平和外交研究所

中国

2015.12.15

(短文)中国軍の改革

 中国では軍、官僚と経済力が現体制を支える主要な支柱だ(順不同)。習近平主席が反腐敗運動を広く展開したのは前二者をいったんふるいにかけて浄化した上で活用するためだろう。
 軍について、習近平は何を問題と認識し、どのように改革しようとしているのか。11月24~26日、中央軍事委員会改革工作会議が開催された。ここから垣間見られたことは何か。
 一つは軍の編成替えだ。四大総部(総参謀部、総政治部、総装備部、総後勤部)のうち総参謀部を強化して米国式の統合機能を持たせ、他の三つは格下げする。
 現在の7大軍区を東、西、南、北の4大軍区に再編する。
 陸、海、空三軍の「指揮司令部」を設置する。
 以上の目的は軍の統一性と機動性を高めることと思われる。

 また、中央軍事委員会に新しく「規律検査委員会」を設置するとともに、中央軍事委員会内の「審計署(我が国の会計検査院にあたる)」を再編した。軍内の反腐敗運動を今後も重要事項として継続するためだろう。
 12月3日付の台湾紙『中国時報』は習近平が「既得権益に対して挑戦する勇気を持っている」と論評している。
 中央軍事委員会に、さらに「政法委員会」を新設したのも、党中央の軍に対するコントロールを強化することが目的と見られる。

 新体制において具体的な人事がどうなるか注目されているのは当然だ。軍各部のトップの多くが来年の全人代(国会に相当)で定年退職することも重なっている。
 劉少奇の息子の劉源(上将。大将のこと)が規律検査委員会の責任者になると伝えられている。同人は軍内の反腐敗運動ですでに活動が注目されていた。習近平も劉源もいわゆる「紅二代(革命第一世代の子)」で、年齢は習近平が2歳若い(1953年生まれ)だけで、ともに父親が文化革命で激しい迫害にあった。気心を知りあった仲なのだろう。


 軍の改革は2020年に完成する予定だ。

2015.12.12

(短文)米国は馬英九総統にアドバイスした

 12日付の香港紙『大公報』は、馬英九総統が同日南沙諸島の「太平島」を訪問する予定であったが延期したこと、代わりに内政部長が行くことを伝えるとともに、米国が馬英九総統に対して南沙諸島で騒がないよう(不要出現過大動作)に勧めたからだとの論評をしている。米国がそのような話をしたのは当然だ。

この背景については、本HP 12月7日の「(短文)南シナ海に対する台湾の古い政策は見直すべきだ」を参照願いたい。
2015.12.07

(短文)南シナ海に対する台湾の古い政策は見直すべきだ

 以下に紹介するのは台湾の聯合報(12月6日付)の記事であり、台湾の政府は、南シナ海全域に領有権を主張する昔からの「十一段線」政策を見直すべきではないかと示唆している。同新聞は保守系とみられることが多いが、国民党にも民進党にも批判的な記事を掲載することがある。これもその一つだ。
 なお、台湾の南シナ海に対する政策については東洋経済オンラインに寄稿した(12月1日)「南沙を巡る争いは、台湾存続の命取りになる」を参照願いたい。

 「台湾初の南シナ海の詳細な地図が完成した。内政部によれば、海図の電子版作製を目指してさらに作業を継続するそうだ。
 馬英九総統は12月12日に太平島を訪問する。新地図の公表とあいまって中華民国の南シナ海に対する主権を誇示する狙いがあるのだろう。
 今年「南疆史料展(南方地方史料展)」が開催され、中華民國政府が1947年に発表した地図も展示された。この地図では150あまりの島と岩礁が中華民国の領域と示されていたが、現在実効支配しているのは2つの島と1つの岩礁だけだ。
 2000年に政権が民進党に交代する前から、国民党政府は南シナ海に対する政策の調整を開始し、守備軍であった海軍陸戦隊を海洋警備や生態研究に切り替えてきた。
 陳水扁政権は太平島に滑走路と桟橋を建設する一方、南シナ海の調査を開始した。
 
 台湾がこれまで一貫して主張してきたのは「南シナ海の諸島は中国固有の領域であり、その主権が及ぶ」であり、いわゆる「十一段線」で囲まれる海域を台湾の領域としてきた。
 しかし、そのような対外姿勢は次第に意義を失いつつある。現在進めている調査が完成すれば、これまで主張してきた大陸棚に基づく権利は止揚(揚棄)すべきであり、そうすることによってはじめて形式に実質が伴うことになる。
 中国が南シナ海に対する主権を主張したのを機会に、台湾が同じく南シナ海への主権を主張すれば近隣諸国との間で緊張関係を生み、はなはだしい場合、台湾が中国と結託して南シナ海を掌握しようとしていると疑われかねない。」

(注)「大陸棚に基づく権利」とは南シナ海全域に対する権利のことであり、「形式に実質が伴う」とは「2島と1岩礁しか実行支配していないという現実にあった主張をすべきだ」ということであろう。

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