中国
2021.10.06
中国の公安は日本の警察と公安を合わせたくらい強大な権限を持つ機関であるが、日本の警察とは異なり、国民生活を監視・コントロールするとともに権力闘争の手先ともなる。
習近平主席は就任以来反腐敗運動を大々的に展開し、「虎(大物)もハエ(そうでない者)も叩く」として、胡錦濤政権下の政治局常務委員であり、2002-07年公安相を務めた周永康を追放した。習近平はそのほか、とくに2020年以降、公安関係者への追及を強め、元公安部次官の李東生、元天津市公安局長の武長順、元重慶市公安局長の何挺、元公安部共産党委員の夏崇源、元公安部次官の孫力軍、元重慶市公安局長の鄧恢林、元上海市公安局長の龔道安等の高官を罷免した。
これらの人たちは、詳細は不明だが、いずれも周永康の人脈であったという。しかし、今回失脚した傅政華はそうではなく、習政権の下で2018年3月~20年4月司法相を務め、周永康の摘発に貢献し、習氏の権力基盤固めに功績があげた人物であった。
この他、去る6月、国家安全部の董経緯次官が米国へ亡命し、米国の国防情報局の保護のもとにあるとの報道が流れた。新華社通信同月18日付で同氏が防諜会議を主宰したと報じ、火消しを図ったが、共和党全国委員会では亡命の事実を認めている。
いずれにしても、習近平主席は昨年まで部下として活躍していた人物を切ったのである。習氏が公安関係部門の現状に不満であることは間違いない。
習氏は側近の 陳一新 党中央政法委員会秘書長や王小洪公安部次官を重用する考えであり王氏は来年の党大会で公安相に昇格するとの見方が出ているというが、両者は本当に習近平の眼鏡にかなうか、今一つ明らかでない。
習近平はもともと司法・公安関係の現状に不満であり、新たに党の機関として「中央国家安全委員会」を創設した。これは常設ではないが中国版NSC(国家安全保障会議)であり、習近平が主席を務める。従来は党の「中央政法委員会」が司法・公安を監督していたが、「中央国家安全委員会」はさらにその上に立つ最高意思決定機関である。
公安関係の新体制は機能するか。習氏はかつて宣伝部門に対しても批判的になったことがあった。容易に進まないこともあるらしい。
習近平主席は公安部門に満足していない?
中国共産党中央規律検査委員会は10月2日、傅政華・前司法相を重大な規律違反などの疑いで調査していると発表した。傅氏は公安畑が長く(「老公安」と呼ばれている)、公安次官を経て司法相を務めた人物であるが、事実上の失脚であり、いずれ正式にその処分が発表されることになる。中国の公安は日本の警察と公安を合わせたくらい強大な権限を持つ機関であるが、日本の警察とは異なり、国民生活を監視・コントロールするとともに権力闘争の手先ともなる。
習近平主席は就任以来反腐敗運動を大々的に展開し、「虎(大物)もハエ(そうでない者)も叩く」として、胡錦濤政権下の政治局常務委員であり、2002-07年公安相を務めた周永康を追放した。習近平はそのほか、とくに2020年以降、公安関係者への追及を強め、元公安部次官の李東生、元天津市公安局長の武長順、元重慶市公安局長の何挺、元公安部共産党委員の夏崇源、元公安部次官の孫力軍、元重慶市公安局長の鄧恢林、元上海市公安局長の龔道安等の高官を罷免した。
これらの人たちは、詳細は不明だが、いずれも周永康の人脈であったという。しかし、今回失脚した傅政華はそうではなく、習政権の下で2018年3月~20年4月司法相を務め、周永康の摘発に貢献し、習氏の権力基盤固めに功績があげた人物であった。
この他、去る6月、国家安全部の董経緯次官が米国へ亡命し、米国の国防情報局の保護のもとにあるとの報道が流れた。新華社通信同月18日付で同氏が防諜会議を主宰したと報じ、火消しを図ったが、共和党全国委員会では亡命の事実を認めている。
いずれにしても、習近平主席は昨年まで部下として活躍していた人物を切ったのである。習氏が公安関係部門の現状に不満であることは間違いない。
習氏は側近の 陳一新 党中央政法委員会秘書長や王小洪公安部次官を重用する考えであり王氏は来年の党大会で公安相に昇格するとの見方が出ているというが、両者は本当に習近平の眼鏡にかなうか、今一つ明らかでない。
習近平はもともと司法・公安関係の現状に不満であり、新たに党の機関として「中央国家安全委員会」を創設した。これは常設ではないが中国版NSC(国家安全保障会議)であり、習近平が主席を務める。従来は党の「中央政法委員会」が司法・公安を監督していたが、「中央国家安全委員会」はさらにその上に立つ最高意思決定機関である。
公安関係の新体制は機能するか。習氏はかつて宣伝部門に対しても批判的になったことがあった。容易に進まないこともあるらしい。
2021.09.17
豪州は核兵器不拡散条約(NPT)の参加国であり、AUKUSの下での原潜技術供与が同条約に違反しないか問題になりうるが、モリソン氏は「豪州は核兵器の獲得を目指しているわけではない」と主張し、バイデン氏も豪州が保有するのは「原子炉を動力とした通常兵器搭載の潜水艦だ」と説明した。これらの説明でNPTをクリアできるか。豪州は元来NPT参加国の中でも非核を厳守してきたので、批判の声が上がる可能性は排除できないが、動力としての原子炉は核兵器でないとの考えで乗り切るのはさほど難しくないかもしれない。
AUKUSの設置は中国への対抗が目的であることは明らかであり、中国は反発するとみられている。しかし、米国が豪州と英国を誘って共同の安全保障枠組みを設置したことは、中国が南シナ海で国際法違反の拡張行動を取り続け、また公海における航行の自由を脅かし、台湾に対しては軍事力で揺さぶりをかけ、東シナ海でも尖閣諸島へのハラスメントを繰り返したこと、また、中国の新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の人権を擁護せず、香港では国際約束を無視して強引に本土化し、民主派を弾圧したことなどに触発された結果である。
EUの主要国、とくに英、仏、独なども米国と同様、中国に対抗する必要性を認識するようになり、相次いで海軍艦艇を南シナ海へ派遣している。フランスは2021年2月、原子力潜水艦を、英国は8月、空母クイーン・エリザベスを派遣し、またドイツはフリゲート艦を向かわせている。
日米豪印4か国は最近インド・太平洋海域での戦略対話(クアッド)を強めてきた。9月末には首脳会合を行うことが予定されている。米欧諸国が、それに加え、軍事的な面で連合して行動することは第二次大戦後初めてのことである。それは、南シナ海から東シナ海にまで延びる海域における中国の行動があまりにも国際法上問題であり、対処困難であると感じているからである。
中国には中国の言い分があろう。中国がこのような各国連携の動きをどのように見るかはもちろん中国の問題だが、今後の道は二つしかない。一つは軍事的な対立が継続ないし激化することである。中国が9月1日に「改正海上交通安全法」を施行し、外国船に領海外退去を求めることを可能としたことはさらなる強硬策であった。
もう一つの道は、中国が各国との対話を深め、平和的に解決していくことである。どちらが優れているか、答はおのずと明らかである。
米英豪3か国の安全保障協力枠組み「AUKUS」
バイデン米大統領は9月15日、インド太平洋地域における米英豪3か国の新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS」を設置することを明らかにした。米英はまず豪州に対し原子力潜水艦の技術を支援することになっている。豪州はステルス性に優れ、長距離潜航が可能な原潜を保有することになる。米国がこの機密性が高い高度の軍事技術を供与したのはこれまで英国のみであった。今後18か月間、3か国でチームを結成し実行計画を策定するという。AUKUSの発表には、英国のジョンソン、豪州のモリソン両首相もオンラインで参加した。豪州は核兵器不拡散条約(NPT)の参加国であり、AUKUSの下での原潜技術供与が同条約に違反しないか問題になりうるが、モリソン氏は「豪州は核兵器の獲得を目指しているわけではない」と主張し、バイデン氏も豪州が保有するのは「原子炉を動力とした通常兵器搭載の潜水艦だ」と説明した。これらの説明でNPTをクリアできるか。豪州は元来NPT参加国の中でも非核を厳守してきたので、批判の声が上がる可能性は排除できないが、動力としての原子炉は核兵器でないとの考えで乗り切るのはさほど難しくないかもしれない。
AUKUSの設置は中国への対抗が目的であることは明らかであり、中国は反発するとみられている。しかし、米国が豪州と英国を誘って共同の安全保障枠組みを設置したことは、中国が南シナ海で国際法違反の拡張行動を取り続け、また公海における航行の自由を脅かし、台湾に対しては軍事力で揺さぶりをかけ、東シナ海でも尖閣諸島へのハラスメントを繰り返したこと、また、中国の新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の人権を擁護せず、香港では国際約束を無視して強引に本土化し、民主派を弾圧したことなどに触発された結果である。
EUの主要国、とくに英、仏、独なども米国と同様、中国に対抗する必要性を認識するようになり、相次いで海軍艦艇を南シナ海へ派遣している。フランスは2021年2月、原子力潜水艦を、英国は8月、空母クイーン・エリザベスを派遣し、またドイツはフリゲート艦を向かわせている。
日米豪印4か国は最近インド・太平洋海域での戦略対話(クアッド)を強めてきた。9月末には首脳会合を行うことが予定されている。米欧諸国が、それに加え、軍事的な面で連合して行動することは第二次大戦後初めてのことである。それは、南シナ海から東シナ海にまで延びる海域における中国の行動があまりにも国際法上問題であり、対処困難であると感じているからである。
中国には中国の言い分があろう。中国がこのような各国連携の動きをどのように見るかはもちろん中国の問題だが、今後の道は二つしかない。一つは軍事的な対立が継続ないし激化することである。中国が9月1日に「改正海上交通安全法」を施行し、外国船に領海外退去を求めることを可能としたことはさらなる強硬策であった。
もう一つの道は、中国が各国との対話を深め、平和的に解決していくことである。どちらが優れているか、答はおのずと明らかである。
2021.09.16
いずれも北朝鮮の軍事能力の向上を示すことであるが、本稿では軍事技術の問題はさておいて、政治的な側面を注目しておきたい。
一つは、北朝鮮は建国記念日の9月9日、首都平壌の金日成広場で軍事パレードを行ったが、ICBMやSLBMなど大型の戦略兵器は登場させなかった。また、正規軍でなく、労働者や農民で組織された「労農赤衛隊」治安部隊など予備選力が中心となって参加した。開催された時間は午前0時からで、これも異例であったという。
もう一つは、王毅中国外相の韓国訪問と何らかの関係があるかという疑問である。ただし、王毅氏は9月10日から15日まで、ベトナム、カンボジア、シンガポールと韓国の4か国を訪問し、各国の首脳らと相次いで会談したのであり、その目的は、先月のハリス米副大統領およびブリンケン国務長官やオースティン国防長官の東南アジア訪問に対抗することであり、北朝鮮と直接関係するものではなかった。
しかし、北朝鮮としては王毅外相の韓国訪問を不愉快に思った可能性がないとは言えない。かねてから、北朝鮮は中国の高官が韓国を訪問することを快く思っていなかった。2014年7月、習近平主席の韓国訪問に際しては、北朝鮮はあからさまに不快感を示し、6月から7月にかけてミサイルを相次いで発射した。『労働新聞』(7月24日付)は、「国際の正義に責任を持つ一部の国は自国の利益のため、米国の強権政治に対して沈黙している」と、名指しではないが、明らかに中国と分かる形で激しく批判した。同月11日は中朝同盟条約締結53周年記念日であったが、北朝鮮も中国も記念活動を行なわなかった。27日は朝鮮戦争休戦61周年記念日であったが、記念式典で金正恩は中国にまったく触れなかった。8月1日は中国人民解放軍建軍記念日であり、韓国を含め各国の大使館付武官は出席したが、在中国北朝鮮大使館付武官は誰も参加しなかった(『大公報』8月4日付)。
その頃、中朝関係はどん底にあり、その後、米朝首脳会談などを契機に金正恩総書記(当時は「委員長」)は中国に頼る姿勢を見せるようになり、中国も北朝鮮との関係を重視する姿勢を示し、両国関係は顕著に改善された。
現在、中朝関係が以前の険悪な状態に戻ったとは思わない。北朝鮮は国連の制裁を受けたままであり、中国への依存度はむしろ高まっているが、両国の関係には依然として脆弱な面がある。北朝鮮としては、王毅外相の韓国訪問など不愉快なことについては一定程度、その気持ちを表に出しても不思議でない。最新のミサイルを王毅外相の韓国訪問に合わせて発射したという可能性は、ちょっとうがちすぎかもしれないが、頭のどこかにしまっておいてよいと思われる。
北朝鮮の巡航ミサイル発射など
北朝鮮は9月11~12日、初の巡航ミサイルを発射し、1500キロ先の標的に命中させたと発表した。15日にはさらに、短距離弾道ミサイルを2発、移動中の列車から発射した。後者のミサイルはロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北朝鮮版だとみられている。いずれも北朝鮮の軍事能力の向上を示すことであるが、本稿では軍事技術の問題はさておいて、政治的な側面を注目しておきたい。
一つは、北朝鮮は建国記念日の9月9日、首都平壌の金日成広場で軍事パレードを行ったが、ICBMやSLBMなど大型の戦略兵器は登場させなかった。また、正規軍でなく、労働者や農民で組織された「労農赤衛隊」治安部隊など予備選力が中心となって参加した。開催された時間は午前0時からで、これも異例であったという。
もう一つは、王毅中国外相の韓国訪問と何らかの関係があるかという疑問である。ただし、王毅氏は9月10日から15日まで、ベトナム、カンボジア、シンガポールと韓国の4か国を訪問し、各国の首脳らと相次いで会談したのであり、その目的は、先月のハリス米副大統領およびブリンケン国務長官やオースティン国防長官の東南アジア訪問に対抗することであり、北朝鮮と直接関係するものではなかった。
しかし、北朝鮮としては王毅外相の韓国訪問を不愉快に思った可能性がないとは言えない。かねてから、北朝鮮は中国の高官が韓国を訪問することを快く思っていなかった。2014年7月、習近平主席の韓国訪問に際しては、北朝鮮はあからさまに不快感を示し、6月から7月にかけてミサイルを相次いで発射した。『労働新聞』(7月24日付)は、「国際の正義に責任を持つ一部の国は自国の利益のため、米国の強権政治に対して沈黙している」と、名指しではないが、明らかに中国と分かる形で激しく批判した。同月11日は中朝同盟条約締結53周年記念日であったが、北朝鮮も中国も記念活動を行なわなかった。27日は朝鮮戦争休戦61周年記念日であったが、記念式典で金正恩は中国にまったく触れなかった。8月1日は中国人民解放軍建軍記念日であり、韓国を含め各国の大使館付武官は出席したが、在中国北朝鮮大使館付武官は誰も参加しなかった(『大公報』8月4日付)。
その頃、中朝関係はどん底にあり、その後、米朝首脳会談などを契機に金正恩総書記(当時は「委員長」)は中国に頼る姿勢を見せるようになり、中国も北朝鮮との関係を重視する姿勢を示し、両国関係は顕著に改善された。
現在、中朝関係が以前の険悪な状態に戻ったとは思わない。北朝鮮は国連の制裁を受けたままであり、中国への依存度はむしろ高まっているが、両国の関係には依然として脆弱な面がある。北朝鮮としては、王毅外相の韓国訪問など不愉快なことについては一定程度、その気持ちを表に出しても不思議でない。最新のミサイルを王毅外相の韓国訪問に合わせて発射したという可能性は、ちょっとうがちすぎかもしれないが、頭のどこかにしまっておいてよいと思われる。
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