オピニオン
2015.07.24
日本政府は日中首脳会談実現の可能性を探っている。そのようなときに、このような発表をするのは役に立つだろうか。中国に対して主張すべきことを差し控えたり、遠慮する必要はないが、それは原則論。タイミングを計るのは重要なことである。外交でも日常生活でもタイミングを計りつつ発言する。それは主張の効果をより高めるためであり、そのようなことを考えずに行動すると「空気が読めない」ということになる。
中国による一方的なガス田開発が深刻な問題であれば、首脳会談の場でこちらの考えを表明できるではないか。
今回の政府発表は某紙の記事がきっかけであったとも言われているが、当たり前のことを主張するにも、あまりに単純な行動は禁物である。
(短評)中国によるガス田開発に関する政府発表
7月22日、中国のガス田開発に関する日本政府の突然の発表は驚きであった。官房長官が述べている「中国が一方的に資源開発をすることは極めて遺憾だ」ということ、日本として開発の中止を強く求めていくこともわかるが、なぜ今そうしなければならないのか、わからない。日本政府は日中首脳会談実現の可能性を探っている。そのようなときに、このような発表をするのは役に立つだろうか。中国に対して主張すべきことを差し控えたり、遠慮する必要はないが、それは原則論。タイミングを計るのは重要なことである。外交でも日常生活でもタイミングを計りつつ発言する。それは主張の効果をより高めるためであり、そのようなことを考えずに行動すると「空気が読めない」ということになる。
中国による一方的なガス田開発が深刻な問題であれば、首脳会談の場でこちらの考えを表明できるではないか。
今回の政府発表は某紙の記事がきっかけであったとも言われているが、当たり前のことを主張するにも、あまりに単純な行動は禁物である。
2015.07.14
問題はこの時期に、なぜ、かくも多数の人を拘束したかである。人権派弁護士に対する弾圧は中国自身のイメージを損ない、ひいては9月に予定されている習近平主席の訪米に暗い影を落とす恐れがある。
中国当局が問題視しているのは、生活の窮状を訴え善処を要望するために北京や地方の省都に上ってくる(中国語では「上訪」と言う)人たちを、人権派の弁護士らが各地方と情報交換・連携しつつ支援していることである。山崎豊子の小説、『大地の子』にそのような訴えの話が出てくる。現在も多数の訴えが省レベル、全国レベルで行なわれており、それに対する中央および地方の政府の妨害も頻発しているので支援が必要なのである。
当局の過剰とも見える対応の背景には、人権派によるこのような行動が民主化要求運動に発展することへの恐れがある。本HPでは、「習近平主席の民主化革命への警戒(4月21日)」など年に数回関連の記事を掲載しているので参照していただきたい。窮状にある農民らを支援する弁護士らは必ずしも反政府的でないが、民主化運動を起こす潜在力であることは間違いない。ノーベル平和賞を贈られた劉暁波(まだ拘留中)もその一人である。
中国当局の今回の行動が習近平主席の意を体して行なわれていることは確実である。言論を強い統制下に置き、中央の方針に従わない者は投獄するなど、体制を揺るがしかねない動きには強権的な措置で対応する習近平政権の性格がここにも表れている。
(短文)人権派弁護士の大規模逮捕
最近、7月9日以降とも言われているが、中国で多数の人権派弁護士らが拘束されている。その数は、7月14日付の香港紙『明報』によれば、13日までに107人に上っている。取り調べの後釈放された者もかなりあり、現在も拘留中は20人くらいらしい。問題はこの時期に、なぜ、かくも多数の人を拘束したかである。人権派弁護士に対する弾圧は中国自身のイメージを損ない、ひいては9月に予定されている習近平主席の訪米に暗い影を落とす恐れがある。
中国当局が問題視しているのは、生活の窮状を訴え善処を要望するために北京や地方の省都に上ってくる(中国語では「上訪」と言う)人たちを、人権派の弁護士らが各地方と情報交換・連携しつつ支援していることである。山崎豊子の小説、『大地の子』にそのような訴えの話が出てくる。現在も多数の訴えが省レベル、全国レベルで行なわれており、それに対する中央および地方の政府の妨害も頻発しているので支援が必要なのである。
当局の過剰とも見える対応の背景には、人権派によるこのような行動が民主化要求運動に発展することへの恐れがある。本HPでは、「習近平主席の民主化革命への警戒(4月21日)」など年に数回関連の記事を掲載しているので参照していただきたい。窮状にある農民らを支援する弁護士らは必ずしも反政府的でないが、民主化運動を起こす潜在力であることは間違いない。ノーベル平和賞を贈られた劉暁波(まだ拘留中)もその一人である。
中国当局の今回の行動が習近平主席の意を体して行なわれていることは確実である。言論を強い統制下に置き、中央の方針に従わない者は投獄するなど、体制を揺るがしかねない動きには強権的な措置で対応する習近平政権の性格がここにも表れている。
2015.07.03
一方、中国の新華社電7月1日付は、同報告が「ロシア、イランおよび北朝鮮の3カ国を名指しで米国および全世界の安全に巨大な脅威となっている」と指摘しているとしつつ、別の文章で、同報告は「中国の軍事力は米国にとって「一定の脅威」となっていると解説している。また、「中国が国際社会の安全を維持するために協力するパートナーとなることを望んでいる(原文は「支持」)」と記載している。
しかし、同報告の原文は、中国とロシア、イランおよび北朝鮮の3カ国と中国をあたかも別のカテゴリーであるかのように扱っておらず、続けて、つまり中国は北朝鮮のすぐ後に記載している。
新華社電が指摘している「中国が国際社会の安全を維持するために協力するパートナーとなることを望んでいる」は原文にもあるが、叙述の順序を入れ替えることにより全体を穏やかなトーンにしている。報告の原文は中国にとってもっときびしい内容であり、中国の行動を「アジア太平洋地域で緊張を高めている」「南シナ海のほぼ全域に対する領有権の主張は国際法に反している」「国際社会による問題を強制でなく、協調的に解決してほしいという要請にもかかわらず、中国は大胆に(aggressive)土地造成を行なった」などと述べている。
同報告が中国を「一定の脅威」としているというのは事実でなく、新華社電の解釈に過ぎない。
北朝鮮への言及のすぐ後に出てくる原文の中国関係部分は次のとおりである。
We support China’s rise and encourage it to become a partner for greater international security. However, China’s actions are adding tension to the Asia-Pacific region. For example, its claims to nearly the entire South China Sea are inconsistent with international law. The international community continues to call on China to settle such issues cooperatively and without coercion. China has responded with aggressive land reclamation efforts that will allow it to position military forces astride vital international sea lanes.
None of these nations are believed to be seeking direct military conflict with the United States or our allies. Nonetheless, they each pose serious security concerns which the international community is working to collectively address by way of common policies, shared messages, and coordinated action.
As part of that effort, we remain committed to engagement with all nations to communicate our values, promote transparency, and reduce the potential for miscalculation. Accordingly, we continue to invest in a substantial military-to-military relationship with China and we remain ready to engage Russia in areas of common interest, while urging both nations to settle their disputes peacefully and in accordance with international law.
このように見てくれば、新華社電の報道が米統合参謀本部の「国家軍事戦略」をかなり歪曲しているのは明らかである。中国の国有通信社である新華社は中国国内向けにそうしたのであろうが、米国が中国に対する批判的姿勢を強めていることをぼやかして何の利益があるのだろうか。
米「国家軍事戦略」を中国はいかに報道したか
7月1日、米統合参謀本部は4年ぶりに「国家軍事戦略」を発表した。中国については、ロシア、イラン、北朝鮮と並んでserious security concerns、すなわち「深刻な安全保障上の懸念」であるとの認識を述べている。前回2011年の戦略では中国の宇宙やサイバー、海洋活動などに「憂慮」を示しつつ、「中国と建設的、協力的、包括的な関係を追求する」としていたが、今回はより批判的なトーンである。一方、中国の新華社電7月1日付は、同報告が「ロシア、イランおよび北朝鮮の3カ国を名指しで米国および全世界の安全に巨大な脅威となっている」と指摘しているとしつつ、別の文章で、同報告は「中国の軍事力は米国にとって「一定の脅威」となっていると解説している。また、「中国が国際社会の安全を維持するために協力するパートナーとなることを望んでいる(原文は「支持」)」と記載している。
しかし、同報告の原文は、中国とロシア、イランおよび北朝鮮の3カ国と中国をあたかも別のカテゴリーであるかのように扱っておらず、続けて、つまり中国は北朝鮮のすぐ後に記載している。
新華社電が指摘している「中国が国際社会の安全を維持するために協力するパートナーとなることを望んでいる」は原文にもあるが、叙述の順序を入れ替えることにより全体を穏やかなトーンにしている。報告の原文は中国にとってもっときびしい内容であり、中国の行動を「アジア太平洋地域で緊張を高めている」「南シナ海のほぼ全域に対する領有権の主張は国際法に反している」「国際社会による問題を強制でなく、協調的に解決してほしいという要請にもかかわらず、中国は大胆に(aggressive)土地造成を行なった」などと述べている。
同報告が中国を「一定の脅威」としているというのは事実でなく、新華社電の解釈に過ぎない。
北朝鮮への言及のすぐ後に出てくる原文の中国関係部分は次のとおりである。
We support China’s rise and encourage it to become a partner for greater international security. However, China’s actions are adding tension to the Asia-Pacific region. For example, its claims to nearly the entire South China Sea are inconsistent with international law. The international community continues to call on China to settle such issues cooperatively and without coercion. China has responded with aggressive land reclamation efforts that will allow it to position military forces astride vital international sea lanes.
None of these nations are believed to be seeking direct military conflict with the United States or our allies. Nonetheless, they each pose serious security concerns which the international community is working to collectively address by way of common policies, shared messages, and coordinated action.
As part of that effort, we remain committed to engagement with all nations to communicate our values, promote transparency, and reduce the potential for miscalculation. Accordingly, we continue to invest in a substantial military-to-military relationship with China and we remain ready to engage Russia in areas of common interest, while urging both nations to settle their disputes peacefully and in accordance with international law.
このように見てくれば、新華社電の報道が米統合参謀本部の「国家軍事戦略」をかなり歪曲しているのは明らかである。中国の国有通信社である新華社は中国国内向けにそうしたのであろうが、米国が中国に対する批判的姿勢を強めていることをぼやかして何の利益があるのだろうか。
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