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2016.04.29

(短評)北朝鮮の党大会開催の目的

 北朝鮮は4月27日、朝鮮労働党第7回大会を5月6日に開催すると発表した。1980年の第6回大会以来開かれていなかったので、36年ぶりといつも言われている。それは間違いでないが、今回の大会はむしろ46年前の、1970年の第5回大会に類似している。
 党規約では、党大会は原則として5年に1回開催されることになっている。労働党は1946年に「北朝鮮労働党」として発足し、後に「朝鮮労働党」となったのだが、第1回から1970年の第5回大会まではほぼ規約通り開催されていた。
 もっとも、発足から間もないころはより短い間隔で開かれていたとか、1966年は党大会でなく臨時に召集される「党代表者会」であったことは注記しておく必要がある。

 1970年の党大会は、金日成にチャレンジするライバルは党内にいなくなった状況下で開催され、金日成の絶対的指導体制を確立した。
 その後、党大会は規約通りには開かれなくなり、10年後の1980年に第6回大会が開催され、それ以降は全く開かれなかった。
 その理由は、金日成および金正日の指導体制がゆるぎなかったので党大会を開催する必要性がなかったのだと思う。
 金正恩第1書記は後継者となってすでに4年を超え、その間にさまざまなことが起こった。今回の党大会は、金正恩が北朝鮮の最高・唯一の指導者であることと(これまでは暫定的だった)、その下で行われた諸施策を正式に承認することが目的だ。大胆な核開発方針も承認されるのだろう。
2016.04.26

(短評)慰安婦問題に関する財団の設立

 慰安婦問題解決のための財団を設立する準備を始めたと、韓国政府が4月21日の記者会見で発表した。
 この財団は昨年末の日韓合意に基づき韓国側が設置し、これに日本側は10億円を拠出することになっている。
 元慰安婦の中には日韓合意に反対している人がおり、また、13日の韓国総選挙で勝利した野党には日韓合意に批判的な意見も多いが、そのような状況にもかかわらず財団設立に着手した韓国政府の努力を積極的に評価したい。
 日本政府としても、この難問解決のため、10億円の拠出はもちろん、できる限りの協力をすべきだ。この日韓合意は極めて重要であり、双方とも誠実に実行しなければならない。
 日本の一部には、ソウルの日本大使館前に設置されている少女像の撤去が実現しなければ拠出すべきでないという意見があるそうだ。撤去が早期に実現するよう韓国政府に働きかけていくのはもちろんだが、拠出の条件とすべきでない。
 二つの角度から見ていく必要がある。一つは、日韓合意においてそのようなことは条件になっていないということだ。これは形式論に聞こえるかもしれないが、合意に忠実に従って実行することが重要だ。
 もう一つは、拠出を少女像の撤去に条件づけると問題の解決に役立たないどころか、逆に複雑化させる恐れがあることだ。日本側がそのことを条件とすると、韓国内で今回の合意に反対している人たちに新たな攻撃の材料を与えるという問題もある。
 「韓国政府はゴールポストを動かす」という観念にとりつかれていてはならない。どの国の政府も一貫していることは大事なことだが、異なる国家間では、相手方が一貫していないと見えることがある。日韓間では多少多めかもしれないが、日米間でも起こっている。1960年代末の繊維交渉がその一例だ。日本政府はその時の対応は間違ってなかったと今でも思っているだろうが、米国の大統領が激怒したことも歴史的事実である。国家間ではそのような認識の食い違いが起こる危険を考慮しつつ、幅をもって対応しなければならない。「わが方は正しく、相手方は間違っている」という単純な発想では危険だ。
2016.04.25

(短評)日本における報道の自由

 国連の特別報告者、デビッド・ケイ氏は、日本における言論の自由に関して調査を行い、4月19日、会見で結果を説明した。暫定的な報告であり、本報告は後日改めて行われるそうだ。特別報告者とは,特定の国の状況または特定の人権テーマに関し調査報告を行うために,人権理事会から任命された独立専門家である。
 ケイ氏の調査について報道しているのは一部の新聞に限られる。暫定的報告とはいえメディアにとって極めて重要なことを報道しないのは理解に苦しむが、本報告がどのように扱われるかを見たい。

 ケイ氏は総じて日本の状況に問題があるとみている。一つは政府の姿勢であり、高市早苗総務相が電波停止に言及したことについて、「政府は脅しではないと主張したが、メディア規制の脅しと受け止められても当然だ」と批判した。
 また、放送法、特定秘密保護法の問題も指摘した。
 自民党の報道にかかわるあり方についても問題点を指摘した。憲法改正草案や、前回総選挙前に放送局に「公平中立」を求める文書を送ったことなどである。
 
 このような見方に、残念ながら、反論する気になれない。むしろ、やはりそうかという気持ちが強い。日本の主要メディアではどのように受け止めているのか知りたいところだ。
 海外のNGOは報道の自由度の国際比較をしており、日本は今年急降下したそうだ。
 米国の主要新聞は、日本における報道機関の姿勢に対しても疑問を呈している。それは日本の実情をよく知らない外国人の見方だと思いたいが、果たしてそう主張できるか。分は悪いのではないか。

 ケイ氏の記者会見の翌日、熊本地震への対応を協議するNHKの災害対策本部会議で、籾井会長は原発関連の報道について「住民の不安をいたずらにかき立てないよう、公式発表をベースに伝えてほしい」と話したそうだ。公式発表とはなにか。政府はメディアが伝えるように細かく状況を発表していないはずだ。NHKは何を頼りに報道せよというのか。
 中国では、新華社という国営の通信社が報道の内容を示しており、各社はそれに従うよう指導、あるいは指示されている。それに従った報道は「正面報道」と呼ばれている。
 しかし、日本にはNHKはあっても、新華社に相当するような公式報道はないはずだ。それとも、我々一般人にはわからない「報道要領」的なものがあるのだろうか。
 日本の報道の自由が中国のようにゆがめられると深刻な問題になる。聞きたくないこと、言われたくないことに耳を貸さないどころか、それをつぶそうとする圧力を加えるのは国を誤ることにならないか。

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