平和外交研究所

オピニオン

2016.10.11

(短評)日本の核武装?

 日本の核武装については認識のギャップがある。日本国内では、核武装論は極めて少数だ。稲田防衛相は核武装論者の一人だが、日本全体では圧倒的多数が核武装に反対だろう。
 これは認識の違いというより意見の違いだが、日本の内と外では認識のギャップがある。諸外国は、特に欧米諸国だが、日本が核武装するのではないかという気持ちをどこかに持っている。これは心配といってもよい。一方、日本ではそんな心配はないと思われているというちがいだ。つまり、日本の将来の行動について認識が違っているのだ。
 
 米国に拠点がある『多維新聞』は当研究所でも時折引用している中国語の新聞であるが、10月8日付で次のような報道をしている。
「The Washington Free Beacon(注 保守的なサイトとして知られている)によれば、米国防総省は日中両国が核戦争をするとどのような結果になるかについて委託研究を行った。これによると日本は10年以内に核武装できる。中国を核攻撃すれば3千万の中国人が殺害されるだろう。一方、中国が日本を核攻撃すれば3千4百万人の日本人が殺害される。これは日本の全人口の27%であり、日本は滅亡する。」

 このようなことは、日本ではあまりにも非現実的な、根拠のない杞憂とみなされ、注意も引かないが、米国では読まれる記事なのだろう。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストのようなクォリティ新聞はさすがに報道しないが、大衆紙には報道されるのだ。
 また、中国人はこのような報道をどのように受け止めるか。『多維新聞』はもちろん中国の代表でないが、参考にはなる。

 バイデン副大統領はさる6月、習近平中国主席に対し、日本は一晩で核武装する能力があると吹き込んだ。北朝鮮の核問題について中国として真剣に対処しないと日本が核武装に向かう危険があることを言いたかったのだが、このような発言にもペンタゴンの研究と同じ発想がうかがわれる。
2016.10.10

(短評)ドゥテルテ大統領のフィリピン訪問

 ドゥテルテ大統領は最近も、「オバマ大統領は地獄へ行け」などと暴言を吐いたり、また米軍はフィリピンにいらないと言ったりしている。麻薬取り締まりが行き過ぎて多数の死者が出ていることを米国が問題視したことに反発しての発言であるとはいえ、相変わらずの毒舌ぶりだ。

 一方、同大統領は近く中国を訪問することになった。香港の『大公報』紙10月10日付は、中国およびフィリピン各紙の報道に基づき、「ドゥテルテ大統領が今月18~21日、中国を国賓として訪問することになった。もともと事務的な訪問で合意されていたが、途中から国賓に格上げとなり、滞在期間も20~21日から延長された」との趣旨を報じている。

 米国に対して物怖じしないどころか、世界の指導者の中でもっとも乱暴な言葉を使って米国を批判するドゥテルテ氏は中国にとって大歓迎だろう。今回の中国訪問を最高の国賓待遇としたことはその表れだ。
 また、中国としては先の仲裁判決を事実上葬ってしまうためにドゥテルテ大統領を取り込みたい考えだ。多数の経済協力案件で歓心を得ようとするのだろう

 一方、ドゥテルテ大統領の訪日については日比両国間で調整中であり、10月25~27日になる可能性もあるそうだ。さまざまな案件があるが、仲裁判決は日本の強い関心事だ。尖閣諸島とも大いに関係があることをドゥテルテ大統領に理解してもらう必要がある。
2016.10.03

(短文)中国「共識網」の閉鎖

 10月3日付の香港紙『明報』によれば、中国のクォリティ新聞サイト「共識網」が強制的に閉鎖された由。同サイトの周志興会長の、「当局は共識網が閉鎖するのを望んでいる。誤った思想を伝えるからだそうだ。仕方がないので閉鎖の準備をしている」というメッセージだけが流れた。
 周志興は以前香港の「フェニックス網」の会長を務め、2003年に「共識メディア」を立ち上げ、『財経文摘』誌、『領導者』誌の社長兼編集長を経て「共識網」の会長となった。妻の喻杉は鄧小平の三女である鄧榕と親しいのと周志興に軍歴があったので、「共識網」は鄧一家と軍内にも支持する者がいた。これまで左、中道、右の記事を掲載してきたが無事であったのはそのような背景があるからだ。
 習近平政権は『炎黄春秋』に引き続き、中央の言いなりにはならないサイトを強制的に閉鎖したのだ。言論の統制強化がまた一歩進んだ。

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