ブログ記事一覧
2015.05.27
この発言の要点を箇条書きにした上、それぞれにコメントすると、
○「日本は第二次世界大戦の結果の一部に疑義を示し、認めようとしない。」
コメント①
日本は第二次大戦の結果を受け入れ、ポツダム宣言を受け入れ、サンフランシスコ平和条約で連合国との戦争の結果を法的に終了させた。ロシア(当時はソ連)は自らの意思でこの条約に参加しなかった。戦争の結果に基づく連合国と日本との法的処理に異議を唱えたのはソ連であった。
コメント②
ソ連は日本との中立条約に違反して対日参戦した。日本はこの条約違反を認めないが、そのことはさておいて、ソ連と戦争状態にあったことは認め、1956年の日ソ共同宣言第1項で戦争状態を終了させた。
○「国連憲章に立ち戻れば、日本はいかなる反論もできない。」
コメント③
ロシアはソ連時代から日本との平和条約交渉において、国連憲章107条を援用することがあった(1989年の交渉)。ラブロフ外相の発言はその時の議論にならったものであろう。
コメント④
しかし、国連憲章107条は、「この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。」と書いてある。ラブロフ外相の解釈はこれと違っている。
なお、直接言及しなかったが、ラブロフ外相は北方領土問題を意識して発言したのであろう。コメント①で述べた「ソ連が自らの意思で平和条約に参加しなかった」ため、ソ連が他の連合国とともに千島列島の法的処理を行なう機会を逸したことは歴史の常識である。
(短文)ラブロフ外相・北方領土・国連憲章107条
ラブロフ・ロシア外相は、5月23日、ロシア政府系情報サイト「ロシアNOW」とのインタビューで、「ロシアは常に日本に「第二次世界大戦の結果を認めますか」と聞いていますが、「全般的にはそうですが、この問題についてはそうではありません」という答えが返ってきます。それならば、なぜ日本は国連憲章を批准したのでしょうか。第107条には、戦勝国の行ったことすべてが神聖不可侵と書かれています。文字通りでなくとも、法的な意味は「一切触れない」ということです。国連憲章に立ち戻れば、日本はいかなる反論もできないですし、ロシアは日本が第二次世界大戦の結果に疑義を示す唯一の国で、他の国はそのようなことをしていないと言うことができるのです。」と語ったと報道された。この発言の要点を箇条書きにした上、それぞれにコメントすると、
○「日本は第二次世界大戦の結果の一部に疑義を示し、認めようとしない。」
コメント①
日本は第二次大戦の結果を受け入れ、ポツダム宣言を受け入れ、サンフランシスコ平和条約で連合国との戦争の結果を法的に終了させた。ロシア(当時はソ連)は自らの意思でこの条約に参加しなかった。戦争の結果に基づく連合国と日本との法的処理に異議を唱えたのはソ連であった。
コメント②
ソ連は日本との中立条約に違反して対日参戦した。日本はこの条約違反を認めないが、そのことはさておいて、ソ連と戦争状態にあったことは認め、1956年の日ソ共同宣言第1項で戦争状態を終了させた。
○「国連憲章に立ち戻れば、日本はいかなる反論もできない。」
コメント③
ロシアはソ連時代から日本との平和条約交渉において、国連憲章107条を援用することがあった(1989年の交渉)。ラブロフ外相の発言はその時の議論にならったものであろう。
コメント④
しかし、国連憲章107条は、「この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。」と書いてある。ラブロフ外相の解釈はこれと違っている。
なお、直接言及しなかったが、ラブロフ外相は北方領土問題を意識して発言したのであろう。コメント①で述べた「ソ連が自らの意思で平和条約に参加しなかった」ため、ソ連が他の連合国とともに千島列島の法的処理を行なう機会を逸したことは歴史の常識である。
2015.05.26
にもかかわらずこの構想実現のために国際会議を強引に開催すれば、イスラエルが袋叩きにあうのは不可避であり、米国や欧州諸国はそのようなことは認められないとして、これまで通りイスラエルを擁護したのである。
一方、NPTの外で行なわれている、イランの核開発を抑制するための交渉は、2013年8月にロハニ大統領が就任して以来進展しており、イランは米国に対し国際原子力機関(IAEA)の「抜き打ち査察」を受け入れる用意があると表明したと報道された。「抜き打ち査察」を受け入れるとは、イランが2013年に署名したIAEAの「追加議定書」を批准することを意味している。イランは今まで通常の査察しか受け入れず、しかも、米欧諸国との交渉が進まなくなると査察官を締め出すなどしていた。つまり、通常の査察でさえ十分に協力しなかったので、イランが本当に「抜き打ち査察」を受け入れると、大きな前進となる。
イスラエルは交渉の当事者ではないが、イランが核兵器を獲得すると直接脅威を受けるので、かねてから交渉6カ国が安易な妥協をしないよう強く要望していた。とくにネタニヤフ首相は強硬で、イランとの対話を実現したいオバマ大統領に批判的な姿勢をとっており、先だっては米国政府と協議しないで米議会を訪問してオバマ大統領に批判的な演説を行い、イスラエルと米国の関係は急激に悪化した。
この度のNPT再検討会議で米国はイスラエルを擁護する姿勢を再確認したが、今後も米国とイスラエルの関係は微妙に変化する可能性がある。
その1つの要因は、ネタニヤフ首相の強硬姿勢であり、これがいつまで続くかが問題となる。
第2は、2016年に行われる米国の大統領選である。
第3は、イランと6カ国の核交渉は6月に「枠組み合意」を実現することを目指している。
第4は、イスラエルと中国の接近である。従来、中国はアラブ諸国よりであったが、新疆問題などを契機に中国とイスラム勢力との間の矛盾が増大したこともあり、また武器貿易の関係などからイスラエルに接近する姿勢を見せている。
NPT再検討会議で米欧諸国が見せた明確なイスラエル支持の姿勢は、両者の基本関係が変わっていないことを示したが、中東をめぐる情勢、米国との関係、さらには中国との関係などは確実に複雑化している。
NPT・中東非核地帯構想・米イスラエル関係
5月22日、NPTの再検討会議は、中東非核地帯構想をめぐる米欧とアラブ諸国の激しい対立が直接的な原因で決裂した。この構想は、1995年、NPTが無期限延長される際に、米国はじめ核保有国が例外的に大幅な譲歩を行なって検討課題にまで押し上げたが、その後は全く進展していない。中東和平が成立しない限り、生存の危機にあるイスラエルは核兵器を保有し続け、一方、アラブ諸国はNPTで核兵器の保有を禁止されているという状況が続くわけであり、そうである限り中東を非核地帯とすることは困難であろう。にもかかわらずこの構想実現のために国際会議を強引に開催すれば、イスラエルが袋叩きにあうのは不可避であり、米国や欧州諸国はそのようなことは認められないとして、これまで通りイスラエルを擁護したのである。
一方、NPTの外で行なわれている、イランの核開発を抑制するための交渉は、2013年8月にロハニ大統領が就任して以来進展しており、イランは米国に対し国際原子力機関(IAEA)の「抜き打ち査察」を受け入れる用意があると表明したと報道された。「抜き打ち査察」を受け入れるとは、イランが2013年に署名したIAEAの「追加議定書」を批准することを意味している。イランは今まで通常の査察しか受け入れず、しかも、米欧諸国との交渉が進まなくなると査察官を締め出すなどしていた。つまり、通常の査察でさえ十分に協力しなかったので、イランが本当に「抜き打ち査察」を受け入れると、大きな前進となる。
イスラエルは交渉の当事者ではないが、イランが核兵器を獲得すると直接脅威を受けるので、かねてから交渉6カ国が安易な妥協をしないよう強く要望していた。とくにネタニヤフ首相は強硬で、イランとの対話を実現したいオバマ大統領に批判的な姿勢をとっており、先だっては米国政府と協議しないで米議会を訪問してオバマ大統領に批判的な演説を行い、イスラエルと米国の関係は急激に悪化した。
この度のNPT再検討会議で米国はイスラエルを擁護する姿勢を再確認したが、今後も米国とイスラエルの関係は微妙に変化する可能性がある。
その1つの要因は、ネタニヤフ首相の強硬姿勢であり、これがいつまで続くかが問題となる。
第2は、2016年に行われる米国の大統領選である。
第3は、イランと6カ国の核交渉は6月に「枠組み合意」を実現することを目指している。
第4は、イスラエルと中国の接近である。従来、中国はアラブ諸国よりであったが、新疆問題などを契機に中国とイスラム勢力との間の矛盾が増大したこともあり、また武器貿易の関係などからイスラエルに接近する姿勢を見せている。
NPT再検討会議で米欧諸国が見せた明確なイスラエル支持の姿勢は、両者の基本関係が変わっていないことを示したが、中東をめぐる情勢、米国との関係、さらには中国との関係などは確実に複雑化している。
2015.05.25
中国が各国の協力を得てこのような銀行設立に漕ぎつけたことは中国の開発金融への取り組みとして、また、中国外交としても大成功であると思う。
しかし、平等な主権国家が協力して設立する国際機関とは言えない。AIIBは、中国が圧倒的な決定権を持ち、中国のための(つまり、「一帯一路」のための)、中国に活動の本拠があり、中国人が代表するという性格の銀行だからである。これに日本が税金を使って拠出することはありえない。日本の企業は今後、AIIBの事業に商業ベースでかかわっていけばよい。株式を取得するもよし、あるいは債券を購入するもよし。
なお、AIIBと「一帯一路」については、2月16,18,19、23日、3月27日、4月1、6、10、15,20日、5月1,13日に当HPに掲載した記事を参照していただければ幸いである。
(短文)アジアインフラ投資銀行(AIIB)の正体
シンガポールで開かれていたアジアインフラ投資銀行設立準備の会合で、設立協定の内容が合意されたと中国財務省が発表した。その内容は明かされていないが、各紙の報道によると、中国の出資比率がダントツに多くて29%、議決権は26%と、中国だけが拒否権を持つことになった。銀行の本部所在地は北京で決定済み。総裁はこれから決定されるが、中国が決定権を握っているので、やはり中国人になると見られている。代表格の理事は北京に常駐しないことも合意されたそうだが、本部所在地が北京であるという性質は何ら薄まらない。また、AIIBの事業は中国の構想である「一帯一路」の実現と密接な関係がある。中国が各国の協力を得てこのような銀行設立に漕ぎつけたことは中国の開発金融への取り組みとして、また、中国外交としても大成功であると思う。
しかし、平等な主権国家が協力して設立する国際機関とは言えない。AIIBは、中国が圧倒的な決定権を持ち、中国のための(つまり、「一帯一路」のための)、中国に活動の本拠があり、中国人が代表するという性格の銀行だからである。これに日本が税金を使って拠出することはありえない。日本の企業は今後、AIIBの事業に商業ベースでかかわっていけばよい。株式を取得するもよし、あるいは債券を購入するもよし。
なお、AIIBと「一帯一路」については、2月16,18,19、23日、3月27日、4月1、6、10、15,20日、5月1,13日に当HPに掲載した記事を参照していただければ幸いである。
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