平和外交研究所

2013 - 平和外交研究所 - Page 7

2013.12.03

中国の人事異議申し立て制度

中国共産党組織部は最近「12380短信通報制度(短信挙報平台)」を設けたと新華社電が12月2日、報道した。組織部は人事をつかさどる部門である。
新たに設置された制度は、文書、電話、インターネット、手紙(短信)による通報を総合するもので、規則や規律に違反した人事を通報する制度であり、それぞれの方法による通報の仕方(アドレス)も示されている。
経緯的には2004年に始められた電話による通報制度、2009年に開通したインターネット通報制度を総合・拡大した制度である。
発表によれば正しい人事を確保することが目的になっているが、日本の感覚では恐ろしい制度であり、共産党の指導というか、コントロールが行なわれるところでないと考えられない制度である。
前身の制度が実際どのように運用されてきたか知りたいが、それは叶わぬことなのであろう。

2013.12.02

カイロ宣言70周年記念中国紙報道

12月1日は、カイロ宣言発表の70周年に当たる。11月29日、本ブログに掲載した蒋介石の琉球諸島に関する多維新聞の記事もそのタイミングに掲載されたのであろう。その他にも、この機会にカイロ宣言についての論評をいくつかの新聞が掲載しているが、多維新聞と違っていずれも日本に対する一方的な批判を繰り返すものばかりである。
たとえば、12月2日付の人民日報は、日本はカイロ宣言を否定することを企み、日本国憲法の制約を取り除き、尖閣諸島の領有を固定化しようとしているなどと一方的なプロパガンダに終始している。
普段は比較的中立である香港の『明報』紙も、香港の研究者、林泉忠(国籍は英国らしい。東大で学位を取得した。琉球独立をあおっていると見る向きもある)が、「カイロ会議で中国が世界の四大強国の一つであることが確立した」「カイロ宣言は、戦後の中国の領土問題の処理に関して決定し、あるいは影響を及ぼした」「同宣言は中国の尖閣諸島に対する要求の根拠となっている」「琉球の帰属に対する異議をとなえる権利を残している」など述べたことを紹介している。
これらの報道や論評はカイロ宣言に記載されていないことを根拠とするお粗末なものであるが、多維新聞、さらには同新聞が引用した環球時報の客観的な叙述が中国の新聞としていかに特異かを示しているので、あえてこのブログに掲載することとした。後者の方が本音であろう。

2013.12.01

中国によるスクランブル発進の発表

中国は新設した「東海防空識別区」に侵入してきた日本の自衛隊機と米軍機にスクランブル発進をかけたと発表したが、小野寺防衛相は11月30日、「中国機が以前と変わった飛行をしたとは認識していない」という趣旨のことを述べている。これだけでは少々わかりにくいが、「日本と米国の飛行機はこれまで通りの飛行を行なっている。これに対して中国機がスクランブル発進したのであれば、すぐ分かるが、そういうことはない。中国側の発表は事実でない」ということを言っているのであろう。
中国はそもそもなぜスクランブル発進の発表をしたのか。おそらく、新たに設置した「東海防空識別区」は単なる恰好だけでなく実体を伴うものであり、中国軍は必要な行動をとっていることを中国の内外、とくに一般の世論に対してアピールしようとしたのであろう。この発表を受けて、中国の新聞には今回の措置を支持し、日本に敵対的な感情を見せる論調が飛び交っている。
しかし、この発表は事実でないことが日本側によって暴露された。尖閣諸島付近の空域に今後中国の空軍機が侵入してくることはないか、現在の時点で断定することは早すぎるが、今回の中国側の発表は、いわゆる「東海防空識別区」において一種バーチャルな状況を描き出し、戦闘機がゲームのように雄々しく行動している姿を国民に対して示そうとした可能性がある。それはバーチャルな世界なので、日米などの航空機と直接衝突することにはならない。それは別問題なのである。
実は、尖閣諸島付近の海域においては以前からそのような傾向が現れており、中国側は、「中国の領海に侵入してくる日本の漁船を追い払った」という趣旨の報道を何回もしていた。中国が尖閣諸島を実効支配しているというバーチャル世界の創造である。日本人からは想像さえ困難なことであろう。
このようなことができるのは中国政府が言論を厳しくコントロールしているからであり、習近平政権は言論統制をさらに強めている。日本にも各種の偽装工作があるが、中国ではそれが政府の指示の下に行われているのである。
昨秋、中国は日米の艦隊が尖閣諸島に近い海域で合同演習を行なったと発表したが、その際に掲載した映像は他の海域での演習の映像を流用したものであった(『朝日新聞』12月1日)。今回新華社が報道しているのは、スクランブル発進の対象となった機種名と写真であるが、その写真は、左に日本から飛び立ったF-15、右にスクランブル発進したとされる殲11戦闘機の写真を並べただけのものである。かりに中国が今後、日中双方の航空機が接近した状況の写真を公表しても、子細に真贋を検討しなければならない。
日本では、今回の中国側の発表を「情報戦」と表現しており、それは間違いでないが、さらに「バーチャルな世界を作り出している」面に注目すべきである。

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