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2026.01.26
若干さかのぼってみていこう。
2022年10月に開催された中国共産党第20回大会では、習近平総書記がそれまでの慣例を破り、第3期目にあたる9年目以降も総書記に就くことが決定され、習近平の独裁体制が固まったといわれた。
一方軍のトップである中央軍事委員会は7人の高級軍人から構成されることとなった。習近平氏は同委員会の主席であり、当然この7人の人事を承認していただろう。
しかるに、2023年に入ると、党大会から1年も経っていなかったが、軍の指導体制が動揺し始め、何衛東副主席、李尚福国防相、苗華委員が相次いで解任された。いずれも習近平氏とのつながりが深い人物であったが、習氏は中央軍事委員会の主席(ナンバーワン)として、これらの失脚をも承認したはずである。
その結果、軍を掌握するのは張又侠副主席となった。ところが今回、張又侠副主席も失脚したと報道された。中国の軍において何が起こっているのか。詳しいことはわからないが、尋常な事態でないことは明らかだ。比較的確実なことだけを根拠にして考えてみたことだが、次のような問題があるのではないかと思われる。
まず、張又侠副主席らの失脚は汚職や腐敗など個人的な理由によるとは考えられない。中国軍のトップとして任命された7人が個人的な理由で1年も経たないうちに相次いで失脚するなど、ありえないことである。
では習近平氏と軍の間にどのような問題があったのか。もっともありうるのは、推測が多くなるが、台湾、尖閣諸島、南シナ海の諸島に関する習近平氏と軍の間の意見の不一致である。我が国から見れば、中国の強硬姿勢ばかりが目立つが、中国内では軍は強硬論を吐く一方、政府としては現在の環境下であまり硬直した姿勢で臨みたくないのではないか。
張又侠の打倒によって軍は完全に習近平のコントロール下におかれることとなったと見受けられるが、習氏と軍の意見不一致は簡単には収まらないだろう。来年(2027年)中国共産党第21回全国代表大会が開かれるまでに収束しているか疑問である。今後従来にも増して注意深い観察が必要と思われる。
習近平主席と中国軍の不調和
中国国防省は1月24日、軍制服組トップの張又俠・中央軍事委員会副主席を重大な規律違反などの疑いで調査すると発表した。劉振立・同委員会委員(連合参謀部参謀長)への調査も同時に発表した。いずれも「調査」と発表されたが、中国の常識ではほぼ間違いなく「失脚」につながる。また、今回発表されたことは、単に2名の軍高官に関する問題にとどまらず、表面の報道には表れない広がりと深刻さを内包している可能性がある。若干さかのぼってみていこう。
2022年10月に開催された中国共産党第20回大会では、習近平総書記がそれまでの慣例を破り、第3期目にあたる9年目以降も総書記に就くことが決定され、習近平の独裁体制が固まったといわれた。
一方軍のトップである中央軍事委員会は7人の高級軍人から構成されることとなった。習近平氏は同委員会の主席であり、当然この7人の人事を承認していただろう。
しかるに、2023年に入ると、党大会から1年も経っていなかったが、軍の指導体制が動揺し始め、何衛東副主席、李尚福国防相、苗華委員が相次いで解任された。いずれも習近平氏とのつながりが深い人物であったが、習氏は中央軍事委員会の主席(ナンバーワン)として、これらの失脚をも承認したはずである。
その結果、軍を掌握するのは張又侠副主席となった。ところが今回、張又侠副主席も失脚したと報道された。中国の軍において何が起こっているのか。詳しいことはわからないが、尋常な事態でないことは明らかだ。比較的確実なことだけを根拠にして考えてみたことだが、次のような問題があるのではないかと思われる。
まず、張又侠副主席らの失脚は汚職や腐敗など個人的な理由によるとは考えられない。中国軍のトップとして任命された7人が個人的な理由で1年も経たないうちに相次いで失脚するなど、ありえないことである。
では習近平氏と軍の間にどのような問題があったのか。もっともありうるのは、推測が多くなるが、台湾、尖閣諸島、南シナ海の諸島に関する習近平氏と軍の間の意見の不一致である。我が国から見れば、中国の強硬姿勢ばかりが目立つが、中国内では軍は強硬論を吐く一方、政府としては現在の環境下であまり硬直した姿勢で臨みたくないのではないか。
張又侠の打倒によって軍は完全に習近平のコントロール下におかれることとなったと見受けられるが、習氏と軍の意見不一致は簡単には収まらないだろう。来年(2027年)中国共産党第21回全国代表大会が開かれるまでに収束しているか疑問である。今後従来にも増して注意深い観察が必要と思われる。
2025.11.12
2. 「存立危機事態」とは「日本が直接攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国が攻撃された際に、日本の存立が脅かされ、国民の生命などに明白な危険がある事態」を指す。集団的自衛権の行使を認めることに国内では反対の意見が強かったが、政府も国会もこの定義であれば憲法違反にならないとして、かろうじて認めた経緯がある。
3. 存立危機事態を認定するには、さらに、「他に適当な手段がないこと」および「必要最小限の実力行使であること」を満たす必要があるとされた。これらが「武力行使の新3要件」である。また集団的自衛権行使には原則として国会の事前承認を経ることとされたが、緊急時には例外的に事後承認が認められた。これらの要件が満たされてはじめて憲法に違反しないと認定されたのである。従来の政府答弁がこの要件を厳格に守ってきたのは当然であった。
4. しかるに、高市首相による「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」との答弁は、日本政府が従来守ってきた立場から明らかに逸脱している。
イ.高市氏の発言では「日本の存立が脅かされ、国民の生命などに明白な危険がない場合」でも、自衛隊は攻撃を受けている外国へ行って行動できることになる。
ロ.また高市氏は、新3要件のうち「他に適当な手段がない」こと、「必要最小限の実力行使であること」についての考えを示していない。そのため、高市発言によれば、これら2要件を満たさなくても、つまり、「他に適当な手段」があり、また「必要最小限の実力行使」でなくても憲法に違反しないことになりうる。
ハ.なお、高市氏の「戦艦」発言にも問題がある。「戦艦」だけが日本の存立危機事態を引き起こすのではない。「航空機」によっても同じ問題が発生するからである。
5.当然近隣諸国、就中中国は反発した。日本側は、日本政府の立場を説明したと木原稔官房長官が説明しているが、詳細は公にされていない。中国側は日本側の説明を受け入れたとは思えない。
高市氏の発言が問題なのは、中国などが反発するからではない。困難な議論を経てようやく認めることとした安保法制とは異なる説明を高市氏が恣意的に行っているからである。高市氏は国会で、発言を撤回するよう求められたが拒否した(11月10日の衆院予算委員会)。危険な一歩である。為政者による強弁は戦争に突き進んだ戦前の苦痛に満ちた経験を想起させる。高市氏の発言は歯切れがよく、多数の人の耳目を集めるかもしれないが、自己主張を通すために事実をゆがめている。今回の高市首相の発言が、将来同氏によって、あるいはその後継者によってさらに新たな危険に発展させられることは断じて許されない。
高市首相の存立危機事態発言
1. 高市首相は中国による台湾への武力侵攻問題に関し、「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」と国会で答弁した。この発言についての解説はいろいろだが、特に問題になるのは、この発言が日本政府の立場から逸脱していることである。2. 「存立危機事態」とは「日本が直接攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国が攻撃された際に、日本の存立が脅かされ、国民の生命などに明白な危険がある事態」を指す。集団的自衛権の行使を認めることに国内では反対の意見が強かったが、政府も国会もこの定義であれば憲法違反にならないとして、かろうじて認めた経緯がある。
3. 存立危機事態を認定するには、さらに、「他に適当な手段がないこと」および「必要最小限の実力行使であること」を満たす必要があるとされた。これらが「武力行使の新3要件」である。また集団的自衛権行使には原則として国会の事前承認を経ることとされたが、緊急時には例外的に事後承認が認められた。これらの要件が満たされてはじめて憲法に違反しないと認定されたのである。従来の政府答弁がこの要件を厳格に守ってきたのは当然であった。
4. しかるに、高市首相による「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」との答弁は、日本政府が従来守ってきた立場から明らかに逸脱している。
イ.高市氏の発言では「日本の存立が脅かされ、国民の生命などに明白な危険がない場合」でも、自衛隊は攻撃を受けている外国へ行って行動できることになる。
ロ.また高市氏は、新3要件のうち「他に適当な手段がない」こと、「必要最小限の実力行使であること」についての考えを示していない。そのため、高市発言によれば、これら2要件を満たさなくても、つまり、「他に適当な手段」があり、また「必要最小限の実力行使」でなくても憲法に違反しないことになりうる。
ハ.なお、高市氏の「戦艦」発言にも問題がある。「戦艦」だけが日本の存立危機事態を引き起こすのではない。「航空機」によっても同じ問題が発生するからである。
5.当然近隣諸国、就中中国は反発した。日本側は、日本政府の立場を説明したと木原稔官房長官が説明しているが、詳細は公にされていない。中国側は日本側の説明を受け入れたとは思えない。
高市氏の発言が問題なのは、中国などが反発するからではない。困難な議論を経てようやく認めることとした安保法制とは異なる説明を高市氏が恣意的に行っているからである。高市氏は国会で、発言を撤回するよう求められたが拒否した(11月10日の衆院予算委員会)。危険な一歩である。為政者による強弁は戦争に突き進んだ戦前の苦痛に満ちた経験を想起させる。高市氏の発言は歯切れがよく、多数の人の耳目を集めるかもしれないが、自己主張を通すために事実をゆがめている。今回の高市首相の発言が、将来同氏によって、あるいはその後継者によってさらに新たな危険に発展させられることは断じて許されない。
2025.10.22
注目点は軍事と経済だといわれている。中国国防省は17日、軍高官9人の共産党党籍剝奪(はくだつ)処分を発表した。全員階級は上将である。
何衛東‐中央軍事委員会(以下「軍委」)副主席
苗華‐中央軍委政治工作部元主任
何宏軍‐同委政治工作部常務副主任
王秀斌‐同委統合作戦指揮センター常務副主任
林向陽‐東部戦区司令官
秦樹桐‐陸軍政治委員
袁華智‐海軍政治委員
王春寧‐武装警察部隊司令官
王厚斌‐ロケット軍司令官
この処分については大きく見て2つの問題がある。第1に、9人の高官を一挙に失うのは軍にとって衝撃は大きい。しかも、どの人物も習近平氏と関係が深かった。そうであれば、習近平氏は承認したくなかったはずであるが、9人の処分を止めなかった。失脚は腐敗が原因であり、反腐敗キャンペーンを推し進めてきた習近平として処分を承認せざるをえなかったともいわれているが、それは表面的なことである。習近平氏はなぜ今回の人事を止めなかったのだろうか。
第2に、9人の人事は2022年10月の第20回共産党大会において決定されたが、短期間に覆されたわけである。軍ではこれら9人のほか、李尚福国防相(当時)が巨額の贈収賄に関与した疑いで2023年3月失脚し、翌年に党籍を剝奪された。9人の処分と言い、国防相の失脚と言い、共産党および習近平主席の権威に傷をつけることにならないか。中国軍に何が起きているのか。
習近平主席は第20回党大会で異例の3期目に入った(それまでの慣例では2期が限度であった)ことから、習近平氏の独裁体制が一段と強められたと盛んに言われた。しかし、どうもそうではなかった、体制内部に異なる考えの勢力があったかもしれないと懐疑的に見る必要がありそうである。
中国の政情‐4中全会
中国共産党中央委員会の第4回全体会議である「4中全会」が2025年10月20日から北京で始まった。注目点は軍事と経済だといわれている。中国国防省は17日、軍高官9人の共産党党籍剝奪(はくだつ)処分を発表した。全員階級は上将である。
何衛東‐中央軍事委員会(以下「軍委」)副主席
苗華‐中央軍委政治工作部元主任
何宏軍‐同委政治工作部常務副主任
王秀斌‐同委統合作戦指揮センター常務副主任
林向陽‐東部戦区司令官
秦樹桐‐陸軍政治委員
袁華智‐海軍政治委員
王春寧‐武装警察部隊司令官
王厚斌‐ロケット軍司令官
この処分については大きく見て2つの問題がある。第1に、9人の高官を一挙に失うのは軍にとって衝撃は大きい。しかも、どの人物も習近平氏と関係が深かった。そうであれば、習近平氏は承認したくなかったはずであるが、9人の処分を止めなかった。失脚は腐敗が原因であり、反腐敗キャンペーンを推し進めてきた習近平として処分を承認せざるをえなかったともいわれているが、それは表面的なことである。習近平氏はなぜ今回の人事を止めなかったのだろうか。
第2に、9人の人事は2022年10月の第20回共産党大会において決定されたが、短期間に覆されたわけである。軍ではこれら9人のほか、李尚福国防相(当時)が巨額の贈収賄に関与した疑いで2023年3月失脚し、翌年に党籍を剝奪された。9人の処分と言い、国防相の失脚と言い、共産党および習近平主席の権威に傷をつけることにならないか。中国軍に何が起きているのか。
習近平主席は第20回党大会で異例の3期目に入った(それまでの慣例では2期が限度であった)ことから、習近平氏の独裁体制が一段と強められたと盛んに言われた。しかし、どうもそうではなかった、体制内部に異なる考えの勢力があったかもしれないと懐疑的に見る必要がありそうである。
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