平和外交研究所

中国

2014.04.02

中国の土地・戸籍政策

3月18日付の『大公報』が伝える『毎日経済新聞』記者の取材記事。中国経済の最大問題の一つを率直に述べている。

3月16日、国民が待ち望んでいた「国家新型都市化企画(2014~2020)」が発表された。人口の管理、土地の管理、財政金融、都市住宅などを強化する全体設計図を示すもので、全部で3万余字、31の章で構成されている。
これまで、土地の都市化が人口の都市化より早いこと、建設用地の利用が雑で効率が低いこと、都市管理のサービス水準が低いこと、大都市病などの諸問題が発生していたがこの計画はこれら諸問題の総決算である。
わが国はミドル・インカム・トラップに陥る(あるいは「陥っている」かもしれない)恐れがある。今回発表された計画は、6年の期間内に戸籍人口の都市化を現在の36%から45%に引き上げるという目標を掲げている。中国と一人当たりの所得が同等の国家での平均は60%であり、これと比べ中国は低すぎる。
著名な経済学者である北京大学の劉偉副校長は次のように語っている。
「国際的には100分の10ポイント経済成長すれば、3ポイントが投資による成長で、7ポイントが消費によるものである。しかし、中国では7ポイントが投資で、3ポイントが消費である。中国では都市と農村の収入格差が大きすぎて消費需要が増えないボトルネックになっている。内需の弱さ(疲軟)は将来の一定期間中国経済を悩まし続けるだろう。わが国はすでに中所得国になっているが、中所得国が陥るトラップ、内需不振、コスト高、市場化の遅れは、程度は同じでないが中国経済にもすべて存在し、一定の分野ではより深刻である。」
昨年、全国の土地譲渡高は4.1兆元と過去最高を記録した。今年の全人代・政治協商会議において土地財政は代表が最も関心を寄せた話題であった。一部の代表は、土地の売却による収入に頼るのは一種の麻薬依存症に似ており、全力で退治しなければならないと指摘している。
土地財政は中国の工業化、都市化の急速発展と密接に関連している。地方政府の資金源であると同時に、住宅価格高騰の原因である。本計画は、土地財政を批判し、それは土地の雑な利用を助長し、地方債を危機に陥れたと指摘している。

2014.03.31

習近平の5つの現代化

習近平は「普遍的価値」「憲法政治」「政治改革」などをいずれも拒絶する一方、昨年秋の3中全会では「国家のガバナンス(治理)の体系と能力の現代化」を唱えた。農業、工業、科学技術および国防の4つの現代化に加えて第5番目の現代化である。かつて魏京生(文革後民主化運動の先頭に立ち、鄧小平をも批判して逮捕された。仮釈放された後、天安門事件で当局の対応を批判したため再度逮捕され、人権団体や外国政府の圧力により釈放され事実上国外追放となった。現在米国などで活動を続けている)も5つの現代化を唱えていたが、それは西欧型の民主政治を目指すことであった。習近平の5つの現代化は、もちろんこれとは異なり、統治能力を高め、体制にあった系統的調整を重視している(多維新聞3月29日付)。

2014.03.29

烏坎村事件と党の反撃

烏坎村事件で村民委員会の委員として共産党支部と戦った庄烈宏は今次全国人民代表大会の選挙前、米国で政治亡命を求めた。同人を取材した香港のメディアに対し、同人は当局の報復が恐ろしいので帰国できないと語った。烏坎村では3月31日、当時やはり抗議事件に参加した2名の村民委員が襲撃に遭っている(3月27日付多维新闻)。
 烏坎村事件は2011年秋、広東省の烏坎村で起きた。共産党支部と当時の村民委員会の幹部が住民の同意をえないまま土地を開発業者に不正に売却し、村民にはごくわずかな補償金しか払われなかった。村民は何回も陳情を繰り返したが、どうしても聞き入れてもらえなかったので実力でバリケードをはり、対抗した。事件はその後広東省党委員会にまで上げられ、その時は党側が折れる形で解決した。
この事件は、中国で1年間に数万件発生しているいわゆる「群体性突発事件」の代表的な例として、また、村民側が党支部の圧力を跳ね返し、方針を変えさせた例として注目された事件であるが、この報道のような仕返しが行われているとすれば、烏坎村事件のみならず群体性突発事件についての認識を改めなければならなくなる。

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.