平和外交研究所

8月, 2023 - 平和外交研究所

2023.08.28

BRICS首脳会議

 南アフリカ・ヨハネスブルグで開催されたBRICS首脳会議が8月24日、閉幕した。ウクライナ侵攻をめぐって国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているロシアのプーチン大統領はオンライン参加した。

 BRICSの加盟国はこれまでブラジル、ロシア、インド、中国、南アであったが、アルゼンチン、エジプト、イラン、エチオピア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6か国の加盟が認められ、BRICSは2024年1月1日から11か国体制となる。今回加盟が決まった6か国以外にも約40か国が公式に、あるいは非公式に加盟を希望しているという。

 6か国の加盟後、BRICSは世界人口の46%、国内総生産(GDP)の28%を占めることとなる。たしかに大きなフォーラムとなるが、これらは各国の統計を合算した結果であり、世界における影響力を示すわけではない。

 BRICSは国際機関でなく、その都度加盟国間の協議で首脳会議の開催地と開催時期が決定されるが、最近はG7主要国首脳会議のように順番の開催になっていたようだ。今年の南アからさかのぼると、中国、インド、ロシア、ブラジルであった。昨年までコロナ禍の影響でオンライン会議であったが、今年は4年ぶりに加盟国が一堂に会した。 

 問題は11か国の経済規模も政治体制も様々なことである。文化や宗教も大きく異なる。イランのライシ大統領は米国に対抗する姿勢を鮮明にする一方、ブラジルのルラ大統領は米国に対抗するものではないと強調したという。サウジのファイサル外相はBRICSの性格や構成など詳細が判明してから加盟の招待を受けるかどうか判断すると表明している。

 ロシアによるウクライナ侵攻については、大多数の加盟国はロシア非難を控えているが、ブラジルは2022年3月3日の国連総会決議において、他のBRICS諸国が棄権するのと違って賛成に回った。

 インドの動きは複雑である。ロシア非難は避け、国連総会でも決議には棄権し、ロシア寄りだとみられていた。しかし2022年9月16日、ウズベキスタンのサマルカンドで上海協力機構の首脳会議が開かれた際、インドのモディ首相はプーチン大統領と会談し、「今は戦争の時ではない」と述べ、ウクライナ侵攻について公に批判した。モディ首相の発言はそれまでのインドの姿勢とはかなり趣が異なっていたが、インドとロシアとの軍事関係は歴史的に深く、その後もインドはロシア批判になるのを控えている。

 一方、インドと中国は安全保障面で利害が一致しておらず、インドは中国軍の艦艇がインド洋へ進出するのを警戒している。また、両国軍はカシミール問題をめぐって武力衝突を繰り返している。さらにインドは日米豪印によるQUAD(日米豪印戦略対話)の一員になっている。

 このように加盟国の利益が一致しないことがあるが、それでもBRICSとして連携するのは、利害の違いを上回る利益があるとみているからであろう。それは自由や民主主義といった価値観を重視する米欧への対抗軸とも、また、米欧中心の国際秩序からの脱却ともいわれる。いずれもそれなりに正しい指摘であるが、中心の狙いはやはり米欧、特に米国との関係においてBRICS諸国の立場を強くすることにある。つまり、BRICS諸国はそれぞれ米国との関係を自国に有利に運ぶためにBRICSとしての連帯が有利に働くと考えているのである。BRICSが拡大するのは明らかだが、新しい国際秩序というより、BRICS加盟国の利益を優先させるための緩やかな連携が広がることとなったとみるべきではないか。

 中でも際立っているのは中国の積極姿勢であり、加盟国拡大の旗を振ったのも中国であった。最終日の記者会見で習近平国家主席は「今回の拡大は歴史的だ」と強調し、また「BRICSは国際情勢を形成する重要な力となっている。新興市場・途上国の共通の利益にも合致する。互いに助け合う大家族だ」と胸を張る一方、主要7か国(G7)などの枠組みを「排他的な小グループ」と嘲笑した。
 
 中国の動きについては2つの点が注目される。その1つは、BRICSは中国の戦略重視と実行力を象徴する場であったことであるが、米欧に対抗するという政治目標に向かって進むことができるか、現段階では何とも言えない感じである。

 他の1つは、中国経済が過去30数年間と違って下降傾向に入り、一昔前の日本のようにバブルがはじける危険に直面していることである。中国が大ぶろしきを広げて世界を驚かせた「一帯一路」についても問題は増大しており、イタリアなどは脱退する意向である。中国内の経済はさらに危険が大きいかもしれない。

 前述した上海協力機構(SCO)は冷戦終了後、特に中央アジアの安全保障の立て直しを図って2001年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンおよびウズベキスタンの6カ国によって設立された。BRICS4か国が首脳会議を開催したのは2009年であり、ざっと比較してSCOが数年早かったが、最近は非国連・非欧米の地域協力として併存してきた。しかし、ウクライナ侵攻が始まるとSCO内の協力にはほころびが生じ、プーチン大統領の中央アジア諸国に対する姿勢も顕著に変わってきたといわれる。

 BRICSは前述したように、初めから加盟国間の利害の不一致を内包しており、今後のBRICSがどうなるか。予定通りに拡大を続けるか、共通通貨の議論は進むかなど見通すのは困難であるが、首脳会議以外にもいくつもの会議があり、BRICSは「実体化」してきた面もある。BRICSには明るい将来がないと決めつけるのは危険であり、長い目で、幅広く、柔軟に見ていくことが必要であろう。
2023.08.21

日米韓首脳会談2023年8月(その2)

 8月18日、米国のキャンプデービッドで日米韓首脳会談が行われた。この会談については17日、当研究所HPに一文を掲載したので、今回は箇条書き的に要点を記しておきたい。

 自衛隊と米韓両軍による3か国共同訓練の毎年実施は我が国にとって重要な意味がある。日本の自衛隊と韓国の軍隊はこれまであまり友好的な関係でなかった。どちらに非があるか本稿では論じないが、韓国での観艦式に自衛隊の護衛艦が参加できなかったり、レーダー照射があったり、GSOMIA(軍事情報に関する包括的保全協定)の継続ができなくなったりした。この度これらの問題は解消され、これからは米を交えて3か国で共同訓練を行うこととなった。

 日本の憲法体制として問題ないか。また近隣諸国との関係で問題とならないか。かりに問題となってもそれを上回る利益があるか。日本としては今まで以上に考え方を明確にしておかなければならない。岸田首相は「日米韓3カ国の安全保障協力を新たな高みに引き上げる」と述べたが、日本国民はこのような大きな変化が起ころうとしていることの意味合いを明確にかつ具体的に認識しておくべきだし、日本政府にはそれを助けてもらいたい。

 韓国の安全保障面での変化は大きく、「大変化」とでも言えるものである。文在寅前大統領に限らないが、韓国の歴代大統領は米国との同盟か中国との伝統的関係か、いずれが重要かどっちつかずの姿勢であったので、米国は強い不満を募らせてきた。

 尹錫悦大統領は登場するとともにそのようなあいまいさを解消する第一歩を踏み出し、今回のキャンプデービッド会談では民主主義陣営間の協力と米韓同盟が重要だと第二歩を踏み出した。今回の3者会談は米国の呼びかけで実現したものであり、韓国との長年にわたる安全保障上の問題を解決に導いたバイデン政権の外交は見事であった。

 しかし、未確定要因は残っており、一部の問題は今後悪化する危険もある。今回の日米韓3首脳会談は中国と北朝鮮、さらにはロシアにとっては外交的後退であった。これらの諸国がどのような反応を見せるか、韓国の経済面での中国依存は依然として大きい。また、文在寅政権下で起こったことを見れば、中国は安全保障面でも韓国にとって危険な国になりうる。

 未確定問題は韓国と日米両国との関係でも存在している。日本とは徴用工や慰安婦などいくつかの問題については解決の方向に向かいつつあるが、一向に解消されていない問題もある。

 日米両国にとってなによりも頭の痛い問題は、韓国の将来がどうなるかである。韓国大統領の任期は5年であり、4年後には新大統領となる。その交代後も日米韓の3国関係が現在のような良好な状態にあり続ける保証はない。また、韓国民の中には、日本について同じ民主主義の国だと急にいわれても戸惑いを覚える人が少なくない。さらに、世論は昔から政府支持とは限らない。

 だからこそ米国は今回の首脳会談で、日米韓3か国間の協力が後戻りしない仕組みの構築を重視した。情報の共有やホットラインなどは重要でないとは言わないが、3か国間の後戻りできない協力体制の構築が最重要だったのである。ブリンケン米国務長官は「3か国の協力関係を制度化する」と説明している。

 日本にとっても日米韓3か国間の安全保障面での協力強化は望ましいが、日本の憲法体制下では米韓と同様の同盟関係を作ることはできない。何が可能か、また必要か、国民的合意を形成していく必要がある。
2023.08.17

日米韓首脳会談2023年8月

 岸田首相、バイデン米国大統領および尹錫悦韓国大統領は18日、米ワシントン近郊のキャンプデービッド山荘で会談する。過去1年間、3首脳は複数回あってきた。岸田首相は1月に、尹錫悦大統領は4月に訪米し、また3人の首脳は5月のG7広島サミットで会談した。これだけでも決して少なくないが、さらに8月米国で会談することにしたのである。その会談目的についてブリンケン国務長官は経済安全保障、人道支援、途上国の開発支援、先端技術、公衆衛生、などに関する協力などに言及しつつ、「3か国の協力関係を制度化する」と説明している。この説明は興味深い。

 経済安全保障などブリンケン長官が示した個別の問題についての協力はもちろん重要であるが、過去1年の間に何回も会ってきた3首脳があらためて集まって協議するにはさらに大きな方向性があるはずである。

 韓国の尹錫悦大統領が登場して以来、米韓の同盟関係は前任の文在寅大統領時代に比べ顕著に改善された。文時代には米国との同盟か、中国との伝統的関係かいずれが重要か明確でなかったが、尹氏はその不正常な状態を明らかに同盟重視に戻した。北朝鮮との特別の関係についても文氏のような情緒的なとらえ方でなく、民主主義を貫くことが大事だとプライオリティを明確に示し、米国はもとより日本との関係も改善させた。文大統領に限らないが韓国の歴代大統領のどっちつかずの姿勢に米国は不満を募らせてきたが、尹錫悦大統領の登場とともにそれが解消される第一歩を踏み出したのである。

 このことは米国の外交にとっても、また日本を含む3者間の関係においても大きな前進であり、また中国と北朝鮮にとっては後退に他ならなかった。

 しかし、韓国の大統領は任期が5年であり、4年後には尹氏から新大統領となる。その交代後も日米韓の3国関係が現在のような良好な状態にあり続ける保証はない。また4年の間においても韓国はG7首脳国会議への参加を求め、日米などに支持を求めてくるかもしれない。そんな場合に日米両国はどのように対応できるか。

 そんなことも考慮すれば、日米韓3国にとって、とくに日米にとって決定的に重要なことは、現在の良好な関係を維持するのはもちろん、後戻りさせないことである。ブリンケン長官が言った「3か国の協力関係を制度化する」とはそのことを意味している。「制度化」とは言葉としては必ずしもパンチが効いていないが、その趣旨は、今後も後戻りさせないための努力を続けることにある。3者協議を毎年開催するのも結構だが、ポスト尹錫悦大統領を見越して手を打っていくことが肝要である。

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