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2014.01.20

日トルコ原子力協定」

日本とトルコとの原子力協定がアラブ首長国連邦との原子力協定とともに国会へ提出されたが、昨年末に審議はいったん打ち切られた。1月末から始まる通常国会にあらためて提出されるそうだ。トルコとの協定にはアラブ首長国連邦との協定にはない、核燃料の再処理を認めることが盛り込まれており、核不拡散の原則を重視する日本としてそのようなことを認めるべきでないという声が上がり、原子力関連の輸出に熱心な現政権に対する批判と絡んで議論となっている。
日本とトルコとの交渉の詳細は知る由もないが、ある程度推測は可能である。トルコ側が核燃料の再処理を認めてほしいと強く要望したのに対し、日本としては認めたくなかったが、あくまでその姿勢を貫くと、協定の成立、ひいては日本製原子炉のトルコへの輸出ができなくなる恐れがあったので、やむをえず承認したのではないかということである。
福島の事故処理が進行中であるなかで他国に原子炉を輸出すべきでないという反対意見もある。これは最大の論点の一つであろうが、すでに政治問題化していることもあり、ここでは深入りしない。
日本が第三国に核燃料の再処理を認めるのは、日本と米国との原子力協定の下で可能な範囲に限られる。そもそも、日本自身、米国との間で再処理を認められており、今回トルコに対して再処理を認めることは、父(米国)から権利を認めてもらった子(日本)が孫(トルコ)に認めることにたとえることができる。したがって、トルコとの間で再処理を認める前に米国に異論がないか、確かめていたはずである。
しかるに、米国自身、外国に再処理を認めるべきか、方針がぐらついている。1月10日の本ブログで紹介したが、要は、米国としても外国に再処理を認めたくないが、国内の圧力もあり、再処理を認める、ないし目をつぶることが起こっている。その例が2013年10月に仮署名されたベトナムとの原子力協定であり、再処理を禁止する規定が盛り込まれなかった。一方、アラブ首長国連邦との協定では禁止されていた。このようなことから、米国議会などでは米政府の一貫しない姿勢に対する批判も起こっている。
親である米国の事情は子に似ているのである。そのような米国として、日本からトルコへの再処理承認について同意を求められると、駄目だとは言えなかったであろう。推測にすぎないが、どうしてもそういうことになりそうである。
日米ともに、もっと毅然とした態度を取れないかという気もするが、再処理が核武装に直結するわけではない。再処理が悪だ、つまり、平和利用でないとは言えない。もし再処理が悪ならば日本が米国から認められていることも悪になる。
問題は再処理の結果生じるプルトニウムをどのように管理し、利用するかである。悪用すれば核兵器に転用できるのは確かであるが、それは再処理自体の問題でなく、その結果であるプルトニウムの利用いかんである。
また、悪用されないよう監視するのは国際原子力機関(IAEA)であり、この監視を受けることはどの原子力協定でも義務付けられる。そうすることにより、間違いが起こさないための保障措置である。日本・トルコ原子力協定にはもちろんそのことが明記されているので、日米両政府とも安心できる形になっている。

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2014.01.19

靖国神社参拝に関する若者の反応 2

戦争指導者を敬う気持ちを持っている者は少ないのに、なぜ安倍首相の靖国神社参拝に多くの若者が賛同したのか。
一つには、靖国神社参拝が戦争指導者を敬うことになるという認識が若者には少ないためでないかと思われる。若者に限ったことでなく、靖国神社参拝を是とする人には、「靖国神社を参拝するのは戦争指導者を敬うためでない」と主張する人があり、安倍首相もそのような説明を行なっている。若者がそのような説明に影響されている可能性もあろう。
しかし、靖国神社参拝問題は戦後さんざん議論されてきたことであり、この問題に少しでも関心を持っている人なら、靖国神社がある時点から戦争指導者も祭ることにし、その方針を今でも変えようとしないことを知っている。多くの若者はそのことに注意を払う動機も機会もなかったので知らないだけだと思う。
もう一つの問題は、靖国神社参拝の是非を世論調査で問い、あるいは報道する場合に、「中国、韓国などの反応」に焦点を当てる傾向が、予期せぬ結果をもたらしているのではないかということである。先の大戦で大きな被害をこうむった隣国に配慮すべきであるのは当然だが、日本の若者は、常日頃中国や韓国から尖閣諸島、竹島、慰安婦、徴用工、教科書とあれもこれも言われるのに辟易し、しかもそれらは自分たちの世代が作り出したことでないので、靖国神社参拝についても「またか」という反応になりがちである。つまり、彼らは靖国神社参拝がよいことと思ったからでなく、中国や韓国が批判するからよいことだと思って、回答したり、書き込んだりしたのではないか。
もちろん、若者の反応を安易に一般化すべきでない。彼らには物事を理解する力があり、これからの未来を切り開いていく力がある。いわゆる歴史問題は彼らにとってとっつきにくく、厄介な問題であろうが、いずれそのような問題にも正しく対処していくであろう。若者は、我々年長の世代から見れば危ういと思うほど単純に反応することもあるが、無限の可能性を秘めており、我々としては、若者がどんな難問、難題にも対処できるよう、環境をよくし、手助けしていくべきであろう。
米国が「失望した」と言ったのは、このような観点から興味深い状況を作り出したように思われる。これを聞いて若者は驚いたのであろう。靖国神社参拝は中国や韓国による日本批判だけの問題でないという意味合いを感じ取ったからである。
私が話した若者は、靖国神社参拝は、中国や韓国がそれを批判するから問題なのではなく、戦争指導者を敬うことになるから問題なのだという私の考えを説明すると、きわめて率直に、「それなら話が違う。首相が参拝すべきでないことはよく分かる」という反応を示した。米国の態度表明と平仄があっているのではないか。

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2014.01.17

靖国神社参拝に関する若者の反応

安倍首相の靖国神社参拝に関して、産経新聞社とFNNの合同世論調査(A)とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの分析(B)が相ついで公表された(後者は1月14日の日経新聞)。この二つの調査は手法が違うがともに靖国神社参拝に対する日本人の反応を調べるものであり、調査の結果はよく符合していると思う。
とくに興味深いのは若者の反応であり、Aは、若者(男)の半数以上が参拝に肯定的回答をしたとし、Bは、「ありがとう」「よくやった」「いいぞ」の声がネットにあふれたとしている。ネットへの書き込みをしたのは若者が多いと考えれば、Aと符合する。
しかし、日本人の若者はほんとうに首相が靖国神社参拝を支持しているか、疑問の余地がある。もし、「首相が戦争指導者を尊敬することを支持しますか」という問いであったら、回答者の半数以上が賛成したか。推測だがそうは思わない。
実は、安倍首相の靖国神社参拝の後、私も個人的に数人の青年と話をしてみた。これはAやBとは比較にならない小さい数であるが、符合する部分があった。とくに、安倍首相が靖国神社に参拝して、戦没軍人の慰霊をし、敬意を払うことには何も問題ないという反応である。
そこで、「では戦争指導者に敬意を払うことに賛成するか」と聞くと、明確に否定的な反応が返っていた。一般の戦没者に対するのと正反対である。
この点についてはAもBも触れていない。Aはそのような質問はしなかったのであろう。Bは、質問に対する回答でなく、ニュース速報を見聞きした人によるネットへの書き込みの分析なので、戦争指導者の書き込みがなかった(少なかった?)のはなんら不思議でない。
要するに、「戦争指導者を尊敬するべきか否か」という戦後の日本を苦しめてきた問題について日本国民がどのように考えているか。AでもBでも分からないのである。
一方、Bには、安倍首相が参拝した日の午後、米国の駐日大使館が声明を発表すると、そこで使われた「失望」がネットで一気に広がった。米国大使館の声明に若者は鋭敏に反応したのである。ただし、この反応が米国の声明内容に賛成、つまり安倍首相の参拝に反対したのかどうかは分からない。この分析はネットに書き込まれた言葉を単純に集計したにすぎないからである。

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