平和外交研究所

中国

2015.10.23

(短文)人民日報も調べられている

 中国共産党の機関紙である『人民日報』や理論誌『求是』も反腐敗運動の一環で調べられ、問題があったことが判明したそうだ。10月18日の中央規律検査委員会のサイトで公表された。
 具体的には、政治的判断が甘かったこと、個人的つながりやカネをもらって記事が書かれること、記事に書くという脅迫でゆすることなどである。取材旅行での資金の濫用や公用車の不適切使用なども指摘されている。
 
 言論統制強化の一環か。
 『人民日報』などを監督する中央宣伝部門の責任は問われないのか。
 権力闘争ではないか。
 なども気になることである。
2015.10.13

中国で日本人がスパイ容疑で拘束された

 日本人4人が中国で拘束されている。そのうち2人については中国政府が9月30日、スパイ容疑で拘束していることを公表したが、後の2人については関係筋からの情報として報道されている。連行された場所も日時もバラバラであり、中国が発表したうち1人は北朝鮮との国境に近い丹東市で、また、もう1人は浙江省の軍事施設付近で拘束された。後の2人は北京と上海だったそうだ。
 この種の事件では珍しくないが、詳しい事実関係がよく分からない。昨年11月に施行された「反スパイ法」違反らしいが、その法律のどの条項に違反したのかは発表されていない。従来の類似の事件から類推すると、次の発表は処分が確定してからであり、その際にも詳細は明らかにされないだろう。
 反スパイ法には、刑罰が明記されておらず、一般の刑法により量刑が行なわれる。このことも日本などの法律ではありえないことである。ともかく、刑罰を受ける可能性は大きいと見るべきだろう。国外退去が比較的多いが、最も重い処罰は死刑だ。
 拘束された人たちにはたしてスパイ行為があったのか、関心が持たれるが、これに対し正確に答えるのは容易でない。スパイとは、政府、軍、企業などを対象とした外国による情報入手行為、というのが常識的な理解だろうが、実は、それだけでは不十分であり、まず、行為が合法か違法かを区別する必要がある。合法的な情報収集活動は日本も含めどの国でも行なっている。
 スパイとして問題になるのは違法な行為であり、菅官房長官が明言したように、日本政府はスパイを送っていない。これははっきりしている。では、4人の日本人はなぜ拘束されたのか、不当な逮捕でないか、などの疑問がわき出てくる。
 問題は違法と合法のはざまにある。たとえば、軍の施設の付近で散歩をするのは合法だ、何も問題ないはずだと日本人が思っていても、その時の周囲の状況、当人の背景、中国で接触した相手などいかんでは、中国政府は拘束して取り調べが必要だと判断することがありうる。
 今回北朝鮮との国境付近で拘束された人が日本を出発する前、「帰国後話を聞きたい」と頼まれていたことはありうる。日本人からすれば何ら問題ないはずであるが、中国側はその背景などを徹底的に調べるかもしれない。

 日本政府は邦人保護のため中国政府に対し説明を求め、十分な保護を求めるのは当然だが、中国側は結論が出るまで面会に応じない恐れがある。
 もちろん、中国政府の言いなりになってはならないが、日本人が違法行為をしていないという保証はない。現在拘束中の4人のことでなく、一般論であるが、この種の事件の扱いは非常に困難だ。
 1つ注意を要するのは、日本人だけが標的になっているのではないことだ。最近中国は米国人女性実業家やカナダ人も拘束している。バスや地下鉄で痴漢防止ステッカーを配る計画を立てた女性活動家5人が拘束されたこともある。こういう人たちは、大概海外に拠点があるのでスパイと見られやすい。

 中国は、国家の安全、体制の安全が脅かされることに神経をとがらせており、その表れが前述の反スパイ法であり、また、今年の7月に制定された「国家安全法」だ。
もともとは1993年の「国家安全法」1本であり、それが「反スパイ法」と新しい「国家安全法」に分かれた。前者は主として外国が企図した、あるいは使嗾した個別の脅威に備える法律であり、後者は内外を問わず、国家、体制、領土など重大利益を損なう行為を対象とするものである。
 習近平政権が国家や体制の安全にかかわる個人の行動、言論、インターネットでの発信を厳しい統制下に置くのは、格差が原因で発生するいわゆる「群体性事件(集団事件)」、少数民族による騒乱、大量殺傷事件などが相次いでおり、それらは早期に収拾しないと共産党の独裁体制を揺るがす大問題に発展する恐れがあるという考えがあるからだ。日本では想像もつかない懸念が中国の指導者、指導層にあることを頭の隅においておかなければならない。
2015.10.09

(短文)米艦は中国が埋め立てた南沙諸島から12カイリ以内に立ち入るか

 10月8日付英国紙Financial Timesは、米高官の内話として、米艦船が2週間以内に、中国が埋め立てた南沙諸島から12カイリ以内に立ち入る予定であると報じた。
A senior US official told the Financial Times that the ships would sail inside the 12-nautical mile zones that China claims as territory around some of the islands it has constructed in the Spratly chain. The official, who did not want to be named, said the manoeuvres were expected to start in the next two weeks.
(注 南沙諸島で埋め立てから滑走路建設にまで進んでいるのは、ファイアリークロス(永暑)礁、スービ(渚碧)礁およびミスチーフ(中国名・美済)礁の3岩礁である。)
 
 先般の米中首脳会談後の記者会見で、オバマ大統領が「争いのある海域で埋め立てや軍事拠点化を進めることに深刻な懸念を習近平主席に伝えた」と説明したのに対し、習近平主席は、「南シナ海は昔から中国の固有の領土であり、中国の主権だ」と、挑戦的とも聞こえる発言をしていた。オバマ大統領は強く刺激され、不快視した可能性がある(東洋経済オンライン10月3日「中国が南シナ海で強硬姿勢を貫く根本原因 どうせ米国は何もしないと高をくくっている」を参照されたい)。
 同紙によれば、中国が主張する領海、つまり、これら人工島から12カイリ以内への米艦による立ち入りは、カーター国防長官が求めてもホワイトハウスがなかなか首を縦に振らなかったが、習近平主席の訪米後ゴーサインを出したそうだ。
 米国はかねてから中国による埋め立てや滑走路建設を認めないと公言しており、その考えを単純に適用すれば、米艦が12カイリ以内に立ち入ることもありうるが、米国は実際にそうすることは自制していた。争いのエスカレーションはできるだけ避けたいからであり、米艦が本当に人工島から12カイリ以内に立ち入るか断定するのは早すぎるかもしれない。
 おりしも米国務次官補のAntony Blinkenが8日から訪中し、国務委員の楊潔篪および解放軍総參謀長の房峰輝と会談しており、米国の非常に強い考えを説明し、中国側が何らかの対応措置を取るよう迫った可能性がある。
 ともかく、国際法と周辺諸国の反対を無視し、米国の強い警告にもかかわらず挑戦的とも取れる強い姿勢で振る舞う中国に米国は強く刺激されていたことは間違いない。
 TPPの交渉が妥結した際、オバマ大統領が行なった「中国のような国に世界経済のルールを書かせることはできない。我々がルールを書き、米国製品の新たな市場を開くべきだ」との、通常の国家間では考えられないほど強い声明と言い、米国は中国に対してこれまで以上に強い態度で臨もうとしているようだ。

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