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2014.04.11
かつて米中間では友好的な話し合いができたが、今は率直な歯話し合いをしている。9日に習近平がヘーゲルと会った際機微な問題は話さなかったが、中央軍事委員会の范長龍副主席が前日あった際には、ヘーゲル長官に対し面と向かって、米側は中国側の神経を逆なでし、「中国の人民は不満である」と批判した。世論は、中国軍が初めて東シナ海および南シナ海の争いの矛先を米国に向けたと驚いた。
しかし、だれもが知っているように、東シナ海と南シナ海の問題解決のカギを握っているのは米国であり、中国は、米国があれこれと介入してくることに不満であり、中米両国は東シナ海および南シナ海の問題について争ってきた。キャンベル国務次官補は昨年6月、カリフォルニアでのオバマ・習近平会談において習近平が日本を批判するのをオバマが差し止めたことを明らかにしたことがあった。したがって、今回の范長龍によるヘーゲル批判については、内容でなく、中国側がヘーゲルにかみついたこと(狼話)を大々的に公表したことが新しい点であった。
習近平は「中国の夢」を実現しようとしており、世界の大国となることが目標であるが、まずは地域の大国となることを目指している。しかるに、米国はアジア太平洋地域においてあれこれと介入し、中国の利益をかなり損なっている。
習近平は政権成立以来、大胆に脱米国化を進め、米国でなく周辺諸国との関係調整を外交の中心に据えてきた。国際政治においては、米国に対し、ノーと言い、中国流で行動している(展現中国方案)。経済においては、人民元の国際化を進め、IMFと世界銀行の投票権拡大に努めている。現在軍事面で強硬な姿勢を取っているのは、中国軍が脱米国化の大方針と自己の役割定義を緻密に求めることを調和させる(配合)ためである。
(さらに…)
ヘーゲル長官の訪中
ヘーゲル米国防長官の訪中に関し、4月10日付の『多維新聞』は次のように論評している。かつて米中間では友好的な話し合いができたが、今は率直な歯話し合いをしている。9日に習近平がヘーゲルと会った際機微な問題は話さなかったが、中央軍事委員会の范長龍副主席が前日あった際には、ヘーゲル長官に対し面と向かって、米側は中国側の神経を逆なでし、「中国の人民は不満である」と批判した。世論は、中国軍が初めて東シナ海および南シナ海の争いの矛先を米国に向けたと驚いた。
しかし、だれもが知っているように、東シナ海と南シナ海の問題解決のカギを握っているのは米国であり、中国は、米国があれこれと介入してくることに不満であり、中米両国は東シナ海および南シナ海の問題について争ってきた。キャンベル国務次官補は昨年6月、カリフォルニアでのオバマ・習近平会談において習近平が日本を批判するのをオバマが差し止めたことを明らかにしたことがあった。したがって、今回の范長龍によるヘーゲル批判については、内容でなく、中国側がヘーゲルにかみついたこと(狼話)を大々的に公表したことが新しい点であった。
習近平は「中国の夢」を実現しようとしており、世界の大国となることが目標であるが、まずは地域の大国となることを目指している。しかるに、米国はアジア太平洋地域においてあれこれと介入し、中国の利益をかなり損なっている。
習近平は政権成立以来、大胆に脱米国化を進め、米国でなく周辺諸国との関係調整を外交の中心に据えてきた。国際政治においては、米国に対し、ノーと言い、中国流で行動している(展現中国方案)。経済においては、人民元の国際化を進め、IMFと世界銀行の投票権拡大に努めている。現在軍事面で強硬な姿勢を取っているのは、中国軍が脱米国化の大方針と自己の役割定義を緻密に求めることを調和させる(配合)ためである。
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2014.04.10
○94年11月、アフリカ・ザイール(現コンゴ民主共和国)。神本光伸氏は、PKO協力法に基づいてルワンダの難民支援のために派遣された陸上自衛隊員約260人を率いる隊長だった。
「日本の医療NGOが難民キャンプで物資を強奪され、動けなくなっているそうです」。部下の報告を聞いた神本氏は「ただちに救出を。小銃、鉄帽を忘れるな」と指示。宿営地から約30キロ離れた難民キャンプに隊員約20人を派遣し、NGOのメンバーを保護した。
ところが、神本氏の指示は波紋を呼んだ。報道陣から「邦人の救出は(派遣部隊に認められた)業務の実施計画に入っていないのでは」と指摘された。部隊の活動は同法によって事前に定められている。武器持参での邦人救出とみなされれば、神本氏の判断は違法と判断される恐れもあった。
「やり過ぎたのかもしれない。俺の自衛官生活もこれで終わりか」。意気消沈していた時、東京から「官房長官が実施計画の中にある輸送業務だったと発表した」との連絡が届いた。政府の判断でとがめられることはなかったが、神本氏には今も釈然としない思いが残る。「自衛官がいるのに、日本人を助けないという選択肢はなかった」。
○2004年2月、イラク南部サマワ。イラク特別措置法に基づき、派遣された陸自の先遣隊長を務めた佐藤正久参院議員も「駆けつけ警護」の問題で悩んだ。
サマワの中心部にも迫撃砲が撃ち込まれるなど、治安悪化が懸念されていた。日本の外務省職員や報道陣も現地にいたが、隊員と一緒にいる場合を除き、彼らが危険にさらされても武器で救援はできない。佐藤氏らは「情報収集」の名目でホテルを巡回し、日本人の安全確保に気を配った。
佐藤氏はこの経験を踏まえて語る。「日本人だけでなく、自衛隊の近くにいる国際機関職員ら非武装の人を助けなくてもいいのか。他国の軍隊の警護より文民の安全確保がまずポイントになる。憲法論の中で、自衛隊の活動にどこで線を引けるかという議論を、冷静にしていくべきだ」。
この2つの例は、日本の制度が国際社会のニーズに適合していないことを示している。各国から見れば、装備も訓練も優れた日本の部隊が日本の法制上の理由で、部隊の近く、あるいは部隊の中にいる日本人は助けるが、そうでない限りは助けないというのは到底理解されない。日本のPKO部隊にこのような限界があると主張することは、具体的には次のような意味がある。
○日本人は助けるが、国際機関職員やNGOで多国籍人は助けない。
○にもかかわらず、何らかの理由で日本の部隊が日本人を助けられない場合、他の国の部隊に救援を要請する。
このようなことは国際的にあまりにも身勝手である。日本が日本人を助けるが外国人を助けないのは、一つ間違えば、日本の武器使用が日本の狭い目的達成のため乱用されるのを一切排除するためだと言っても、それは日本が自らを抑制すればよいことであると映るであろう。そもそも、PKOは国連の決議できめられた厳格な条件、制限の下で各国が協力している場であり、その場で各国がそれぞれの制度や方針を持ち出してそれに触れることはしないということになるとPKOの円滑な業務に支障が生じる。もし、各国においてその制度や方針がPKO決議に応えるのに適していないのであれば、それをあらためるべきであるというのが国際的な常識である。
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PKOと武力行使②
しかし、PKO協力法を改正し、武器を使用できる場合をある程度拡大しても、現地でのニーズにこたえるにはまだ不十分であることが指摘されている。4月9日付『朝日新聞』には次のような例が紹介されている。○94年11月、アフリカ・ザイール(現コンゴ民主共和国)。神本光伸氏は、PKO協力法に基づいてルワンダの難民支援のために派遣された陸上自衛隊員約260人を率いる隊長だった。
「日本の医療NGOが難民キャンプで物資を強奪され、動けなくなっているそうです」。部下の報告を聞いた神本氏は「ただちに救出を。小銃、鉄帽を忘れるな」と指示。宿営地から約30キロ離れた難民キャンプに隊員約20人を派遣し、NGOのメンバーを保護した。
ところが、神本氏の指示は波紋を呼んだ。報道陣から「邦人の救出は(派遣部隊に認められた)業務の実施計画に入っていないのでは」と指摘された。部隊の活動は同法によって事前に定められている。武器持参での邦人救出とみなされれば、神本氏の判断は違法と判断される恐れもあった。
「やり過ぎたのかもしれない。俺の自衛官生活もこれで終わりか」。意気消沈していた時、東京から「官房長官が実施計画の中にある輸送業務だったと発表した」との連絡が届いた。政府の判断でとがめられることはなかったが、神本氏には今も釈然としない思いが残る。「自衛官がいるのに、日本人を助けないという選択肢はなかった」。
○2004年2月、イラク南部サマワ。イラク特別措置法に基づき、派遣された陸自の先遣隊長を務めた佐藤正久参院議員も「駆けつけ警護」の問題で悩んだ。
サマワの中心部にも迫撃砲が撃ち込まれるなど、治安悪化が懸念されていた。日本の外務省職員や報道陣も現地にいたが、隊員と一緒にいる場合を除き、彼らが危険にさらされても武器で救援はできない。佐藤氏らは「情報収集」の名目でホテルを巡回し、日本人の安全確保に気を配った。
佐藤氏はこの経験を踏まえて語る。「日本人だけでなく、自衛隊の近くにいる国際機関職員ら非武装の人を助けなくてもいいのか。他国の軍隊の警護より文民の安全確保がまずポイントになる。憲法論の中で、自衛隊の活動にどこで線を引けるかという議論を、冷静にしていくべきだ」。
この2つの例は、日本の制度が国際社会のニーズに適合していないことを示している。各国から見れば、装備も訓練も優れた日本の部隊が日本の法制上の理由で、部隊の近く、あるいは部隊の中にいる日本人は助けるが、そうでない限りは助けないというのは到底理解されない。日本のPKO部隊にこのような限界があると主張することは、具体的には次のような意味がある。
○日本人は助けるが、国際機関職員やNGOで多国籍人は助けない。
○にもかかわらず、何らかの理由で日本の部隊が日本人を助けられない場合、他の国の部隊に救援を要請する。
このようなことは国際的にあまりにも身勝手である。日本が日本人を助けるが外国人を助けないのは、一つ間違えば、日本の武器使用が日本の狭い目的達成のため乱用されるのを一切排除するためだと言っても、それは日本が自らを抑制すればよいことであると映るであろう。そもそも、PKOは国連の決議できめられた厳格な条件、制限の下で各国が協力している場であり、その場で各国がそれぞれの制度や方針を持ち出してそれに触れることはしないということになるとPKOの円滑な業務に支障が生じる。もし、各国においてその制度や方針がPKO決議に応えるのに適していないのであれば、それをあらためるべきであるというのが国際的な常識である。
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2014.04.09
国連のPKO活動に参加している自衛隊による武器の使用については、制約があると内閣法制局によって解釈されており、「隊員の生命などを防護する場合(いわゆるA型)」は認められるが、「任務の遂行を実力で妨害する企てに対する抵抗の場合(B型)」は「状況によっては武力行使にあたる恐れがある」という理由で認められていない。
国連のPKO活動に対する日本の参加については長い歴史があり、1992年のいわゆるPKO協力法の成立は、日本のPKO参加を可能にした一つの大きな節目であった。しかし、日本政府はこの法律の施行段階になってもなお慎重であり、日本の参加にあたっての基本方針(いわゆるPKO参加5原則)を定め、その第5項で、「武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること」、つまり法制局の解する、A型に限られることを確認していた。
もう一つの自制は、PKOに参加しても輸送や道路工事のように戦闘行為とは距離があることはできても、停戦監視、緩衝地帯の巡回、武器回収などの業務(PKO活動の本体業務と観念された)は武器使用に制限がかかっている限り参加は困難であるとみなした。
武器使用の制限と本体業務は密接な関係があり、かりに武器使用に制限がなければ、本体業務への参加は当然のこととなり、議論されることもなかったであろう。
2001年12月、PKO協力法の一部が改正された。
○いわゆるPKF(平和維持隊)本体業務の凍結解除
1992年のPKO協力法制定以来、我が国は各種の協力を実施し、特に自衛隊の部隊等の派遣による協力については、同法施行後9年間において6回行い、着実に実績と経験を積み上げてきたことを踏まえ、また、我が国が国連を中心とした国際平和のための努力に積極的に貢献することについて内外で期待が高まってきていることにかんがみ、いわゆる本体業務の凍結を解除することとした。
○武器の使用による防衛対象の拡大
国際平和協力業務において自衛隊の部隊は幅広い場面において他国のPKO要員や国連職員、NGOと同一の場所で活動することが多く、また、平和維持隊に参加する各国の部隊が同一の場所で活動することは少なくない。そこで、国際平和協力業務に従事する自衛官等は、他国の隊員であっても日本隊と同じ現場で職務を行うに伴い日本隊の「管理の下に入った者」については、その生命または身体の防衛のために武器を使用できることとした。
○自衛隊法第95条(武器等防護のための武器の使用)の適用除外の解除
これまでの自衛隊の部隊等の派遣の経験を踏まえると、派遣先国において自衛隊法第95条を適用したとしても、事態を混乱させることはないと考えられる一方、武器等の破壊・奪取を看過することにより、隊員の緊急事態への対応能力の低下や治安の悪化につながることも想定されることが認識されるようになった。そこで、派遣先国で国際平和協力業務に従事する自衛官について同条の適用除外規定を削除し、自衛隊の武器等を防護するために武器を使用できることとした。
この改正により武器を使用できる場合はかなり広がり、また、PKOらしい業務を行なえるようになったが、これは迄建前だけのことであり、現実にはこの程度の武器使用ではまだ不十分であるという考えも強く、文民や他国部隊の警護等といった他国部隊であれば国連PKOにおいて当然実施できることすらできない状況にある。外務省は、「現在の国際社会においては,どの国も自国のみで自らの平和と安全を維持することはできない。日本は,平和で安定した国際的環境が確保されることによって自国にも確かな安全と繁栄がもたらされることを改めて認識した上で,国際の平和と安定に責任ある一員として,積極的に国連PKOを通じて世界の平和と安定のために貢献していくための具体的な方策を今後さらに議論していく」という考えである(外務省「わかる!国際情勢 国連PKOを通じた日本の貢献の歩み」)。
(さらに…)
PKOと武力行使①
「集団的自衛権とPKO」について論点の整理と点検を数回にわたって行う。国連のPKO活動に参加している自衛隊による武器の使用については、制約があると内閣法制局によって解釈されており、「隊員の生命などを防護する場合(いわゆるA型)」は認められるが、「任務の遂行を実力で妨害する企てに対する抵抗の場合(B型)」は「状況によっては武力行使にあたる恐れがある」という理由で認められていない。
国連のPKO活動に対する日本の参加については長い歴史があり、1992年のいわゆるPKO協力法の成立は、日本のPKO参加を可能にした一つの大きな節目であった。しかし、日本政府はこの法律の施行段階になってもなお慎重であり、日本の参加にあたっての基本方針(いわゆるPKO参加5原則)を定め、その第5項で、「武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること」、つまり法制局の解する、A型に限られることを確認していた。
もう一つの自制は、PKOに参加しても輸送や道路工事のように戦闘行為とは距離があることはできても、停戦監視、緩衝地帯の巡回、武器回収などの業務(PKO活動の本体業務と観念された)は武器使用に制限がかかっている限り参加は困難であるとみなした。
武器使用の制限と本体業務は密接な関係があり、かりに武器使用に制限がなければ、本体業務への参加は当然のこととなり、議論されることもなかったであろう。
2001年12月、PKO協力法の一部が改正された。
○いわゆるPKF(平和維持隊)本体業務の凍結解除
1992年のPKO協力法制定以来、我が国は各種の協力を実施し、特に自衛隊の部隊等の派遣による協力については、同法施行後9年間において6回行い、着実に実績と経験を積み上げてきたことを踏まえ、また、我が国が国連を中心とした国際平和のための努力に積極的に貢献することについて内外で期待が高まってきていることにかんがみ、いわゆる本体業務の凍結を解除することとした。
○武器の使用による防衛対象の拡大
国際平和協力業務において自衛隊の部隊は幅広い場面において他国のPKO要員や国連職員、NGOと同一の場所で活動することが多く、また、平和維持隊に参加する各国の部隊が同一の場所で活動することは少なくない。そこで、国際平和協力業務に従事する自衛官等は、他国の隊員であっても日本隊と同じ現場で職務を行うに伴い日本隊の「管理の下に入った者」については、その生命または身体の防衛のために武器を使用できることとした。
○自衛隊法第95条(武器等防護のための武器の使用)の適用除外の解除
これまでの自衛隊の部隊等の派遣の経験を踏まえると、派遣先国において自衛隊法第95条を適用したとしても、事態を混乱させることはないと考えられる一方、武器等の破壊・奪取を看過することにより、隊員の緊急事態への対応能力の低下や治安の悪化につながることも想定されることが認識されるようになった。そこで、派遣先国で国際平和協力業務に従事する自衛官について同条の適用除外規定を削除し、自衛隊の武器等を防護するために武器を使用できることとした。
この改正により武器を使用できる場合はかなり広がり、また、PKOらしい業務を行なえるようになったが、これは迄建前だけのことであり、現実にはこの程度の武器使用ではまだ不十分であるという考えも強く、文民や他国部隊の警護等といった他国部隊であれば国連PKOにおいて当然実施できることすらできない状況にある。外務省は、「現在の国際社会においては,どの国も自国のみで自らの平和と安全を維持することはできない。日本は,平和で安定した国際的環境が確保されることによって自国にも確かな安全と繁栄がもたらされることを改めて認識した上で,国際の平和と安定に責任ある一員として,積極的に国連PKOを通じて世界の平和と安定のために貢献していくための具体的な方策を今後さらに議論していく」という考えである(外務省「わかる!国際情勢 国連PKOを通じた日本の貢献の歩み」)。
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