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2016.09.16

韓国の核の傘

 韓国は米国に対し、去る5月には核兵器の共同管理を要望し、8月には第三国の核の脅威に「核の傘」を必ず提供するという確実な保障を求めたが、米国はいずれの要望も断った。
 核兵器の共同管理は米国と一部のNATO諸国(ドイツ、イタリア、オランダおよびベルギー)との間で行われているが、核攻撃のボタンをどちらでも押せるようになっているのではなく、最終的な決定権は米国だけが持っている。それでも共同管理国内に核兵器があるので一定の抑止力になると考えられている。
 韓国がどのようなことを期待しているのか、詳細は不明だが、国連決議を無視して核・ミサイルの実験を繰り返す北朝鮮に対する憤りと、韓国も米国もそれに有効に対処できていないという不満が高じていることが背景にあるのだろう。弾道ミサイルの迎撃システム、THAADの韓国内配備を容認したことについても核に対する要望と同じ背景がある。

 共同管理はあまりにも非現実的だが、「核の傘」は韓国として確認が必要か。韓国はその防衛に米国の協力を得ることになっている(米韓相互防衛条約)。その意味では日本と同様だが、韓国の場合は、脅威が発生した場合はまず米国と協議することと、米韓両国は武力攻撃を抑止するための力を維持・発展させることが決められている(第2条)。
 また、韓国に対する脅威は米国への脅威とみなし、共同で対処することになっている(第3条)。
 日米安保条約とはより強い部分もあれば、弱い部分もある。たとえば、第2条の「協議」については、韓国としてはもっと強いコミットメントにする、つまり協議という条件なしに防衛を義務とするのが望ましいだろう。
 一方、第2条の後段は、北朝鮮の核の脅威に対して米国が抑止力を維持することになっていると読めそうだ。そうであれば、韓国が米国に「核の傘」の確認を求めことは必要ないとも考えられるが、
それでも政治的には必要なのだろう。日本の場合、法的には米国が日本を防衛する義務があるのは明白だが、尖閣諸島などに関して時折その再確認を求めるのと同じ理屈である。

 どこの国でも法的な安心は確保しつつ、そのうえで政治的に必要な措置も講じていかなければならないが、両者があまりかい離すると混乱が生じる。安全保障については国民が刺激されやすいだけに、政府は逆に冷静に対処することも必要だ。つまり、政府は世論を考慮して行動しなければならないが、場合によっては世論と逆にふるまうことも必要だ。
 韓国が米国に核の共同管理や「核の傘」の保障を求めるのは韓国が決めることであり、とやかく言うわけではないが、核の必要性をあまり強調すると米国の考えと合わなくなる。
 もっとも、北朝鮮の核実験について韓国は何もしないのがよいというのではない。北朝鮮の核の問題は米国しか解決できないので米国が北朝鮮と直接交渉すべきであり、日本政府も韓国政府も米国に交渉するよう説得するのが望ましい。朝鮮半島の非核化は20数年前南北朝鮮が合意したことであり、各国もその実現を希求している。その目的のために努力を傾注することが肝要だ。

 おりしもオバマ大統領は核の先制不使用や核実験の制限を国連総会で提案しようとしたが、前者は日本や韓国の反対で取りやめになったと報道された。もっとも、安倍首相はこのような報道は不正確だという考えのようだ。
 核実験の制限は、包括的核実験禁止条約が発効しない中、国連決議で条約の目的を、部分的にでも達成しようとすることであり、有意義なことだ。しかし、これには中国やロシア、それに米国内でもマケイン上院議員のような核保守主義者の反対が強く、日の目を見ないだろうと言われている。オバマ大統領の核を使用しないようにしようという方向の試みが核の積極的使用論に押されているわけだ。
 北朝鮮の核実験を認めることは決してできないが、かといって核で反撃するとか、核を使うことを強調することははたして賢明か。危険な道に入り込む危険はないか。そういう角度からも冷静に見ていくことが必要だ。

2016.09.12

北朝鮮の核実験

 北朝鮮がまた核実験を行った。今年になって2回目だ。ミサイルは今年だけですでに20発ばかり発射している。いずれも国連決議に違反する重大な行為だが、今後さらに第6回目の核実験を行う可能性もあると言われている。
 北朝鮮のこのような行動は日本など周辺の国にとって危険きわまりない。日本の排他的経済水域へ落下したミサイルもあるらしい。かつて、日本の上空を飛び越して太平洋に向かっていったミサイルもあった。
 今回の核実験に対し、各国は国連決議で追加制裁を科し、また日米などは独自の制裁措置を実施することを検討中だ。
 また、制裁の実効性のカギを握っている中国に決議の忠実な履行を求めていく姿勢だ。いずれも当然のことだ。

 しかし、これらの措置だけでは北朝鮮問題の核心に迫ることができないだろう。
 北朝鮮には国家の安全を確保しなければならないという究極の問題がある。そんな国は他にはまずない。各国から見れば北朝鮮が各国に脅威を与えているのであり、まるで正反対の状況に見えるだろうが、北朝鮮が安全を確保できていないのは事実だ。
 しかるに、この問題を解決できるのは米国だけである。中国はすでに北朝鮮という国を承認している。
 米国はグローバルパワーとして世界各地で大変な犠牲と負担を強いられており、そのことを各国は十分理解し協力する必要があるのは当然だが、米国と北朝鮮の問題は他のどの国にも解決できない。米国は中国がまじめに決議を実行すれば北朝鮮の核・ミサイル問題を解決できるはずだとの立場であるが、中国が米国に代わって北朝鮮を認めることはできない。当たり前のことだ。中国はそのことも言っているが、北朝鮮問題に関しては、中国は決議を履行していないという各国の声が大きいためか、あまり注意されない。
 北朝鮮の核・ミサイルはいかなる場合も、いかなる理由でも認められないが、核兵器を放棄させるには北朝鮮の安全問題の解決が不可欠だ。核とミサイルの実験を止めさせることと核兵器を放棄させることは大きな違いがある。前者については、国連決議は内容いかんで効き目を持ちうるが、後者の核の放棄は国連決議だけでは実現しない。
 去る3月に成立し、「史上最強」と言われた決議はその後の北朝鮮の執拗な挑戦的姿勢によって影が薄くなってしまった感もあるが、前述したように中国が忠実に実行しないからであり、今後新たな決議が成立すれば北朝鮮としても考慮せざるをえなくなる可能性はある。
 しかし、どのような内容の決議が成立しても、あるいは米国が最強の措置を取ってもそれだけで核兵器を放棄させることはできないだろう。
 米国は嫌がるだろうが、真の解決には米国が北朝鮮と平和条約交渉をし、核兵器を放棄させるしかないことを日本は説得するべきだと思う。

2016.05.23

(短評)北朝鮮のベテラン外交官の国葬

 北朝鮮の外交官であり、朝鮮労働党の重要な地位である書記にもなった姜錫柱氏が5月20日死去した。同氏が核問題をめぐる米国との交渉に携わったことはよく知られている。その後も北朝鮮の外交の重鎮であり、小泉首相の訪朝の際も金正日総書記のかたわらに同席していた。オバマ政権の発足とともに北朝鮮関係担当大使となったボズワース氏が就任早々訪朝した際、とくに姜錫柱との面会を求めたこともあった。

 姜錫柱氏の葬儀は「国葬」として行われるという。これが事実なら驚きだ。北朝鮮でもほかの国でも、外交官であった人が「国葬」の待遇を受けることは、最近はないのではないか。
 北朝鮮の考えは推測に過ぎないが、外交重視、それも米国との交渉重視の姿勢を示す狙いがあるのではないか。

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