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2016.04.30

(短文)ロボット兵器の禁止問題

 ロボット兵器の開発は急速に進展しており、新聞などで報道されるたびに、「こんなものまで作っているのか」と驚かされる。
 米国は、最近、ロボット駆逐艦を進水した。全長40メートルで、Sea Hunterという名前までついている。2~3カ月全自動で海洋を航行し、敵の潜水艦を探知・追尾する。ステルス性が非常に高いそうだ。

 国連はロボット兵器について非公式会合で議論を始めており、この4月に第3回目の会合が開かれた。非公式会合と言っても各国政府の専門家が出席する。参加した国の数は94、そのうちアルジェリア、ボリビア、チリ、コスタリカ、キューバ、エクアドル、エジプト、ガーナ、バチカン、メキシコ、ニカラグア、パキスタン、パレスチナ、ジンバブエは禁止を主張している。
 今回の会合では、2016年12月16日に開催されるCCW(特定通常兵器禁止条約会議)の第5回検討会議で、possible recommendations on optionsを決めることとなった。その先については、2017~18年、約6週間の会議でこの問題について禁止か、制限かを決定することが想定されている。つまり、これから2年たたないと具体的な措置は決まらないかもしれないのであり、この問題を熱心にフォローし、禁止を働きかけているNGO、Campaign to Stop Killer Robotsなどはこれでは遅すぎると言っている。
一部の(多くの?)国は、問題意識を共有しつつも禁止するのは適切でない、武器をロボット任せにするのでなく人間によるコントロールを確保すべきだと主張しており、米国などは“appropriate levels of human judgment”が必要との立場だ。
2016.04.29

(短評)北朝鮮の党大会開催の目的

 北朝鮮は4月27日、朝鮮労働党第7回大会を5月6日に開催すると発表した。1980年の第6回大会以来開かれていなかったので、36年ぶりといつも言われている。それは間違いでないが、今回の大会はむしろ46年前の、1970年の第5回大会に類似している。
 党規約では、党大会は原則として5年に1回開催されることになっている。労働党は1946年に「北朝鮮労働党」として発足し、後に「朝鮮労働党」となったのだが、第1回から1970年の第5回大会まではほぼ規約通り開催されていた。
 もっとも、発足から間もないころはより短い間隔で開かれていたとか、1966年は党大会でなく臨時に召集される「党代表者会」であったことは注記しておく必要がある。

 1970年の党大会は、金日成にチャレンジするライバルは党内にいなくなった状況下で開催され、金日成の絶対的指導体制を確立した。
 その後、党大会は規約通りには開かれなくなり、10年後の1980年に第6回大会が開催され、それ以降は全く開かれなかった。
 その理由は、金日成および金正日の指導体制がゆるぎなかったので党大会を開催する必要性がなかったのだと思う。
 金正恩第1書記は後継者となってすでに4年を超え、その間にさまざまなことが起こった。今回の党大会は、金正恩が北朝鮮の最高・唯一の指導者であることと(これまでは暫定的だった)、その下で行われた諸施策を正式に承認することが目的だ。大胆な核開発方針も承認されるのだろう。
2016.04.26

(短評)慰安婦問題に関する財団の設立

 慰安婦問題解決のための財団を設立する準備を始めたと、韓国政府が4月21日の記者会見で発表した。
 この財団は昨年末の日韓合意に基づき韓国側が設置し、これに日本側は10億円を拠出することになっている。
 元慰安婦の中には日韓合意に反対している人がおり、また、13日の韓国総選挙で勝利した野党には日韓合意に批判的な意見も多いが、そのような状況にもかかわらず財団設立に着手した韓国政府の努力を積極的に評価したい。
 日本政府としても、この難問解決のため、10億円の拠出はもちろん、できる限りの協力をすべきだ。この日韓合意は極めて重要であり、双方とも誠実に実行しなければならない。
 日本の一部には、ソウルの日本大使館前に設置されている少女像の撤去が実現しなければ拠出すべきでないという意見があるそうだ。撤去が早期に実現するよう韓国政府に働きかけていくのはもちろんだが、拠出の条件とすべきでない。
 二つの角度から見ていく必要がある。一つは、日韓合意においてそのようなことは条件になっていないということだ。これは形式論に聞こえるかもしれないが、合意に忠実に従って実行することが重要だ。
 もう一つは、拠出を少女像の撤去に条件づけると問題の解決に役立たないどころか、逆に複雑化させる恐れがあることだ。日本側がそのことを条件とすると、韓国内で今回の合意に反対している人たちに新たな攻撃の材料を与えるという問題もある。
 「韓国政府はゴールポストを動かす」という観念にとりつかれていてはならない。どの国の政府も一貫していることは大事なことだが、異なる国家間では、相手方が一貫していないと見えることがある。日韓間では多少多めかもしれないが、日米間でも起こっている。1960年代末の繊維交渉がその一例だ。日本政府はその時の対応は間違ってなかったと今でも思っているだろうが、米国の大統領が激怒したことも歴史的事実である。国家間ではそのような認識の食い違いが起こる危険を考慮しつつ、幅をもって対応しなければならない。「わが方は正しく、相手方は間違っている」という単純な発想では危険だ。

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