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2013.11.05

朱建栄に関する大公報の記事

中国へ行ったまま数ヶ月間消息を絶っている朱建栄教授に関して、11月5日の『大公網』(香港の中国系新聞『大公報』のネット版)は、前日の「共同通信社電」を引用した「BBC中国網」をさらに引用する形で、近日中に同教授が囚われの身から釈放される可能性があると報道している。
中国で起こっていることであり、中国政府の行動に関する出来事であるにもかかわらず、自らの取材結果に基づき報道するのでなく、共同通信、さらにはBBCによりながら伝えていること自体、他の国ではまずありえないが、『大公報』としては、この問題があまりにもデリケートなので2重の保険をかけざるをえなかったのであろう。中国ウォッチャーの間では常識である。
さらに、なぜ朱教授が拘束されたのかについて、共同電では、ある中国人が、朱教授は学術研究目的で中国に来て調査活動を行なっており、中国軍の関係者に面会し、軍事情報に関わることを聞こうとしたので当局から情報収集について疑いをかけられたのであろうと語ったことを報道しているが、これとは異なる可能性があるとして、遠藤誉東京福祉大学教授(幼少時に中国から引き揚げてきた。中国に関する著書多数)の次の談話(これも共同電であり、後に雑誌『Will』に掲載された)を紹介している。
「朱教授が拘束されたのはスパイ行為を疑われたためではない。容疑は50年間公表が禁止されている公文書を社会科学院の研究者から入手し、定期的に送ってもらっている『参考消息』と一緒に郵送し、公開したことである」。
大公報は以上の記事を次のように締めくくっている。これは大公報自身の言葉であり、朱教授に対し、慎重に対処するよう求めた警告かもしれない。
「朱教授が日本へ戻ると、事件の真相について各方面から説明を求められるだろうが、朱教授自身にとっても何が起こったのか謎かもしれない。中国および中国人に対する不信に満ちている日本で、この謎のため、朱は日本での工作と生活環境について永遠に疑いをかけられるかもしれない。」

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2013.11.04

CTBT講演会

日本国際問題研究所・軍縮・不拡散促進センターが、日本軍縮学会との共催で、2013年8月に包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会事務局長に就任したラッシーナ・ゼルボ(Lassina Zerbo)氏を招いて講演会を開催する。
CTBTは未だ発効の目途が立っていないが、CTBT機関準備委員会事務局が中心になって国際的な核実験検証体制の確立に向け着実に作業を進めており、本年2月に北朝鮮が宣言した核実験に際しても、その探知能力を再確認した。また、近年CTBTの国際的監視網を災害対策等人類共通の利益のため、科学的研究等に役立てようとの動きも出てきている。

講演会の開催要領は次のとおりである。
1. 日 時: 2013年11月19日(火) 16時00分から17時30分
2.場 所: 日本国際問題研究所大会議室
(地図 http://www.jiia.or.jp/brief/j-map.php)
〒100-0013 千代田区霞が関3-8-1 虎の門三井ビルディング3階
3. 報告および議題
ラッシーナ・ゼルボ氏 (Dr. Lassina Zerbo)
包括的核実験禁止条約(CTBT)機関準備委員会事務局長
「包括的核実験禁止条約(CTBT)の役割と将来の展望」(仮題)
4.司 会
浅田 正彦
日本軍縮学会会長/京都大学教授/軍縮・不拡散促進センター客員研究員
5.言 語:英語
6.申し込み方法
参加は無料であるが、2013年11月18日(月)17:00 までに次の宛先へ事前登録が必要:disarmament@cpdnp.jp
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2013.11.02

中国における人物の再評価

8月に中央政法委員会(共産党の各部と同等で、司法、公安、検察を管理する強大な機関)が冤罪事件の取り扱いについて「意見」を公布して以来、再審査に関する調査が頻繁に行われている。また、過去の誤った裁判を正すのみならず、新たな過審を防止する目的も兼ねており、現在進められていることは行政の性格も帯びている。
日本でも、冤罪であったことが裁判確定後に判明し、再審査になることが時折あるが、それに至る過程は中国と全く違っている。日本では個別のケースについて再審査が行われるが、中国では、再審査は司法院の決定した方針にしたがって行われる。司法院の方針が前提にあるのである。日本のように個別の案件についての判断で再審査が行われる場合もあろうが、2013年夏以降の見直しは司法院の方針にしたがって行われている。
さらに日本と違うのは、中国では司法が共産党の指導下にあり、今回の大規模見直し方針も党の認可を受けていることである。認可どころでなく、そもそも党の方針が先にあったかもしれない。現在の大規模な取り組みは中国の司法史上まれに見る出来事であると多維新聞などが言っているが、再審査が必要な案件が最近多くなったのでなく、党と司法が打ち出した方針だから大規模に行われているのである。
さらに、見直しは刑事事件に限られず、政治犯についても行われており、中国の現代史に登場する人物についても再評価が進められている。こちらの方は、三中全会と言う共産党の重要会議が開かれるので、そこで過去の過ちが正されることを期待しての動きであり、当然政治的な意味合いがある。
歴史的人物の再評価は毛沢東との関係で行なわれる、つまり、毛沢東の考えに異議を唱えたことが正当であったかという形で行われることが多い。40年近く前にこの世を去った毛沢東の扱いが政治的に今なおホットな問題なのである。問題を起こした薄熙来を支持する人たちが少なくないことが話題になったが、彼らの多くは毛沢東路線の信奉者である。
再評価の対象としてここ数ヵ月間に議論の俎上に上った人物は、大臣クラス以上の大物だけでも胡耀邦、趙紫陽、彭徳懐、薄一波、高崗などと多彩であり、高崗などは1950年代前半に失脚した人物である。また、必ずしも復権ではないが、華国鋒や林彪についても部分的には再評価されている。多維新聞が最近、歴史物を連日のように掲載しているのもこのような状況を反映している。
天安門事件で武力行使に反対した第38軍軍長の徐勤先将军は免職処分になっていたが、この人物が今どこにいるかということを題材にした記事が掲載された(多維新聞)ので、名誉回復が近いのではないかとも言われている。

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