平和外交研究所

中国

2018.01.23

米艦艇による南シナ海スカボロー礁海域での航行

 2月17日、米軍のミサイル駆逐艦「ホッパー」がスカボロー礁から12カイリ内を航行した。「航行の自由作戦」の一環である。
 これに対し、中国政府は、これまで通り強く反発したが、在米の中国語新聞『多維新聞』(1月22日付)は以下のような論評を行っている。内容から推測して中国軍から分析資料の提供を受ける一方、米軍にも取材した結果だと思われる。

 「米海軍はトランプ大統領の就任前(2月中)に、航行の自由作戦の実施を申請したが、国防省は許可しなかった。

 トランプ大統領就任後の4月に、米海軍は改めて許可を求めたが、国防省はこの時も拒否した。国防省は航行の自由作戦の実行状況の公表方法を変え、1年間を通しての報告に切り替えようとしていたとも言われていた。

 しかし、この方針はすぐに元へ戻った。5月には米艦がスプラトリー諸島ミスチーフ礁の12カイリ内を航行した。7月には日本を基地とするミサイル駆逐艦がパラセル諸島の12カイリ内を航行した。米艦は8月にもスプラトリー諸島ミスチーフ礁付近を航行した。さらに10月にもパラセル諸島付近を航行した。

 トランプ大統領はアジア歴訪の際にインド太平洋戦略を打ち出した後、南シナ海問題を米中間貿易問題および北朝鮮問題との取引材料に利用するようになった。12月に発表された米国の「国家安全保障戦略」では、中国を戦略的競争相手と位置づけ、中国の不公正貿易を許さない、厳しく対応するという方針を示した。トランプ大統領は習近平主席との1月16日の電話でも貿易不均衡への不満を表明した。トランプ氏は南シナ海問題を、中国との貿易不均衡を是正するためのカードにしている。

 中国も考えるべき点がある。米艦による航行の自由作戦には警戒が必要だが、過度に気にすべきでない。中国が米艦の行動に強く反発すれば、米国はこのカードが効いていると取るだろう。中国は、より高い見地から対応すべきである。少なくとも、今回の事件について、外交部は「米艦はスカボロー礁から12カイリ内を航行した」と発表する一方、国防部は「スカボロー礁の近接海域を航行した」というような発表のずれはなくすべきである。」

2018.01.15

中国は日本に何をしようとしているのか

 1月11日、中国海軍の潜水艦と艦艇が尖閣諸島(沖縄県)周辺の日本の接続水域に入った。小野寺防衛相は「両艦が同時に尖閣の接続水域を航行するのを確認したのは初めて」と述べており、今回の中国海軍の行動はかつて例を見ないほど悪質である。
 しかも、中国が力を入れている「一帯一路」構想へ日本が積極的に関わる姿勢を示し、中国側も日本の姿勢を評価しているときにである。日本に対する友好的な態度と非友好的な行動がこれほど同時に表れるのはまず記憶にない。
 
 中国海軍はなぜこのような行動に出たのか。この際考えられる原因を、仮説を交えることになるが、考えてみたい。

 まず、日本の海上自衛隊の行動に中国海軍は不満を抱いているか。とくに、防衛省が海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を空母に改修し、航空自衛隊がステルス機能を持つ最新鋭戦闘機F35Bを導入して搭載する検討をはじめたことと関係があるか。
 中国紙は「いずも改修」を警戒して報道している。中国海軍としても注目しているだろう。しかし、そもそも「いずも」が導入された時は、報道はあったが、中国海軍が今回のようないやがらせの行動に出ることはなかった。
 中国海軍は早くから遠洋へ進出するのに力を入れており、空母の配備を始めた。中国が日本の「ヘリコプター空母」を問題にするなら、日本は中国の「正規の空母」を何倍も問題にできただろう。「ヘリ空母」は「正規の空母」に比べれば大人と子供くらい違う。中国はさらに2017年4月、2隻目の「正規の空母」を就航させた。日本よりはるかに先へ行っているのであり、巨大な正規の空母を2隻も持ちながら、空母と言えるかはっきりしない日本の「いずも」に難癖をつけられるわけがないのだ。

 海上自衛隊は北朝鮮に対する制裁措置の徹底のため、「黄海」での任務に就くことになった。「黄海」は中国と朝鮮半島の間に位置する公海であり、日本の艦船が活動するのに何ら問題はないが、中国は外国船が「黄海」を通行することを嫌う。それは国際法では認められない身勝手な主張に過ぎず、日本が行動を控える理由はないが、注意は必要である。

 もっとも可能性が高いのは、軍による習近平主席への牽制である。
 習氏による軍改革はかなり進展した。とくに制度面の改革は確かに進展した。しかし、まだ大きな問題が残っていることは、現役総参謀長房峰輝の失脚(2017年8月)、中央軍事委員会政治工作部主任の張陽の自殺(11月?)が示唆していた。前者は軍人のトップ、後者は中央軍事委員会において共産党の指示を受ける部門のトップである。
 習氏は、軍内の急激な改革に反発する勢力をまだ一掃できていないのである。また、退職した元軍人が待遇に不満であること、徴兵に従わない者が社会問題になるほど多くなっていることなどの問題も表面化している。
 軍人は表向き習近平に逆らうことはできないが、不満は軍内で広く共有されており、軍は、日本との緊張関係を作り出すことにより、自らの重要性をアピールしようとしているのではないか。

 さらに、台湾問題も絡んでいる可能性がある。台湾の統一は、習近平政権の第1期目に進展しなかったので、2期目に残された最大課題となっている。中国は尖閣諸島を台湾の一部とみなしているので、そこで問題を起こすことは台湾問題の解決のために軍の役割が重要であることを訴えるのに都合がよいのである。つまり、尖閣諸島で問題を起こすことは中国海軍にとって一石二鳥となるのである。
 最後の点は仮説に過ぎないが、今後時間をかけて検証していく必要がある。

2017.12.31

西欧諸国の中国に対する姿勢

 西欧諸国が中国の経済成長に関心を向けるようになったのは1990年代中葉からである。中国は2001年、WTOに加盟して高度成長期に入り、数年後、そのGDPはイタリア、フランス、イギリス、ドイツを次々に追い抜き、2010年には日本を追い越した。
 西欧諸国は経済規模で中国に圧倒されつつも、中国経済は西欧諸国にも恩恵をもたらすことを学んだ。2011年12月21日付の英国エコノミスト紙が、「中国のWTO加盟10周年を記念しよう。中国の加盟により、世界はより豊かになった」とする記事を掲載したのは象徴的であった。

 西欧諸国の経済は近年、低成長を続け、時にはマイナス成長となるなど厳しい状況にあり、しかも最近は難民対策などの負担が増大している。
 一方、中国との間では、米国や日本と違って政治的問題は少なく、中国との経済関係を強めることにブレーキとなる要因はほとんどない。雪崩現象にもたとえられる中国への殺到はある意味、自然である。
 
 中国傾斜の先頭を切ったのは英国であり、2015年の3月、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)に参加した。米国から慎重に対応するよう、あらかじめくぎを刺されていたが、それには構わなかったという。
 国際金融に豊かな経験とノウハウを持つ英国がなぜそのような行動に出たか不可解であったが、英国としては英国経済の活性化を図るためやむをえない決断だったのだろう。
 その半年後、英国は訪英した習近平主席を大歓迎し、中国メディアが「最上級の待遇」と異例の報道をするくらい喜ばせた。しかも、中国製原発の輸入とそれに伴う中国資本の受け入れに同意したことはAIIBへの参加以上に驚きであった。ブラッドウェルの原発には中国広核集団(CGN)が66・5%を出資する。これだけの出資比率になると、発言力は極めて大きくなり、英側は中国の言いなりにならざるをえない。日本では考えられないことであった。
 
 ドイツの経済もやはり厳しい状況にあり、低成長かマイナス成長である。しかし、EUの最強のリーダーとして重い財政負担を強いられている。また、中近東・アフリカからの難民は大多数がドイツを目指してくる。したがって、急速に拡大を続ける中国経済は大きな魅力であり、中国との貿易・投資関係は顕著に増大している。
 ドイツの中国経済への強い関心を代表しているのがメルケル首相であり、2016年6月までに9回訪中した。メルケル氏は中国に人権の尊重や法の支配も訴えているが、中国側はそれらの問題は独中関係のごく一部であるとしてまともに取り合おうとしない。これに対し、ドイツ側もしつこく追及はしていない。

 しかし、西欧諸国は完全にエコノミック・アニマルになったのではないことをしめす出来事が起こった。
 12月13日、中国が南京事件80年記念の行事を行った日であったが、ドイツとフランスの在中国大使は連名で、英フィナンシャル・タイムズ紙中国語版に独仏の和解の経験を語る一文を投稿した。その中には、「犯罪を犯した者は自らの罪を認め、被害者は許さなければならない」との趣旨の言及があった。
 中国としては、「日本は罪を認めなければならない」というのはよいが、「中国は日本を許さなければならない」というのは癇に障ったのであろう。人民日報系の環球時報12月28日付が掲載した評論は、両大使の寄稿は「中国内政に対する粗暴な干渉」「中国人に対する無礼なお説教である」と述べるなど、不愉快極まりないという感情があふれていた。

 ドイツやフランスはかねてより、彼らの和解の経験を東アジアでも参考にしてほしいということがよくあった。また、中国も日本に対し、ドイツの姿勢を学んでほしいと何回も求めたことがあった。
 しかるに、両大使の寄稿文は中国にも努力を求めている。しかも南京事件を記念する日にその文章を発表しているので、日本に対するよりもむしろ中国に対する注文が多いと感じたのであろう。
 両大使は、中国のことをよく知っており、そのような中国側の反応を予測したうえでの寄稿だったと思われる。経済面では中国との関係を最大限重視しつつも、政治的には冷めているところがあることを思い起こさせる一事であった。

 なお、最近、ドイツの中国に対する見かたは変化しつつあるというドイツ人も出てきているそうである。

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