平和外交研究所

中国

2014.10.02

第18回党大会以降の人事異動

9月13日付の『大公報』紙は、解放日報などの承認を経ていると前置きの上、2012年の第18回党大会から今年の10月20~23日開催予定の第18期4中全会の間に行なわれた人事異動を次のように総括している。習近平体制の実績であるのはもちろんである。

2014年6月以来、40に上る省部級(省長や部長つまり大臣クラス)の人事異動があり、党中央、地方および大規模国有企業の党指導者が交代した。すでに新しいポストに移っている場合が多いが、後任が決定していないところも残っており、新人事はこれからも行なわれる。
この背景に、第18回党大会以降大規模な人事異動が2回あった。第1回目は、党大会で15人の政治局員が決定し、それにともなって起こった人事異動である。陝西省委の趙東際、福建省委の孫春蘭、吉林省委の孫政才、上海市長の韓正は政治局員となり、その後、趙東際は中央組織部長(人事などを担当)に、孫春蘭は天津市委書記に、孫政才は重慶委書記に、韓正は上海市委の書記にそれぞれ就任した。
第2回目の大移動は、2013年の全国人民代表大会と全国人民政治協商会議の前後に起こった。たとえば、王晨、沈跃跃、吉炳轩等は前者の常務委員会副委员长となり、张庆黎、卢展工等は後者の副主席、周强は最高人民法院院长に就任した。
さらに第3回目の人事異動があるようだ。これは前2回とは性質が異なる。
第1に、副部長級が主である。
第2に、関係する範囲が広範である。
第3に、人事異動の原因はさまざまであるが、反腐敗運動の影響が大きい。

2014.10.01

香港の行政長官選挙に関するデモ

2017年に実施される香港の行政長官選挙について、これまでのように1200人の「選挙委員」の中から推薦を受けて候補が選ばれ、選挙はその選挙委員が行なうという方式をあらため、「選挙は18歳以上のすべての香港市民が行なう。しかし、候補は1200人の「指名委員会」の半数超の同意により選ばれる」という新方式を中国の全国人民代表大会常務委員会が決定したことに香港の住民が強く反発している。住民から見れば、形式的には普通選挙となるが、候補者は中国政府が認めたものしかなれない仕組みになっているからである。
民主化を求める人たちは、9月28日に反対デモを組織し、香港の中心部の占拠を始めた。これに対し香港政庁はデモを認めないので、民主派は梁振英長官の辞任と新選挙案の撤回を改めて求めたが、政庁側との対立は解けず、警察側は一部学生を逮捕し、催涙弾を使用した。デモ隊はこれを避けるため雨傘で防ごうとしたので「雨傘革命」と呼ばれるようになった。大規模なデモの影響は銀行などにも及び、企業や店舗の休業が相次ぎ、香港の株価は急落した。また、市民生活にもデモの影響が及んでいる。
香港の住民が中国政府と激しく対立するのは1989年の天安門事件以来であるが、その際は中国政府が武力で学生デモを鎮圧しようとして流血事態となったことが原因で香港の学生が立ち上がった。今回はそのようなことではなく、民主化要求を中国が無視したことが主たる原因である。

台湾が香港のデモに強い関心を抱いているのは当然である。行政院長(首相)の江宜樺は、重大な安全保障問題について議論する「国家安全会議」を開催した。また、馬英九総統は29日、「香港市民が(行政長官選で)普通選挙を求めることは完全に理解できるし、支持する」と語りつつ、香港市民には理性的な行動を、中国政府には「香港の民衆の声に耳を傾け、平和的で慎重な態度で対処するよう」呼びかけた。
台湾ではさる3月、馬政権の中国への過度の接近を警戒する学生らが立法院を占拠する「ひまわり学生運動」が起きたばかりである。
台湾紙は社説などで、習近平の強硬姿勢に代表される中国の対応を厳しく批判し、「香港の行政長官の権力は民意でなく、中国政府から与えられている。習近平は9月22日、李嘉誠等香港富豪の代表に、また26日には台湾の統派団体(統一支持派)代表にそれぞれ会い、「平和的統一、一国ニ制」を強調していたが、習近平の言っていることを台湾人が信用できるわけがない。現在の中国は50年香港の現状を変えないという、鄧小平がサッチャーと交わした約束に背いている。中国のこのような信頼を裏切る行為は国際世論も認めないだろう」などと論評している。
台湾紙の中には、さらに進んで、中国共産党内には習近平よりもっと強硬な者がいるようだが、習近平は香港に武力を使えないだろう、などと述べているものもある。

中国は、香港のデモが大陸へ波及することを懸念しているであろうが、香港に対して妥協することは考えられない。そうすれば、台湾や新疆ウイグルやさらには国内の民主派を勇気づけることになるからであり、中国政府としては強面で臨むしかないと思われる。しかし、断続的に起こる新疆ウイグルでの暴動ないし騒動、またその背景にあるイスラム勢との対立は時間がたっても静まらないのではないか。むしろボデーブローのようにじわじわと効いてくるのではないかと思われる。
おりしも、香港では、新選挙方針を支持するグループがデモを始めており、新たな混乱要因が起こっている。このデモは中国政府にとって都合がよいどころか、そもそも香港政庁側の仕組んだことかもしれないが、中長期的に見れば中国に有利に展開するか疑問である。

2014.09.20

中国の利益集団

「利益集团:全面深化改革の最大の利益集团:全面深化改革の最大の障害」と題する記事が9月18日、共識網の中国欄に掲載されたが、すぐに削除された。それを高橋博氏が「胡耀邦史料信息網」に転載されているのを発見した。削除されるだけの内容である。

○11期3中全会(改革開放政策を決定した)以来、中国は「天地を覆すほどの(翻天覆地的)」変化を遂げたが、改革開放によって人が利益をむさぼる問題も発生した。今日、改革に抵抗しようとするさまざまな利益集団が現れたこのこともその一つである。
○中国の政治体制の下では人民が主であり、経済制度においては公有制の社会主義国家と人民の根本利益は一致するはずであるが、利益集団が跋扈しており、そのような理想とはかけ離れた状況になっている。
○三大利益集団がある。腐敗官僚を代表とする「権貴利益集団」、腐敗官僚が掌握する国家独占企業を代表とする「独占利益集団」および不動産業や資源関係の企業を代表とする「不動産・資源利益集団」である。主体別にみると、七大利益集団がある。強力な政府の官僚、地方政府の官僚、国有企業のハイレベル管理者、多国籍企業とその代理人、不動産開発業者、民営企業と民営資本家および利益集団に依存している学者・専門家である。
○中国の全面的深化改革を妨げる最大の障害は利益集団である。改革は利益の再調整に他ならない。利益集団の固有の領域に介入するので強力な抵抗に遭う。必死になって改革に抵抗する利益集団は手段を択ばない。
○現在異なる分野の利益集団が連合して改革に抵抗している。その実態は一般人の予想をはるかに越えている。利益集団が一つだけならば怖くないが、連合して抵抗するので怖い。
○現在、全面的深化改革の円滑な実施が妨げられているだけでなく、30年間の改革の成果をもほとんど破壊しそうになっている。

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