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2016.04.18

(短文)中国における公金の不正支出

 中国の『新京報』4月15日付は、公金を不正支出した具体例を報道している(翌日の『多維新聞』によった)。

 腐敗行為の2割は公金で共産党の党費を支払うケースである。例えば、湖南省衡陽県の政治協商会議の元党書記は、党費はもとより、大きいものは家具、家電製品から、小さいものは孫娘のミルク代、紙おむつ、さらには靴下などに至るまで公金で払っていた。
 またよくある例の一つは、党費の横領であり、例えば、江西省撫州のある書記は5万元余を横領した。

 このような報道を当研究所で紹介することにはためらいもあるが、中国における腐敗はあまりにひどいので参考までに掲載しておくこととした。
2016.04.15

パナマ文書が示す中国における信頼の欠如

 パナマ文書による暴露で、中国の習近平主席、英国のキャメロン首相、ロシアのプーチン大統領など世界的指導者が脱税工作に直接的、あるいは間接的に関与したのではないかと議論を呼んでいる。
 中国政府は神経をとがらせ、関連の報道を遮断したり(英ガーディアン紙によれば一昨年ころから何回か起こっている)、記者会見などでは一切ノーコメントで、話題にしないという厳しい反応を示したりしている。
 習近平を擁護する意見も出ている。習近平の義理の兄が以前オフショア法人に関係していたがもう終わっていることだから習近平には問題ないとする擁護論で、ネットに流れている。
 世界的な指導者の問題だから関心が集まるのはごく自然なことだが、中国についてはそれだけで済まない。もっと全体的な、現在の体制にかかわってくる問題があるように思われる。

 パナマ文書を作成したMossack Fonseca法律事務所に対し、パナマに法人設立を依頼した(目的は脱税)全世界の企業・個人のなかで、中国人と香港人(個人と法人を含め。以下単に中国人)が最も多くて16300あり、これは、2015年末の時点で、この事務所に来た依頼全体の約3分の1を占めており、ほかのどの国より断然多い。つまり、中国人は世界のどの国の人よりも多くオフショア法人を利用しているのだ。
 日本はいまのところまだほとんど出ていない。一説によると約400の個人・法人がかかわっているとも言われているが、仮にこの数字だとしても中国の40分の1だ。相対的には、あまりに少ないので物足りない気持ちがしないではないが、世界を股にかけて活躍するのは良いことなら別だが、脱税のためであれば喜べない。

 ともかく、これほど多くの中国人がオフショア法人を作りたがるのはなぜか。
 第1は、脱税が目的だ。
 第2に、中国の法と司法に信頼がないからだ。
 第3に、中国内では資本、カネの保護、移動が制限されており、金持ちには何かと不便だ。だから、特権階級はため込んだカネをオフショアで運用したがる。
 さらに、人民元のレートが低下するに伴い、この傾向が激しくなっている。

 これら3つの理由は相互に関係がある。とくに、第2と第3は密接に関連しあっているが、第2の方が広い。

 このような現象は不正行為を働いている中国人の個人的問題と見るのは皮相的な観察だ。中国には権力とつながり、また、権力によって保護され、利益をむさぼっている人が多数いることが問題だ。党と政府の官僚だけでなく、その親族も特権階級の一部を構成している。一種の社会現象と言えるだろう。
 しかも、彼らは、そのような不正行為がまかり通る状況は長続きしないと思っている。つまり、彼ら自身もよくないことだという認識を多かれ少なかれ抱きつつ、今のうちにできるだけ儲けておこうと考えている。彼らは結局、自分自身たち、自分たちの体制に信頼を持っていないのではないか。
 これはいわゆる「裸官」、すなわち、家族を外国で住まわせ、自分ひとり国内で悪事、あるいはすれすれのことをして蓄財し、発覚しそうになると家族のいる海外へ逃亡しようとする人たちに共通の考えだが、それに限らない。法律に触れないで利益をむさぼる特権階級も同様の考えであり、親族を何とか外国で勉強させ、勤務させ、金儲けさせようとしている。
 大多数の特権を享受できない人たちはこのような特権階級を怨嗟の目で見ている。もちろん信頼していない。つまり、中国では特権階級もそうでない人も現在のあり方に信頼を置いていないのではないか。
 中国人をすべて悪人で片づけるべきでないのはもちろんだ。古来より立派な人もいたし、今でも清廉潔白な人に会う。しかし、それより何倍、何十倍もの比率で不心得な中国人が表れてくる。
 ここに述べたことは推測がかなり混じっているが、少なくとも仮説としてその妥当性を確認していくべきことと思われる。

2016.04.12

(短評)ケリー長官の被爆地訪問の印象

 G7外相会合について昨日もコメントしたが、それは「核軍縮および不拡散に関する広島宣言」、つまり、外相会合での議論の結論についてであった。

 ケリー長官は、原爆資料館や原爆ドームなどを訪問した印象として、「感極まるものだったことを個人レベルで表明したい」「驚異的」で「人間としてのすべての感受性を揺さぶられる衝撃的な展示だった」と語ったと伝えられている。メディアによって報道内容に若干の相違はあるが、感極まったこと、驚いたこと、それに極度に強い衝撃であったことなどの点ではほぼ共通している。
 各国の報道を丹念に調べていく余裕はないが、他の外相も同様だったと思われる。そして、外相たちがこのような経験をしたことが今次会合の最大の成果だ。
 
 もちろん、その衝撃から核兵器の非人道性についての確信へ、さらには廃絶に進んでもらいたいと思う。しかし、そのためには、政治的な問題も絡んでくる。そのレベルになると、各国の考えは一致していない。

 実は、今回の会合で外相たちが体験したことも他の人には共有されていない。外相たちは広島へ来る前から核兵器についての知識を持っていたが、その知識は原体験がないうえで得た知識に過ぎず、核爆発の実相を知っておれば知識もおのずと違ってきたはずだ。
 だから、外相たちが被爆体験を多少なりとも共有したことは大きな前進だったと思う。
 次はもちろん世界の指導者たちによる被爆地訪問だ。

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