平和外交研究所

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2020.05.20

原爆投下の日を「祝日」にしてはならない

 来年に延期された東京五輪・パラリンピックの関係で、都内の交通混雑を緩和するため祝日をずらす法改正案が政府内で準備中であり、これによれば、原爆が長崎に投下された日である8月9日を祝日とすることになる。この案を自民、公明両党は了承せず、政府に再考を求めたという。

 両党の判断は正しい。原爆が投下されたことにより広島では約14万人、長崎では約7万人の無辜の市民が殺害された。日本人として決して忘れられない悲惨な出来事であり、毎年、原爆が投下された日である8月6日と9日に日本中が犠牲者を慰霊している。この日を「祝日」にするとは狂気の沙汰というほかない。そんなことを内容とする法改正案を作成してはならない。

2020.05.14

WHO総会と台湾

 WHO(世界保健機関)の年次総会が5月18日、本部のあるジュネーブにおいてテレビ会議の方式で開催される。今年は新型コロナウイルスによる感染問題で世界中が苦しみ、米国と中国がこのウイルスの感染源問題や中国の初期対応をめぐって鋭く対立している中での開催である。

 米国のトランプ米大統領は4月14日、WHOが中国寄りであると批判し、米国がWHOのコロナウイルス対応を検証する間、資金拠出を凍結すると発表した。検証には60〜90日かかる見込みだという。米国が支払いを拒否すれば、WHOは予算総額の約15%、約8.9億ドルを失うことになる。WHOの予算は2年サイクルであり、現在は2018-19年である。義務的な分担金と任意の拠出金から構成されている

 台湾はこの総会にオブザーバーとしても招待されないらしい。台湾は以前オブザーバーとしてWHO総会に参加していたが、2017年からは中国の反対で参加できなくなた。今年についても中国は台湾の参加に反対であると明言しており、総会は台湾の参加がないまま開かれることになりそうだ。

 台湾は世界の感染症対策にとって欠かせない存在である。SARS(重症急性呼吸器症候群)の際にも台湾は貢献した。今年の新型コロナウイルスによる感染問題に関しては、いち早く果断な対策を講じて感染拡大の防止に努め素晴らしい結果をあげた。

 台湾が提供する関連情報は各国にとって貴重なものであるが、中国が認めないため、WHOで作成する報告から台湾は欠落している。台湾は、新型コロナウイルスに関する最新の感染状況を直接WHOに通知しているが、その情報はWHOから各国に伝えられていない。

 こんな状況は即刻是正すべきである。台湾は中国の一部であるという中国の主張に反対しようという意図では毛頭ない。世界的な感染症対策において台湾は各国にとって不可欠のプレーヤーだからである。

 報道によれば、米国と日本の主導の下、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドが台湾のオブザーバー参加を求める意向をWHOに口頭で伝えたという。日本政府は公表していないが、そうであれば称賛したい。

 中国はこれに反発し、参加した各国を非難したらしい。これに関し、ニュージーランドのピーターズ外相は12日、あらためて今回の新型コロナウイルスによる感染問題に関する台湾の対応を称賛し、他国は台湾から多くのことを学ぶことができると指摘した。その後、アーダーン首相は、台湾を巡るニュージーランドの立場は新型コロナウイルスへの公衆衛生上の対応のみに関連していると強調し、「われわれは常に『1つの中国』を支持する立場をとってきた。この立場に変わりはない」と述べた。ニュージーランドのこの姿勢は高く評価できる。

 18日に開催されるWHO総会において、日本は各国とともに、できるだけ技術的、専門的な観点からWHOは台湾のオブザーバー参加を認めるべきだと発言すべきである。共同の声明もありうる。またその際、必要であれば、日本は、「台湾は中国の一部であるという中国の立場を理解・尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」との立場を表明し、日本は何も変わっていないことを再確認することももちろん考えられる。

2020.05.11

新型コロナウイルスの検査目安の変更と専門家会議

 新型コロナウイルスによる感染問題に関する専門家会議はさる2月に設置された。新型ウイルスの検査のあり方が問題の一つであったが、当初、厚労省は重症患者の治療が支障なく行われることを最優先とするため検査を絞らざるをえないと考え、「37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」を検査相談の目安とした。

 しかし、それでは現実の問題に対応できないことがはっきりしてきた。重症患者でなくても容体が急変すること、無症状者の中に保菌者がいてウイルスをまき散らしていることが把握できないこと、日本全体の感染状況が把握できないこと、さらに日本の検査は各国と比べ桁外れに少ないことなどの問題が浮上、あるいは明らかとなってきたのだ。

 5月の初め、つまり検査のあり方が問われるようになってから約2か月半が経過して、政府はやっと重い腰を上げ、検査方針を変更することに踏み切った。「37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」は取り下げ、代わりに「息苦しさ、強いだるさ、高熱など強い症状のいずれかがある場合」に変更した。

 加藤勝信厚労相は5月8日の記者会見でこの変更を発表した際、「(37.5度以上で4日)は相談する側の目安で、4日以上、平熱以上が続く場合は必ず相談するようにと申し上げてきたが、相談や診療を受ける側の基準のように思われてきた。われわれから見れば誤解だ」と述べて顰蹙を買った。実際の検査が増えないのは国民の側の責任であるという発言だったからである。

 検査およびその相談を「37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」とした最初の条件も、変更後の「息苦しさ」などの新条件についても、専門家の意見が参考になったのはまちがいないが、どれほど取り入れられたのか。

 日本では昔から「餅は餅屋」と言ってきたように専門家の意見を重視する。しかし、専門家の意見がそのまま対策や決定になるのではない。そもそも、政府が知りたいことは範囲が広いのに対し、専門家がもっとも得意とする分野は非常に狭い。専門家は日本だけでなく世界のトップクラスであろうが、政府の知りたいこと、聞きたいことすべてについて専門的な知識で答えられるのではない。

 もっとも、専門家はそれぞれ最も得意とする専門分野以外の関連分野でも、例えば医学全般についても一般人にはない知識を持っている。専門家のこのような常識はいわば準専門知識であるが、政府によって設置される専門家会議で重宝されるのはむしろこちらである。このような実態は専門家会議に関する世間の常識とはかなりかけ離れている。

 専門家会議の結論についても、関係省庁の官僚が草案を作成し、それで問題ないかを専門家に諮るというのが実態で、常識とはかけ離れている。はなはだしい場合、一部の表現について修正の意見が出ても無視されることさえある。そんなとき、あくまで修正を求める専門家もいるが、最終的には議長に一任するなどといって対立を避ける専門家もいる。あまり頑張ると、次回の会合にはお呼びがかからなくなるという現実問題があるからだ。

 時間の制約も考慮に入れなければならない。専門家会議が必要なのは緊急事態が多いので時間をかけて事態を調査し、じっくり事故原因を究明することは事実上困難である。

 この制約をどうすれば乗り越えられるか。そのことについてノウハウがあるのは官僚であり、したがって、官僚の要望する通りに動かなければならなくなる。専門家の立場は微妙である。

 新型コロナウイルスによる感染問題のように、従来の知見では対応できないことが出てくる場合、そして世間の厳しい批判の目にさらされる場合、専門家は困難な立場に置かれる。目安の修正後、専門家から出てきた発言には苦渋の跡がにじみ出ていた。

 ともかく、厚労省の説明では、目安の修正後も検査を大幅に拡大するという方針はないようである。検査の在り方が抜本的に改善されないでよいのだろうか心配である。

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