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2015.12.23
しかし、米欧とロシアの意見が全く違っているアサド大統領の処遇について決議は何も言っておらず、ロードマップ通りに事が運ぶか、楽観的に見られないと広く指摘されている。
確かにそれも問題だが、過激派組織ISの問題がどのように扱われているか、分かりにくい。
まず、和平会議にISは招待されるか。答えはノーだろう。決議はそういう想定で書かれていると読める。常識的に考えても、テロ集団であるISが国連主催の会議に招かれることはまずない。この会議は、シリア政府と反体制派の間で先に新政府を作る、それと並行して、あるいはその後、ISの問題に取り掛かるという手順を想定しているようだ。
しかし、シリアの停戦には特殊な点がある。シリアの武力紛争は、大きく言って、シリア政府、反体制派およびISの3者の間で発生しており、それに米国、ロシアなど空爆を実行している国が関係して複雑な構図になっている。その中でISが絡む紛争が最も激しく、また厄介である。シリアで和平を実現するにはISを含めて停戦しなければならない。
しかるに、ISは和平会議に参加する主体でないので、通常の紛争のように紛争の当事者間で停戦するということにはならない。つまり、ISはシリアでの停戦の実現のために最大の障害であるが、停戦交渉の当事者とは見られていないのだ。
このような問題があるので、今般採択された決議は「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと指摘している。珍しい文言だ。
決議はシリア全土の停戦を’nationwide ceasefire’と言っている。これはISによる武力闘争を含んでいると読めるが、この紛争については、「まず停戦。それから交渉」という形にならない恐れが大きい。停戦はISに関する限り、最終目標である可能性が高い。このような複雑性があるので国連決議は、「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと述べた上で、先にシリアの新政府を樹立し、それと同時に、またはその後でIS問題の解決を進めるとしたものと思われる。
以下が、安保理決議2254号の関係部分である。
5. Acknowledges the close linkage between a ceasefire and a parallel political process, pursuant to the 2012 Geneva Communiqué, and that both initiatives should move ahead expeditiously, and in this regard expresses its support for a nationwide ceasefire in Syria, which the ISSG has committed to support and assist in implementing, to come into effect as soon as the representatives of the Syrian government and the opposition have begun initial steps towards a political transition under UN auspices, on the basis of the Geneva Communiqué, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement, and to do so on an urgent basis;
6. Requests the Secretary-General to lead the effort, through the office of his Special Envoy and in consultation with relevant parties, to determine the modalities and requirements of a ceasefire as well as continue planning for the support of ceasefire implementation, and urges Member States, in particular members of the ISSG, to support and accelerate all efforts to achieve a ceasefire, including through pressing all relevant parties to agree and adhere to such a ceasefire;
7. Emphasizes the need for a ceasefire monitoring, verification and reporting mechanism, requests the Secretary-General to report to the Security Council on options for such a mechanism that it can support, as soon as possible and no later than one month after the adoption of this resolution, and encourages Member States, including members of the Security Council, to provide assistance, including through expertise and in-kind contributions, to support such a mechanism;
8. Reiterates its call in resolution 2249 (2015) for Member States to prevent and suppress terrorist acts committed specifically by Islamic State in Iraq and the Levant (ISIL, also known as Da’esh), Al-Nusra Front (ANF), and all other individuals, groups, undertakings, and entities associated with Al Qaeda or ISIL, and other terrorist groups, as designated by the Security Council, and as may further be agreed by the ISSG and determined by the Security Council, pursuant to the Statement of the ISSG of 14 November 2015, and to eradicate the safe haven they have established over significant parts of Syria, and notes that the aforementioned ceasefire will not apply to offensive or defensive actions against these individuals, groups, undertakings and entities, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement;
シリア和平に関する安保理決議
12月18日、シリアの和平に関して成立した安保理決議第2254号は、来年早々に国連がシリア政府と反体制派を集めて和平のための会議を開催し、6カ月以内に暫定政府を樹立し、新憲法の起草を始め、18ヶ月以内に選挙を実施するというロードマップを決定した。しかし、米欧とロシアの意見が全く違っているアサド大統領の処遇について決議は何も言っておらず、ロードマップ通りに事が運ぶか、楽観的に見られないと広く指摘されている。
確かにそれも問題だが、過激派組織ISの問題がどのように扱われているか、分かりにくい。
まず、和平会議にISは招待されるか。答えはノーだろう。決議はそういう想定で書かれていると読める。常識的に考えても、テロ集団であるISが国連主催の会議に招かれることはまずない。この会議は、シリア政府と反体制派の間で先に新政府を作る、それと並行して、あるいはその後、ISの問題に取り掛かるという手順を想定しているようだ。
しかし、シリアの停戦には特殊な点がある。シリアの武力紛争は、大きく言って、シリア政府、反体制派およびISの3者の間で発生しており、それに米国、ロシアなど空爆を実行している国が関係して複雑な構図になっている。その中でISが絡む紛争が最も激しく、また厄介である。シリアで和平を実現するにはISを含めて停戦しなければならない。
しかるに、ISは和平会議に参加する主体でないので、通常の紛争のように紛争の当事者間で停戦するということにはならない。つまり、ISはシリアでの停戦の実現のために最大の障害であるが、停戦交渉の当事者とは見られていないのだ。
このような問題があるので、今般採択された決議は「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと指摘している。珍しい文言だ。
決議はシリア全土の停戦を’nationwide ceasefire’と言っている。これはISによる武力闘争を含んでいると読めるが、この紛争については、「まず停戦。それから交渉」という形にならない恐れが大きい。停戦はISに関する限り、最終目標である可能性が高い。このような複雑性があるので国連決議は、「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと述べた上で、先にシリアの新政府を樹立し、それと同時に、またはその後でIS問題の解決を進めるとしたものと思われる。
以下が、安保理決議2254号の関係部分である。
5. Acknowledges the close linkage between a ceasefire and a parallel political process, pursuant to the 2012 Geneva Communiqué, and that both initiatives should move ahead expeditiously, and in this regard expresses its support for a nationwide ceasefire in Syria, which the ISSG has committed to support and assist in implementing, to come into effect as soon as the representatives of the Syrian government and the opposition have begun initial steps towards a political transition under UN auspices, on the basis of the Geneva Communiqué, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement, and to do so on an urgent basis;
6. Requests the Secretary-General to lead the effort, through the office of his Special Envoy and in consultation with relevant parties, to determine the modalities and requirements of a ceasefire as well as continue planning for the support of ceasefire implementation, and urges Member States, in particular members of the ISSG, to support and accelerate all efforts to achieve a ceasefire, including through pressing all relevant parties to agree and adhere to such a ceasefire;
7. Emphasizes the need for a ceasefire monitoring, verification and reporting mechanism, requests the Secretary-General to report to the Security Council on options for such a mechanism that it can support, as soon as possible and no later than one month after the adoption of this resolution, and encourages Member States, including members of the Security Council, to provide assistance, including through expertise and in-kind contributions, to support such a mechanism;
8. Reiterates its call in resolution 2249 (2015) for Member States to prevent and suppress terrorist acts committed specifically by Islamic State in Iraq and the Levant (ISIL, also known as Da’esh), Al-Nusra Front (ANF), and all other individuals, groups, undertakings, and entities associated with Al Qaeda or ISIL, and other terrorist groups, as designated by the Security Council, and as may further be agreed by the ISSG and determined by the Security Council, pursuant to the Statement of the ISSG of 14 November 2015, and to eradicate the safe haven they have established over significant parts of Syria, and notes that the aforementioned ceasefire will not apply to offensive or defensive actions against these individuals, groups, undertakings and entities, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement;
2015.12.21
東洋経済オンラインにこの関係の一文、「温暖化防止へ、日本は原発をどうするべきか パリ協定実行に避けられない「原発」の議論」を寄稿した。
地球温暖化対策を決めた「パリ協定」
地球温暖化対策を決めた「パリ協定」は石油、天然ガスなど化石燃料による発電を今世紀後半にはゼロにすることなど画期的な方針を打ち出した。この実行のため、日本は現在全発電の9割以上となっている化石燃料発電をほとんどすべてなくしてしまわなければならない。そうなると原発と再生可能エネルギーに頼るしかない。再生可能エネルギーの大幅増、しかも革命的な大幅増が必要となるだろう。東洋経済オンラインにこの関係の一文、「温暖化防止へ、日本は原発をどうするべきか パリ協定実行に避けられない「原発」の議論」を寄稿した。
2015.12.16
インドはこれからどんどん発展していくか。可能性は中国に劣らず高いが、我が国では、インドという国は中国よりもさらに知られていない。そこで約3千字の短い論考だが、インドの特徴を大づかみに描写してみた。
印象に過ぎないが、インドの政治を論じた著作は複雑な内容のものが多い。中央の政党だけでなく地方の政党もインド連邦の政治に影響力があるなどインドの政治が複雑だからそうなるのだが、このこともインドをわかりにくくしている原因の一つだと思う。
東洋経済オンライン12月16日に「日印関係強化の先にあるハードル インドと中国、なぜ経済に大差が付いたのか」を寄稿しました。
この件名で直接、あるいは「東洋経済オンライン」「経済・政治」で検索できます。
日印関係強化の先にあるハードル インドと中国、なぜ経済に大差が付いたのか
安倍首相が訪印し、モディ首相とインドの鉄道への新幹線による協力、原発の輸出の前提となる日印原子力協定の締結など重要な合意に達した。後者については議論があるが、ここでは論じない。インドはこれからどんどん発展していくか。可能性は中国に劣らず高いが、我が国では、インドという国は中国よりもさらに知られていない。そこで約3千字の短い論考だが、インドの特徴を大づかみに描写してみた。
印象に過ぎないが、インドの政治を論じた著作は複雑な内容のものが多い。中央の政党だけでなく地方の政党もインド連邦の政治に影響力があるなどインドの政治が複雑だからそうなるのだが、このこともインドをわかりにくくしている原因の一つだと思う。
東洋経済オンライン12月16日に「日印関係強化の先にあるハードル インドと中国、なぜ経済に大差が付いたのか」を寄稿しました。
この件名で直接、あるいは「東洋経済オンライン」「経済・政治」で検索できます。
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