平和外交研究所

中国

2019.10.04

中国の建国70周年記念

 中国は10月1日、北京の天安門広場で建国70周年の記念式典と大規模な軍事パレードを行った。軍事パレードでは最新鋭のミサイルや戦闘機が登場。なかでも、初公開の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「DF41」は注目された。最大射程1万2千キロ以上、米首都ワシントンに届くという。
 
 貿易摩擦で対抗する米国を意識して祝賀式典を行ったことは明らかである。また、習近平主席が何としても達成したい台湾の統一を米国が妨げていることも背景になっているのだろう。
 
 香港では、6月初め以来の民主化要求デモが一向に鎮静化する気配を見せず、北京で大パレードが行われていた1日、デモ隊と警察が激しく衝突し、警察の発砲で高校生が胸を撃たれ重傷を負った。翌日には、怒りに燃える市民らが再びデモを行ない、警官隊と衝突した。
 
 中国政府は、香港のデモが国慶節までに終結することを望んでいたのだろうが、それはかなわず、香港政庁と市民の対立はさらに激化したのであった。

 習近平主席は演説で、香港については、「一国二制度の方針を堅持し、長期の繁栄と安定を維持する」と述べ、ソフトタッチで対応していこうとする姿勢をみせたが、デモがさらに長期化すると中国政府は牙をむくかもしれない。香港との境界付近に控えている中国軍(武装警察が主)はいつでも介入する用意があると伝えられている。

 しかし、習主席の演説は強気一点張りでなく、共産党体制の維持に関する懸念も隠さなかった。「いかなる勢力も祖国の地位を揺るがすことはできない」との発言である。これについては異なった解釈が可能かもしれないが、私は、自信のなさの表れであったと思う。

 もっとも、共産党体制の維持に関する疑問は以前から表面化することがあり、習主席の演説が初めてだったのではない。過去1年間をみても、昨年の12月に開かれた中国共産党中央政治局会議で、習主席は「四つの自信」として「社会主義の道への自信、理論についての自信、制度についての自信および文化についての自信」を持とうと呼びかけていた。これも解釈いかんだが、私は、自信のなさの裏返しだったと思う。

 この政治局会議の直前、中国では珍しく歯に衣着せず発言することで有名な经济学者、茅于軾は、「中国を転覆するだと?そんなことはあり得ない。転覆させられるのは政府だけだ」と発言していた。

 さらにその半年前、人民日報系の『環球時報』は香港の『大公報』紙を引用して、「香港の独立をねらう香港民族陣線なる団体が2015年から活動している」と警戒する記事を書いていた。

 習近平主席の懸念は本物だと思われる。

2019.09.12

香港のデモを前に中国は「一国二制度」を放棄するか

 6月9日以来市民らの大規模なデモが続く中、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月4日、デモの引き金となった「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回した。同長官はそれまで、改正案について「死んだ」とか述べたことはあったが、明確な意思表明ではなかった。今回の同案の撤回は思い切った譲歩であった。
 行政長官としてはこれでデモが鎮静化することを期待していたのであろうが、実際デモに参加している市民の多くは、それでは不十分であり、「デモを「暴動」とみなす政府見解の取り消し」、「デモ逮捕者の釈放」、「警察の暴行を調査する独立委員会の設立」、「民主的選挙による行政長官の選出(普通選挙の確立ともいわれる)」も必要だとしている。いわゆる五項目要求をすべて満たすことを求めているのである。
しかし、はたしてそれは実現可能か。デモの参加者たちも明確な見通しが立っているのではなさそうだが、香港を守るためには頑張るしかないという切羽詰まった気持ちだともいう。

 中国、とくに習近平主席がデモに強い危機感を覚えていることは間違いない。香港のデモが中国内に影響を及ぼすからである。
 習主席はじめ中国の指導者は常日頃、現体制を脅かす危険があることを強く意識している。1989年の天安門事件の際、当時の指導者であった鄧小平は、各国は「平和的に中国を転覆しようとしている」と警戒心をあらわにしたことがあったが、その後、中国が世界の大国になろうとする今日においてもそのような状況は変わっていない。中国の指導者が民主化を極度に恐れる感覚は、中国の外では理解困難である。
 中国は、しかも、来る10月1日に建国70周年を迎え、盛大に祝賀行事を行う予定である。香港で起こっている大規模デモの早期の鎮静化を促すため、香港との境界付近で人民解放軍の行動をこれみよがしに報道させることも行った。あまりデモがひどくなると軍を投入するぞという意思表示であった。
 しかし、そういう脅しでは事態を打開できなかった。香港のデモは何人の予想をもはるかに超えて根強く、かつ大規模に展開され、今後もさらに続きそうになったので、今回、「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回するというカードを切らせたのであろう。

 デモはその後も継続している。10日、サッカー・ワールドカップ(W杯)予選の香港とイランの試合が始まる前、中国国歌の斉唱が始まると、多くの人がグラウンドに背を向けたり、ブーイングの声を上げたりして抗議の意思を示した。
 香港中文大学の周保松香港中文大学副教授は、今回のデモでは、5年前の「雨傘運動」で実現しなかった選挙制度改革の実現が強く求められていることを指摘している(朝日新聞9月10日付)。
 また同助教授は、今回のデモは「雨傘運動」とちがって、特定のリーダーがおらず、多数の人がネットを通じて自発的に行動しているので、中国共産党・政府として交渉したり、標的にする相手がいないことを指摘しつつ、闘争は長引かざるを得ないと述べている。また、「香港は世界の民主運動の中にあって、冷戦期のベルリンのような位置で重要な経験をしています。ここは中国共産党、全体主義勢力と対峙(たいじ)する最前線なのです」興味深い観察も述べている。
 
 もちろん、デモはそう長続きしないことを示す状況もある。香港の住民は長く続く激しいデモに疲労している。香港の人達が、習助教授が考えるような国際政治的意義を認めているとも思えない。
 
 それに、何よりも決定的な問題は中国の動向である。10月1日を過ぎてもデモが続いていれば、軍隊が投入され強硬手段でデモが排除される可能性はもちろんある。
 この点に関し、中国の指導者は恒例の北戴河での夏季休暇の際、もはや「一国二制度」は放棄し、「一国一制度」を追求することにしたともいわれている(近藤大介「台湾は「東アジアのクリミア」になる」2019年9月10日付『現代ビジネス』)。つまり、「一国二制度」を認めた結果が香港のデモであるので、今後はそのような軟弱な姿勢はとらない、香港に中国本土と異なる制度はハナから認めないこととしたという説明である。

 1997年の香港の中国への返還以来、「50年間、高度の自治、香港人による香港統治、現在の资本主義・生活方式は五十年間変えない」という英中間の合意を中国はかなぐりすてることになる。そんなことであれば、香港のデモ参加者としてはますますデモを解けなくなるであろう。

 はたして、中国による軍の投入はありうるか。香港はもともと中国の一部であり、香港の平和と安全は中国の国内問題だから、必要な場合に武力を用いることはやむを得ないと考えているかもしれない。
 もちろん、中国は世界の大国になりたい気持ちが強いので、香港で武力を使うことは得策ではないという考えもあろう。

 中国共産党・政府がどのような判断を下すか、予断を許さないが、もし、「一国二制度」を放棄するならば、台湾に計り知れない影響が及ぶのは確実である。それでも台湾を強引に統一しようとすれば、軍事力に頼るほかないが、そうすれば米国と軍事的衝突になることを覚悟しなければならない。

 「一国二制度」の放棄はそのように深刻な問題をはらんでいる。

2019.07.31

中国における3種類の親日派

 7月28日、中国各地で「精日」と呼ばれる親日派の一斉摘発が行われたと、在米の中国語紙『多維新聞』が29日に伝えている。各地とは、遼寧、安徽、湖北、江蘇の各省である。

 中国の親日派には、「親日」、「哈日」および「精日」の3種類がある。

 「親日」は、日中友好を重視し、日本に好意を持つ人たち(こと、以下同)である。「親日」はその時々の政治情勢によってその意味合いが変化し、「親日」であることを隠そうとすることもあろうが、基本的には否定されているわけではない。

 「哈日」は、日本のアニメや服装、J-POP、電化製品など、日本の文化を好む人達を指す。元々台湾で現れた現象であったが、最近は香港や中国でもかなり増えている。「哈日」は中国でも事実上黙認されているという。
 
 「精日」はごく最近(二、三年前から?)現れた人たちであり、日本の軍国主義に関心を持ち、称揚する。
 「日本の軍国主義」は現在の中国が目の敵にしていることであり、「精日」というような中国人が本当にいるのか、にわかには信じられないだろうが、実際に存在することを『多維新聞』のこの報道が示している。
 日本通として知られる王毅外相は、「精日」のことを「中国人のクズ」と非難したという。中国の立場に立つとそう見るのはもっともであろう。
  
 「精日」については次のような問題行動が指摘されている。
 南京大虐殺記念館で中国人同胞を侮辱する内容の言葉をネットに流し、また拘留された(2018年2月)。
 旧日本軍の軍服を着用して写真を撮った。
 国外において反中国的な漫画を配布した。
 中国国外から反中国思想を国内に吹き込み、中国の青年に「精日」集団に加わるよう誘った。
 ネット上で非合法な組織を立ち上げ、日本の軍国主義の浸透を図った。

 「精日」はごく少数だといわれている。また、日本人から見ても特異な行動であるが、非合法化が検討されていること、中国各地で一斉取り締まりの対象となっていることなどにかんがみれば、無視できないほどの問題になりつつあるのかもしれない。

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.