朝鮮半島
2019.01.07
金委員長はさらに、トランプ大統領に親書を送った。これに対し、トランプ大統領は、「素晴らしい手紙」だったと評価した。
再会談についてトランプ大統領は、「我々はそう遠くない将来、開催する」と語った。会談場所についてはすでに事務方が協議を始めているという。トランプ大統領も金委員長も予測困難なところがあるので、再会談は本当に近いうちに開かれるか、「そう遠くない将来」とはどのくらい先のことか、速断は禁物だが、第2回会談開催の機運は高まってきたと思う。
ワシントン、ソウル、東京などでは、実務者による協議が進んでいないことから米朝会談は進展しないとの見方が繰り返し現れている。金委員長には非核化を行う意思はないという見方まで流れている。
たしかに米朝協議は停滞しているが、すくなくとも両指導者は今も非核化に前向きであり、停滞している両国間の実務者協議をトップ会談で打開する考えであることが両者のやり取りからうかがわれる。
ただし、再会談が行われても成功する保証はない。最大の問題は、北朝鮮が核兵器を含むすべての核関連施設を検証にゆだねることができるかである。これは、「申告」と呼ばれることから始まる。つまり、北朝鮮はすべての核に関する情報を検証チームに提供することから始まるのである。
北朝鮮にとってこれは非常に危険なことである。その「申告」には、核兵器が何発、どこに保管されているか、それを、いつ、どこで、だれが廃棄するのかまで記載されるのであり、そんなことを米国に示すのは北朝鮮としては首を洗って敵に差し出すようなものだからである。だから、北朝鮮はしきりに「信頼醸成が必要だ」といい、北朝鮮側はすでに実験場の破壊など具体的措置を取ったのだから、米側も制裁の緩和など協力してほしいと主張する。
かりに金委員長がトランプ大統領を信頼している、つまり、「申告」しても攻撃されないと確信していても、北朝鮮内部ではそのことを心配する人が必ずいるだろう。金委員長は北朝鮮で絶対的な権力者であっても、国民から「それでは国が滅びます」と悲鳴が上がれば、無視できない。金委員長はそのような懐疑論者を説得しなければならないのである。
しかし、米側としては北朝鮮のようなやり方ではこれまでの6者協議などと同じことになり、不毛の駆け引きになってしまう、北朝鮮が本当に比較する決意があるなら「申告」が必要だという考えなのであろう。
だから、米朝両国が次の段階へ進めるかはこの「申告」ができるかにかかっているのであり、いわゆる「完全な非核化」とか、「CVID、つまり完全な、検証可能な、不可逆的な廃棄」という言葉だけでは足りない。それらはしょせん言葉に過ぎない。
しかし、実際には、再会談で完全な情報開示の「申告」を提供することは困難かもしれない。そうであれば、項目だけは完全にして、つまり細大漏らさず項目を示しつつ、その内容は後で埋めることとすれば妥協できるのではないかと思われる。たとえば、核兵器は「○○発」などと記載するにとどめるのである。
休戦状態にある朝鮮戦争について終戦宣言をすることなどは、「申告」にくらべれば周辺的な問題である。
制裁の解除は深刻な問題だが、「申告」が進めば、米側としてもある程度緩和に応じることは可能ではないか。
ともかく、非核化に関する米朝協議は両指導者がもっとも前向きで、周辺の人たちは多かれ少なかれ懐疑論である。全体的に見て、米朝協議が不安定な状況にあることは否めないだけに、米韓が軍事演習を再開しないことが望まれる。米朝協議の環境を悪化させないためである。
米朝協議は進展するか
北朝鮮をめぐる国際情勢は、今年、どのように展開するか。金正恩委員長は今年も新年の辞を発表した。トランプ米大統領との再会談については、「いつでも再び向き合う用意ができている」と表明し、また、「完全な非核化」実現に向けた意志を重ねて示しながら、米国が制裁・圧力を続ければ、「新たな道」を模索せざるを得なくなると述べた。金委員長はさらに、トランプ大統領に親書を送った。これに対し、トランプ大統領は、「素晴らしい手紙」だったと評価した。
再会談についてトランプ大統領は、「我々はそう遠くない将来、開催する」と語った。会談場所についてはすでに事務方が協議を始めているという。トランプ大統領も金委員長も予測困難なところがあるので、再会談は本当に近いうちに開かれるか、「そう遠くない将来」とはどのくらい先のことか、速断は禁物だが、第2回会談開催の機運は高まってきたと思う。
ワシントン、ソウル、東京などでは、実務者による協議が進んでいないことから米朝会談は進展しないとの見方が繰り返し現れている。金委員長には非核化を行う意思はないという見方まで流れている。
たしかに米朝協議は停滞しているが、すくなくとも両指導者は今も非核化に前向きであり、停滞している両国間の実務者協議をトップ会談で打開する考えであることが両者のやり取りからうかがわれる。
ただし、再会談が行われても成功する保証はない。最大の問題は、北朝鮮が核兵器を含むすべての核関連施設を検証にゆだねることができるかである。これは、「申告」と呼ばれることから始まる。つまり、北朝鮮はすべての核に関する情報を検証チームに提供することから始まるのである。
北朝鮮にとってこれは非常に危険なことである。その「申告」には、核兵器が何発、どこに保管されているか、それを、いつ、どこで、だれが廃棄するのかまで記載されるのであり、そんなことを米国に示すのは北朝鮮としては首を洗って敵に差し出すようなものだからである。だから、北朝鮮はしきりに「信頼醸成が必要だ」といい、北朝鮮側はすでに実験場の破壊など具体的措置を取ったのだから、米側も制裁の緩和など協力してほしいと主張する。
かりに金委員長がトランプ大統領を信頼している、つまり、「申告」しても攻撃されないと確信していても、北朝鮮内部ではそのことを心配する人が必ずいるだろう。金委員長は北朝鮮で絶対的な権力者であっても、国民から「それでは国が滅びます」と悲鳴が上がれば、無視できない。金委員長はそのような懐疑論者を説得しなければならないのである。
しかし、米側としては北朝鮮のようなやり方ではこれまでの6者協議などと同じことになり、不毛の駆け引きになってしまう、北朝鮮が本当に比較する決意があるなら「申告」が必要だという考えなのであろう。
だから、米朝両国が次の段階へ進めるかはこの「申告」ができるかにかかっているのであり、いわゆる「完全な非核化」とか、「CVID、つまり完全な、検証可能な、不可逆的な廃棄」という言葉だけでは足りない。それらはしょせん言葉に過ぎない。
しかし、実際には、再会談で完全な情報開示の「申告」を提供することは困難かもしれない。そうであれば、項目だけは完全にして、つまり細大漏らさず項目を示しつつ、その内容は後で埋めることとすれば妥協できるのではないかと思われる。たとえば、核兵器は「○○発」などと記載するにとどめるのである。
休戦状態にある朝鮮戦争について終戦宣言をすることなどは、「申告」にくらべれば周辺的な問題である。
制裁の解除は深刻な問題だが、「申告」が進めば、米側としてもある程度緩和に応じることは可能ではないか。
ともかく、非核化に関する米朝協議は両指導者がもっとも前向きで、周辺の人たちは多かれ少なかれ懐疑論である。全体的に見て、米朝協議が不安定な状況にあることは否めないだけに、米韓が軍事演習を再開しないことが望まれる。米朝協議の環境を悪化させないためである。
2018.11.20
「強制的失踪委員会」とは、「強制的失踪条約」の運用状況を審査する機関であり、日本からも委員が出ている(東京大学の寺谷広司教授)。議長は現在アルバニア人のMs. Suela JANINA。
ジュネーブ国際機関日本政府代表部の担当者は「最終見解は誤解や偏見に基づく一方的なもので極めて遺憾だ」と述べ、国連人権高等弁務官事務所に抗議したことを明らかにしたという。
しかし、日本政府のとった行動がこれだけであれば、人権理事会はじめ、慰安婦問題を取り上げているいくつかの委員会で起こってきたことの繰り返しになりかねない。
日本政府は事実関係の誤りについては、よく調べ、間違いを指摘し、必要に応じ抗議もしてきた。これだけ聞けば、当たり前のことだと思われるかもしれないが、これら国連機関が執拗に慰安婦問題を取り上げるのは、背景に女性の人権を擁護しようとする国際的運動があるからであり、そのことを軽視すると、強い反発を招く結果になる。
当然、今回強制的失踪委員会で起こったことについても、この点は問題とされなければならない。しかし、上記に引用した報道を見る限り、日本政府が国際的背景についてどのように取り組み、対処したかまったくみえない。あるいは抗議しただけで終わったのかもしれない。もしそうであれば、国連の委員会をいたずらに刺激するだけで終わることにならないか。「抗議した」というのは日本国内向けのメッセージにしかならないのではないか。
国際的側面についての日本政府のこれまでの取り組みは非常に不十分であった。日本の政治家が重要委員会の議長を批判して、顰蹙を買ったこともあった。重要な報告を行ったクマラスワミ氏に日本政府の高官が抗議して、その問題は報告書の内容に影響しないと一蹴されたこともあった。
残念ながら、日本はこのようなことを繰り返し、結果慰安婦問題をますますこじらせてきたのではないか。日本政府の戦略的対応が望まれる。
慰安婦問題をめぐる国際状況
国連の強制的失踪委員会は11月19日、日本に対する審査の最終見解を公表した。旧日本軍の従軍慰安婦問題について、元慰安婦らへの補償は十分とは言えず「最終的かつ不可逆的に解決した」との日本政府の立場に遺憾の意を示した。また、元慰安婦らは国家による強制失踪の犠牲者の可能性があると指摘。条約が定める適切な補償が十分に行われていないとして懸念を示した。最終見解に法的拘束力はない。(共同通信社 11月20日付報道によった)。「強制的失踪委員会」とは、「強制的失踪条約」の運用状況を審査する機関であり、日本からも委員が出ている(東京大学の寺谷広司教授)。議長は現在アルバニア人のMs. Suela JANINA。
ジュネーブ国際機関日本政府代表部の担当者は「最終見解は誤解や偏見に基づく一方的なもので極めて遺憾だ」と述べ、国連人権高等弁務官事務所に抗議したことを明らかにしたという。
しかし、日本政府のとった行動がこれだけであれば、人権理事会はじめ、慰安婦問題を取り上げているいくつかの委員会で起こってきたことの繰り返しになりかねない。
日本政府は事実関係の誤りについては、よく調べ、間違いを指摘し、必要に応じ抗議もしてきた。これだけ聞けば、当たり前のことだと思われるかもしれないが、これら国連機関が執拗に慰安婦問題を取り上げるのは、背景に女性の人権を擁護しようとする国際的運動があるからであり、そのことを軽視すると、強い反発を招く結果になる。
当然、今回強制的失踪委員会で起こったことについても、この点は問題とされなければならない。しかし、上記に引用した報道を見る限り、日本政府が国際的背景についてどのように取り組み、対処したかまったくみえない。あるいは抗議しただけで終わったのかもしれない。もしそうであれば、国連の委員会をいたずらに刺激するだけで終わることにならないか。「抗議した」というのは日本国内向けのメッセージにしかならないのではないか。
国際的側面についての日本政府のこれまでの取り組みは非常に不十分であった。日本の政治家が重要委員会の議長を批判して、顰蹙を買ったこともあった。重要な報告を行ったクマラスワミ氏に日本政府の高官が抗議して、その問題は報告書の内容に影響しないと一蹴されたこともあった。
残念ながら、日本はこのようなことを繰り返し、結果慰安婦問題をますますこじらせてきたのではないか。日本政府の戦略的対応が望まれる。
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