平和外交研究所

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朝鮮半島

2020.01.15

文在寅大統領の徴用工問題についての姿勢

韓国の文在寅大統領は1月14日、内外メディアとの記者会見で徴用工問題について語った。先般、原告弁護団などが創設を発表した日韓合同の協議体に「韓国政府は参加する意向がある」と表明しつつ、「韓国政府はすでに何度も解決方法を提示している。日本側も努力しなければならない」とし、「(日韓が)ひざをつき合わせ、知恵を合わせれば十分に解決の余地がある」とも述べた。

文大統領が日本側に向けて述べたことに新味はない。あまりにも政治的ジェスチャーであり、このままでは徴用工問題は未解決のまま推移する恐れが大きい。日本政府は、公表された限りでは「国際法違反の状態の是正を求める」としか表明していないようだが、文大統領の姿勢には次のような問題がある。
 
第1に、文大統領は、徴用工問題の解決に韓国政府が責任を負っていることを認めていない。記者会見での発言を聞くと、韓国政府を原告代理人の弁護士や政財界の関係者などと同列に置いている印象である。しかし、日韓両国が1965年に関係を正常化した後、韓国政府は大企業を育成する方針を取り、請求権問題を解決しなかったので今日の問題があるのである。当時は、韓国政府としてそうすることが必要だったことは理解できるが、韓国はすでに先進国となっており、そのような方針を維持すべきでない。文大統領はそのような経緯を無視しているのではないか。

第2に、文氏は、韓国の世論が承認する解決策でなければならないと述べている。韓国政府が元徴用工の主張通りに対応するのは韓国側の問題であるが、日本政府は韓国政府と協議して決定したことに従うのは当然である。韓国政府は、日本政府に対して、韓国政府以上に韓国民の要求に従うよう求めても日本政府としては応じられない。

第3に、日韓両政府が合意した請求権問題の解決方法を無視するならば、今後すべての請求権に基づく要求が蒸し返される危険がある。そうなっては日韓関係は破壊されるだろう。両国政府はそのような事態を惹起させてはならない。

なお、韓国に対する輸出規制の強化についてはすでに両国間の協議が始められており、徴用工問題とは関係させずに適正な解決を図るべきである。

2020.01.03

北朝鮮の再戦略転換

ザページに「北朝鮮が不気味な「新戦略兵器」言及も「非核化」交渉の余地はある?」と題する一文を寄稿しました。
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2019.12.31

北朝鮮労働党中央委員会総会で何を決定するのか

 12月28日から、北朝鮮労働党の中央委員会総会が開催されており、31日も継続しているという。このように4日間も続く中央委員会総会は金正恩委員長になってからはもちろん、金正日時代にもなかったことであり、異例中の異例である。

 金委員長は2018年および19年と同様「新年の辞」を発表するだろうから、今次労働党中央委員会総会の意義と結論はその際に明らかになると考えられる。そうであれば明日まで待つのが賢明であろうが、北朝鮮をめぐる状況と米朝交渉の困難さにかんがみれば、「新年の辞」の発表前に問題点を確認しておくことは今後北朝鮮情勢を見ていく上で役に立つであろう。

 最大の焦点は、米国が北朝鮮の主張に一向に歩み寄ろうとしないことに業を煮やして、5月以降ミサイルの発射実験を計13回行い、さらに12月初旬には衛星発射場で「重大な試験」を成功させてきた北朝鮮が、今後、さらなる強硬策に出て、核とICBMなどの長距離ミサイルの実験を再開する、あるいはその方向での決定を行うかである。これは大方の見方であろうが、違った角度から見ておくことも必要ではないか。

 第1に、北朝鮮が対米強硬策を取るのに長い時間をかけて中央委員会を開催する必要性はあるか。強硬策を取るならば、金正恩委員長が命令一本で始められるのではないか。軍事的な行動であればあるほど、悠長に大会議を開くことなどしないのではないかという疑問がある。

 第2に、今次会議で、金委員長は「国の主権と安全保障の完全な確保に向け、積極的かつ攻撃的な措置をとる」と述べる一方で、「国家経済の主要産業部門の深刻な状況を早急に是正するための措置」を提示したのはなぜか。つまり、金委員長が軍事的強硬路線と経済発展重視路線を同時に示したのはどのような意図によるのかが問題となる。
 また、北朝鮮経済について「深刻な状況」と述べたのは異例の発言である。もし、軍事強硬路線をこれから取ろうというのであれば、そのようなことは隠すのではないか。

 金正恩委員長は「革命の最後の勝利のため、偉大なわが人民が豊かに暮らすため、党は再び困難で苦しい長久な闘いを決心した」とも述べている。「深刻な状況」と述べたのは、今後は「軍事より経済優先」という考えなのか、それとも、「軍事重視は今後も必要なので経済的には耐えるしかない」というメッセージなのか。前者であれば対米交渉において北朝鮮は譲歩してくる可能性があるが、後者であれば譲歩せず持久戦を戦うことになろう。同委員長の「新年の辞」を注目したい。

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