平和外交研究所

中国

2015.04.03

(短文)習近平主席の警護体制

 習近平主席は自らの警護体制にかなり神経をとがらせているようである。先般の全国人民代表大会(中国の議会)でも、議場での服務員による通常のサービスにも警護官が目を光らせていた(日本の新聞で報道された)。これは異常なことである。
 中国の国家主席の側近としては、中央弁公庁(内閣官房に相当)、軍事弁公室、警衛局(ボディーガード)がもっとも重要であるが、習近平は胡錦涛時代の主任を全員取り替えた。中央警衛局の曹清局長は最後の解任であった。
 一方、習近平は河南省副省長兼公安庁長の王信洪を北京市副市長と兼務の公安局長に任命した(発表は3月26日)。王信洪が河南省に赴任したのは2013年8月であり、わずか3カ月後の11月に、鄭州のナイトクラブ「皇家一号」を一斉摘発して実績を上げ、中央に抜擢された。河南省へ行く前は福建省でやはり公安関係の仕事をしていた。習近平が福建省にいたのは1990~96年であり(福州市党委員会書記)、その頃王信洪は福州市の闽侯县公安局局长、福州市公安局副局长などを務めており、習近平は当然同人のことをよく知っていたと見られている。

2015.04.02

(短文)最近の反腐敗運動

 本HPでは、最近反腐敗運動についてあまり書いていないが、この運動は引き続き盛んに行われており、とくに、本部が外国にある中国語の新聞(『多維新聞』など)や香港の新聞(『大公報』や『明報』など)ではあきれるほど報道されている。

○3月末に、中央規律検査委員会は7人の特別調査官を任命し、中央弁公庁、中央組織部、中央宣伝部など権力の中枢も調査対象とした。
○外国へ逃れた調査対象者(裸官)を中国へ連れ戻すために、米国政府に優先名簿を提出して協力を要請した。反腐敗運動のトップである王岐山が訪米する話もある。
○中国人民銀行(中国の中央銀行)の前行長の戴相龍も調査されている。同人は温家宝と近く、中国でも最大級の富豪の一人である。
○軍では海軍へ調査の手が伸びており、副司令員の杜景臣などが調査の対象となっており、呉勝利司令員も調査されることになると噂されている。陸軍では徐才厚元中央軍事委員会副主席の例にみられるように、海軍より以前から調査が進んでいた。一方、空軍はまだ手付かずであり、「羽があるので逃げやすいのか」などと揶揄されている。
○副省長クラスでは、四川省副書記の李春城、福建省副省長の徐鋼、浙江省の政治協商会議副主席の斯鑫良が調査対象になった。福建、浙江両省はかつて習近平が勤務したことがあり人脈が残っているので、徐鋼や斯鑫良の摘発は反腐敗運動に例外はないことを示す意味があると言われている。なお、1月16日付NY Times紙は習近平の反腐敗運動の対象者は選択的だという疑念を払しょくできないとする記事を掲載した(Murong Xuecun)経緯がある。
○国営企業での調査では、宝鋼集団(粗鋼生産では中国第2、世界第3)の崔健副総経理が調査対象となった。
2015.04.01

アジア・インフラ投資銀行(AIIB)-いくつかの疑問

 日本政府は事務レベルで疑問点を中国に提示し説明を求めているが、明確な回答は得られていないと報道されている。その内容は知る由もないが、素人としても疑問がある。
 
 まず、AIIBの本部は中国に置かれるそうであるが、それはいつ、どこで、どのようにして決定されたのか。中国が提案者だから本部を中国に置くのは当然というのはあまりに単純・安易な思考である。国際機関であれば、参加国は銀行の設立・運営に権利があるのは当然であり、本部の決定も一定の方式にしたがって行なわれなければならない。アイデアを出した国と本部が異なる例はいくらもある。
 少々古いが「一次産品共通基金」の本部はアムステルダムに置かれた。オランダはこの機関設立の発案者でなかったはずである。国連大学は日本にあるが、日本が発案したのではなく、アジア開発銀行(ADB)も、本部があるフィリピンは発案者でなかったのではないか。国際機関の本部を招致することは大きな意味があり、決定が行われるまでに競争となるのが常である。簡単に決まることでない。

 それとも、本部所在地の決定はまだ行われていないのか。

 中国は「創始メンバー国」として迎える期限を3月末としたが、そのことは中国が決定できるのか。どのような権限で。もし中国だけでなく、複数の国が決定したのであればどの国か。

 各国の出資比率はどうなるのか。これは国際金融機関としては決定的なことである。最大の問題点と言っても過言でない。

 それとも、中国は中国法人として新しい銀行をつくる、つまり、国際機関でなく国内機関を設立しようとしているのか。

 銀行に参加すればなぜメリットがあるか疑問であることは3月27日に書いたが、少し追加すると、参加国の企業だけがプロジェクトの請負で有利になることには普遍性の観点から問題がある。もし参加国だけがAIIBプロジェクトに入札できるというなら、それは昔の「講」のようなものではないか。

 中国がAIIBに熱心なのはよく分かるが、その一つの理由は「海上のシルクロード」建設にAIIBが役立つからであろう。しかし、他のAIIB参加国は必ずしもそのような目的を共有しないはずである。では、そのような諸国の利益をいかに守れるか。なお「海上のシルクロード」については2月16、18、19,23日に書いているので参照願いたい。

 IMF、世界銀行、ADBなど既存の国際機関の在り方に不満があるのは分からないでもないが、基本中の基本が分からないのに参加を決定する国にも、各国が次々に参加表明することを「雪崩」とか、「ドミノ現象」と表現するメディアの姿勢にも違和感を覚える。

 日本が参加しないのは米国が参加しないからだとよく聞く。それを否定はしないが、基本に立ち返って見つめ、分析を試みることが必要でないか。

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