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2016.04.07

(短文)ベトナムのグエン・タン・ズン首相の解任

 4月6日、ベトナム国会はグエン・タン・ズン首相を解任した。さる1月に開催されたベトナム共産党第12回大会で決定された方針通りであった。
 ズン首相は実務能力にたけた有能な人物であるが、反対を顧みず突っ走るところがあった。
 中国との関係では領土問題をめぐって対立的になることをいとわなかった。

 しかし、ズン首相は解任されても、ベトナムが今後中国寄りになるというわけではなさそうだ。今回の人事はバランスを重視したものであり、ズンを退けつつも、米国で教育を受け、ズン首相の信頼するファン・ビン・ミン外相も、ズンの息子のグエン・タイン・ギも党大会で政治局に入れていた。

 ズン首相はTPP加盟についても一部の心配をよそに強力にすすめたが、ベトナムは予定通り批准すると見られている。
(当研究所HP2月2日の「ベトナムの新指導部」を参照願いたい。)
2016.04.04

(短文)核セキュリティ・サミットと原発へのテロ攻撃

 3月31日~4月1日、米国で開催された核セキュリティ・サミットは分かりにくいと思っている人が多いだろう。
 その理由の一つは、核のセキュリティは専門的・技術的な問題だからだ。
 もう一つの理由は、ワシントンに集まった世界の指導者は、サミットの機会に2国間、3国間の首脳会談を行うのでサミットの議題以外のことについても話し合うからだ。今回は、特に注目されたトピックだけでも、パリやブラッセルでのテロ攻撃、北朝鮮、トランプ候補の核問題発言、弾道ミサイル、南シナ海など多岐にわたっていた。

 核セキュリティ・サミットの主要議題は「核をテロから守る」ことにある。現実的には、テロ攻撃の対象となるのは、放射性物質(核物質)であり、通常の核弾頭は数百キロと重すぎてテロリストが簡単に運べるようなものでない。
 しかし、このことについても修正が必要になりつつある。核兵器の小型化が進んでいるからであり、米軍の「デービー・クロケット」という通称の小型弾頭は30キロ以下であり、これであれば運搬できる。
 もう一つの問題は、過激派組織ISのように、一つの国家にも比肩しうる規模の組織体が核兵器を狙うことがありうることだ。
 AFP、USA Today、CBSなど欧米メディアは、ブラッセル空港でのテロ事件後、ベルギー政府は原発の警備を強化し、一時従業員の退避まで命じた、と報道した。
 また、ベルギー政府が2009年行った身元調査では、パリやブラッセルでの事件に関係していた人物が、ブラッセルから約1時間の距離にあるDoea原発に潜入していたことが判明しており、関係者はISが原発を攻撃してくるのではないかと恐れているそうだ。

2016.03.25

(短評)オバマ大統領は広島を訪問するか

 オバマ大統領の広島訪問の可能性について、3月23日の時事通信は次の通り報道している。
「米国務省のゴットメラー国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)は22日、ワシントン市内で記者団と懇談し、オバマ大統領が伊勢志摩サミット(5月26~27日)に合わせて被爆地の広島を訪れる可能性について「ホワイトハウスで検討されている。推測はしない」と語った。
 ゴットメラー次官は昨年8月、ケネディ駐日大使と共に広島、長崎の式典に出席した。次官は記者団に対し「大統領は広島を訪問できれば光栄だと語っている。いつ、どのように実現するかは彼が決めること」と話した。
 一方、複数の米政府高官は取材に対し、「ケリー国務長官が4月に広島を訪問し、その反響を見るまで大統領訪問の可否を決めることはない」と述べた。米国内では原爆投下に肯定的な意見が根強く、大統領の訪問は退役軍人らの反発を招く恐れもある。」

 23日、菅官房長官はゴットメラー次官の発言に関し、「世界の指導者に被爆の実情に触れてもらうことは極めて重要だ」と記者会見で述べた。オバマ大統領は広島を訪問されるのがよい、という意味だ。この発言に全面的に賛成する。

 オバマ大統領の広島訪問の可能性と意義について、本研究所のHP2013年8月16日に「オバマ大統領は被爆地を訪問するか」を掲載した。詳しくはそちらを見ていただきたいが、要点は次の通りであった。
○米国大統領の被爆地訪問が実現すれば画期的な出来事となる。
○日本も米国もいまだに「戦後」から完全には脱却できないでいる。
○米国の大統領として被爆地を訪れることは米国内で政治問題化する危険がある。被爆地で謝罪を強いられるのではないかという猜疑心もある。しかし、そのような心配は無用となるだろう。
○米国の大統領が諸々の困難を克服して広島、長崎を訪問し、原爆死没者の霊を慰め、世界の恒久平和を祈念することにははかりしれない意義がある。「原爆の投下国としての米国とその被害を受けた国としての日本(ルース前米国大使の言葉)」という両国間の距離を縮めることにも、また、米国が「戦後」から脱却することにも資するであろうが、もっとも重要なことは、米国の大統領として、核兵器の抑止力としての意味は認めつつも、核兵器が人類に何をもたらし、どのような意味を持っているのかを、原爆がさく裂した地に立って考えてもらうことである。それは核の廃絶や拡散防止を議論する国際会議に出席するより何倍もの効果があるだろう。

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