平和外交研究所

中国

2015.12.24

習近平政権の2015年

 中国では「中央経済工作会議」が毎年末に開かれる。今年は数日延期された後12月18日になってようやく開催され、21日に終了した。
 中国の経済成長が鈍化傾向にあるだけに何が話し合われたか知りたいところだが、立ち入った内容は公表されていない。2016年のGDP成長率目標については、「中高速の成長を維持する」ということだけであった。どうも経済面ではあまりぱっとしない内容だったらしい

 一方、この会議は今年1年間の反省会を兼ねていた。米国に本拠がある多維新聞(12月19日)などの報道によれば、主要点は次のようなことだった。

 習近平主席はすべての会議参加者に対し、2015年中に犯した失敗について「全面的かつ深刻に」反省することを求めた。
 また、天津の爆発事故、株式市場の大暴落、外国訪問の不手際(原文は「安排失当」 興味ある言及だが何のことか不明)、米国による台湾への武器売却、台湾の総統選挙戦などについての考えを述べ、さらに、今後の通貨政策、国有企業改革、軍の改革、人事、全国人民代表大会・政治協商会議(後者には選挙によらない非共産党の代表が含まれる)、G20などについても語った。

 「中央経済工作会議」の開催前に、最高法院(我が国の最高裁判所)と最高検察庁が連名で「刑事事件に関する解釈」を発表した。この「解釈」は、国家機関に従事している者が他人の名義を使って企業の株式を取得し、また、株主であることを隠して犯罪行為をする例が増えていることを指摘している。

 習近平はこの問題を重視し、2016年2月以降、裁判所と全国4000の銀行をインターネットで結び、強制執行を受ける者の銀行口座、カード、預金その他の金融資産に対し、他の金融機関が調査、凍結、差し引き(扣划)を直接できるようにした。

注 共産党の一党独裁だからこのようなことができるのだろうが、新たな混乱を招くのではないか。金融機関が常に正しいとは限らない。この制度を悪用することもありうる。強力な反腐敗対策になるか疑問だ。

2015.12.15

(短文)中国軍の改革

 中国では軍、官僚と経済力が現体制を支える主要な支柱だ(順不同)。習近平主席が反腐敗運動を広く展開したのは前二者をいったんふるいにかけて浄化した上で活用するためだろう。
 軍について、習近平は何を問題と認識し、どのように改革しようとしているのか。11月24~26日、中央軍事委員会改革工作会議が開催された。ここから垣間見られたことは何か。
 一つは軍の編成替えだ。四大総部(総参謀部、総政治部、総装備部、総後勤部)のうち総参謀部を強化して米国式の統合機能を持たせ、他の三つは格下げする。
 現在の7大軍区を東、西、南、北の4大軍区に再編する。
 陸、海、空三軍の「指揮司令部」を設置する。
 以上の目的は軍の統一性と機動性を高めることと思われる。

 また、中央軍事委員会に新しく「規律検査委員会」を設置するとともに、中央軍事委員会内の「審計署(我が国の会計検査院にあたる)」を再編した。軍内の反腐敗運動を今後も重要事項として継続するためだろう。
 12月3日付の台湾紙『中国時報』は習近平が「既得権益に対して挑戦する勇気を持っている」と論評している。
 中央軍事委員会に、さらに「政法委員会」を新設したのも、党中央の軍に対するコントロールを強化することが目的と見られる。

 新体制において具体的な人事がどうなるか注目されているのは当然だ。軍各部のトップの多くが来年の全人代(国会に相当)で定年退職することも重なっている。
 劉少奇の息子の劉源(上将。大将のこと)が規律検査委員会の責任者になると伝えられている。同人は軍内の反腐敗運動ですでに活動が注目されていた。習近平も劉源もいわゆる「紅二代(革命第一世代の子)」で、年齢は習近平が2歳若い(1953年生まれ)だけで、ともに父親が文化革命で激しい迫害にあった。気心を知りあった仲なのだろう。


 軍の改革は2020年に完成する予定だ。

2015.12.12

(短文)米国は馬英九総統にアドバイスした

 12日付の香港紙『大公報』は、馬英九総統が同日南沙諸島の「太平島」を訪問する予定であったが延期したこと、代わりに内政部長が行くことを伝えるとともに、米国が馬英九総統に対して南沙諸島で騒がないよう(不要出現過大動作)に勧めたからだとの論評をしている。米国がそのような話をしたのは当然だ。

この背景については、本HP 12月7日の「(短文)南シナ海に対する台湾の古い政策は見直すべきだ」を参照願いたい。

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