平和外交研究所

2013 - 平和外交研究所 - Page 21

2013.10.15

「民主生活会」-革命路線の重視か

習近平主席は最近河北省党常務委員会が主催した「民主生活会」に出席し重要講話を行なった。「民主生活会」とは中国革命の早期から行われてきた、批判と自己批判を行なう場であり、河北省の「民主生活会」では、各人は「自分を見直し、衣冠を正し、体を清め、病を治す」ことに努め、形式主義、官僚主義、享楽主義および浪費傾向を排する「四風」の原則に合致しているかを点検・批判した。
批判・自己批判は文化大革命でしばしば行われた、悪名高いことであり、「民主生活会」の強調は左傾化を示すことと受け止められている。とくに、さらなる経済成長が必要であり、そのためには一層の開放、改革が必要と考える勢力から強く警戒されている。
この会議は4日半も続いたが、習近平は全期間出席したらしい。薄熙来事件を契機に革命路線の重要性が再認識されているだけに、このような習近平の姿勢には強い関心が寄せられている。
「民主生活会」は全国の約3分の2の省レベルで行われており、今後さらに増える可能性がある。
現在、中国では、さらなる改革が必要であると主張する意見もあり、一種の論争となっている。

2013.10.14

李小琳の収賄容疑

李小琳中国電力国際公司社長がスイスの保険会社の中国市場への参入に便宜を与えた代わりに賄賂を受け取ったと、10月13日の新華社電が外国の新聞を引用して伝えている。李小琳は、「悪意に満ちた卑劣な中傷だ」と言っていることも紹介し、中立を装っているが、公的な通信機関である新華社が外国の報道を引用したことに意味があるのは当然であり、新華社は認めたも同然である。外国の新聞とはどれか明示していないが、英紙デーリー・テレグラフである。
中央規律検査委員会のような公的機関はまだ動き出していない。少なくとも表面的にはそのように見えるが、実際に李小琳に対する追及が始まると、習近平の力を入れてきた反腐敗闘争の新たな成果となるであろう。李小琳は、すでに調査を開始されている中国最高人民検察院検察長(院長 同院党組書記)の曹建明や国有資産監督管理委員会主任(大臣クラス)の蒋潔敏および中国石油天然ガス集団公司(CNPC)の幹部4名(蒋潔敏はCNPCの前会長であった)などと並ぶ大物である。
さらに大物の周永康前政治局常務委員の処遇が残っており、習近平がこれについても追及の決定を行なえば、権力闘争の様相を一段と強めることになる。もっとも、周永康はあまりに大物過ぎてお茶を濁す程度で終わらせるかもしれないとも言われており、事態はまだ不明確である。習近平としては、他の政治問題ではあまり成果が上がっているとは言えないなかで、反腐敗闘争だけは成果を誇らなければならないが、周永康の追及はほどほどにしつつ、曹建明や蒋潔敏への調査決定で、さらに李小琳も含めるとしても、足りるか、微妙なところであろう。
李小琳は李鵬元首相の娘であり、太子党がまたやったか、という感じである。太子党の関係では、今夏、鄧樸方(鄧小平の息子。文革中の迫害が原因で障碍者となった)と三女の鄧榕(「鄧蓉」とも書く)がオーストラリアなどへ出国したことが想起される。鄧樸方は大金を持ち出しての出国であり、中国政府は行方を追っているそうである。

2013.10.13

東アジアサミット2013

ASEANは10月9日からその首脳会議を開催したのにはじまり、以後順に中国、日本、韓国、インド、米国それぞれとの首脳会議、日中韓3国との首脳会議、そして最後に(10日)この3国の他米国、豪州、ニュージーランド、ロシアおよびインドを含めた東アジアサミットを行なった。
これら諸国に共通の関心事の一つは、南シナ海における平和と安定の維持、また紛争を避けるための行動規範である。中国は同国とASEAN以外の国を域外国とみなし、両者の間での行動規範に関する話し合いに関与すべきでないと主張し、排除しようとしているが、域外の諸国にとっても南シナ海での船舶航行の安全確保は重要な問題であり、行動規範の成り行きに強い関心を抱いている。
米国は例年のASEANとの首脳会議の際にこの問題に関する米国としての関心を表明しており、そのため中国とは対立する結果になっている。クリントン米前国務長官は何回か率直な発言をしており、昨年の会合では、中国の参加者が”Well, we could claim Hawaii.”と発言したので、 “Well, go ahead, and we’ll go to arbitration and prove we own it. That’s what we want you to do.”と応じたそうである(2012年11月29日、ワシントン市内The Newseumにおける演説後の質疑応答。米国務省HP掲載の記録。なお、クリントン長官は明言こそしなかったが、このやり取りがあったのは東アジアサミットあるいは、その前後の会議であったことを示す説明をしていた)。
中国のこの粗野な発言には驚かされるが、今年は、米国で予算が成立せず危機的な状況に陥ったためオバマ大統領は出席できず、米中の首脳が意見を異にしてあからさまに対立する場面はなかった。
一方、ASEANと日中韓との首脳会議は3国の首脳が一堂に会する初めての機会となったが、かねてからの関係悪化のため、3国首脳は対話もしないという異常な事態となった。もっとも、そのこと自体は、やはりそうなのかと思うことであった。
中韓両国の国内事情にも注目しておく必要がある。中国は来月、習近平政権にとっての一大行事である中国共産党第18期中央委員会の第3全体会議を控え、国内は緊張している。
また、韓国は経済状況が悪化していることも原因であるが、朴槿恵大統領の立場は決して楽なものでない。歴史問題に関する主張を抑えるべきだと朴槿恵大統領に期待するのではないが、日韓両国は協力し合う必要があるのは明らかであり、歴史問題についての日本の指導者の姿勢が改善するまで会わないというのは賢明でないと思う。

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