中国
2014.06.24
「インターネットの安全と反テロ活動は密接不可分に結びついている。現在、中央のインターネット安全弁公庁は、インターネット上の暴力・恐怖の影響を除去するための闘争を全国的に展開している。インターネットとテロは織りなして関係しており、政治、国土、軍事、文化、社会、情報化、国民などの安全に関わっている。
各省は、中央のインターネット情報化安全小組に対応する組織を続々と作っている。とくに注意すべきは、軍の将官がそのなかで重要な役割を演じていることである。たとえば、江西省ではその指導者として、江西省軍区司令員の張暁明と参謀長の陳平が名を連ねている。北京、陝西省、吉林省、江蘇省、山東省などでも同様である。」
「各省は、インターネット安全小組の他、反テロ工作小組を設置しており、軍人が同様に重要な役割を果たしており、ほとんどすべての省で軍人が副組長となっている。軍人はその軍区か武装警察の責任者である。その目的は、軍、武警、公安等の部門を統合し反テロの力を最大にするためである。」
「6月9日、新疆ウイグル自治区の反テロ工作指導小組はウルムチで第1回全体会議を開催した。以前は反テロ協調小組であったものが反テロ指導小組に改組されて初めての全体会議である。組長には自治区党委員会書記兼政法委員会書記の熊選国が、副組長には自治区政府副主席兼公安庁長の朱昌傑と新疆軍区副司令員の李発義がついた。」
このような動向も習近平政権の特徴である、現体制の安定を重視し、民主化を許さず、そのためには強権的に言論を封殺することも辞さないという姿勢の一端である。果たしてこのような方法で長く政治を維持できるかが問われる。
国家安全委員会とテロ防止活動の関連
インターネットでの「暗戦(暗闇での戦い)」と反テロ闘争が中国の安全に関わる2大問題となっている、などという内容の評論を大公網が報道している(6月24日 『政経生態周報』第十期の記事を転載)。以下はその主要点である。「インターネットの安全と反テロ活動は密接不可分に結びついている。現在、中央のインターネット安全弁公庁は、インターネット上の暴力・恐怖の影響を除去するための闘争を全国的に展開している。インターネットとテロは織りなして関係しており、政治、国土、軍事、文化、社会、情報化、国民などの安全に関わっている。
各省は、中央のインターネット情報化安全小組に対応する組織を続々と作っている。とくに注意すべきは、軍の将官がそのなかで重要な役割を演じていることである。たとえば、江西省ではその指導者として、江西省軍区司令員の張暁明と参謀長の陳平が名を連ねている。北京、陝西省、吉林省、江蘇省、山東省などでも同様である。」
「各省は、インターネット安全小組の他、反テロ工作小組を設置しており、軍人が同様に重要な役割を果たしており、ほとんどすべての省で軍人が副組長となっている。軍人はその軍区か武装警察の責任者である。その目的は、軍、武警、公安等の部門を統合し反テロの力を最大にするためである。」
「6月9日、新疆ウイグル自治区の反テロ工作指導小組はウルムチで第1回全体会議を開催した。以前は反テロ協調小組であったものが反テロ指導小組に改組されて初めての全体会議である。組長には自治区党委員会書記兼政法委員会書記の熊選国が、副組長には自治区政府副主席兼公安庁長の朱昌傑と新疆軍区副司令員の李発義がついた。」
このような動向も習近平政権の特徴である、現体制の安定を重視し、民主化を許さず、そのためには強権的に言論を封殺することも辞さないという姿勢の一端である。果たしてこのような方法で長く政治を維持できるかが問われる。
2014.06.23
5月下旬には同市の朝市に車が突入・爆発し、133人が殺傷された。死者は約40人に上ったとも言われた。
中国当局はその直後から、1年間の「暴力テロ活動取り締まり特別行動」を全国で展開。自治区でも厳しい警戒態勢を敷いていた
6月には、トゥルファンなどの裁判所が、昨年6月、同自治区ルクチュンで24人が死亡した襲撃事件などに関わった13人の死刑を執行した。警察署などが襲われ、警察官や市民47人が死傷した事件など7件の事件の関係である。
また、同自治区ウルムチ市中級人民法院は、昨年10月、北京・天安門前に車両が突入・炎上した事件で、死亡した実行犯の共犯として起訴した3人にテロ組織を指導した罪などで死刑判決を下した。
今度は同自治区カシュガル地区カルギリク県で21日朝、県公安局のビルに車両が突っ込み、乗っていたグループが爆発物を起爆させた。自治区政府系ニュースサイト「天山網」が伝えている。警察は容疑者グループの13人を射殺したほか、警官3人が負傷したそうである。
テロリストによる攻撃はまことに憎むべきであり、犠牲者や家族には同情を禁じえないが、この問題には少数民族が絡んでいる。習近平政権は言論の統制を強化し、政府にとって問題なことは早期に芽を摘んでしまう方針で臨んでいる。テロに対する対応も同様であるが、強い措置がかえって反発を生み、過激化させる危険もある。
ウイグル族が関与する事件が増えている
新疆ウイグル自治区で事件が続発している。4月末、習近平主席がウルムチを視察した直後、公然と挑戦するかのようにウルムチ南駅で爆発事件が起き、82人が死傷した。5月下旬には同市の朝市に車が突入・爆発し、133人が殺傷された。死者は約40人に上ったとも言われた。
中国当局はその直後から、1年間の「暴力テロ活動取り締まり特別行動」を全国で展開。自治区でも厳しい警戒態勢を敷いていた
6月には、トゥルファンなどの裁判所が、昨年6月、同自治区ルクチュンで24人が死亡した襲撃事件などに関わった13人の死刑を執行した。警察署などが襲われ、警察官や市民47人が死傷した事件など7件の事件の関係である。
また、同自治区ウルムチ市中級人民法院は、昨年10月、北京・天安門前に車両が突入・炎上した事件で、死亡した実行犯の共犯として起訴した3人にテロ組織を指導した罪などで死刑判決を下した。
今度は同自治区カシュガル地区カルギリク県で21日朝、県公安局のビルに車両が突っ込み、乗っていたグループが爆発物を起爆させた。自治区政府系ニュースサイト「天山網」が伝えている。警察は容疑者グループの13人を射殺したほか、警官3人が負傷したそうである。
テロリストによる攻撃はまことに憎むべきであり、犠牲者や家族には同情を禁じえないが、この問題には少数民族が絡んでいる。習近平政権は言論の統制を強化し、政府にとって問題なことは早期に芽を摘んでしまう方針で臨んでいる。テロに対する対応も同様であるが、強い措置がかえって反発を生み、過激化させる危険もある。
2014.06.20
「 「国防省を通してくれ」――。中国で軍関係者に取材を申し込むと、必ずといっていいほど返ってくるお決まりの返事。ようは「おことわり」ということなのだが、その国防省当局者にも取材するのは容易ではなく、月1回の定例会見ですら、まだ外国メディアに開放していない。
正面取材が極めて限られている中で、中国の現役軍人に直接接触できる貴重な機会が最近あった。
5月30日から3日間、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」だ。英国の国際戦略研究所(IISS)が主催し、朝日新聞社も後援する国際会議で、アジア・太平洋地域の30を超える国の国防相や軍高官、シンクタンク研究員らが一堂に会し、安全保障政策の諸課題について意見を交わす。今年で13回目を迎える。
安全保障の世界でこれほどの規模と出席者の知名度の高さ、しかもそれがオープンで行われる国際会議はほかに例がない。特に今回は、日本から初めて安倍晋三首相が出席するほか、南シナ海での中国の石油掘削活動をめぐる中国とベトナムとの対立が起きているさなかの開催となり、今まで以上にメディアの関心を集めた。
朝日新聞の作業部屋は会議場のシャングリラ・ホテル(『シャングリラ・ダイアローグ』は、シャングリラ・ホテルで開かれる会議、という意味)の一室を借り上げた。
当然、私の仕事は中国代表団を取材することなのだが、そもそも代表団の作業部屋がどこかわからない。なにせ、中国側は、王冠中・軍副総参謀長と傅瑩・全国人民代表大会外事委員会主任委員が代表団トップになるとようやく明らかにしたのも直前だったし、日程も前日か当日にやっとわかるという有り様。
結局、現場で探して捕まえるしかない。安倍首相や王副総参謀長が演説した大会場の横は、中の様子を映したモニタースペースと喫茶を兼ねた待機部屋になっている。出席者はこの部屋にいることが多い。待ち伏せしていたら、来た、来た。でも、中国の代表団、特に軍人はたいてい2人組かそれ以上で行動している。1人ならまだ話しかけやすいのになあ……。
思い切って、2人組に声をかけてみた。「こんにちは!日本の記者なんですが」。1人はさっと逃げてしまった。残った1人に名刺を渡して自己紹介すると、相手は少し離れたところにいる仲間の方をちらちら見ながら、顔がこわばっている。日本人記者と一緒にいる場面を仲間に見られたくない、というオーラを発散していた。もちろん、名刺なんてくれない。
そんな彼らが、31日朝、一変した。その前日に安倍首相が演説したからだ。安倍首相は講演の中で、中国を名指しで批判しないまでも、中国を念頭に「法の支配」を繰り返し訴え、「一方的な行動をとらないという約束を交わすべきだ」と主張した。首相に続き、31日朝にはヘーゲル氏が演説し、「中国はこの数カ月、南シナ海情勢を不安定化させる一方的な行動をとっている」と中国を真っ向から批判した。
中国政府は、首相が演説の中で中国を名指しで批判している部分があるかどうかに注目していた。首脳会談の判断材料にするためだが、首相の演説を聴いた代表団は早速、外交ルートで北京と連絡をとり、対応を協議したようだ。代表団関係者は「習近平国家主席にその日のうちに報告された」と話した。
王副総参謀長は31日午前、急きょぶら下がり会見をした。「ヘーゲル氏の話はひどい」「ヘーゲル氏と安倍氏は互いに調子を合わせて中国を批判した」などと激しく非難した。
廊下ですれ違った軍服姿の国防大教授も、演説の感想を聞くと立ち止まり、「首相は一国のトップのくせに国際会議で他国を批判した。政治家として最低な行為だ」。私が「習主席も訪問先のベルリンでの講演で、南京大虐殺で30万人殺したと日本を批判していた」と言うと、「それは事実だから問題ない」とまくし立てた。
そして6月1日の王副総参謀長の基調講演。王氏は原稿を読んでいる途中で、「ここでいったん原稿から離れたい」と突然、顔を上げた。
「今回だれが挑発したかみなさんはおわかりのはずだ。中国が先に事を起こしたことはない」――。10分余りにわたって延々と安倍首相とヘーゲル氏を糾弾。やはり、中国は日本批判となれば、「期待」を裏切らない。ただ、興味深かったのは「ヘーゲル氏の方がまだいい。率直に中国を批判したから」と言ったこと。首相がヘーゲル氏と同じように中国を名指しで批判したら、もっと激しく怒っただろう、と想像した。
今回のハイライトは、実は王氏の話ではなく、王氏に向けられた会場からの質問だったと思う。「挑発行為を受け身で応じているだけというなら、南シナ海で中国が石油掘削をする前にベトナムはどんな挑発をしたのか」「(中国が南シナ海の管轄権の範囲とする)9段線は国際法に違反する。海は領土ではない。9段線の根拠をちゃんと明らかにするべきだ」など、疑問や批判が集中した。
王氏は「7分しかない」と時間の短さを理由に、すべての質問に答えず、唯一答えた「9段線」の根拠も、「2千年以上前の漢の時代から……」と歴史の経緯を述べただけだった。
同僚と手分けして会場の反応をとると、インドの軍関係者は「中国は言葉で平和的共存というが、行動を見れば覇権主義をより強めようとしているだけ」、日本人出席者は「聞いた人はみんな中国の論理が異様だと思っただろう」、インドネシアの出席者は「一国の軍人が他国の首相を国際会議の場で批判するのは異常なことだ」と口々に王氏の反論に疑問を投げかけた。
今回の会議では、中国の主張や行動が、国際的にいかに「異質」に見られているかが鮮明になったと思う。最初から会議に参加している先輩記者は「今までで一番興味深かった」と話していた。
王氏が、安倍首相への批判に比べ、ヘーゲル氏に対する批判を明らかに弱めたことで、米国に対してはまだ「韜光養晦(とうこうようかい)」(力の弱いうちは能力を隠す)戦略を維持していることが影響しているのかとも感じた。ある韓国側参加者は「日本を牽制(けんせい)するために意図的に差別していた」と同僚の取材に語った。
問題は、シンガポールで中国に向けられた視線がちゃんと中国大陸に伝わっているかどうかだ。北京に戻ってから、中国国内の報道ぶりを調べてみた。
国営新華社通信が30日の開幕と、1日の王氏の講演と質疑応答内容を伝えた程度で、国営中央テレビも同様だった。現場には多数の中国メディア記者も取材に来ていたが、北京の中国人助手は「どの記事も新華社の枠を外れたものはなく、印象に残らなかった」と話した。5月中旬に習主席が出席した上海での「アジア信頼醸成措置会議(CICA)」の大々的な報道ぶりとは大違いという。新華社の論評も、「西側の色彩が濃い」と会議の意義そのものを否定する内容だった。
安全保障の専門家は「中国の最大の問題点は、自国を客観視できないことだ」と指摘する。せっかくの機会となった今回の会議だが、中国にいる人たちは、国際社会からいまの中国が客観的にどう見られているか、それはなぜか、を知ることはできなかったのではないかと残念に思った。」
シャングリラ対話ー第3話
6月19日付朝日新聞デジタル版の「特派員リポート」は先般のシンガポールで開かれたアジア安全保障会議の状況と、中国軍への取材の困難さと現場の雰囲気をよく伝えている。中国軍の世界における重要性が日増しに高まる一方、その実情を知ることはまだ容易でなく、取材の立場からの観察は参考になるので、次に引用しておく。なお朝日新聞は同会議の主要スポンサーの一人である。「 「国防省を通してくれ」――。中国で軍関係者に取材を申し込むと、必ずといっていいほど返ってくるお決まりの返事。ようは「おことわり」ということなのだが、その国防省当局者にも取材するのは容易ではなく、月1回の定例会見ですら、まだ外国メディアに開放していない。
正面取材が極めて限られている中で、中国の現役軍人に直接接触できる貴重な機会が最近あった。
5月30日から3日間、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」だ。英国の国際戦略研究所(IISS)が主催し、朝日新聞社も後援する国際会議で、アジア・太平洋地域の30を超える国の国防相や軍高官、シンクタンク研究員らが一堂に会し、安全保障政策の諸課題について意見を交わす。今年で13回目を迎える。
安全保障の世界でこれほどの規模と出席者の知名度の高さ、しかもそれがオープンで行われる国際会議はほかに例がない。特に今回は、日本から初めて安倍晋三首相が出席するほか、南シナ海での中国の石油掘削活動をめぐる中国とベトナムとの対立が起きているさなかの開催となり、今まで以上にメディアの関心を集めた。
朝日新聞の作業部屋は会議場のシャングリラ・ホテル(『シャングリラ・ダイアローグ』は、シャングリラ・ホテルで開かれる会議、という意味)の一室を借り上げた。
当然、私の仕事は中国代表団を取材することなのだが、そもそも代表団の作業部屋がどこかわからない。なにせ、中国側は、王冠中・軍副総参謀長と傅瑩・全国人民代表大会外事委員会主任委員が代表団トップになるとようやく明らかにしたのも直前だったし、日程も前日か当日にやっとわかるという有り様。
結局、現場で探して捕まえるしかない。安倍首相や王副総参謀長が演説した大会場の横は、中の様子を映したモニタースペースと喫茶を兼ねた待機部屋になっている。出席者はこの部屋にいることが多い。待ち伏せしていたら、来た、来た。でも、中国の代表団、特に軍人はたいてい2人組かそれ以上で行動している。1人ならまだ話しかけやすいのになあ……。
思い切って、2人組に声をかけてみた。「こんにちは!日本の記者なんですが」。1人はさっと逃げてしまった。残った1人に名刺を渡して自己紹介すると、相手は少し離れたところにいる仲間の方をちらちら見ながら、顔がこわばっている。日本人記者と一緒にいる場面を仲間に見られたくない、というオーラを発散していた。もちろん、名刺なんてくれない。
そんな彼らが、31日朝、一変した。その前日に安倍首相が演説したからだ。安倍首相は講演の中で、中国を名指しで批判しないまでも、中国を念頭に「法の支配」を繰り返し訴え、「一方的な行動をとらないという約束を交わすべきだ」と主張した。首相に続き、31日朝にはヘーゲル氏が演説し、「中国はこの数カ月、南シナ海情勢を不安定化させる一方的な行動をとっている」と中国を真っ向から批判した。
中国政府は、首相が演説の中で中国を名指しで批判している部分があるかどうかに注目していた。首脳会談の判断材料にするためだが、首相の演説を聴いた代表団は早速、外交ルートで北京と連絡をとり、対応を協議したようだ。代表団関係者は「習近平国家主席にその日のうちに報告された」と話した。
王副総参謀長は31日午前、急きょぶら下がり会見をした。「ヘーゲル氏の話はひどい」「ヘーゲル氏と安倍氏は互いに調子を合わせて中国を批判した」などと激しく非難した。
廊下ですれ違った軍服姿の国防大教授も、演説の感想を聞くと立ち止まり、「首相は一国のトップのくせに国際会議で他国を批判した。政治家として最低な行為だ」。私が「習主席も訪問先のベルリンでの講演で、南京大虐殺で30万人殺したと日本を批判していた」と言うと、「それは事実だから問題ない」とまくし立てた。
そして6月1日の王副総参謀長の基調講演。王氏は原稿を読んでいる途中で、「ここでいったん原稿から離れたい」と突然、顔を上げた。
「今回だれが挑発したかみなさんはおわかりのはずだ。中国が先に事を起こしたことはない」――。10分余りにわたって延々と安倍首相とヘーゲル氏を糾弾。やはり、中国は日本批判となれば、「期待」を裏切らない。ただ、興味深かったのは「ヘーゲル氏の方がまだいい。率直に中国を批判したから」と言ったこと。首相がヘーゲル氏と同じように中国を名指しで批判したら、もっと激しく怒っただろう、と想像した。
今回のハイライトは、実は王氏の話ではなく、王氏に向けられた会場からの質問だったと思う。「挑発行為を受け身で応じているだけというなら、南シナ海で中国が石油掘削をする前にベトナムはどんな挑発をしたのか」「(中国が南シナ海の管轄権の範囲とする)9段線は国際法に違反する。海は領土ではない。9段線の根拠をちゃんと明らかにするべきだ」など、疑問や批判が集中した。
王氏は「7分しかない」と時間の短さを理由に、すべての質問に答えず、唯一答えた「9段線」の根拠も、「2千年以上前の漢の時代から……」と歴史の経緯を述べただけだった。
同僚と手分けして会場の反応をとると、インドの軍関係者は「中国は言葉で平和的共存というが、行動を見れば覇権主義をより強めようとしているだけ」、日本人出席者は「聞いた人はみんな中国の論理が異様だと思っただろう」、インドネシアの出席者は「一国の軍人が他国の首相を国際会議の場で批判するのは異常なことだ」と口々に王氏の反論に疑問を投げかけた。
今回の会議では、中国の主張や行動が、国際的にいかに「異質」に見られているかが鮮明になったと思う。最初から会議に参加している先輩記者は「今までで一番興味深かった」と話していた。
王氏が、安倍首相への批判に比べ、ヘーゲル氏に対する批判を明らかに弱めたことで、米国に対してはまだ「韜光養晦(とうこうようかい)」(力の弱いうちは能力を隠す)戦略を維持していることが影響しているのかとも感じた。ある韓国側参加者は「日本を牽制(けんせい)するために意図的に差別していた」と同僚の取材に語った。
問題は、シンガポールで中国に向けられた視線がちゃんと中国大陸に伝わっているかどうかだ。北京に戻ってから、中国国内の報道ぶりを調べてみた。
国営新華社通信が30日の開幕と、1日の王氏の講演と質疑応答内容を伝えた程度で、国営中央テレビも同様だった。現場には多数の中国メディア記者も取材に来ていたが、北京の中国人助手は「どの記事も新華社の枠を外れたものはなく、印象に残らなかった」と話した。5月中旬に習主席が出席した上海での「アジア信頼醸成措置会議(CICA)」の大々的な報道ぶりとは大違いという。新華社の論評も、「西側の色彩が濃い」と会議の意義そのものを否定する内容だった。
安全保障の専門家は「中国の最大の問題点は、自国を客観視できないことだ」と指摘する。せっかくの機会となった今回の会議だが、中国にいる人たちは、国際社会からいまの中国が客観的にどう見られているか、それはなぜか、を知ることはできなかったのではないかと残念に思った。」
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