平和外交研究所

2013 - 平和外交研究所 - Page 6

2013.12.05

北朝鮮No2の問題

北朝鮮のNo 2、張成沢労働党中央行政部長(国防委員会で金正恩に次ぐ副委員長)が失脚したという観測が流れている。失脚でなく「粛清」されたとも言われている。中国の新聞は本5日時点で、まだ確定的ではないが、ソウルから出た情報を紹介している。情報のきわめて少ない北朝鮮のことであり、軽々に予測することははばかられるが、いずれにしても張成沢について中国の新聞で語られていることは参考になる。とくに次の諸点である。
○張成沢の部下である李龍河行政部第一副部長と張秀吉同副部長が11月末に公開処刑された。両人はかねてから張成沢の腹心の部下であった。
○総参謀長の李英浩が2012年7月に処分された後、張成沢は金正恩によって清算される第1の候補になっていた。張成沢が8月訪中した際、朝鮮労働党の国際部部長の金英吉、副部長の金成男、党中央副部長の李秀栄、合営投資委委員長の李光根、外務省次官の金亨俊などを含む50人の随員を連れていった。このような大規模でハイレベルの代表団を連れていくのは、金日成と金正日以外の人にはありえなかったことである。
○もっとも重要なことは、金正恩が自己の指導的地位を確立するため父金正日の言いつけた通りに振舞わなくなったことであった。金正恩が言い出した「核兵器と経済建設を並行して進める」のは、金正日が重視した「先軍」を緩和し、軍の権限を縮小するためであった。
○金正日の葬儀の際葬列に付き添った7人のうち5人の軍人はこの1年の間に張成沢を除いて全員が追放されている。
○張成沢を倒す上で最大の問題は金正日の妹である金敬姫であるが、健康状態にかねてから問題があり、2012年12月、平壌市内で各国大使などを招いた会合に姿を見せた際には、「立っていられないほど体調が悪い」(外交筋)と伝えられていた(この項は読売新聞12月5日)。
○崔龍海(現人民軍総政治局長)は登場した後、地位が急上昇したが、党、保衛部、保安部に固い基礎を持つ張成沢の上に行くことは困難であった。一方、張成沢は軍に対し影響力が弱かった。両者の間には激しいライバル競争があり、最近は金正恩に崔龍海が同伴することが顕著に多くなっていた。

2013.12.04

「東海防空識別区」に関する中国国防部の説明

「東海防空識別区」に関して、12月3日、中国国防部のスポークスマンが発表した談話の意味を考えてみた。

防空識別区域と飛行禁止区域は別物であり、前者は、航空機が「国際法により認められている飛行の自由に影響を与えない」ことを強調している。
「東海防空識別区」を中国としてどのように管理するかについては、「通常の状況では、飛行計画の通報とレーダーの応答による識別を行なう。必要があれば、軍機をスクランブル発進させ識別(注 原文は「識別査証」)を行なう。具体的にいずれの方法を取るかは、飛行する航空機が軍用か民用か、その問題性(原文は「威嚇」)の程度および距離などの諸要素を勘案して確定する。対象の航空機が脅威でないと判断されればスクランブル発進は必要でなくなるが、必要に応じ監視は継続する。一定程度脅威であることが判明すれば、軍機を適時にスクランブル発進させることになる」。
以上が説明で強調されたことであり、内容的には当たり前のことを述べているが、当初の居丈高なトーンでないことが特徴的である。
一方、民間の航空機が飛行計画を提出することについては、それがどこの国の防空識別区域でも行なわれていることであり、飛行の自由を制限するものでないことを強調しつつ、「ある国の政府だけは、民間の航空会社に対して飛行計画を中国側に提出しないよう圧力をかけている」「中国が通過する航空機に対して飛行計画と関連の情報の提供を求めているのは飛行の安全を保証し、有害な飛行と誤解されることを回避するためである」「ある国の政府が通報しないという立場にこだわるのは無益であり、一種無責任な態度である」と述べている。これはもちろん日本政府の批判であるが、日本だけが問題であるという印象を強調していることが特徴的である。
では、日本であれ、その他の第三国であれ、その航空機が中国側に通報することなく「東海防空識別区」内を飛行した場合中国側としてどう対応するかについては、「必要に応じた措置を取る」という上記の方針以外明確でない。中国当局が民間航空機の通常の飛行であると判断すれば監視だけであろうが、もし、中国にとって危険な飛行であると誤解すれば、軍機のスクランブル発進を含め強い措置が取られる可能性がある。
以上のことは「東海防空識別区」だけに特有のことではないという中国側の主張は国際的に理解されうるものである。しかし、それが尖閣諸島の上空を含んでいることについては、日本側のみならず国際的にも認められるものでない。今回の措置が通常の国際慣行にしたがっているというのは部分的には正しいが、他国の領土の上空を含めているのは説明不可能であろうし、中国側の説明は事実その点には何らふれていない。今回の一見物分かりのよい対外説明のキーポイントはその点にある。

2013.12.04

[



アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.