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2015.06.29

(短文)米中戦略経済対話

 6月23~24日、ワシントンで開かれた米中戦略経済対話で、南シナ海での中国の行動やサイバー攻撃問題については意見が対立したが、それは今回の対話以前から分かっていたことであり、両国の溝が埋まらなかったと言っても深刻な問題ではなかった。
 対話は全体を見ていく必要がある。両国が協力することに合意した分野は9つの領域で100以上の案件に上ると中国側は説明している。具体的には金融、投資、地球温暖化対策、オイルシェール、クリーンエネルギー、航空、鉄鋼、ハイテク、海洋生物保護など多岐にわたる。
 出席者の数は中国側だけで約400人、関与した両政府の機関は数十に上るというジャンボ対話であった。
 これを通じて、中国は、両国が協力していくことの重要性、したがってまた中国の重要性をあらためて米国にアピールした。
 一方、南シナ海やサイバー攻撃の問題が解決したのでないことはもちろんである。中国はこれらの問題を現状以上に悪化させなければ満足であったはずであり、その目的は対話全体が醸し出す強い協力志向の雰囲気の中で容易に達成できたのであろう。
 范長龍中央軍事委員会副主席が今次対話の2週間前に訪米した際には、南シナ海での中国の行動を問題視していた米国は、中国軍のトップクラスであっても以前のような熱烈歓迎はしないという姿勢をはっきりと見せていたので、9月に予定されている習近平主席の訪米に悪影響が及ぶことが懸念されていた。中国は、今次対話において習近平主席訪米の地ならしにも成功したと思われる。
2015.06.26

(短文)「孔子学院」の閉鎖

 中国が2004年以来設立してきた「孔子学院」は126ヵ国、475に上っている。
 日本には、立命館、桜美林、北陸、愛知、札幌、早稲田など13の大学内に設置されている。米国には108ある。
 「孔子学院」は、中国語の普及、中国文化に対する理解増進および文化交流の促進などを目的としており、中国教育部の傘下にある「国家漢辦」が実施している。
 日本も日本語と日本文化の普及のため努めてきたが、これまでに実現したことで満足できる人は少ないだろう。多数の「孔子学院」を短期間の間に作った中国と比べると、日本は数十年前から走り始めていたが十年前から走りだした中国にあっという間に追い抜かれ、しかも、すでに1周遅れになってしまったと言って過言でない。
 しかし最近、閉鎖される「孔子学院」が出てきた。ストックホルム大学、マックマスター大学(カナダ)、シカゴ大学、ペンシルバニア大学およびリヨン大学などである。設立が中止されたところと授業が停止されたところを含む。閉鎖ないし停止された数はまだ5か所とわずかであるが、その理由は学問の自由が担保されないということである。
 このような閉鎖傾向が今後続くか、単純に占うことはできないが、共産党の独裁下にある中国が開設・運用する学校で学問の自由が守られるか、もともと疑問視する人も居た。まだ数は少ないとしても、どうなるか注目される。
(以上は台湾の中国時報6月24日付の記事によった。「孔子学院」の数などはそのHPに記載されているものと同じである。)
2015.06.25

(短文)米中戦略経済対話での汪洋副首相の発言

 米中戦略経済対話は6月23日から2日間ワシントンで開催された。米側のバイデン副大統領が南シナ海の問題について強い言葉で米国の立場を述べ、中国側の劉延東副首相が米国と新しい大国間関係を構築したいと述べたことなどは予想された通りの発言であった。
 中国側のもう一人の代表である汪洋副首相は、「中米両国は対抗するより対話がよい。対話してもすべてのことについて双方とも勝つというわけにはいかないが、対抗すれば双方とも負けることがありうる。中米両国は以前のように大国同士が対抗する道を歩むことはできない。協力の道路は平たんでないこともある。世の中は元来道などない。多くの人が歩けば道になる」などと発言した(香港の大公報や明報などの24日報道)。
 汪洋副首相としては工夫した表現だったのであろう。一面の道理をついているが、この言葉は、なんでも既成事実化できるという意味にもとれるし、さらに数の論理を是認していると言えるかもしれない。踏み固めて道を作るのに人が多いほうが都合がよいからである。
 中国の表現が素晴らしいことは、日本人はよく知っており、日本語に多数取り入れている。しかし、発言の時には注意が必要である。同じ漢字だから同じ意味であるはずだというのはあまりにもナイーブである。「湯」は、日本では銭湯を指すことが珍しくないが、中国では普通「スープ」のことであり、「タンメン(湯麺)」の「タン」である。そのようなことを知っている中国人は賢明である。一方、「湯」は「スープ」の意味であり、日本人もそのように使うべきだというのは大国ショービニズムであろう。なお、「熱いお湯」は現代中国語では「湯」と言わず、「開水」が普通である。
 汪洋副首相の発言の意図は那辺にあったのか。南シナ海で中国の行動が問題になった直後であるだけに気になるが、数の論理を是認していたのではないと思いたい。中米戦略経済対話では、中国が「大国」であることを米国に認めてもらいたいと望んでおり、そのような場合に米国を刺激する、数の論理を肯定することは常識的にはないだろうからである。

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