ブログ記事一覧
2013.12.02
たとえば、12月2日付の人民日報は、日本はカイロ宣言を否定することを企み、日本国憲法の制約を取り除き、尖閣諸島の領有を固定化しようとしているなどと一方的なプロパガンダに終始している。
普段は比較的中立である香港の『明報』紙も、香港の研究者、林泉忠(国籍は英国らしい。東大で学位を取得した。琉球独立をあおっていると見る向きもある)が、「カイロ会議で中国が世界の四大強国の一つであることが確立した」「カイロ宣言は、戦後の中国の領土問題の処理に関して決定し、あるいは影響を及ぼした」「同宣言は中国の尖閣諸島に対する要求の根拠となっている」「琉球の帰属に対する異議をとなえる権利を残している」など述べたことを紹介している。
これらの報道や論評はカイロ宣言に記載されていないことを根拠とするお粗末なものであるが、多維新聞、さらには同新聞が引用した環球時報の客観的な叙述が中国の新聞としていかに特異かを示しているので、あえてこのブログに掲載することとした。後者の方が本音であろう。
(さらに…)
カイロ宣言70周年記念中国紙報道
12月1日は、カイロ宣言発表の70周年に当たる。11月29日、本ブログに掲載した蒋介石の琉球諸島に関する多維新聞の記事もそのタイミングに掲載されたのであろう。その他にも、この機会にカイロ宣言についての論評をいくつかの新聞が掲載しているが、多維新聞と違っていずれも日本に対する一方的な批判を繰り返すものばかりである。たとえば、12月2日付の人民日報は、日本はカイロ宣言を否定することを企み、日本国憲法の制約を取り除き、尖閣諸島の領有を固定化しようとしているなどと一方的なプロパガンダに終始している。
普段は比較的中立である香港の『明報』紙も、香港の研究者、林泉忠(国籍は英国らしい。東大で学位を取得した。琉球独立をあおっていると見る向きもある)が、「カイロ会議で中国が世界の四大強国の一つであることが確立した」「カイロ宣言は、戦後の中国の領土問題の処理に関して決定し、あるいは影響を及ぼした」「同宣言は中国の尖閣諸島に対する要求の根拠となっている」「琉球の帰属に対する異議をとなえる権利を残している」など述べたことを紹介している。
これらの報道や論評はカイロ宣言に記載されていないことを根拠とするお粗末なものであるが、多維新聞、さらには同新聞が引用した環球時報の客観的な叙述が中国の新聞としていかに特異かを示しているので、あえてこのブログに掲載することとした。後者の方が本音であろう。
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2013.12.01
中国はそもそもなぜスクランブル発進の発表をしたのか。おそらく、新たに設置した「東海防空識別区」は単なる恰好だけでなく実体を伴うものであり、中国軍は必要な行動をとっていることを中国の内外、とくに一般の世論に対してアピールしようとしたのであろう。この発表を受けて、中国の新聞には今回の措置を支持し、日本に敵対的な感情を見せる論調が飛び交っている。
しかし、この発表は事実でないことが日本側によって暴露された。尖閣諸島付近の空域に今後中国の空軍機が侵入してくることはないか、現在の時点で断定することは早すぎるが、今回の中国側の発表は、いわゆる「東海防空識別区」において一種バーチャルな状況を描き出し、戦闘機がゲームのように雄々しく行動している姿を国民に対して示そうとした可能性がある。それはバーチャルな世界なので、日米などの航空機と直接衝突することにはならない。それは別問題なのである。
実は、尖閣諸島付近の海域においては以前からそのような傾向が現れており、中国側は、「中国の領海に侵入してくる日本の漁船を追い払った」という趣旨の報道を何回もしていた。中国が尖閣諸島を実効支配しているというバーチャル世界の創造である。日本人からは想像さえ困難なことであろう。
このようなことができるのは中国政府が言論を厳しくコントロールしているからであり、習近平政権は言論統制をさらに強めている。日本にも各種の偽装工作があるが、中国ではそれが政府の指示の下に行われているのである。
昨秋、中国は日米の艦隊が尖閣諸島に近い海域で合同演習を行なったと発表したが、その際に掲載した映像は他の海域での演習の映像を流用したものであった(『朝日新聞』12月1日)。今回新華社が報道しているのは、スクランブル発進の対象となった機種名と写真であるが、その写真は、左に日本から飛び立ったF-15、右にスクランブル発進したとされる殲11戦闘機の写真を並べただけのものである。かりに中国が今後、日中双方の航空機が接近した状況の写真を公表しても、子細に真贋を検討しなければならない。
日本では、今回の中国側の発表を「情報戦」と表現しており、それは間違いでないが、さらに「バーチャルな世界を作り出している」面に注目すべきである。
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中国によるスクランブル発進の発表
中国は新設した「東海防空識別区」に侵入してきた日本の自衛隊機と米軍機にスクランブル発進をかけたと発表したが、小野寺防衛相は11月30日、「中国機が以前と変わった飛行をしたとは認識していない」という趣旨のことを述べている。これだけでは少々わかりにくいが、「日本と米国の飛行機はこれまで通りの飛行を行なっている。これに対して中国機がスクランブル発進したのであれば、すぐ分かるが、そういうことはない。中国側の発表は事実でない」ということを言っているのであろう。中国はそもそもなぜスクランブル発進の発表をしたのか。おそらく、新たに設置した「東海防空識別区」は単なる恰好だけでなく実体を伴うものであり、中国軍は必要な行動をとっていることを中国の内外、とくに一般の世論に対してアピールしようとしたのであろう。この発表を受けて、中国の新聞には今回の措置を支持し、日本に敵対的な感情を見せる論調が飛び交っている。
しかし、この発表は事実でないことが日本側によって暴露された。尖閣諸島付近の空域に今後中国の空軍機が侵入してくることはないか、現在の時点で断定することは早すぎるが、今回の中国側の発表は、いわゆる「東海防空識別区」において一種バーチャルな状況を描き出し、戦闘機がゲームのように雄々しく行動している姿を国民に対して示そうとした可能性がある。それはバーチャルな世界なので、日米などの航空機と直接衝突することにはならない。それは別問題なのである。
実は、尖閣諸島付近の海域においては以前からそのような傾向が現れており、中国側は、「中国の領海に侵入してくる日本の漁船を追い払った」という趣旨の報道を何回もしていた。中国が尖閣諸島を実効支配しているというバーチャル世界の創造である。日本人からは想像さえ困難なことであろう。
このようなことができるのは中国政府が言論を厳しくコントロールしているからであり、習近平政権は言論統制をさらに強めている。日本にも各種の偽装工作があるが、中国ではそれが政府の指示の下に行われているのである。
昨秋、中国は日米の艦隊が尖閣諸島に近い海域で合同演習を行なったと発表したが、その際に掲載した映像は他の海域での演習の映像を流用したものであった(『朝日新聞』12月1日)。今回新華社が報道しているのは、スクランブル発進の対象となった機種名と写真であるが、その写真は、左に日本から飛び立ったF-15、右にスクランブル発進したとされる殲11戦闘機の写真を並べただけのものである。かりに中国が今後、日中双方の航空機が接近した状況の写真を公表しても、子細に真贋を検討しなければならない。
日本では、今回の中国側の発表を「情報戦」と表現しており、それは間違いでないが、さらに「バーチャルな世界を作り出している」面に注目すべきである。
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2013.11.30
北朝鮮はかねてから現体制の維持を最重要課題とし、それを脅かす恐れがあるのは米国であるとの認識の下に、米国に対して北朝鮮を攻撃しない保証を求めてきた。それは今日に至るも実現しておらず、したがって、北朝鮮としては防衛のため、つまり体制維持のために核兵器もミサイルも必要であるというのが北朝鮮の主張してきた論理であった。
米国が北朝鮮の求めにある程度歩み寄った表明をしたことが2回あった。第1回目は1994年の「枠組み合意」であり、そのなかで米国は「北朝鮮に対して、核兵器で攻撃または脅威を与えないという正式の確約を与える(will provide formal assurance to the DPRK, against the threat or use of nuclear weapons by the United States)」と言明した。
第2回目は、2005年9月の6者協議共同声明における、北朝鮮に「核兵器または通常兵器による攻撃または侵略を行う意図を有しない(has no intention to attack or invade the DPRK with nuclear or conventional weapons)」との声明である。
ケリー長官の発言はこれら過去2回の声明に比べ、かなり踏み込んだ内容である。最大の違いはケリー長官が「協定を結ぶ用意がある」と明言した点であり、1994年の枠組み合意の「正式の確約」は条約かどうか明確でなかった。北朝鮮はかねてから条約による保証を求めていたので、これは大きな、決定的ともいえる違いであった。2005年の声明は、現在攻撃する意図はないという現状の説明に過ぎず、これは1994年にも及ばない内容であった。
しかしながら北朝鮮は10月12日、ケリー長官の発言に対して国防委員会のスポークスマンが北朝鮮に対する制裁を撤廃し、軍事演習などの挑発をやめるべきだ、と声明を発表したにとどまった。ケリー長官の発言に乗ってこなかったと見られている(たとえば、10月12日AP電)。
しかし、この発言は、直接的には10日から2日間日米韓が海難救助合同訓練を行なったことに向けられていた。この訓練は韓国内でも日本と協力するという点で反対意見が強かったものであり、北朝鮮はこれを軍事演習とみなし、軍事的に対抗する用意があると反発する姿勢を見せていた。軍事的な駆け引きの性格が強いが、いずれにしても北朝鮮がこの合同訓練を不快視していたことは明らかである。
また、ケリー長官の発言は、日米の外務・防衛大臣の協議(いわゆる2+2)後の記者会見で質問に答えて行なわれたものであり、北朝鮮に直接述べられたことではなかった。このようなことにかんがみると、北朝鮮は、ケリー長官の発言が、米政府がこれまでどうしても踏み切れなかったことを変更する新しい方針であるか確かめようとしている可能性がある。北朝鮮に対する安全の保証問題についてはさらに米朝双方の動向を見極める必要があろう。ちなみに、米国の北朝鮮問題担当のデイビス大使はケリー長官のようなことはその後何も言っておらず、従来からの米政府の姿勢を説明するにとどまっている(たとえば11月25日の記者会見での発言)。
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ケリー長官の不可侵協定発言
少し時間がたってしまったが、10月3日、ケリー国務長官は日本側との2+2協議の後の記者会見で、北朝鮮との関係に関する米国の方針について重要な発言を行なっていた。「我々は北朝鮮の体制変革を目指していないし(not engaged in regime change)、もし北朝鮮が非核化を決心し、そのため正しく交渉する(engage in legitimate negotiations)ならば、不可侵協定を結ぶ(sign a non-aggression agreement)用意がある」というものである。北朝鮮はかねてから現体制の維持を最重要課題とし、それを脅かす恐れがあるのは米国であるとの認識の下に、米国に対して北朝鮮を攻撃しない保証を求めてきた。それは今日に至るも実現しておらず、したがって、北朝鮮としては防衛のため、つまり体制維持のために核兵器もミサイルも必要であるというのが北朝鮮の主張してきた論理であった。
米国が北朝鮮の求めにある程度歩み寄った表明をしたことが2回あった。第1回目は1994年の「枠組み合意」であり、そのなかで米国は「北朝鮮に対して、核兵器で攻撃または脅威を与えないという正式の確約を与える(will provide formal assurance to the DPRK, against the threat or use of nuclear weapons by the United States)」と言明した。
第2回目は、2005年9月の6者協議共同声明における、北朝鮮に「核兵器または通常兵器による攻撃または侵略を行う意図を有しない(has no intention to attack or invade the DPRK with nuclear or conventional weapons)」との声明である。
ケリー長官の発言はこれら過去2回の声明に比べ、かなり踏み込んだ内容である。最大の違いはケリー長官が「協定を結ぶ用意がある」と明言した点であり、1994年の枠組み合意の「正式の確約」は条約かどうか明確でなかった。北朝鮮はかねてから条約による保証を求めていたので、これは大きな、決定的ともいえる違いであった。2005年の声明は、現在攻撃する意図はないという現状の説明に過ぎず、これは1994年にも及ばない内容であった。
しかしながら北朝鮮は10月12日、ケリー長官の発言に対して国防委員会のスポークスマンが北朝鮮に対する制裁を撤廃し、軍事演習などの挑発をやめるべきだ、と声明を発表したにとどまった。ケリー長官の発言に乗ってこなかったと見られている(たとえば、10月12日AP電)。
しかし、この発言は、直接的には10日から2日間日米韓が海難救助合同訓練を行なったことに向けられていた。この訓練は韓国内でも日本と協力するという点で反対意見が強かったものであり、北朝鮮はこれを軍事演習とみなし、軍事的に対抗する用意があると反発する姿勢を見せていた。軍事的な駆け引きの性格が強いが、いずれにしても北朝鮮がこの合同訓練を不快視していたことは明らかである。
また、ケリー長官の発言は、日米の外務・防衛大臣の協議(いわゆる2+2)後の記者会見で質問に答えて行なわれたものであり、北朝鮮に直接述べられたことではなかった。このようなことにかんがみると、北朝鮮は、ケリー長官の発言が、米政府がこれまでどうしても踏み切れなかったことを変更する新しい方針であるか確かめようとしている可能性がある。北朝鮮に対する安全の保証問題についてはさらに米朝双方の動向を見極める必要があろう。ちなみに、米国の北朝鮮問題担当のデイビス大使はケリー長官のようなことはその後何も言っておらず、従来からの米政府の姿勢を説明するにとどまっている(たとえば11月25日の記者会見での発言)。
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