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2016.11.09

(短評)トランプ候補の勝利

 11月8日の米国大統領選挙でトランプ候補が次期大統領となることが決定した。来年1月末に就任する。
 破天荒で、攻撃的な発言で多くの人からひんしゅくを買い、選出母体の共和党の内部からも強く批判されてきた人物が大統領になる。
 トランプ候補の基本的勝因は、首都ワシントンの既成政治に対する不満が強い中低層の支持を得ることができたからだ。米国には低所得者のほうが高所得者より税負担率が高いと言われる現実がある。トランプ候補は不満を抱えている人たちにわかりやすい言葉で語りかけ、「偉大な米国」を取り戻すと米国民の自尊心をくすぐった。
 トランプ政権が実際に中低層のためにどのような政策を講じるか、また、それにたいする既成勢力側の反発がどのように起こってくるかが内政の焦点となる。今後、新政権の発足に向けさまざまな準備が進められるが、内政・外交ともに強い不安が付きまとうのはやむを得ない。トランプ氏が核の発射ボタンを持つことなど想像を絶するくらい恐ろしいと思っている人もいる。
 トランプ氏が不法移民やイスラムについて繰り返してきた過激な発言は、大幅に修正する必要がある。不法移民問題の扱いを誤るとラテン系米国人(いわゆるラティノ)との関係が悪化することになりかねない。ラティノは全米で3500万人(2010年の人口調査、全米の人口の約16%)おり、これに不法移民を足すと5千万に近いとも言われている。
 
 日米関係では、トランプ氏はいわゆる「安保タダ乗り論」を繰り返し述べ、米軍の撤退の可能性にも言及した。しかし、日本が米国に依存しなくてすむよう安全保障の原則を変更し、米国と対等の立場に立つことは日本の考えでないし、米国自身望まないだろう。
 もっとも、日米の安全保障問題についてのトランプ氏の発言は二転三転している。安全保障について無知なためであり、新政権として考えが固まるのを見届けなければならない。

 トランプ氏は中国を日本以上に批判してきた。中国の国営メディアは、「トランプ氏は大口たたきの人種差別主義者」などとやり返している。為替操作を含め経済面でも中国を一方的に批判しているが、米国は中国とも経済的に相互依存の関係にあり、米国の一方的な見方を押し付けることはできない。また、政治・外交面では鋭く対立する面もあるが、協力は必要だ。トランプ氏としても、選挙期間中のように一方的に発言するだけではトランプ政権はたちまち立ち往生するだろう。バランスの取れた発言はあまりセクシーでないかもしれないが、諸般の状況を勘案したうえでトランプ氏なりに現実的で、かつ、メリハリを付けた政策を打ち出す必要がある。

 トランプ氏の大統領就任を喜ぶのはロシアのプーチン大統領だけだとも言われているが、この点についてもトランプ氏が複雑な米ロ関係を学習した上でなければ確たることは言えない。

2016.11.08

(短文)中国「インターネット安全法」の成立

 11月7日、中国の「インターネット安全法」は全国人民代表大会(国会に相当する。全人代)常務委員会で承認され、明年6月1日から施行されることとなった。これについて『明報』紙11月8日付は、「この法律案が提示されて以来、中国で活動する外国企業、人権組織は、この法律は貿易障壁となり、また言論空間を締め付けるとして批判してきた。また、BBC放送は、この法律は国家の団結を損ない、あるいは社会主義制度を覆す恐れのある言論を禁止し、一定の場合には政府がインターネットに介入し切断する根拠を与えると指摘している」との解説を加えている。

 政府に強い権限を付与する具体的な条文としては次のようなものがある。
第53条
問題が発生した場合、政府は調査を行い、インターネットを運営する者に対し、問題個所を削除するよう求めることができる。

第54条
  省級以上の政府はインターネットの安全にかかわる危険が発生した場合、当該インターネットの運営する者の法定代理人または主要責任者に対して話し合いを求めることができる。

第56条
  国家の安全と社会における公共の秩序を維持するため、重大な突発的「社会安全事件」の必要性に応じ、国務院の決定または承認のもとに、特定区域内でインターネット通信に対して制限するなど臨時の措置を講じることができる。

 この法律の成立により、習近平政権の2本の鞭のうち言論統制に関する1本は従来に増して太く、強くなったと見るべきだろう。

2016.11.02

(短文)韓国警備艇と中国漁船の衝突

 10月7日、仁川市の西方の海上で、中国漁船が取り締まりに当たっていた韓国の高速警備艇に体当たりして沈没させる事件が発生した。警備艇に乗っていた隊員は救助された。
 11月1日、やはり仁川沖で、違法操業を取り締まっていた韓国の警備艇5隻が中国漁船に対し機関銃で600~700発銃撃した。警備艇の規模は3千~1千トンであった。韓国側の発表では、違法操業の中国船2隻を拿捕するため警備員が中国船に乗船していたところ、周辺にいた30隻の中国漁船が威嚇してきたので警備員の安全のために警告射撃を行った由。

注 この海域では時折、類似の事件が起こっている。北朝鮮と中国の船が衝突したこともあった。

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