平和外交研究所

8月, 2015 - 平和外交研究所

2015.08.28

(短文)朝鮮通信使関連遺産を韓国とともに世界遺産登録!

 8月26日から瀬戸内海を旅している。鞆(広島県)で、江戸時代に行われた朝鮮通信使の遺産を世界遺産に登録する希望があることを知った。
 これは素晴らしいアイデアだ。韓国側にも関連の遺産があるので、日韓共同で登録を申請するのがよい。
 通信使の行列をえがいた絵は日本各地に残っている。通信使(正使)はじめ随員が日本人との交流で残した詩文は鞆など通信使が立ち寄った地に残っている。彼らの中には文化水準が非常に高かった人が含まれており、当時の日本の文化人は通信使一向との交流に熱心であった。
通信使一行が残した手記や旅行記が韓国に現存しているそうだ。彼らの目で見た日本人の生活は興味深い。
 朝鮮通信使を幕府がどのように扱ったについては、とくに政治的な面で議論があるらしいが、それはともかく、朝鮮通信使一行を一般の日本人は興味深く見守り、また、一行の文化水準に敬意を払っていた。いいことだけでなく、ケンカしたことなどもあったらしいが、それを含めて朝鮮通信使の受け入れ、接遇から日韓の文化交流の実態が浮かんでくる。世界中の人も興味を持つだろう。
2015.08.25

(短文)韓国と北朝鮮の関係緊張‐北京では

 韓国と北朝鮮の緊張が高まっていることに関し、『多維新聞(米国に本拠)』8月22日付は、北朝鮮は、韓国との関係もさることながら、中国との関係を強く考慮しながら行動していると指摘している。韓国と北朝鮮の緊張は中国との三者間の関係のなかで見ていく必要がありそうだ。

 非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発したのは8月4日、韓国国防部は10日に北朝鮮が仕掛けた地雷だと発表した。
 南北高官会談が22日から板門店で行なわれ、25日未明に合意に達した。北朝鮮は韓国が要求していた通り、地雷を仕掛けた件について謝罪(中国の新聞では「遺憾」)した。今回の事件において、韓国側は北朝鮮が仕掛けたことを示す明確な根拠を持っていたようで、かつて北朝鮮から砲撃を受けたり、艦艇が撃沈されたりした時と比べると強く出ていた。北朝鮮による謝罪の要求と並行して、大音声の宣伝放送を再開したのもその表れだった。

 以上は前置きで、『多維新聞』の指摘は以下のことについてである。
 21日、北朝鮮の池在龍在中国大使は緊急の記者会見を開き、韓国が48時間以内に宣伝放送をやめないと軍事行動を起こす、北朝鮮軍は準戦時状態に入ったと表明した。南北関係が緊張しているときに北京で記者会見を開き、そのように重大な発表をするのは異例である(注 北朝鮮は通常通り朝鮮中央通信を通して発表できた)。
 しかも、この記者会見は外国記者だけに案内されたので、中国の記者は誰も出席しなかった。
 中国記者だけでなく、北朝鮮は中国政府に対してもこの発表について事前に通報しなかったらしい。ロシアには明らかに事前通報していた。中国政府はつんぼ桟敷に置かれたのだ。当然中国政府は怒った。21日に中国政府が出したコメントの言葉の強さが中国の気持ちを表していた。
 今回の南北間の緊張に際して、北朝鮮は中国を強く意識して振る舞っていた。北京で韓国との関係に関する重要発表を行なう前日(20日)の午後、金正恩第1書記が政府の要人を集め協議(指示?)し、韓国に向け砲撃したのは、その日の午前中に、朴槿恵大統領が9月3日の抗日戦争勝利記念行事に参列することを韓国が発表したからである。金正恩は韓国と中国の関係進展を不快視して、中国には横を向きながら怒鳴ったのだ。
 北朝鮮は中国に対し、中国は北朝鮮を冷淡に扱おうとしても結局巻き込まれることになる、現在中国は北朝鮮を軽視しているが、北朝鮮だって中国を無視できると言いたかったのだろう。

 北朝鮮は地雷を仕掛けたこともそうだが、南北会談を持ちかけたり、「南韓」といつもの言い方と違って「大韓民国」と正式名で韓国を呼んだが、次の機会にはまた元の呼称に戻ったり、「異例の(奇妙な?)」記者会見をしたりしており、一貫した方針がうかがわれない。
2015.08.22

(短評)安倍首相の訪中?


 安倍首相が近く訪中する可能性があると言われている。はっきりした説明は日本側からも中国側からもないので我々としては非常に分かりにくいが、この件については日中双方が非公式に相手の出方を探っているのではないかと思われる節がある。
 8月19日付の多維新聞(米国に本拠がある中国語新聞。本HPで何回も引用したことがある)は次のように記録している。

「7月10日、中国外交部の程国平次官は、習近平主席が安倍首相に「中国人民抗日戦争勝利70周年記念活動」に参加するよう招待したことを確認した。

7月11日、『朝日新聞』は、安倍首相は9月に訪中することを考慮している、期日は習近平主席が招待した9月3日でなく、9月だが他の日だと報道した。

8月5日、王毅外相は、安倍首相が9月に訪中するという話など聞いたことがないと言った。

8月18日、『毎日新聞』は単独で、安倍首相は9月3日午後、北京に到着する、そうすることにより午前中に行なわれる抗日戦争勝利観兵式を避ける、と報道した。

同日、日本の外務省報道官は、毎日新聞が報道したような事実はまったくない、と言明した。

8月19日、中国外交部のスポークスマン事務所(発言人弁公室)は、毎日新聞の報道に対して「安倍首相が9月に訪中するということは聞いていない」と述べた。」

多維新聞の記録は以上だが、これに次を加えておく。

8月20日、菅官房長官は、「安倍首相のことは、まだ何も決まっていない」と述べた。

 実際何が起こっているか。一つのシナリオは、習近平主席が抗日戦争勝利記念行事に出席するよう招待したのに対して、安倍首相は記念式典を外して訪中したいという意向を内々に伝え、それに対し中国側は、「安倍首相が記念式典に出席するか否かだけを聞きたい。他の日に、あるいは時間をずらせて訪中する話など聞きたくない」と応じているということである。

 しかし、日本側から中国側に対し9月訪中の可能性を探るのはやめたほうがよいと思う。9月3日の抗日戦争勝利記念を少し外して訪中することも含めてである。
 中国は、「第二次大戦で中国は世界的パワーであった。対日戦争勝利についてはもちろん、対独戦争勝利についても大きな役割を果たしたという評価を確立する」戦略をたて、記念行事を大々的に行おうとしている。観兵式もその一環だ。第二次大戦で共産党軍が世界的パワーであったか、一般にはなかなか受け入れられないだろうが、中国は最近そのような戦略を打ち立てたのだ(本HPでは5月11日に「対独勝利70周年記念式典と日本、ロシア、中国」、同月19日に「中国は対独戦勝利記念に参加する立場にない?」を掲げて論じている)。
 戦勝記念という意味ではロシアが5月に行なっている対独戦勝利記念と共通するが、中国の抗日戦争勝利記念にはそのような戦略があり、またその背景には大国化の願望があるので、むしろ和解とは逆の方向に強い力が働いていると思う。
 一般論として、日本が和解を重視していることを中国側に示すのはよいことだが、そのためには日本側でも実行しなければならないことがある。とくに、靖国神社参拝は、安倍首相としては強い思い入れがあるのだろうが、和解に役立たないことは客観的に認識すべきである。
 欧米主要国の指導者も9月3日の行事に出席しない。彼らは、日本との関係に配慮し、また、中国の戦略を警戒しているのではないか。
 なお、日中首脳会談を重視するのは評価できるが、それを実現する機会は国連総会など他にある。
 

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