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2014.10.27

香港のデモと習近平

香港のデモについて中国政府が頭を痛めていることは間違いない。10月26日の「禁書網」サイトは香港の月刊誌『前哨』11月号を引用して、香港のデモに関して習近平をめぐる権力闘争が再燃していることを伝えている。真偽のほどは分からないが、記録しておいてよいことであろう。要点は次の通り。

○香港政府および香港警察の「反占拠」勢力は中南海の死活をかけた権力闘争に関係がある。占拠を排除するという名目で、全世界のフラッシュライトを浴びながら香港版天安門事件を起こし、すべての困難の責任を他人になすりつけようとする習近平の手を鮮血で染めさせようとする人たちがいる。かれらは、現職・退職の汚職官吏のため、習近平を引きずり下ろす爆薬を仕掛けているのだ。
○9月28日夜10時、中共中央の香港マカオ工作協調小組の張徳江組長、統一戦線工作担当の劉延東副総理、香港中連弁(中国駐香港特別行政区弁公室)の張暁明主任および香港政府の梁振英長官は、武力を用いてでも占拠を排除する意見を共同で提出した。また、これに先立って、デモ隊の中に紛れ込んでいた私服の警察官から、武器の使用が必要であるという意見が上がっていた。
○香港マカオ工作協調小組の李源潮などは、この共同建議に意見を述べず事実上反対の姿勢であったが、習近平はきっぱりと拒否した。李源潮により伝えられた習近平の言葉は次の通りであった。
「絶対に発砲してはならない。天安門事件の教訓を忘れてはならない。発砲を認める者は失脚する。催涙弾も必要でない。打つなら打ってもよいが、彼らが退けばすぐに止めるべきだ。占拠の問題は一歩一歩悪くなり、現在の状況に至った。どのように解決するか、あなた方の問題だ。結論的に言えば、流血は絶対まかりならない。民衆の支持を取り付けよ。香港のことは香港の人民と協議しなければならない。」
○9月28日午後5時58分、最初の催涙弾が撃ち込まれた。その後約8時間の間に、87発の催涙弾が発射された。しかし、デモ隊は一時的に避難しただけですぐに戻ってきた。しかも、それに怒りを覚えた一般市民までが応援に駆け付けた。そして、警察の防衛戦を破るため1万人に近い市民が占拠地をコーズウェー・ベイからモンコクに広げた。その間、警察は引き上げなければ銃を使う準備をしているという噂を流していた。29日1時57分、催涙弾の発射は止まった。
○もし発砲が行なわれていたら、学生がひどいことになっただけでない。習近平もそうなっただろう。そうなれば香港の繁栄は終わっていた。そうなっても張徳江は江沢民の庇護の下で責任をすべて他人に押しつけるのであろう。

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2014.10.24

中国共産党の四中全会で「法治」の推進を決定?

四中全会では「法治」が主要な議題になると、中国の新聞は会議開催前に報道していた。党の意向を受けた報道であることは明らかであった。
党の中央委員会全体会議は5年に1回開催される全国代表大会に次ぐ重要会議である。新政策が決定されることもある。だから、10月の20~23日開催される四中全会(第4回中央委員会全体会議)で「法治」が主要議題になると聞くと、しばし「本当か」と、中国には失礼ながら、考えてしまった。
しかし、四中全会のコミュニケは、「法治」はあくまで「社会主義の特色ある法治」であり、共産党の指導がすべてに優先すること、つまり司法の独立は今後もないことを再確認した。現体制下で真の「法治」などありえないことであり、一瞬でも本当かと考える必要さえなかったのであろう。
四中全会のもう一つの重要事項である、腐敗した大物の処分については、厳しい処分を受けることは決定済みと大方の中国ウォッチャーがみなしていた周永康前政治局常務委員は意外に処分されなかった。同人は石油閥のトップとしての地位を悪用して汚職に走ったのであり、同様に石油関係の人物で、いわば周永康の子分格である蒋潔敏などは噂通り厳しく処分された。
周永康の問題が晴れたわけではないが、政治局常務委員という高い地位であったことと、周永康のさらに上にいる曾慶紅前国家副主席、さらにその上の江沢民がブレーキをかけた可能性もある。習近平は権力を一身に集め、盤石の地位を築きあげている印象があるが、何でも鶴の一声で決めるには程遠いようだ。周永康の処分をめぐって権力闘争が渦巻いていることはやはり間違いなさそうだ。
1年前に開かれた三中全会は、習近平新政権の足固めのためもろもろの措置を決定する重要会議であったが、四中全会は真の「法治」でない法治を推進し、権力闘争で法治がゆがめられることを強く示唆する会議となった。国民の信頼はさらに遠のくのではないか。

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2014.10.23

「イスラム国」空爆と「保護する責任」

さる8月、過激派組織「イスラム国」に対して米国が始めた空爆は安保理の決議を経ていなかったが、世界の多数の国から支持された。以前、米国やNATOなどが軍事行動を起こした場合、それを承認する安保理決議があったか否か、何回も問題になったことがある。イラク戦争の場合は米英などがイラクに対する攻撃を承認する安保理決議を獲得しようと努めたが、それは果たせないまま開戦に踏み切り問題になった。そのためイラク戦争は違法であるとする主張が生まれた。一方、米英は、1990年以来何回もイラクの対する決議が採択されており、2003年の攻撃も承認されていると主張した。今回の「イスラム国」に対する攻撃については、承認する安保理の決議はまったくなく、議論が分かれる余地はなかったのである。
しかし、米国の空爆を多数の国が支持し、また近隣諸国を含め米軍の作戦に協力する国家も出てきた。米国はそ空爆について、集団的自衛権の行使であるとも説明したが、多数の国はそのために支持したのではなかった。「イスラム国」が占拠している地域で非人道的な扱いを受けている住民を助けることに各国が賛同し、空爆に積極的な意義を認めたからである。
このケースは、安保理決議のあり方にも一石を投じた。国連は国際の平和と安定の維持を脅かす行為について、非強制的および強制的措置を取ってたいおうすると定めている。前者は勧告などであり、後者は制裁措置や軍事行動などである。軍事的な方法とはいわゆる国連軍の派遣であるが、これは実現していない。ともかく国連は、侵略を想定し、それに対する対処を定めているが、人道問題の特殊性を考慮した特別の対応は想定していない。つまり、人道問題が生じても侵略行為がなければ安保理は対応しないのが国連憲章の建前である。
今回の空爆は国連が想定しているこのような平和維持の仕組みに合致しない行動であっても圧倒的多数の国が支持するケースがありうることを示した。それは深刻な人道侵害を防ぎ、あるいはさらなる悪化を防ぐ目的で行なわれる行動である。
深刻な人道問題が発生している場合に、他に方法がないなどの要件を満たさなければならないが、各国の主権の壁を越えて軍事的な介入が必要となる場合があるという考えが21世紀に入る頃から徐々に強まってきた。英語ではresponsibility to protect(R2P)、日本語では「保護する責任」として論じられている問題である。今後、深刻な人道問題が発生した場合には安保理のこれまでのあり方を超えて、人道的行動を積極的に認めるケースが増えてくるのではないかと思われる。
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