平和外交研究所

中国

2014.05.18

中国の土地制度の問題点①

中共中央党校国際戦略研究所副所長の周天勇が最近、中国の土地制度と土地売買にまつわる問題を率直に分析し、注目を浴びている。この土地問題は中国の政治・経済・社会に存在する矛盾や問題点を象徴している。要旨を2回に分けて掲載する。

中国の土地には国有と集団所有の2形態が混在している。都市では国有で、農村では集団所有が原則であるが、例外はかなりある。都市の土地は文化大革命の際資本家を追い出して労働者に与えた。文革終了後元の所有者は土地の返還を求めたが、文革中に占拠し始めた人の中には返還要求に応じない者が居るため、土地の権利関係は不明確になっている。

土地の使用権を行政府が売却できることになっているところに問題がある。
土地使用権の売買が始まったのは90年代末であった。このような制度は当初「協議出譲」、これは後に「招拍挂」と呼ばれる制度に改められた。使用権を売却できるのは政府だけであり、いかなる経済体や公司もできない。この制度が腐敗を生む原因になっている。ほとんどすべての不動産をめぐって贈収賄が行われている。幹部を保護するためにも、腐敗を絶滅するためにも政府が土地の使用権を処分する制度を速やかに改革しなければならない。

使用年限についても問題がある。農地の使用権は最初5年だったが、15年、さらに現在は30年になっている。工業用地は20ないし50年である。土地の使用権が満期になると、使用者は土地の使用許可手続きをあらためてしなければならず、契約更改金を納めなければならない。それをしなければ当局は、強制的に取り上げることもできる。

政府は元来無償で土地を貸与した。「協議出譲」制では政府と使用者は一対一で協議した。価格を決定するためであり、書記や市長などと関係がよければ比較的安価に使用権を得ることができた。現在の「招拍挂」制では、使用権は入札にかけられるので、政府は1畝(6.67アール)数百元で入手した土地を30万、50万、100万元で転売しており、500万、600万、はなはだしい場合2千万元に上ることもある。
このようにして得た利益は、2010年~13年、平均3兆元に達し、2013年は4兆1000億元であった。2014年第1四半期は1兆1000億元で、前年同期比40%増である。
ここ数年、土地の使用権許諾からの収入は住宅売却額の半分を占めている。昨年の売却は約10億平米であり、1平米は約7000余元、総額は7~8兆元であった。そのうち土地の使用権が4.1兆元、これに税金を加えると住宅売上の約65%になる。本年、北京市の土地使用権料はますます高騰している。しかし、一部の国有企業はどんなに高くても入手している。今後さらに高騰すると見ているのである。

住宅供給が独占状態にあり、競争がない。低所得者用の住宅(「保障房」と呼ばれる)の建設について多くの地方政府は中央に対し、過去1年で1000万戸建設したと言っているが、虚偽であり、実際にはそんなに多くない。地方にはそんなにお金はない。
商業用の住宅(「商品房」と呼ばれる)については、すべての住宅開発は「房地産公司」が行なうことになっており、個人が土地を確保し、自前で住宅を建設することは許されない。集合住宅も同じことである。

2014.05.10

登記制度改革はまだまだである

中国経済の主要問題の一つである不動産の登記制度改革について華夏時報の記事を5月10日の大公報が転載している。要約すれば次のとおりである。

不動産を統一的に登記する制度の確立は土地問題の核心であるが、難問である。
関係する部(日本の各省にあたる)・委員会は10を超える。
国土部は8日、不動産登記局が正式に成立し、全国の土地、家屋、林業地、草原、海域などの登記を管轄すると発表した。また、この発表に先立って、2016年から統一登記制度を全国で実施することになっており、今年から3年くらいで統一登記制度を完成し、4年くらいの間に統一不動産登記情報を管理する基礎的システムを作動させることになっていた。
しかし、関係部門を取材したところ、まだそのようには進展しておらず、まだかなりの時間が必要である。
中国で不動産の統一登記の必要性が認識され始めたのはかなり以前のことである。しかし、それ以後の進展は緩慢であった。不動産登記の分野では中心になる部門が複数あり、また各部門の権益が重複しているからである。
2014年1月、中央は不動産登記の職責を整理することに関する通知を発出した。まず職責の整理を行ない、その上で国土部の関係機構整備と人員強化を実行し、国土部の地籍管理司に不動産登記局の看板を掛けることになった。しかし、8日に国土部のサイトをチェックしたところ、依然として「地籍司」が存続し、「不動産局」は見当たらなかった。また、不動産局の職責について国土部の説明を求めると、「今年の重点任務は不動産登記制度のトップの設計を行なうことである」ということであった。
不動産の統一登記制度を作る目的は家屋・土地税を徴収する前提条件を準備することである。
2013年11月に国務院常務会議は不動産登記局の設立を加速するよう指示し、上記の2014年1月の中央の通知により不動産統一登記工作の最高司令官となった国土部は統一登記のトップ設計を行なう責務が課せられた。しかし、国土部から中央に対して機構編成の拡大の申請が提出されているが、今日に至るも回答が出ていない。中央の一般的方針は政府機構の増大を極力避け、配置人員は増加させず減少させるべきというものであり、大登記局を設置することは困難なのである。国土部に限らず、地方でも人員をいかに確保するか、大問題である。
統一登記制度を確立するには関係各部門の職責の調整、利益配分の公平化が必要となり、これには時間がかかる。
「物権法」は、国家が不動産の統一登記制度を実施すると定めている。しかし、登記の範囲、機構、処理手続きなどは別の法令で決められている。
2013年、国務院は国務院機構改革および職能調整方案任務分担通知によれば、4月末までに家屋登記、林業地登記、草原登記、土地登記などの職責を調整することになっているが、現在に至るもできていない。

2014.05.09

女性ジャーナリストの逮捕

中国の女性ジャーナリスト高瑜が4月24日に拘束された(新華社は5月8日に発表)。高瑜は機密文書をあるサイトを通じて海外へ流した嫌疑をかけられ、また、そのことを自白したそうである。

多維新聞(5月8日付)や明報(9日付)などによると、意識形態(思想)面での防衛戦は必要であるが、当局の発表には不明確な点が多々ある。表面的には当局の行動は合理的に見えるが、その裏では政治的な問題が隠れている。
薛蛮子のペンネームで知られる実業家、薛必群が買春の疑いで逮捕されたのが例であり、同人は社会問題に関心を持ち、微博で児童誘拐防止を呼び掛け、投資家、芸能人にも賛同するよう働きかけたことが当局の不興を買った。薛蛮子や高瑜のように社会的影響力の大きい人物は「大V」と呼ばれ、当局はそれを標的にして言論の統制強化を図っている。
高瑜が流したのは中共中央の「第9号文件」であり、言論の自由を厳しく取り締まった「七不講(7つの話題にしてはならないこと)」、すなわち普遍的価値、新聞の自由、公民社会、公民の権利、中国共産党の歴史の過ち、権貴資産階級、司法の独立を口にすることを禁止した文献である。この文献はニューヨークタイムズや香港の『明鏡月刊』、明報などですでに報道されており、高瑜が逮捕されるよりはるかに前からかんかんがくがく議論されていた。

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