平和外交研究所

中国

2013.12.04

「東海防空識別区」に関する中国国防部の説明

「東海防空識別区」に関して、12月3日、中国国防部のスポークスマンが発表した談話の意味を考えてみた。

防空識別区域と飛行禁止区域は別物であり、前者は、航空機が「国際法により認められている飛行の自由に影響を与えない」ことを強調している。
「東海防空識別区」を中国としてどのように管理するかについては、「通常の状況では、飛行計画の通報とレーダーの応答による識別を行なう。必要があれば、軍機をスクランブル発進させ識別(注 原文は「識別査証」)を行なう。具体的にいずれの方法を取るかは、飛行する航空機が軍用か民用か、その問題性(原文は「威嚇」)の程度および距離などの諸要素を勘案して確定する。対象の航空機が脅威でないと判断されればスクランブル発進は必要でなくなるが、必要に応じ監視は継続する。一定程度脅威であることが判明すれば、軍機を適時にスクランブル発進させることになる」。
以上が説明で強調されたことであり、内容的には当たり前のことを述べているが、当初の居丈高なトーンでないことが特徴的である。
一方、民間の航空機が飛行計画を提出することについては、それがどこの国の防空識別区域でも行なわれていることであり、飛行の自由を制限するものでないことを強調しつつ、「ある国の政府だけは、民間の航空会社に対して飛行計画を中国側に提出しないよう圧力をかけている」「中国が通過する航空機に対して飛行計画と関連の情報の提供を求めているのは飛行の安全を保証し、有害な飛行と誤解されることを回避するためである」「ある国の政府が通報しないという立場にこだわるのは無益であり、一種無責任な態度である」と述べている。これはもちろん日本政府の批判であるが、日本だけが問題であるという印象を強調していることが特徴的である。
では、日本であれ、その他の第三国であれ、その航空機が中国側に通報することなく「東海防空識別区」内を飛行した場合中国側としてどう対応するかについては、「必要に応じた措置を取る」という上記の方針以外明確でない。中国当局が民間航空機の通常の飛行であると判断すれば監視だけであろうが、もし、中国にとって危険な飛行であると誤解すれば、軍機のスクランブル発進を含め強い措置が取られる可能性がある。
以上のことは「東海防空識別区」だけに特有のことではないという中国側の主張は国際的に理解されうるものである。しかし、それが尖閣諸島の上空を含んでいることについては、日本側のみならず国際的にも認められるものでない。今回の措置が通常の国際慣行にしたがっているというのは部分的には正しいが、他国の領土の上空を含めているのは説明不可能であろうし、中国側の説明は事実その点には何らふれていない。今回の一見物分かりのよい対外説明のキーポイントはその点にある。

2013.12.03

中国の人事異議申し立て制度

中国共産党組織部は最近「12380短信通報制度(短信挙報平台)」を設けたと新華社電が12月2日、報道した。組織部は人事をつかさどる部門である。
新たに設置された制度は、文書、電話、インターネット、手紙(短信)による通報を総合するもので、規則や規律に違反した人事を通報する制度であり、それぞれの方法による通報の仕方(アドレス)も示されている。
経緯的には2004年に始められた電話による通報制度、2009年に開通したインターネット通報制度を総合・拡大した制度である。
発表によれば正しい人事を確保することが目的になっているが、日本の感覚では恐ろしい制度であり、共産党の指導というか、コントロールが行なわれるところでないと考えられない制度である。
前身の制度が実際どのように運用されてきたか知りたいが、それは叶わぬことなのであろう。

2013.12.02

カイロ宣言70周年記念中国紙報道

12月1日は、カイロ宣言発表の70周年に当たる。11月29日、本ブログに掲載した蒋介石の琉球諸島に関する多維新聞の記事もそのタイミングに掲載されたのであろう。その他にも、この機会にカイロ宣言についての論評をいくつかの新聞が掲載しているが、多維新聞と違っていずれも日本に対する一方的な批判を繰り返すものばかりである。
たとえば、12月2日付の人民日報は、日本はカイロ宣言を否定することを企み、日本国憲法の制約を取り除き、尖閣諸島の領有を固定化しようとしているなどと一方的なプロパガンダに終始している。
普段は比較的中立である香港の『明報』紙も、香港の研究者、林泉忠(国籍は英国らしい。東大で学位を取得した。琉球独立をあおっていると見る向きもある)が、「カイロ会議で中国が世界の四大強国の一つであることが確立した」「カイロ宣言は、戦後の中国の領土問題の処理に関して決定し、あるいは影響を及ぼした」「同宣言は中国の尖閣諸島に対する要求の根拠となっている」「琉球の帰属に対する異議をとなえる権利を残している」など述べたことを紹介している。
これらの報道や論評はカイロ宣言に記載されていないことを根拠とするお粗末なものであるが、多維新聞、さらには同新聞が引用した環球時報の客観的な叙述が中国の新聞としていかに特異かを示しているので、あえてこのブログに掲載することとした。後者の方が本音であろう。

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