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2016.04.12

(短評)ケリー長官の被爆地訪問の印象

 G7外相会合について昨日もコメントしたが、それは「核軍縮および不拡散に関する広島宣言」、つまり、外相会合での議論の結論についてであった。

 ケリー長官は、原爆資料館や原爆ドームなどを訪問した印象として、「感極まるものだったことを個人レベルで表明したい」「驚異的」で「人間としてのすべての感受性を揺さぶられる衝撃的な展示だった」と語ったと伝えられている。メディアによって報道内容に若干の相違はあるが、感極まったこと、驚いたこと、それに極度に強い衝撃であったことなどの点ではほぼ共通している。
 各国の報道を丹念に調べていく余裕はないが、他の外相も同様だったと思われる。そして、外相たちがこのような経験をしたことが今次会合の最大の成果だ。
 
 もちろん、その衝撃から核兵器の非人道性についての確信へ、さらには廃絶に進んでもらいたいと思う。しかし、そのためには、政治的な問題も絡んでくる。そのレベルになると、各国の考えは一致していない。

 実は、今回の会合で外相たちが体験したことも他の人には共有されていない。外相たちは広島へ来る前から核兵器についての知識を持っていたが、その知識は原体験がないうえで得た知識に過ぎず、核爆発の実相を知っておれば知識もおのずと違ってきたはずだ。
 だから、外相たちが被爆体験を多少なりとも共有したことは大きな前進だったと思う。
 次はもちろん世界の指導者たちによる被爆地訪問だ。
2016.04.07

(短文)ベトナムのグエン・タン・ズン首相の解任

 4月6日、ベトナム国会はグエン・タン・ズン首相を解任した。さる1月に開催されたベトナム共産党第12回大会で決定された方針通りであった。
 ズン首相は実務能力にたけた有能な人物であるが、反対を顧みず突っ走るところがあった。
 中国との関係では領土問題をめぐって対立的になることをいとわなかった。

 しかし、ズン首相は解任されても、ベトナムが今後中国寄りになるというわけではなさそうだ。今回の人事はバランスを重視したものであり、ズンを退けつつも、米国で教育を受け、ズン首相の信頼するファン・ビン・ミン外相も、ズンの息子のグエン・タイン・ギも党大会で政治局に入れていた。

 ズン首相はTPP加盟についても一部の心配をよそに強力にすすめたが、ベトナムは予定通り批准すると見られている。
(当研究所HP2月2日の「ベトナムの新指導部」を参照願いたい。)
2016.04.04

(短文)核セキュリティ・サミットと原発へのテロ攻撃

 3月31日~4月1日、米国で開催された核セキュリティ・サミットは分かりにくいと思っている人が多いだろう。
 その理由の一つは、核のセキュリティは専門的・技術的な問題だからだ。
 もう一つの理由は、ワシントンに集まった世界の指導者は、サミットの機会に2国間、3国間の首脳会談を行うのでサミットの議題以外のことについても話し合うからだ。今回は、特に注目されたトピックだけでも、パリやブラッセルでのテロ攻撃、北朝鮮、トランプ候補の核問題発言、弾道ミサイル、南シナ海など多岐にわたっていた。

 核セキュリティ・サミットの主要議題は「核をテロから守る」ことにある。現実的には、テロ攻撃の対象となるのは、放射性物質(核物質)であり、通常の核弾頭は数百キロと重すぎてテロリストが簡単に運べるようなものでない。
 しかし、このことについても修正が必要になりつつある。核兵器の小型化が進んでいるからであり、米軍の「デービー・クロケット」という通称の小型弾頭は30キロ以下であり、これであれば運搬できる。
 もう一つの問題は、過激派組織ISのように、一つの国家にも比肩しうる規模の組織体が核兵器を狙うことがありうることだ。
 AFP、USA Today、CBSなど欧米メディアは、ブラッセル空港でのテロ事件後、ベルギー政府は原発の警備を強化し、一時従業員の退避まで命じた、と報道した。
 また、ベルギー政府が2009年行った身元調査では、パリやブラッセルでの事件に関係していた人物が、ブラッセルから約1時間の距離にあるDoea原発に潜入していたことが判明しており、関係者はISが原発を攻撃してくるのではないかと恐れているそうだ。

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