平和外交研究所

中国

2014.10.24

中国共産党の四中全会で「法治」の推進を決定?

四中全会では「法治」が主要な議題になると、中国の新聞は会議開催前に報道していた。党の意向を受けた報道であることは明らかであった。
党の中央委員会全体会議は5年に1回開催される全国代表大会に次ぐ重要会議である。新政策が決定されることもある。だから、10月の20~23日開催される四中全会(第4回中央委員会全体会議)で「法治」が主要議題になると聞くと、しばし「本当か」と、中国には失礼ながら、考えてしまった。
しかし、四中全会のコミュニケは、「法治」はあくまで「社会主義の特色ある法治」であり、共産党の指導がすべてに優先すること、つまり司法の独立は今後もないことを再確認した。現体制下で真の「法治」などありえないことであり、一瞬でも本当かと考える必要さえなかったのであろう。
四中全会のもう一つの重要事項である、腐敗した大物の処分については、厳しい処分を受けることは決定済みと大方の中国ウォッチャーがみなしていた周永康前政治局常務委員は意外に処分されなかった。同人は石油閥のトップとしての地位を悪用して汚職に走ったのであり、同様に石油関係の人物で、いわば周永康の子分格である蒋潔敏などは噂通り厳しく処分された。
周永康の問題が晴れたわけではないが、政治局常務委員という高い地位であったことと、周永康のさらに上にいる曾慶紅前国家副主席、さらにその上の江沢民がブレーキをかけた可能性もある。習近平は権力を一身に集め、盤石の地位を築きあげている印象があるが、何でも鶴の一声で決めるには程遠いようだ。周永康の処分をめぐって権力闘争が渦巻いていることはやはり間違いなさそうだ。
1年前に開かれた三中全会は、習近平新政権の足固めのためもろもろの措置を決定する重要会議であったが、四中全会は真の「法治」でない法治を推進し、権力闘争で法治がゆがめられることを強く示唆する会議となった。国民の信頼はさらに遠のくのではないか。

2014.10.02

第18回党大会以降の人事異動

9月13日付の『大公報』紙は、解放日報などの承認を経ていると前置きの上、2012年の第18回党大会から今年の10月20~23日開催予定の第18期4中全会の間に行なわれた人事異動を次のように総括している。習近平体制の実績であるのはもちろんである。

2014年6月以来、40に上る省部級(省長や部長つまり大臣クラス)の人事異動があり、党中央、地方および大規模国有企業の党指導者が交代した。すでに新しいポストに移っている場合が多いが、後任が決定していないところも残っており、新人事はこれからも行なわれる。
この背景に、第18回党大会以降大規模な人事異動が2回あった。第1回目は、党大会で15人の政治局員が決定し、それにともなって起こった人事異動である。陝西省委の趙東際、福建省委の孫春蘭、吉林省委の孫政才、上海市長の韓正は政治局員となり、その後、趙東際は中央組織部長(人事などを担当)に、孫春蘭は天津市委書記に、孫政才は重慶委書記に、韓正は上海市委の書記にそれぞれ就任した。
第2回目の大移動は、2013年の全国人民代表大会と全国人民政治協商会議の前後に起こった。たとえば、王晨、沈跃跃、吉炳轩等は前者の常務委員会副委员长となり、张庆黎、卢展工等は後者の副主席、周强は最高人民法院院长に就任した。
さらに第3回目の人事異動があるようだ。これは前2回とは性質が異なる。
第1に、副部長級が主である。
第2に、関係する範囲が広範である。
第3に、人事異動の原因はさまざまであるが、反腐敗運動の影響が大きい。

2014.10.01

香港の行政長官選挙に関するデモ

2017年に実施される香港の行政長官選挙について、これまでのように1200人の「選挙委員」の中から推薦を受けて候補が選ばれ、選挙はその選挙委員が行なうという方式をあらため、「選挙は18歳以上のすべての香港市民が行なう。しかし、候補は1200人の「指名委員会」の半数超の同意により選ばれる」という新方式を中国の全国人民代表大会常務委員会が決定したことに香港の住民が強く反発している。住民から見れば、形式的には普通選挙となるが、候補者は中国政府が認めたものしかなれない仕組みになっているからである。
民主化を求める人たちは、9月28日に反対デモを組織し、香港の中心部の占拠を始めた。これに対し香港政庁はデモを認めないので、民主派は梁振英長官の辞任と新選挙案の撤回を改めて求めたが、政庁側との対立は解けず、警察側は一部学生を逮捕し、催涙弾を使用した。デモ隊はこれを避けるため雨傘で防ごうとしたので「雨傘革命」と呼ばれるようになった。大規模なデモの影響は銀行などにも及び、企業や店舗の休業が相次ぎ、香港の株価は急落した。また、市民生活にもデモの影響が及んでいる。
香港の住民が中国政府と激しく対立するのは1989年の天安門事件以来であるが、その際は中国政府が武力で学生デモを鎮圧しようとして流血事態となったことが原因で香港の学生が立ち上がった。今回はそのようなことではなく、民主化要求を中国が無視したことが主たる原因である。

台湾が香港のデモに強い関心を抱いているのは当然である。行政院長(首相)の江宜樺は、重大な安全保障問題について議論する「国家安全会議」を開催した。また、馬英九総統は29日、「香港市民が(行政長官選で)普通選挙を求めることは完全に理解できるし、支持する」と語りつつ、香港市民には理性的な行動を、中国政府には「香港の民衆の声に耳を傾け、平和的で慎重な態度で対処するよう」呼びかけた。
台湾ではさる3月、馬政権の中国への過度の接近を警戒する学生らが立法院を占拠する「ひまわり学生運動」が起きたばかりである。
台湾紙は社説などで、習近平の強硬姿勢に代表される中国の対応を厳しく批判し、「香港の行政長官の権力は民意でなく、中国政府から与えられている。習近平は9月22日、李嘉誠等香港富豪の代表に、また26日には台湾の統派団体(統一支持派)代表にそれぞれ会い、「平和的統一、一国ニ制」を強調していたが、習近平の言っていることを台湾人が信用できるわけがない。現在の中国は50年香港の現状を変えないという、鄧小平がサッチャーと交わした約束に背いている。中国のこのような信頼を裏切る行為は国際世論も認めないだろう」などと論評している。
台湾紙の中には、さらに進んで、中国共産党内には習近平よりもっと強硬な者がいるようだが、習近平は香港に武力を使えないだろう、などと述べているものもある。

中国は、香港のデモが大陸へ波及することを懸念しているであろうが、香港に対して妥協することは考えられない。そうすれば、台湾や新疆ウイグルやさらには国内の民主派を勇気づけることになるからであり、中国政府としては強面で臨むしかないと思われる。しかし、断続的に起こる新疆ウイグルでの暴動ないし騒動、またその背景にあるイスラム勢との対立は時間がたっても静まらないのではないか。むしろボデーブローのようにじわじわと効いてくるのではないかと思われる。
おりしも、香港では、新選挙方針を支持するグループがデモを始めており、新たな混乱要因が起こっている。このデモは中国政府にとって都合がよいどころか、そもそも香港政庁側の仕組んだことかもしれないが、中長期的に見れば中国に有利に展開するか疑問である。

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