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2014.01.23

全面深化改革小組の初会合

三中全会の政治体制改革決定を実行するため設立された「中央全面深化改革小組(深改組)」は1月22日、初の会議を開催し、その下に経済体制・「生態文明」体制改革、民主法制領域改革、文化体制改革、社会体制改革、党建設制度改革、規律検査体制改革の6つのサブグループの設置を決定し、李克強、劉雲山、張高麗を副組長に選出した(組長は習近平が先に決定)。
政治体制改革となると、どうしてもこれだけの分野を取り上げざるをえないのであろうが、それにしても総花的である。                                                      この決定に対し、海外を本拠地とする多維新聞は、同日、深改組には政治局常務委員および政治局員の多数が入っているところ、「政治局常務委員会議や政治局会議との権限関係いかんが問題となりうる」「形式的には上級の政治局常務委員会や政治局から深改組に対してどのように監督や是正を行なうのか」「このような問題自体政治改革の一部となるか」「ここに至るまで、妥協・調整を行なったようだ(注 争いがあったことを示唆している)」などとコメントしている。

また、香港の文匯報は同日、ネットで流れた辛辣な批評を紹介している。支持する者もあるが、多くは、中央の権力が深改組組長と副組長の4人に集中されること、地方では人民代表大会代表や政治協商会議主席がそれぞれの中央組織との関係を断たれ、同レベルの深改組の指図を受けることになることなどを問題視している。

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2014.01.22

中国雑記 1月22日まで

○渤海の海底を横切り山東省烟台と大連を結ぶトンネルを建設する計画が進んでいる。近く、国務院の批准を求める予定である。計画では2020年に工事着工、6年でトンネルを開削、10年で完工となっている。完成すれば烟台と大連は40分でつながる由。両地点間の直線距離は170キロであり、現在は海路で6~8時間かかる。陸路では鉄道で1500キロ、高速道路で1600キロの道のりである。(大公報1月22日)
○上海自由貿易区に続いて各地が名乗り上げており、すでに12の地域が国務院の批准を得ている。(大公報 1月22日)
○元中央軍事委員会副主席の徐才厚について、逮捕、投獄はしないが、公の場面に出ることは原則禁止という処分がすでに下されたようである。(多維新聞 1月21日)
○習近平主席が進めてきた「十項規定」(節約の指示)を軍内でも徹底するよう指示されている。軍用車の買い替えに際しても豪華な車を購入してはならない。(多維新聞 1月17日)
○汚職関連報道は現在も引き続き日常的に行なわれている。最近調査を受けたらしい大物としては、海南省副書記兼省長の蒋定之、携帯電話の「中国移動」広東支社前会長兼総経理の徐龍など。徐龍は前政治局常務委員の周永康と関係が深いと言われている。この他、温家宝夫人の問題も時折報道されている。

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2014.01.21

「風立ちぬ」と中国人の目

宮崎駿監督の最近作「風立ちぬ」について、早稲田大学アジア研究機構現代中国研究所の張望講師が寄稿した評論を香港の新聞『明報』(1月21日付)が掲載している。
「風立ちぬ」の主人公堀越二郎は、第二次大戦当時の世界的常識をはるかに超える性能の零戦を設計したことで知られており、そのイメージは研究者あるいは技術者の性格が強いが、張望講師が中国人研究者として、「風立ちぬ」を分析したことは参考に値する。

たとえば、張望は次のように言っている。
「「風立ちぬ」は第二次大戦中、日本最強の零式戦闘機を設計した堀越二郎の夢と愛を語る映画である」
「以前の宮崎監督にはおとぎ話的な題材が多かったが、この作品はがらりと変わって写実的である」「設計士、堀越二郎と文学者、堀辰雄の優れた描写を通して1930年から40年代に至る日本の戦争の歴史を振り返っている」
「この作品には何とも言えない重々しさ(沈重感)と抑圧感(圧抑感)がある。上映終了後、観客には作品を思い出しての笑い声はなく、沈黙のうちに退場していた」
「純粋に飛行機を設計することが好きな青年が、あの戦争期には、国家のため戦闘機を製造することを通じてしか自らの夢を実現する道はなかった。しかも、その成果は軍隊により、神風特攻隊員が自殺的攻撃するのに使われるという、まことに皮肉な結果となった」
「宮崎監督は、この映画を作ったのは、あの苦難な時代を懸命に生きてきた人たちを記念するためだと言っている」

以上は張望講師の印象であり、言わば論評の前段である。そして、「あの苦難な時代を懸命に生きてきた人たち、と言うと、抗日戦争の惨烈な記憶を持つ中国の観衆にはこの言葉の背景にある日本の悲しみは理解困難かもしれない」と問題提起する。要するに、中国人から見れば、日本人は加害者という観念が強く、日本人が苦難の時代を懸命に生きたということなど、思いもよらないだろうと言いながら、以下の日本論(当時の?)に入っていくのである。
「日本の社会においては、「集団(組織)」と「個人」の間にきわめて微妙な緊張関係がある。個人は理想を抱いているが、集団を通じて初めて実現できる。また、一方では、民衆は精神的に集団に依存している。この集団とは政府、会社あるいは団体などである」
そして、張望講師は、日本では国家が自分たちのために働いてくれないと怒ったり、恨んだりするが、他方では、したくないことでも国家のために不承不承することもある、などと分析している。そのバランスが微妙だというのであろう。
このような分析については、評価する人も、しない人もあるはずである。私は、個人主義的傾向が強い中国人らしいと思うと同時に、ひょっとすると、張望講師は共産党の独裁下の中国のことを皮肉っているのではないかという気もしたことを付け加えておく。
いずれにしても、この論評の前段は一般の中国人の反応を意識しつつ、率直な印象を述べているので参考になるかもしれないと思った次第。

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