オピニオン
2017.02.01
まず「中国」「中華人民共和国」「台湾」を区別する必要がある。とくに、「中国」と「中華人民共和国」は同じ意味で使われることが多いのでその区別は重要だ。さらにこれらのほか、「中華民国」もあるが、特に断らない限り「中華民国」と「台湾」を区別せず、単に「台湾」と呼ぶこととする。
「一つの中国」というが「中国」という名称の国はない。現在ないだけでなく、太古の昔からなかった。一方、「中華人民共和国」は実在する国家だ。以前の「清」「明」「唐」なども実在する国家であった。
では「中国」はまったく存在しないかと言えば、それは微妙な問題で、「中華人民共和国」政府は、存在するという立場であり、その立場に立って「中華人民共和国」も「台湾」も「中国」に属すると主張している。しかし現実には、大陸は「中華人民共和国」が支配し、台湾島は「中華民国」が支配しているので、主張でなく目標に過ぎない。そこで「中華人民共和国」は「一つの中国」を標榜して、「台湾」を「中華人民共和国」のもとで統一したい、つまり、「中国」イコール「中華人民共和国」イコール「中国大陸プラス台湾島」にしたいのだ。
実は、「台湾」すなわち「中華民国」もかつては「一つの中国」の立場であり、「中国」イコール「中華民国」イコール「中国大陸プラス台湾島」とすることを目標にしていた。
しかし、現在はそのような主張をしなくなっている。それは、「中華人民共和国」バージョンの「一つの中国」に乗り換えたからでない。「中華民国」バージョンの「一つの中国」の目標、すなわち、「台湾」が中国大陸を征服することなどありえず、政策目標として掲げるべきでないと考えるようなったからだ。
現在、蔡英文総統は「一つの中国」問題について極めて慎重な態度であり、賛成、あるいは反対と旗幟鮮明にすることを避けている。その説明は、大胆に分かりやすくすれば、「一つの中国について台湾内部にコンセンサスがない現状では、政府として特定の立場に立つべきでない。民主的にコンセンサスが形成されるのを待つ」という考えだと思う。
これに対し「中華人民共和国」は、蔡英文総統がそのように態度をあいまいにしているのは腹の中で「台湾独立」を企んでいるからだとみなして激しく非難している。
トランプ氏は米国政府の立場を変更したか否か。日本と米国はそれぞれ1972年と79年に「中華人民共和国」と国交を樹立した。その時から「一つの中国」は問題であったが、日本は「一つの中国」を認めるとは言わなかった。米国は、「中華人民共和国がそのように主張していることに異論を唱えない」と表明するにとどめた。日米両国とも「一つの中国」は意味不明であり、また、一部は明らかに現実でないのでそれを正しいと認めなかったのだと思う。
トランプ氏の「一つの中国の原則に縛られない」との発言は従来の米政府の説明と感じが違っており、中国は反発しているが、米国が立場を変えたとは単純に断定できない面がある。解釈問題だ。
また、トランプ氏は「一つの中国原則も交渉の対象となる」とも言っているが、中国は交渉の対象にしないだろう。
そう考えると、トランプ発言自体はさほど深刻な問題になると思えないが、米新政権の中国政策、とくに台湾の扱いは注意が必要だ。
トランプ氏と「一つの中国」
トランプ氏は大統領就任以前から「米国はなぜ一つの中国に縛られなければならないのかわからない」「一つの中国に関する原則も交渉対象となる」(それぞれ1月11日のFOXテレビ、13日の米紙ウォールストリート・ジャーナル)などと述べて物議をかもしている。この際、「一つの中国」原則を確かめておこう。昨年12月24日の「(短評)トランプ新政権の対中姿勢」と併せてご覧いただきたい。まず「中国」「中華人民共和国」「台湾」を区別する必要がある。とくに、「中国」と「中華人民共和国」は同じ意味で使われることが多いのでその区別は重要だ。さらにこれらのほか、「中華民国」もあるが、特に断らない限り「中華民国」と「台湾」を区別せず、単に「台湾」と呼ぶこととする。
「一つの中国」というが「中国」という名称の国はない。現在ないだけでなく、太古の昔からなかった。一方、「中華人民共和国」は実在する国家だ。以前の「清」「明」「唐」なども実在する国家であった。
では「中国」はまったく存在しないかと言えば、それは微妙な問題で、「中華人民共和国」政府は、存在するという立場であり、その立場に立って「中華人民共和国」も「台湾」も「中国」に属すると主張している。しかし現実には、大陸は「中華人民共和国」が支配し、台湾島は「中華民国」が支配しているので、主張でなく目標に過ぎない。そこで「中華人民共和国」は「一つの中国」を標榜して、「台湾」を「中華人民共和国」のもとで統一したい、つまり、「中国」イコール「中華人民共和国」イコール「中国大陸プラス台湾島」にしたいのだ。
実は、「台湾」すなわち「中華民国」もかつては「一つの中国」の立場であり、「中国」イコール「中華民国」イコール「中国大陸プラス台湾島」とすることを目標にしていた。
しかし、現在はそのような主張をしなくなっている。それは、「中華人民共和国」バージョンの「一つの中国」に乗り換えたからでない。「中華民国」バージョンの「一つの中国」の目標、すなわち、「台湾」が中国大陸を征服することなどありえず、政策目標として掲げるべきでないと考えるようなったからだ。
現在、蔡英文総統は「一つの中国」問題について極めて慎重な態度であり、賛成、あるいは反対と旗幟鮮明にすることを避けている。その説明は、大胆に分かりやすくすれば、「一つの中国について台湾内部にコンセンサスがない現状では、政府として特定の立場に立つべきでない。民主的にコンセンサスが形成されるのを待つ」という考えだと思う。
これに対し「中華人民共和国」は、蔡英文総統がそのように態度をあいまいにしているのは腹の中で「台湾独立」を企んでいるからだとみなして激しく非難している。
トランプ氏は米国政府の立場を変更したか否か。日本と米国はそれぞれ1972年と79年に「中華人民共和国」と国交を樹立した。その時から「一つの中国」は問題であったが、日本は「一つの中国」を認めるとは言わなかった。米国は、「中華人民共和国がそのように主張していることに異論を唱えない」と表明するにとどめた。日米両国とも「一つの中国」は意味不明であり、また、一部は明らかに現実でないのでそれを正しいと認めなかったのだと思う。
トランプ氏の「一つの中国の原則に縛られない」との発言は従来の米政府の説明と感じが違っており、中国は反発しているが、米国が立場を変えたとは単純に断定できない面がある。解釈問題だ。
また、トランプ氏は「一つの中国原則も交渉の対象となる」とも言っているが、中国は交渉の対象にしないだろう。
そう考えると、トランプ発言自体はさほど深刻な問題になると思えないが、米新政権の中国政策、とくに台湾の扱いは注意が必要だ。
2017.01.30
呉勝利から沈金龍に交代していることが1月20日判明した。多維新聞同日付によれば、「沈金龍は南シナ海問題が白熱化した際南海艦隊を率いてデリケートな事件を処理したことと直接関係がある」と論評している。また沈金龍は艦隊司令官から海軍司令官に昇格した初めてのケースである由。
大戦区司令官に海軍から任命
北海艦隊の袁誉柏司令官が五大戦区の一つである南部戦区の司令官に任命された。従来大戦区の司令官は常に陸軍から任命されており、袁誉柏の任命は海軍の地位上昇を象徴している。
兵役拒否
香港の『明報』1月26日付によれば、解放軍報は次のような内容の記事を掲載している。
「中国では兵役を拒否する青年が増加している。以前兵役拒否は経済が発達した豊かな都市だけの現象であったが、それが内陸部にも広がっている。これまで兵役拒否者に対しては内部だけで処理していたが、それが兵役拒否を助長させた。
2015年、山西省で兵役に就くことを拒否してハンストをした青年に対して11.5万元(約200万円)の罰金、すべての機関での雇用拒否、国外への出境・昇学・商業活動の禁止、共青団からの除名などの罰則を加え、さらに公表した。同様の処罰は上海市、浙江省、江蘇省、福建省などでも行われたが、それでも効果は上がらず、山西省では翌年また21人が拒否した。」
(短文)中国人民解放軍に関する話題
海軍司令官の交代呉勝利から沈金龍に交代していることが1月20日判明した。多維新聞同日付によれば、「沈金龍は南シナ海問題が白熱化した際南海艦隊を率いてデリケートな事件を処理したことと直接関係がある」と論評している。また沈金龍は艦隊司令官から海軍司令官に昇格した初めてのケースである由。
大戦区司令官に海軍から任命
北海艦隊の袁誉柏司令官が五大戦区の一つである南部戦区の司令官に任命された。従来大戦区の司令官は常に陸軍から任命されており、袁誉柏の任命は海軍の地位上昇を象徴している。
兵役拒否
香港の『明報』1月26日付によれば、解放軍報は次のような内容の記事を掲載している。
「中国では兵役を拒否する青年が増加している。以前兵役拒否は経済が発達した豊かな都市だけの現象であったが、それが内陸部にも広がっている。これまで兵役拒否者に対しては内部だけで処理していたが、それが兵役拒否を助長させた。
2015年、山西省で兵役に就くことを拒否してハンストをした青年に対して11.5万元(約200万円)の罰金、すべての機関での雇用拒否、国外への出境・昇学・商業活動の禁止、共青団からの除名などの罰則を加え、さらに公表した。同様の処罰は上海市、浙江省、江蘇省、福建省などでも行われたが、それでも効果は上がらず、山西省では翌年また21人が拒否した。」
2017.01.25
同報道官の記者会見に先立って、国務長官に指名されたティラーソン氏は米議会での審査において同様の問題意識から”The United States would not allow China access to islands it has built in the South China Sea, and upon which it has installed weapons systems and built military-length airstrips.”と述べており、その時は説明がよくなかったものとみなされ、大事にならずにすんでいた。
しかし、スパイサー報道官の発言は同じ趣旨であり、ティラーソン氏の説明が稚拙だったのではなく、ひょっとしたら新政権の姿勢を忠実に説明しているのではないかと記者が色めき立ったのである。
とくに注意をひいたのは、ティラーソンが「アクセスを許さない」とし、スパイサーが「中国が領土を取る(take over)のを防止する(prevent)」と述べたことであり、そんなことはいったい可能かと記者が問題視したのであった。本当にそうしようとすれば、かつてのキューバ危機のように海上封鎖が必要となり、そうなると中国と戦争になる恐れがある。だから「アクセスを許さない」などと軽々にいうべきではないと記者は思ったのであろう。厳密な論理的説明を求める米国人記者の姿勢にあらためて感心するが、ちょっと厳しすぎるのではないかという感じもある。
それはともかく、米国紙が南シナ海の問題についてそこまで深く関心を持つのは印象的なことだ。南シナ海で米中両国がどのような姿勢で臨むかは、尖閣諸島にも強く、直接と言ってもよいが、影響する問題である。
(短文)南シナ海問題に関する米新政権の立場
1月23日、新政権として初の大統領府記者会見でホワイトハウスのスパイサー報道官は、南シナ海問題に関する新政権の姿勢について、「中国がスプラトリー諸島などで国際法に違反して埋め立てや軍事施設建設の工事を行っていることは認められず、米国はしかるべき措置を取って対応する」という趣旨のコメントをしたのだと思うが、その具体的な説明ぶりには問題があり、「スパイサー報道官の説明通りであると紛争はエスカレートする恐れがある。それとも新政権の外交政策の説明ぶりとして不適切なのか」などと厳しく報道されている(ワシントン・ポスト紙1月24日付など)。スパイサー報道官が説明したのは、「米国は南シナ海の国際水域において中国が領土を取る(take over)のを防止する(the United States would prevent China from taking over territory in international waters in the South China Sea.)」ということであった。同報道官の記者会見に先立って、国務長官に指名されたティラーソン氏は米議会での審査において同様の問題意識から”The United States would not allow China access to islands it has built in the South China Sea, and upon which it has installed weapons systems and built military-length airstrips.”と述べており、その時は説明がよくなかったものとみなされ、大事にならずにすんでいた。
しかし、スパイサー報道官の発言は同じ趣旨であり、ティラーソン氏の説明が稚拙だったのではなく、ひょっとしたら新政権の姿勢を忠実に説明しているのではないかと記者が色めき立ったのである。
とくに注意をひいたのは、ティラーソンが「アクセスを許さない」とし、スパイサーが「中国が領土を取る(take over)のを防止する(prevent)」と述べたことであり、そんなことはいったい可能かと記者が問題視したのであった。本当にそうしようとすれば、かつてのキューバ危機のように海上封鎖が必要となり、そうなると中国と戦争になる恐れがある。だから「アクセスを許さない」などと軽々にいうべきではないと記者は思ったのであろう。厳密な論理的説明を求める米国人記者の姿勢にあらためて感心するが、ちょっと厳しすぎるのではないかという感じもある。
それはともかく、米国紙が南シナ海の問題についてそこまで深く関心を持つのは印象的なことだ。南シナ海で米中両国がどのような姿勢で臨むかは、尖閣諸島にも強く、直接と言ってもよいが、影響する問題である。
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