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2015.01.04

金正恩第1書記の新年の辞

金正恩第1書記は元旦にテレビカメラの前で「新年の辞」を述べ、南北関係について「雰囲気と環境が整えば、最高位級会談もできない理由はない」と、朴槿恵大統領との首脳会談を行なう用意があることを示した。このことは注目されたが、金正恩は、その実現のために韓国が米国と毎年行なっている軍事演習を取りやめることを要求し、また、やめない限り北朝鮮は核開発と経済建設の2本柱路線を継続するとも述べた。これに韓国が応じることは困難であろう。韓国側は金正恩の呼びかけを歓迎しつつも慎重な対応をしており、実務者の会談は開かれるかもしれないが、首脳会談が実現する見込みはあまりなさそうである。
金正恩がこのような発言をしたのは、北朝鮮が内外ともに困っているからだとする見方があるが、その当否はともかくとして、このような形でメッセージを発したのは金正恩の個人的好みだからでもあるように思われる。北朝鮮の新指導者となって以来、金正恩は青年らしい振る舞いや率直さを示している。

一方、北朝鮮の中央通信社は、新年を迎えるに際して世界各国の指導者が金正恩(この場合の肩書は「国防委員会第1委員長」か)に対して送った祝電を紹介するなかで、「中国共産党中央委員会総書記、中華人民共和国主席」とだけ言及し、習近平の名前は出さなかった。多維新聞(米国を拠点とする中国系の新聞 1月3日付)はこのことを指摘するとともに、「これはめずらしいことであり、北朝鮮が不満であることを示しているようである」とコメントしている。
2015.01.04

天皇陛下のご感想

新年に当たっての天皇陛下のご感想は次のとおりであると宮内庁から発表されている。

「昨年は大雪や大雨,さらに御嶽山の噴火による災害で多くの人命が失われ,家族や住む家をなくした人々の気持ちを察しています。
また,東日本大震災からは4度目の冬になり,放射能汚染により,かつて住んだ土地に戻れずにいる人々や仮設住宅で厳しい冬を過ごす人々もいまだ多いことも案じられます。昨今の状況を思う時,それぞれの地域で人々が防災に関心を寄せ,地域を守っていくことが,いかに重要かということを感じています。
本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。
この1年が,我が国の人々,そして世界の人々にとり,幸せな年となることを心より祈ります。」

このお言葉が広く報道されているか疑問に思っている。インターネットで流れている話がきっかけで疑問を抱くに至ったのだが、一般的に、新年の祝賀の際の天皇陛下のお言葉はよく報道され、この「ご感想」はそれにくらべメディアの注目は少ないようである。しかし、元旦のNHKは全文を報道しており、ネットで言われているように、意図的に天皇陛下のお言葉を一部除いて報道しているわけでない。ただし、このお言葉が放送されたのは午前5時38分であり、これを見ていた人は特別の日であるとはいえきわめて少ないであろう。放送時間に疑問を唱えるのはNHKに失礼かもしれないが、NHKが言われているように意図的に手を加えて報道をしていないということであれば、反論してもらいたいとも思う。
この「新年のご感想」は、天皇陛下が歴史を重視され、また、平和を祈念してこられた立場から述べられたものであり、国民として考えなければならないことが詰まっていると思う。
2014.12.31

中国は尖閣諸島に取り組む体制を再び強化している。

中国の対外関係に関する2014年最後の話題は尖閣諸島である。

尖閣諸島から70キロくらいの海域に中国の軍艦2隻が常時現れている。時々方向を変えたり、動いたりしているが、基本的にはその海域から離れない。日中首脳会談が行われた際はいったん姿を消したが、その後またもどってきたそうである。中国国家海洋局の船舶が尖閣諸島周辺の海域、時には日本の領海内に入り込んでくるのとは異なり、一定の距離がある海域でのことであるが、中国側には日本側に圧力を加えようという考えがあるようだ。

中国は2012年9月、「党中央海洋権益維持工作指導小組」を設置し、習近平が主任となっている。その下で、外交を総括する楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)のほか、国家海洋局長や軍総参謀部の幹部らが小組員となっている。この小組は無線やテレビ電話を使って現場に指示を出すそうである。2隻の軍艦に指示しているのもこの小組であろう。

中国は12月30日、尖閣諸島のためのサイト(中国名「钓鱼岛专题网站」)を開設した。国家海洋情報センター(中国名「国家海洋信息中心」)が運営しており、そのURLはwww.diaoyudao.org.cnまたはwww.钓鱼岛.cnである。今は中国語版だけであるが、将来日、仏、独、スペイン、ロシア、アラビア語でも見られるようにすると言っている。

中国軍は浙江省温州市の南約50キロ、平陽県鳌江口から東約30キロの地点にある南キ列島(中国名は「南麂列島」)に軍事拠点を建設する計画であり、具体的には、最新鋭のレーダーは既に設置し、さらにヘリポートを整備中で、軍用機の滑走路も建設する計画である。これは12月22日の共同通信による報道であるが、中国の各紙やインターネットはこの報道を頻々と転載した。
この島嶼は尖閣諸島から約300キロ北西にあり、「日米との有事を想定して危機対応能力を高めると同時に、東シナ海上空に設定した防空識別圏の監視を強化する狙いとみられる。南キ列島は自衛隊や米軍の基地がある沖縄本島よりも尖閣に約100キロ近く、尖閣防衛に向けた日米安全保障戦略に影響を与えそうだ」と共同ニュースは解説を加えている。
また、12月30日付の『多維新聞』は、共同ニュースに追加して、「南キ島には海軍が小人数の軍人を派遣していたが、2014年の秋に多数の兵士が送り込まれた。今後、空軍や陸軍も兵を置く予定である」と報道している。
この列島の中で最大の南キ島は住民が約2千人おり、観光地である。国連教育科学文化機関の生物圏保存地域に登録された自然保護区である。中国政府が決定すれば、そのような軍事基地を建設するのは困難でないのであろう。

中国が尖閣諸島に関する取り組み体制を強化しているのは、先般の日中首脳会談に先立って事務的に達成された日中の共同認識に関する日本側説明に中国側は不満であり、反発したからである、ということが背景として語られている。中国側では、日本側が尖閣諸島について紛争があることを認めるまで上述の軍艦の示威行動をやめないと説明する者もいるそうである。しかし、中国側が不満であるのは、共同認識に示されていないことを勝手に思い込んだためである可能性が高いので、中国側には態度を硬化させる前に実証的に何が起こったのか、共同認識とは何であったのか慎重に考え直してもらいたいものである。

日中双方は関係を改善する努力も行なっている。米国の海軍大学が2014年9月、ロードアイランドで開催した「国際シーパワー・シンポジウム」では河野克俊海上幕僚長と中国海軍の呉勝利司令官の会談が実現した。話し合いの内容は、事故を回避するための「海上衝突回避規範」だったそうである。
衝突回避について他国と話し合うことに中国は以前消極的であったが、2014年4月、青島で開催された西太平洋海軍シンポジウムを契機に前向きになっている。河野海幕長と話し合った呉司令官も衝突回避の努力を現場に徹底させると、積極的な姿勢であったと伝えられている。

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