ブログ記事一覧
2016.11.25
これまで、「駆けつけ警護」は「非自衛」だから認めてこなかった(PKO五原則)が、これからは「自衛」の範囲内との位置づけになった。「自衛」がその分拡大したのだ。そのため、国民には「国際貢献」の名の下に実際には海外派兵をしている、それはまた拡大しているという印象を与えている。
本来「PKO」と「自衛」は性質がまったく異なるものだ。前者は他国のために行うことであるが、後者は日本のためである。
日本は、武力行使ができるのは「自衛」のためだけだという憲法解釈の下(に引きずられて)、PKOも「自衛」の範囲で行ってきた。五原則で武器使用を「隊員自身の生命を守るためなど必要最小限の場合にのみ」認めてきたこと、つまり「駆けつけ警護」を認めなかったことはその表れだった。
しかし、ほんらい「非自衛」であるものを無理に「自衛」にする必要はなかった。PKOの本来の趣旨に立ち返ってみると、PKOは和平・停戦の実現が前提で行われることであり、「自衛」とみなさなくても日本ができる「国際貢献」であった。9条が禁止しているのは国際紛争において武力を行使することであり、PKOにはその心配は無用だからだ。
PKO法を制定する際そうしなかったのは、自衛隊の海外派兵に強いアレルギーがあったからであり、政治的には「自衛」として扱うことが必要だった。
しかし、「自衛」に盛り込める範囲はどうしても限られる。今まではなんとか「自衛」に詰め込んできても、今後は各国並みに「国際貢献」しようとしてもできない。「他国のPKO部隊に対する駆けつけ警護」を認めようとすれば、反対が強くなるだろう。
この際、PKOに関する憲法解釈を変更するか、PKOに我が国から参加する部隊を自衛隊とは別に創設すべきである。そうすることにより、「自衛という隠れ蓑の下にあれも、これも含め、事実上の軍隊を作ろうとしている」という批判はPKOに関する限り成立しなくなるだろう。
「駆けつけ警護」の理論構成を改めるべきだ
政府は11月15日、国連のPKO活動に参加している自衛隊にいわゆる「駆けつけ警護」の任務を付与することを決定した。これにより我が国の国際貢献体制は一歩前進した。これまで、「駆けつけ警護」は「非自衛」だから認めてこなかった(PKO五原則)が、これからは「自衛」の範囲内との位置づけになった。「自衛」がその分拡大したのだ。そのため、国民には「国際貢献」の名の下に実際には海外派兵をしている、それはまた拡大しているという印象を与えている。
本来「PKO」と「自衛」は性質がまったく異なるものだ。前者は他国のために行うことであるが、後者は日本のためである。
日本は、武力行使ができるのは「自衛」のためだけだという憲法解釈の下(に引きずられて)、PKOも「自衛」の範囲で行ってきた。五原則で武器使用を「隊員自身の生命を守るためなど必要最小限の場合にのみ」認めてきたこと、つまり「駆けつけ警護」を認めなかったことはその表れだった。
しかし、ほんらい「非自衛」であるものを無理に「自衛」にする必要はなかった。PKOの本来の趣旨に立ち返ってみると、PKOは和平・停戦の実現が前提で行われることであり、「自衛」とみなさなくても日本ができる「国際貢献」であった。9条が禁止しているのは国際紛争において武力を行使することであり、PKOにはその心配は無用だからだ。
PKO法を制定する際そうしなかったのは、自衛隊の海外派兵に強いアレルギーがあったからであり、政治的には「自衛」として扱うことが必要だった。
しかし、「自衛」に盛り込める範囲はどうしても限られる。今まではなんとか「自衛」に詰め込んできても、今後は各国並みに「国際貢献」しようとしてもできない。「他国のPKO部隊に対する駆けつけ警護」を認めようとすれば、反対が強くなるだろう。
この際、PKOに関する憲法解釈を変更するか、PKOに我が国から参加する部隊を自衛隊とは別に創設すべきである。そうすることにより、「自衛という隠れ蓑の下にあれも、これも含め、事実上の軍隊を作ろうとしている」という批判はPKOに関する限り成立しなくなるだろう。
2016.11.23
第1に、朴槿恵大統領は検察の聴取に応じると明言していたが、検察当局が11月20日、チェ・スンシル氏と2人の前大統領秘書官の起訴を発表した際、朴大統領について一定程度共謀関係にあったと説明したことに反発して、今後は検察当局に協力しないと大統領の弁護士が表明した。
最大の疑問は、検察がなぜ、朴槿恵大統領から直接話も聞かないで共謀関係を認定したかだ。大統領側が引き延ばしたと検察側はみなした可能性はある。引き延ばしたのが事実か、それとも理由があったか、それは我々にはわからない。しかし、引き延ばしたとしても数カ月も待たせたのではなく、せいぜい数日、あるいは1~2週間のことでないか。それなのに、検察がそのような発表をすることが許されるか。日本ではちょっと考えられないことだ。
携帯電話に残された通信などから検察は判断したそうだが、それにしても大統領の話を聞かないで共謀したと公表するのは解せない。
第2に、特別検察官の任命の手続きが進んでおり、これには朴大統領は協力するとあらためて表明している。特別検察官は野党が選んだ2人の候補から1人を大統領が任命する。野党の意見が色濃く反映されるのは当然だが、それでも大統領側は協力するとしているのだ。この特別検察官の調査を待たなければ、大統領の関与は明確にならないのではないか。
特別検察官による取り調べは、大統領側の延命策だと見る見方もあるようだ。そうかもしれないが、野党がそれに応じたことを見ると、そうでないかもしれないと思う。
また、野党は一部の与党議員とともに弾劾手続きを進めることにしたが、野党が認める特別検察官による調査が始まってもいないのに、どうして弾劾できるのかも腑に落ちない。
チェ・スンシルらの公判は近日中に始まるそうだ。公判では、関係の諸事実が明らかにされるだろう。そのなかで朴大統領の関与の可能性も審理されるだろう。それも待たないで、退陣だ、弾劾だ、ということには強い違和感を覚える。
第3に、国政の混乱を朴大統領も国民もどのように考えているのか。国民は朴大統領が退陣しないと韓国の政治はよくならないとみなしているのだろうが、朴大統領はどのように考えているのか。退陣しないことにかんがみれば、退陣するとかえって混乱が増す、あるいは新たな混乱が生じることを恐れているとも考えられる。
もっとも、大統領も国民も混乱は避けたいと言うだろうからこの3つ目の疑問は事の性質上なかなかはっきりしないかもしれない。それにしても、退陣するのとしないのではどちらが混乱が大きくなるかは、韓国の情勢に関心を持つ誰もが考える必要がある。
(短評)韓国の政情についての疑問
韓国は多数の国民が朴槿恵大統領の退陣を求めるという危機的状況にあるが、同大統領がはたして退陣するか。いくつか疑問点がある。第1に、朴槿恵大統領は検察の聴取に応じると明言していたが、検察当局が11月20日、チェ・スンシル氏と2人の前大統領秘書官の起訴を発表した際、朴大統領について一定程度共謀関係にあったと説明したことに反発して、今後は検察当局に協力しないと大統領の弁護士が表明した。
最大の疑問は、検察がなぜ、朴槿恵大統領から直接話も聞かないで共謀関係を認定したかだ。大統領側が引き延ばしたと検察側はみなした可能性はある。引き延ばしたのが事実か、それとも理由があったか、それは我々にはわからない。しかし、引き延ばしたとしても数カ月も待たせたのではなく、せいぜい数日、あるいは1~2週間のことでないか。それなのに、検察がそのような発表をすることが許されるか。日本ではちょっと考えられないことだ。
携帯電話に残された通信などから検察は判断したそうだが、それにしても大統領の話を聞かないで共謀したと公表するのは解せない。
第2に、特別検察官の任命の手続きが進んでおり、これには朴大統領は協力するとあらためて表明している。特別検察官は野党が選んだ2人の候補から1人を大統領が任命する。野党の意見が色濃く反映されるのは当然だが、それでも大統領側は協力するとしているのだ。この特別検察官の調査を待たなければ、大統領の関与は明確にならないのではないか。
特別検察官による取り調べは、大統領側の延命策だと見る見方もあるようだ。そうかもしれないが、野党がそれに応じたことを見ると、そうでないかもしれないと思う。
また、野党は一部の与党議員とともに弾劾手続きを進めることにしたが、野党が認める特別検察官による調査が始まってもいないのに、どうして弾劾できるのかも腑に落ちない。
チェ・スンシルらの公判は近日中に始まるそうだ。公判では、関係の諸事実が明らかにされるだろう。そのなかで朴大統領の関与の可能性も審理されるだろう。それも待たないで、退陣だ、弾劾だ、ということには強い違和感を覚える。
第3に、国政の混乱を朴大統領も国民もどのように考えているのか。国民は朴大統領が退陣しないと韓国の政治はよくならないとみなしているのだろうが、朴大統領はどのように考えているのか。退陣しないことにかんがみれば、退陣するとかえって混乱が増す、あるいは新たな混乱が生じることを恐れているとも考えられる。
もっとも、大統領も国民も混乱は避けたいと言うだろうからこの3つ目の疑問は事の性質上なかなかはっきりしないかもしれない。それにしても、退陣するのとしないのではどちらが混乱が大きくなるかは、韓国の情勢に関心を持つ誰もが考える必要がある。
2016.11.21
次期大統領のトランプ氏の安全保障担当の補佐人であるジェームズ・ウールゼイ氏が、米国がAIIBに参加しないのは戦略的な誤りだと発言したことに関してのコメントだった。
トランプ新政権がはたしてAIIBに参加するか、なお疑問が残る。AIIBにおいては中国の出資額・議決権がダントツに多く、出資比率は中国が約30%であり、2位のインド(8%台)、3位のロシア(6%台)を大きく引き離している。各国の議決権は出資比率に基づいて算出され、中国が約4分の1を確保している。同銀行において重要事項を決定するには75%の賛成が必要なので、中国がノーと言えば他の国がすべて賛成しても成立しない。つまり、中国だけが拒否権を持つということだ。米国が参加してもこれに比べマイナーな加盟国となるほかない。このことは、AIIBの準備過程で話題になり、仮定の問題として考えられたことがあり、それ以来AIIBは変わっていない。米国がそのような地位に甘んじるとは思えない。
米国は日本とともにアジア開発銀行の主要メンバーであり、さらにAIIBに加わる意義は何か、という点でも疑問だ。
さらに、AIIBは中国の「一帯一路」構想、すなわち陸上および海上の新シルクロード建設構想の実現を目的としている。この構想は国際的に決定されたものでなく、中国の国家構想だ。これに米国が参加するようでは、トランプ氏が力説した「偉大な米国」の復活など夢物語であろう。
(短評)トランプ新政権はアジアインフラ投資銀行に加盟する?
11月15日、新華社は中国外交部の耿爽(Geng Shuang)スポークスマンが同日、米国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するのはよいことだと述べたと伝えた。次期大統領のトランプ氏の安全保障担当の補佐人であるジェームズ・ウールゼイ氏が、米国がAIIBに参加しないのは戦略的な誤りだと発言したことに関してのコメントだった。
トランプ新政権がはたしてAIIBに参加するか、なお疑問が残る。AIIBにおいては中国の出資額・議決権がダントツに多く、出資比率は中国が約30%であり、2位のインド(8%台)、3位のロシア(6%台)を大きく引き離している。各国の議決権は出資比率に基づいて算出され、中国が約4分の1を確保している。同銀行において重要事項を決定するには75%の賛成が必要なので、中国がノーと言えば他の国がすべて賛成しても成立しない。つまり、中国だけが拒否権を持つということだ。米国が参加してもこれに比べマイナーな加盟国となるほかない。このことは、AIIBの準備過程で話題になり、仮定の問題として考えられたことがあり、それ以来AIIBは変わっていない。米国がそのような地位に甘んじるとは思えない。
米国は日本とともにアジア開発銀行の主要メンバーであり、さらにAIIBに加わる意義は何か、という点でも疑問だ。
さらに、AIIBは中国の「一帯一路」構想、すなわち陸上および海上の新シルクロード建設構想の実現を目的としている。この構想は国際的に決定されたものでなく、中国の国家構想だ。これに米国が参加するようでは、トランプ氏が力説した「偉大な米国」の復活など夢物語であろう。
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