の関係を観察していくことが必要であろう。
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