オピニオン
2014.07.27
日本国政府は2014年7月1日、集団的自衛権の行使を可能にする新しい閣議決定を行なった。安倍首相のかねてからの持論が実現したわけであるが、この閣議決定には手続き面、内容面で強い異議の声が上がっている。
手続き面では、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が報告書を提出したのが2014年5月15日であり、それから閣議決定の採択までわずか1カ月半というスピード決着であった。政府・与党は何回も会合を開いたのは事実であるが、議論の内容は、一時期、日替わりメニューのように変化するありさまであった。議論が尽くされたとは、国民は思っていないであろう。
内容的には、今回の決定により憲法の解釈が変更されたのか、問題となった。政府は新方針について、「憲法解釈の再整理という意味では一部変更ではあるが、憲法解釈としての論理的整合性、法的安定性を維持している。いわゆる解釈改憲ではない」という考えを示している(6月26日、各紙に報道された想定問答)。憲法解釈を変えたとは言わないよう努めていることが伝わってくるが、歴代の内閣の下ではできなかった集団的自衛権の行使ができるようになったので、やはり変更であろう。
集団的自衛権の行使が認められるとどうなるかについての政府・与党の説明は矛盾を含んでいる。自衛隊が外国へ派遣されることになるのが集団的自衛権行使の主たる効果のはずであるが、政府は「海外派兵は従来通りしない」という説明である。また、検討段階で提示された具体的事例を実現するのに集団的自衛権の行使が必要か、についても疑問が出ている。さらに、今回の決定の結果、米国などから派兵を求められると断れなくなるのではないかという指摘も行われている。
政府が今回の閣議決定を急いだのは、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が2014年内にも行なわれる予定であることと関連があるという説もある。ガイドラインは、日本の国力の増大などを考慮し、日米安保条約の実質的片務性から生じる問題点を改善することを目指すものとして1978年初めて策定され、冷戦終了後の1997年に改訂され現行のガイドラインとなっている。その後の国際情勢と安全保障環境の変化、具体的にはわが国の周辺国における軍事活動の活発化、国際テロ組織の活動激化、海洋・宇宙・サイバー空間でのリスクの顕在化、海賊対策、PKO活動の拡大などにかんがみ、日米両国はガイドラインの見直しを検討することについて合意しており、現在防衛当局間で準備が進められている。
わが国が集団的自衛権を行使できるようになれば、日本が攻撃されていなくても公海上で自衛隊が米艦の防衛をできるようになるなど日米防衛協力の可能性は大きく拡大するので、今回の閣議決定の内容が新ガイドラインに反映されることとなるのは当然である。閣議決定を急いだのは、そのことを考慮したからであった可能性もある。しかし、集団的自衛権の行使という日本国にとってきわめて重要な問題に関する法整備についてガイドラインを理由に期限を設定するのは本末転倒である。米国のアジア太平洋戦略との関係があるので日本だけの都合だけで片付けられないが、ガイドラインは約20年おきに策定されており、次の改訂がたとえば半年、あるいは1年遅れても支障が生じる筋合いのものではない。日本国民の不安や疑念を払しょくすることが先決であろう。
今回の閣議決定は、昨年、特定秘密保護法がろくに議論もされないで成立させられたことを想起させる。安倍首相は政治のモメンタムをよく口にする。それは経験豊かな政治家としてのするどい感覚に裏付けられているのかもしれないが、政府・与党は、圧倒的な多数を占めているときこそ慎重に対応してもらいたい。
集団的自衛権の閣議決定を急いだ理由
THEPAGEに7月16日掲載されたもの。日本国政府は2014年7月1日、集団的自衛権の行使を可能にする新しい閣議決定を行なった。安倍首相のかねてからの持論が実現したわけであるが、この閣議決定には手続き面、内容面で強い異議の声が上がっている。
手続き面では、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が報告書を提出したのが2014年5月15日であり、それから閣議決定の採択までわずか1カ月半というスピード決着であった。政府・与党は何回も会合を開いたのは事実であるが、議論の内容は、一時期、日替わりメニューのように変化するありさまであった。議論が尽くされたとは、国民は思っていないであろう。
内容的には、今回の決定により憲法の解釈が変更されたのか、問題となった。政府は新方針について、「憲法解釈の再整理という意味では一部変更ではあるが、憲法解釈としての論理的整合性、法的安定性を維持している。いわゆる解釈改憲ではない」という考えを示している(6月26日、各紙に報道された想定問答)。憲法解釈を変えたとは言わないよう努めていることが伝わってくるが、歴代の内閣の下ではできなかった集団的自衛権の行使ができるようになったので、やはり変更であろう。
集団的自衛権の行使が認められるとどうなるかについての政府・与党の説明は矛盾を含んでいる。自衛隊が外国へ派遣されることになるのが集団的自衛権行使の主たる効果のはずであるが、政府は「海外派兵は従来通りしない」という説明である。また、検討段階で提示された具体的事例を実現するのに集団的自衛権の行使が必要か、についても疑問が出ている。さらに、今回の決定の結果、米国などから派兵を求められると断れなくなるのではないかという指摘も行われている。
政府が今回の閣議決定を急いだのは、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が2014年内にも行なわれる予定であることと関連があるという説もある。ガイドラインは、日本の国力の増大などを考慮し、日米安保条約の実質的片務性から生じる問題点を改善することを目指すものとして1978年初めて策定され、冷戦終了後の1997年に改訂され現行のガイドラインとなっている。その後の国際情勢と安全保障環境の変化、具体的にはわが国の周辺国における軍事活動の活発化、国際テロ組織の活動激化、海洋・宇宙・サイバー空間でのリスクの顕在化、海賊対策、PKO活動の拡大などにかんがみ、日米両国はガイドラインの見直しを検討することについて合意しており、現在防衛当局間で準備が進められている。
わが国が集団的自衛権を行使できるようになれば、日本が攻撃されていなくても公海上で自衛隊が米艦の防衛をできるようになるなど日米防衛協力の可能性は大きく拡大するので、今回の閣議決定の内容が新ガイドラインに反映されることとなるのは当然である。閣議決定を急いだのは、そのことを考慮したからであった可能性もある。しかし、集団的自衛権の行使という日本国にとってきわめて重要な問題に関する法整備についてガイドラインを理由に期限を設定するのは本末転倒である。米国のアジア太平洋戦略との関係があるので日本だけの都合だけで片付けられないが、ガイドラインは約20年おきに策定されており、次の改訂がたとえば半年、あるいは1年遅れても支障が生じる筋合いのものではない。日本国民の不安や疑念を払しょくすることが先決であろう。
今回の閣議決定は、昨年、特定秘密保護法がろくに議論もされないで成立させられたことを想起させる。安倍首相は政治のモメンタムをよく口にする。それは経験豊かな政治家としてのするどい感覚に裏付けられているのかもしれないが、政府・与党は、圧倒的な多数を占めているときこそ慎重に対応してもらいたい。
2014.07.25
地元では、大国主命がこの地に来て、将来のための礎を築いたと言い伝えられている。もともとこの地にいた豪族を排除して善政を引いたのかもしれない。
北播磨のさらに北側に位置する但馬の国の一宮は出石(イズシ)神社である。この神社の祭神は天日槍命(アメノヒボコノミコト)であり、古事記や日本書紀には新羅の王子として記載されている。記紀にそう書かれているのでいつもそのように紹介されるが、アメノヒボコは新羅の王家、朴氏、昔氏、瓠公と関連している可能性があるとする説もある。このうち昔氏は但馬地方から新羅に渡り王となったとされており、アメノヒボコは出身地へ戻ってきた可能性もある。むしろそのほうがわかりやすい話である。ただし、昔氏のもともといた場所については但馬の他にその隣の丹波、さらには日本の東北地方等が上げられているそうである。よく調べている人がいる。
天日槍命は大国主命と争ったと播磨国風土記は伝えている。天日槍命、大国主命、新羅と時代の考証を始めると、話が合わなくなるが、それは記紀の時代にはままあること、気にしないことにする。ともかく、天日槍命は但馬に来て、製鉄の技術をもたらしたり、川(丸川という)の治水をしたりしたそうで、さきに勢力を張っていた大国主命、あるいは土着の勢力と争いになったということではないか。
天日槍命は出石神社のほかいくつかの神社で祭られている。それだけの存在として尊敬を受けていたのであろう。地元では、但馬地方を開いた人という人もいる。
兵庫県中部・北部で古代を想像する
兵庫県宍粟(シソウ)市一宮町(姫路市の西北)にある伊和神社は播磨の国一宮、すなわち姫路や加古川などを含む播磨でもっとも格式が高い神社である。大国主命を祭神としており、創設された時期は非常に古い。成務天皇または欽明天皇の御代と伝えられている。成務天皇はあまりに古過ぎて歴史以前であるが、欽明期であっても6世紀中葉である。『延喜式神名帳』には、「伊和坐大名持魂神社(いわにいますおおなもちみたまのかみやしろ)」(伊和に鎮座する大己貴神の社)と記載されている。大己貴神とは大国主命の別名である。地元では、大国主命がこの地に来て、将来のための礎を築いたと言い伝えられている。もともとこの地にいた豪族を排除して善政を引いたのかもしれない。
北播磨のさらに北側に位置する但馬の国の一宮は出石(イズシ)神社である。この神社の祭神は天日槍命(アメノヒボコノミコト)であり、古事記や日本書紀には新羅の王子として記載されている。記紀にそう書かれているのでいつもそのように紹介されるが、アメノヒボコは新羅の王家、朴氏、昔氏、瓠公と関連している可能性があるとする説もある。このうち昔氏は但馬地方から新羅に渡り王となったとされており、アメノヒボコは出身地へ戻ってきた可能性もある。むしろそのほうがわかりやすい話である。ただし、昔氏のもともといた場所については但馬の他にその隣の丹波、さらには日本の東北地方等が上げられているそうである。よく調べている人がいる。
天日槍命は大国主命と争ったと播磨国風土記は伝えている。天日槍命、大国主命、新羅と時代の考証を始めると、話が合わなくなるが、それは記紀の時代にはままあること、気にしないことにする。ともかく、天日槍命は但馬に来て、製鉄の技術をもたらしたり、川(丸川という)の治水をしたりしたそうで、さきに勢力を張っていた大国主命、あるいは土着の勢力と争いになったということではないか。
天日槍命は出石神社のほかいくつかの神社で祭られている。それだけの存在として尊敬を受けていたのであろう。地元では、但馬地方を開いた人という人もいる。
2014.07.21
中国は非アラブ諸国の中で最初にパレスチナを承認し、北京の代表事務所に外交使節としての待遇を認めた。かつていわゆる第三世界に属していた時のことであり、今となっては昔話である。
中国はパレスチナとイスラエルの関係が緩和したことを背景に、1992年、イスラエルと外交関係を結び、それ以降、中国はイスラエルとパレスチナに対する姿勢を徐々に修正してきた。
中国とイスラエルの関係は着実に進展し、経済面では中国はイスラエルにとって主要な貿易相手国となっている。とくに、兵器の面では双方向の取引が増大している。中国は、米国や欧州諸国から入手できないハイテク武器をイスラエルから購入しているという疑惑がもたれている。かつて中国が早期警戒システムのファルコンをイスラエルから購入しようとして米国が待ったをかけたことがあった。
中国・イスラエル関係で最も顕著なのは軍事面での交流であり、閉鎖的な中国としてはめずらしくよく付き合っており、そのレベルと頻度はロシアとの関係を除けば随一ではないかと思われる。イスラエルは、以前台湾との関係が緊密であったが、最近は手控えている。
ただし、パレスチナ問題については、中国はイスラエルを非難する決議に賛成を続けており、ヨルダン川西岸へのイスラエルの入植を非難する決議にも賛成している。国連がパレスチナにオブザーバーの資格を認めた際には賛成した。
中国は、2014年の6月、パレスチナの統一国家を承認した。中国が特使を派遣したのはこの関係であろう。
米国にとってイスラエルとの関係は他の国には見られない特殊性があるが、パレスチナ問題については米国こそが和解に貢献できるというという自負は最近の状況にかんがみるとしぼみがちかもしれない。それでもほかの国が米国に代わって中東和平で双方の仲を取り持つようなことは考えられない。しかし、今のような状況を続くと中国がある日パレスチナ和平の仲介者として出てくるかもしれない。
中国のイスラエル・パレスチナ政策
中国政府は特使をイスラエルとパレスチナに派遣した。「最近」だそうだ。双方の緊張緩和を探り、イスラエルがパレスチナ問題についてさらに積極的な役割を果たすよう働きかけることが目的だと台湾の新聞『旺報』7月19日付が論評している。中国は非アラブ諸国の中で最初にパレスチナを承認し、北京の代表事務所に外交使節としての待遇を認めた。かつていわゆる第三世界に属していた時のことであり、今となっては昔話である。
中国はパレスチナとイスラエルの関係が緩和したことを背景に、1992年、イスラエルと外交関係を結び、それ以降、中国はイスラエルとパレスチナに対する姿勢を徐々に修正してきた。
中国とイスラエルの関係は着実に進展し、経済面では中国はイスラエルにとって主要な貿易相手国となっている。とくに、兵器の面では双方向の取引が増大している。中国は、米国や欧州諸国から入手できないハイテク武器をイスラエルから購入しているという疑惑がもたれている。かつて中国が早期警戒システムのファルコンをイスラエルから購入しようとして米国が待ったをかけたことがあった。
中国・イスラエル関係で最も顕著なのは軍事面での交流であり、閉鎖的な中国としてはめずらしくよく付き合っており、そのレベルと頻度はロシアとの関係を除けば随一ではないかと思われる。イスラエルは、以前台湾との関係が緊密であったが、最近は手控えている。
ただし、パレスチナ問題については、中国はイスラエルを非難する決議に賛成を続けており、ヨルダン川西岸へのイスラエルの入植を非難する決議にも賛成している。国連がパレスチナにオブザーバーの資格を認めた際には賛成した。
中国は、2014年の6月、パレスチナの統一国家を承認した。中国が特使を派遣したのはこの関係であろう。
米国にとってイスラエルとの関係は他の国には見られない特殊性があるが、パレスチナ問題については米国こそが和解に貢献できるというという自負は最近の状況にかんがみるとしぼみがちかもしれない。それでもほかの国が米国に代わって中東和平で双方の仲を取り持つようなことは考えられない。しかし、今のような状況を続くと中国がある日パレスチナ和平の仲介者として出てくるかもしれない。
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