平和外交研究所

ブログ

ブログ記事一覧

2013.11.09

韓国軍は強いか

韓国の国会で11月5日、国防省の国防情報本部長が、南北のどちらが勝つかと問われ「米韓同盟を背に戦えばわれわれが圧勝するが、米軍を除き南北が一対一でやれば負ける」と明言し、韓国で騒ぎになっているそうである(共同電11月8日)。
何を根拠にそのような発言をしたのであろうか。軍事には素人であるが、いくつか考えさせられる。
まず、「米韓同盟を背に戦えば韓国側が圧勝する」と情報本部長が言っている。そんなことは当たり前のことであり、そもそも言及すること自体がおかしいが、それは本論でないので大した問題でない。
南北が一対一でやればどうかという点が本論であるが、「米軍を除き」という想定はそもそもありうるのか。南北の装備は核兵器の有無で大きく違っており、かりに米軍のことを考えなければ、核兵器を持っている北朝鮮と持っていない韓国の比較になるが、その場合軍事力としての優劣は誰の目にも明らかであり、情報本部長はごく当たり前のことを言ったにすぎず、問題になりえないはずである。韓国の通常兵器の装備は最新のものでかなり強力であり、北朝鮮より優れているだろうが、それでも核兵器の軍事的優位性は変わらない。
つまり、核兵器を北朝鮮が保有している限り、南北の軍事力を一対一で比較しても意味がなく、したがってまた、米軍との協力がなければという仮定も意味がないのである。
もう一つの問題点は韓国軍兵士の能力と意志である。かつてベトナム戦争のころ、韓国軍は米側に兵力を派遣していた国のなかでもっとも戦闘力に優れ、かのベトナム軍も恐れていた。しかし、それは半世紀近く以前のことであり、現在の韓国軍兵士に当時の勇猛さが残っているか、疑問視されていても不思議でない。著しい経済成長をなしとげ、豊かな生活に慣れている韓国人は、今やあの手この手で徴兵義務から逃れようとしているらしい。それはどの国でもありうることで、ごく自然なことである。
しかるに、韓国が北朝鮮から軍事的脅威を受けていることはそう変化していない。北朝鮮は相変わらず敵対的な姿勢を韓国に示している。北朝鮮は、韓国側の挑発が先だとよく言っているが、どちらが先にことを始めたかはともかく、南北が敵対することになるのは現在も依然とさほど変わらず継続している。
そうであるにもかかわらず、韓国人、とくに若者の考えがかなり違ってきているのであれば、情報本部長の発言は必ずしも非難されることではない。
韓国内で騒ぎとなったのは、装備の問題でもなく、また、兵士の能力でもなく、軍として北朝鮮と戦う決意が発言から感じられなかったのが本当の原因であったかもしれない。軍人には客観的に情勢を分析することも、かりに状況が不利であっても戦って勝つという気構えを示すことも両方要求されているのであろうか。

(さらに…)
2013.11.08

中国の海外逃避者、失踪者の数

幹部の失踪、海外逃避、自殺などの数字に関し、11月2日付の多維新聞は、中央紀律検査委員会の統計数字が中国内のインターネットに出回っていると報道している。真偽のほどは確かではなく、また、説明が必要な数字もあるが、今後の中国ウォッチのために多維新聞の報道のまま記録として残しておこう。

「最近、統計資料がネットに出回っている。失踪者6528人、海外逃避者8371人、自殺者1252人である。
これに先立って、「央行網」サイトは、90年代中期以来、党政の幹部、公安、司法の幹部、国営企業の幹部などのうち、海外へ逃避した者、失踪者は1万6千人から1万8千人にのぼり、持ち逃げした資金は8千億人民元に上ると報道していた。
「裸官(海外に家族を先に出し、後でそこへ逃避する者)」による持ち逃げについては4千億元という数字もある。また、その人数は1995年から2005年の間で118万人に上ると言われている。
海外へ逃避する者が再び増え始めたのは現政権が腐敗撲滅に力を入れているからであろう。中国民航の消息筋によれば、2012年、北京空港から出国した逃避者は354人であった。」

以上が多維新聞の報道であるが、海外逃避が118万人に上ることは他の文献でもよく引用される(『21世紀の中国 政治・社会篇』203頁など)。

(さらに…)
2013.11.07

無人機による民間人犠牲者に関するパキスタン政府の発表

無人機の問題については、その非人道性(多数の市民が犠牲になりやすいことなど)のゆえに規制を加えなければならないという国際世論が高まりつつあるかにも見えたが、ちょっと冷水がかけられる格好になった。
2007年から2011年の間、パキスタン政府は米国から無人機攻撃に関して時折ブリーフィングを受け、しかもそれを了承していたという趣旨の記事を10月24日付のワシントンポスト紙が掲載したのである。
これが事実ならば大問題であり、同紙の記者は翌日、当時の首相であったギラニ氏に確かめたところ、同氏はパキスタン政府が無人機攻撃に同意していたことはきっぱりと否定しながらも、関係者同士の間でそのようなことが起こっていた可能性までは否定しなかったそうである。
パキスタン政府はさらに、2008年以来の米無人機による攻撃により死亡したのは全体の内3%であったと発表した。これまでNGOなどから発表されてきた推計数字よりはるかに低い数字である。この発表はパキスタン国防省が議会上院の質問に対して書面で回答した中に記されたもので、2008年以来これまで317回の攻撃によって2,160人のイスラム武装兵士が殺害された。民間人の死亡は67人で、その内訳は、2008年21人、2009年9人、2010年2人、2011年35人だった。2012年は民間人死亡者はなく、2013年も今のところ死亡者はいないとされている(30日付同紙)。
パキスタン政府の発表に批判の声が上がっており、また、国連の調査を担当したエマーソン特別報告者はパキスタン政府に数字の違いについて説明を求めたいと述べたそうである。

(さらに…)

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.