平和外交研究所

8月, 2022 - 平和外交研究所

2022.08.04

岸田首相の核廃絶政策

 岸田文雄首相は、8月1日に米ニューヨークの国連本部で開かれた核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に、日本の首相として初めて出席し、演説を行った。この会議の結論は約4週間後に出ることになっているが、意見の対立が激しくて結論が出ないこともあり得る。審議は始まったばかりであるが、岸田首相の演説についての印象を記しておきたい。

 岸田氏は去る6月に開催された核兵器禁止条約には参加せず、NPTの再検討会議には出席するという形になった。この会議は5年に1回の大会議であるが、閣僚級の会議と一般にはみなされており、首相の出席には反対もあったが、首相は昨年10月の就任以来、出席の意向が強かったという。

 岸田氏が核兵器禁止条約には出席せず、NPTに出席することとしたのは「核保有国と非保有国の両方が同じテーブルにつくのはNPTしかない。核保有国をいかにこっちに引っ張ってくるかだ」との考えだったからである。

 岸田氏は広島選出でNPTに強い思い入れがあるのは周知であるが、核軍縮がいかに困難な問題であるか、幻想があるわけではない。外相を長年務めてきたこともあり、「核軍縮・不拡散の機運は冷え込んでいる」との認識もしっかりある。

 岸田氏は、「やはり核保有国が動かないと何も変わらないと痛感しており、日本がやらないと他に誰もやらない」との考えであり、NPT再検討会議への出席により核保有国に直接核軍縮を説得するという目的はほぼ達成したのであろう。

 しかし、岸田氏が演説で打ち出した「ヒロシマ・アクション・プラン」、11月23日に広島で開催する「国際賢人会議」および23年に広島で開催する主要7カ国首脳会議(G7サミット)で核軍縮を進められるか。

 同プランには5つの項目が盛り込まれている。その中で「各国のリーダーたちに被爆地訪問の機会を与えるため日本が国連に1千万ドルを拠出して『ユース非核リーダー基金』を設置する」ことがおそらく唯一効果的な方策である。その他の項目が重要でないというのではないが、これまで何回も試みられてきたことの焼き直しに過ぎないのではないか。

 原子力の平和的利用(原発)の促進と北朝鮮の核・ミサイル問題とイラン核合意など性質の異なる問題を同じ項目の中で論じているのは率直に言って不可解である。

 最後になったが、日本としては核兵器禁止条約を改正し、核兵器国が条件付きであれば同条約を排除しない(そっぽを向かない)方策を提案してはいかがかと考える。岸田首相はそれが可能な日本の指導者である。

 NPTは核の存族を容認し、核兵器禁止条約は禁止すると対立的に見られているが、NPTも条件付きで核の廃絶を目指すこととしている。この両条約の矛盾点をなくし(少なくし)、共通点を増やす努力こそが日本に求められる役割ではないか。

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