中国
2015.08.01
オバマ大統領は7月24日からケニアおよびエチオピアに合計6日間滞在した。1期目の2009年にはガーナに20時間立ち寄っただけであったのと比べると、はるかに長く本格的な訪問であった。
アフリカ諸国はかつてのように援助を受けるだけでなく、投資の対象国として重要になっている。今回の訪問を前にオバマ大統領もアフリカへの投資増大を語っていた。これを機会に米国とアフリカとの関係が前進することを期待する声もあるが、米国の投資が本当にアフリカに流れ込むか、半信半疑の人もあるそうだ。
アフリカにはすでに中国が猛烈な勢いで進出しているからである。コロンビア大学のHoward French准教授は”China’s Second Continent”という本を出版している。アフリカは「第2の中国大陸」というわけであり、過去10~15年間に中国の勢力が増大し、米国の影響力は後退したと指摘している。
アフリカでは、日本人は多くても一カ国に数百人が滞在している程度であるが、中国人は万の台である。旧宗主国の英国やフランスと比較しても中国はけた違いに多い。飛行場に降り立つと空港ターミナルへ向かうバスの運転手が中国人なので驚かされることも珍しくないそうだ。そもそもアフリカ大陸は巨大であるが、人口は少ない。資源開発に中国が投資しても、雇える労働者は少ない。このことも中国人が進出する一つの理由である。
今や、アフリカ各都市に中国が建てた高層ビルが立ち並び、その中で中国商人が商売をしている。交通網も中国が建設している。有名なMombasa-Nairobi鉄道は中国人の手で改修中であり、将来は完全に中国標準になるのではないかと言われている。中国モデルがアフリカのいたるところで広まっている。
オバマ大統領のアフリカ訪問と相前後して、中国はジブチと1・85億ドルの経済協力協定を結んだ。ジブチは紅海とアデン湾に面する要衝の地で、米国は基地を置いている。海賊対策のため派遣される自衛隊の拠点もジブチである。ジブチは米国のテロ対策の拠点であり、4500人の兵員を配し、イェーメンとソマリアでのドローン活動もそこから行っている。
その隣接地へ中国が進出してくることに米軍は神経をとがらせ、基地の機能に悪影響が出る恐れがあるとも言っている。米軍の状況も気持ちも想像に難くないが、資源確保に躍起となり、そのために資金も労働力も大量に投入してくる中国パワーは難敵である。米中の角逐は南シナ海からインド洋、さらにはアフリカにまで広がっている。
(短文)アフリカにおける米中の角逐
オバマ大統領のアフリカ政策について欧米のメディアにはかなり辛口のコメントをしているものがあり、英フィナンシャル・タイムズなどは、世界で急成長を実現している「上位10カ国のうち7カ国はアフリカの国々だ」「新規投資の機会をつかんでいるのは中国だ」などと指摘しつつ、オバマ大統領の思惑通りに事は運ばないだろうという趣旨の論評を加えている。オバマ大統領は7月24日からケニアおよびエチオピアに合計6日間滞在した。1期目の2009年にはガーナに20時間立ち寄っただけであったのと比べると、はるかに長く本格的な訪問であった。
アフリカ諸国はかつてのように援助を受けるだけでなく、投資の対象国として重要になっている。今回の訪問を前にオバマ大統領もアフリカへの投資増大を語っていた。これを機会に米国とアフリカとの関係が前進することを期待する声もあるが、米国の投資が本当にアフリカに流れ込むか、半信半疑の人もあるそうだ。
アフリカにはすでに中国が猛烈な勢いで進出しているからである。コロンビア大学のHoward French准教授は”China’s Second Continent”という本を出版している。アフリカは「第2の中国大陸」というわけであり、過去10~15年間に中国の勢力が増大し、米国の影響力は後退したと指摘している。
アフリカでは、日本人は多くても一カ国に数百人が滞在している程度であるが、中国人は万の台である。旧宗主国の英国やフランスと比較しても中国はけた違いに多い。飛行場に降り立つと空港ターミナルへ向かうバスの運転手が中国人なので驚かされることも珍しくないそうだ。そもそもアフリカ大陸は巨大であるが、人口は少ない。資源開発に中国が投資しても、雇える労働者は少ない。このことも中国人が進出する一つの理由である。
今や、アフリカ各都市に中国が建てた高層ビルが立ち並び、その中で中国商人が商売をしている。交通網も中国が建設している。有名なMombasa-Nairobi鉄道は中国人の手で改修中であり、将来は完全に中国標準になるのではないかと言われている。中国モデルがアフリカのいたるところで広まっている。
オバマ大統領のアフリカ訪問と相前後して、中国はジブチと1・85億ドルの経済協力協定を結んだ。ジブチは紅海とアデン湾に面する要衝の地で、米国は基地を置いている。海賊対策のため派遣される自衛隊の拠点もジブチである。ジブチは米国のテロ対策の拠点であり、4500人の兵員を配し、イェーメンとソマリアでのドローン活動もそこから行っている。
その隣接地へ中国が進出してくることに米軍は神経をとがらせ、基地の機能に悪影響が出る恐れがあるとも言っている。米軍の状況も気持ちも想像に難くないが、資源確保に躍起となり、そのために資金も労働力も大量に投入してくる中国パワーは難敵である。米中の角逐は南シナ海からインド洋、さらにはアフリカにまで広がっている。
2015.07.24
日本政府は日中首脳会談実現の可能性を探っている。そのようなときに、このような発表をするのは役に立つだろうか。中国に対して主張すべきことを差し控えたり、遠慮する必要はないが、それは原則論。タイミングを計るのは重要なことである。外交でも日常生活でもタイミングを計りつつ発言する。それは主張の効果をより高めるためであり、そのようなことを考えずに行動すると「空気が読めない」ということになる。
中国による一方的なガス田開発が深刻な問題であれば、首脳会談の場でこちらの考えを表明できるではないか。
今回の政府発表は某紙の記事がきっかけであったとも言われているが、当たり前のことを主張するにも、あまりに単純な行動は禁物である。
(短評)中国によるガス田開発に関する政府発表
7月22日、中国のガス田開発に関する日本政府の突然の発表は驚きであった。官房長官が述べている「中国が一方的に資源開発をすることは極めて遺憾だ」ということ、日本として開発の中止を強く求めていくこともわかるが、なぜ今そうしなければならないのか、わからない。日本政府は日中首脳会談実現の可能性を探っている。そのようなときに、このような発表をするのは役に立つだろうか。中国に対して主張すべきことを差し控えたり、遠慮する必要はないが、それは原則論。タイミングを計るのは重要なことである。外交でも日常生活でもタイミングを計りつつ発言する。それは主張の効果をより高めるためであり、そのようなことを考えずに行動すると「空気が読めない」ということになる。
中国による一方的なガス田開発が深刻な問題であれば、首脳会談の場でこちらの考えを表明できるではないか。
今回の政府発表は某紙の記事がきっかけであったとも言われているが、当たり前のことを主張するにも、あまりに単純な行動は禁物である。
2015.07.14
問題はこの時期に、なぜ、かくも多数の人を拘束したかである。人権派弁護士に対する弾圧は中国自身のイメージを損ない、ひいては9月に予定されている習近平主席の訪米に暗い影を落とす恐れがある。
中国当局が問題視しているのは、生活の窮状を訴え善処を要望するために北京や地方の省都に上ってくる(中国語では「上訪」と言う)人たちを、人権派の弁護士らが各地方と情報交換・連携しつつ支援していることである。山崎豊子の小説、『大地の子』にそのような訴えの話が出てくる。現在も多数の訴えが省レベル、全国レベルで行なわれており、それに対する中央および地方の政府の妨害も頻発しているので支援が必要なのである。
当局の過剰とも見える対応の背景には、人権派によるこのような行動が民主化要求運動に発展することへの恐れがある。本HPでは、「習近平主席の民主化革命への警戒(4月21日)」など年に数回関連の記事を掲載しているので参照していただきたい。窮状にある農民らを支援する弁護士らは必ずしも反政府的でないが、民主化運動を起こす潜在力であることは間違いない。ノーベル平和賞を贈られた劉暁波(まだ拘留中)もその一人である。
中国当局の今回の行動が習近平主席の意を体して行なわれていることは確実である。言論を強い統制下に置き、中央の方針に従わない者は投獄するなど、体制を揺るがしかねない動きには強権的な措置で対応する習近平政権の性格がここにも表れている。
(短文)人権派弁護士の大規模逮捕
最近、7月9日以降とも言われているが、中国で多数の人権派弁護士らが拘束されている。その数は、7月14日付の香港紙『明報』によれば、13日までに107人に上っている。取り調べの後釈放された者もかなりあり、現在も拘留中は20人くらいらしい。問題はこの時期に、なぜ、かくも多数の人を拘束したかである。人権派弁護士に対する弾圧は中国自身のイメージを損ない、ひいては9月に予定されている習近平主席の訪米に暗い影を落とす恐れがある。
中国当局が問題視しているのは、生活の窮状を訴え善処を要望するために北京や地方の省都に上ってくる(中国語では「上訪」と言う)人たちを、人権派の弁護士らが各地方と情報交換・連携しつつ支援していることである。山崎豊子の小説、『大地の子』にそのような訴えの話が出てくる。現在も多数の訴えが省レベル、全国レベルで行なわれており、それに対する中央および地方の政府の妨害も頻発しているので支援が必要なのである。
当局の過剰とも見える対応の背景には、人権派によるこのような行動が民主化要求運動に発展することへの恐れがある。本HPでは、「習近平主席の民主化革命への警戒(4月21日)」など年に数回関連の記事を掲載しているので参照していただきたい。窮状にある農民らを支援する弁護士らは必ずしも反政府的でないが、民主化運動を起こす潜在力であることは間違いない。ノーベル平和賞を贈られた劉暁波(まだ拘留中)もその一人である。
中国当局の今回の行動が習近平主席の意を体して行なわれていることは確実である。言論を強い統制下に置き、中央の方針に従わない者は投獄するなど、体制を揺るがしかねない動きには強権的な措置で対応する習近平政権の性格がここにも表れている。
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