朝鮮半島
2019.07.25
なお、韓国でもこの事件が歴史書に記載されているのはもちろんである。具体的な描写は南北朝鮮で多少異なっているが、ここでコメントすることに関しては南北朝鮮は共通しているとみていよいだろう。
日本では、日本軍が朝鮮で行ったことは清国との勢力争いとして捉えられていた。具体的に一連の経緯を要約すると、「東学党の蜂起に朝鮮朝廷は手を焼いたので、日清両国は朝鮮へ出兵した。清軍は6月8日、牙山に上陸、日本軍は12日仁川に上陸。しかし、これとほぼ同時期に朝鮮朝廷は東学党と和平を結び、東学党の拠点になっていた「全州」を奪回した(6月11日)。日清両軍が到着したのと前後して大義名分がなくなったのであり、朝鮮宮廷は日清両国に京城へ進駐しないよう要請した。清軍は牙山から動かず、派遣軍の司令官、袁世凱は7月中旬帰国した。しかし日本軍は(その機をとらえて?)7月23日、王宮を占領し、大院君に国政総裁を命じた。
両軍の衝突は必至であり、日本軍は清軍を排除すべく行動を開始した。清軍は防御に適さない牙山から成歓に移り陣を張った。29日払暁、日本軍は攻撃を開始し、1時間半で勝敗は決し、清軍は潰走した。
それより4日前の25日、佐世保を出て仁川に向かう日本軍の艦船は、増援兵を輸送中の清国軍船と遭遇し、砲撃。清国船は大損傷を受けて敗走した。豊島沖の海戦であり、日清両軍の最初の衝突であった。
海陸での衝突から数日後の8月1日、日清両国は互いに宣戦布告した。」
この一連の経緯に関し、日本の歴史書は朝鮮側の対応ももちろん説明しているが、主たる流れは日朝ではなく、日清の関係として描写していた。7月23日の行動も日清の争いの一環として捉えたのである。日本にとって最大の敵は清国であり、日本政府が日清の関係を主に考えていたことの反映であった。
しかし、朝鮮としては、日清両国は朝鮮を自己の支配下におさめようと争っていたことが最大の問題であり、日本が清国に対してどのような姿勢で臨むかは二義的な問題であった。1894年7月23日の日本軍の行動も、日本では清国との関係の中でとらえていたが、朝鮮においては日本による侵略の開始という歴史的な大問題だったのである。
1894年7月23日の日本軍の行動
7月23日、北朝鮮中央通信は日本政府の姿勢を批判する報道の中で、今から125年前に日本軍が朝鮮王宮を包囲・占領したことに言及した。これは歴史的事実であり、日本においても歴史書に記載されているが、日本と北朝鮮では見る角度が違っていた。なお、韓国でもこの事件が歴史書に記載されているのはもちろんである。具体的な描写は南北朝鮮で多少異なっているが、ここでコメントすることに関しては南北朝鮮は共通しているとみていよいだろう。
日本では、日本軍が朝鮮で行ったことは清国との勢力争いとして捉えられていた。具体的に一連の経緯を要約すると、「東学党の蜂起に朝鮮朝廷は手を焼いたので、日清両国は朝鮮へ出兵した。清軍は6月8日、牙山に上陸、日本軍は12日仁川に上陸。しかし、これとほぼ同時期に朝鮮朝廷は東学党と和平を結び、東学党の拠点になっていた「全州」を奪回した(6月11日)。日清両軍が到着したのと前後して大義名分がなくなったのであり、朝鮮宮廷は日清両国に京城へ進駐しないよう要請した。清軍は牙山から動かず、派遣軍の司令官、袁世凱は7月中旬帰国した。しかし日本軍は(その機をとらえて?)7月23日、王宮を占領し、大院君に国政総裁を命じた。
両軍の衝突は必至であり、日本軍は清軍を排除すべく行動を開始した。清軍は防御に適さない牙山から成歓に移り陣を張った。29日払暁、日本軍は攻撃を開始し、1時間半で勝敗は決し、清軍は潰走した。
それより4日前の25日、佐世保を出て仁川に向かう日本軍の艦船は、増援兵を輸送中の清国軍船と遭遇し、砲撃。清国船は大損傷を受けて敗走した。豊島沖の海戦であり、日清両軍の最初の衝突であった。
海陸での衝突から数日後の8月1日、日清両国は互いに宣戦布告した。」
この一連の経緯に関し、日本の歴史書は朝鮮側の対応ももちろん説明しているが、主たる流れは日朝ではなく、日清の関係として描写していた。7月23日の行動も日清の争いの一環として捉えたのである。日本にとって最大の敵は清国であり、日本政府が日清の関係を主に考えていたことの反映であった。
しかし、朝鮮としては、日清両国は朝鮮を自己の支配下におさめようと争っていたことが最大の問題であり、日本が清国に対してどのような姿勢で臨むかは二義的な問題であった。1894年7月23日の日本軍の行動も、日本では清国との関係の中でとらえていたが、朝鮮においては日本による侵略の開始という歴史的な大問題だったのである。
2019.07.16
韓国政府(会合に参加した担当者と関係当局を含む)の姿勢には問題があり得る。というのは、日本の経済産業省は13日、会合後の韓国側当局者の発言が、会合において双方で合意した公表範囲を超えていたり、違っていたりして「遺憾だ」と在日韓国大使館を通じて韓国側に抗議したからである。
日本側が問題視したことには、今回の会合を「協議」と呼ぶべきか否か、韓国側が規制撤廃を求めたか否かなどが含まれているが、これらは担当者以外にとってはさほど重要でない問題だ。韓国政府の姿勢はWTOなどですでに明らかになっているからである。
ただし、会合の当事者が発表ぶりについて合意したことは、説明するのでなく、そのまま公表するほうが事実を正しく伝えるために望ましい。日韓双方について言えることである。
そんななか、以下の韓国側報道には事実を客観的に伝えようとする姿勢が感じられる。ただし、この報道の基礎となった情報が韓国政府からリークされたとすれば問題であるが、報道機関の姿勢としては問題ないどころか、褒められてよい。
「中央日報7月15日付報道
日本政府の韓国に対する輸出規制強化措置に関連し、12日、東京で両国の課長級による初の実務会議が開かれた。この席で日本側は今回の輸出規制強化の根拠として3種類の理由を挙げた。
▼韓国の「キャッチオール(Catch All/戦略物資・民需物資を大量破壊兵器として転用する可能性がある国家に対する輸出規制)」制度が不十分という点、▼過去3年間で二国間協議が行われておらず両国間の信頼関係が損なわれている点、▼韓国企業が半導体材料3大品目に対する納品期限を短く要請していることに伴い、日本の輸出管理が難しくなっている--というのがその根拠だ。果たして合理的な理由だったのだろうか。日本側の主張をファクトチェックした。
◆2003年から16年間適用中の「キャッチオール制度」
まずはキャッチオール制度だ。日本側は会議で韓国のキャッチオール制度の運用が不十分だと主張しているが、その事例に対しては口を閉じた。ただし、フジテレビや産経新聞など日本メディアが、韓国が過去4年間に武器として専用可能な戦略物資を156回にわたり密輸出したと主張したことを考慮すれば、韓国の戦略物資統制の履行が不十分だという主張だと専門家は見ている。
しかし韓国は大量破壊兵器だけでなく在来式武器に対してもキャッチオール制度を適用している。2003年1月に該当の制度を導入して今年で16年になる。戦略物資管理院のリュ・セヒ制裁対応室長は「過去にイランなどに対して工作機械など多数の民需物品に対してキャッチオール規制を適用した事例がある」とし「秘密遵守義務を守る条件で事後調査をするか問題になる物資輸出を返還している」と説明した。
産業通商資源部関係者は「(キャッチオール制度により)輸出以降も民需物資などが武器に転用されそうな兆候が確認された場合、該当国家に再度許可を申請・報告書の提出をさせている」とし「年間10件余り審査を進めるなど日本よりかえってキャッチオール制度運用水準が高い」と明らかにした。
◆日本の経済産業省側と毎年会合…3月以降、二国間協議することで合意
2016年以降、二国間協議が中断されて信頼が損なわれたという主張はどうだろうか。戦略物資統制に関連した二国間協議は2008年から現在までソウルと東京を交互に計6回行われた。最後の協議は2016年6月に局長級で行われた協議だった。しかし2018年2月には日程だけ調整して実際の協議が行われなかった。このため2016年6月以降、二国間協議が実施されなかったという主張は正しい。
しかし韓国政府は「今年3月以降、二国間協議を持とうと昨年末すでに合意をしている以上、協議が中断されているわけではない」とし「これまで協議が行われなかったのは両者が相互に日程を調整したが合わなかったため」と明らかにした。一方の責任と見るのは難しいということだ。
二国間協議は行われなかったが、韓国側は2013~2018年まで毎年アジア輸出統制セミナーを開いて経済産業省と接触してきた。2016年と2018年にもソウルで産業通商資源部の貿易安保課長と経済産業省側が国連安全保障理事会議の対北朝制裁決議に関連して別にセミナーを持った。このため、協議がなくて両国の信頼関係が損なわれたとみることも無理があるというのが政府関係者の説明だ。
◆納期日、韓日企業間の問題…包括許可期間は日本の国内問題
韓国企業の短い納期要請による半導体材料の輸出管理問題は、原因と結果が別々に回っているというのが専門家の分析だ。今回の輸出規制品目に該当するフォトレジスト・高純度フッ化水素・フッ化ポリイミドは包括許可対象だ。政府に個別許可を経なくても日本企業が韓国企業に輸出することができるように日本政府が許可したものだ。更新周期は3年に一度であり、該当の手続きには90日余りを要する。
ところでこの許可は日本企業が日本政府から受けている。戦略物資管理院側は「このため韓国企業が日本政府に許可手続きを早く処理してほしいと求めるというような構図は成立しえない」と説明した。
もし日本側が言及した納期日を韓国企業が日本企業に要請したと解釈しても、これは企業と企業間の問題に該当するため、これを理由にホワイトリスト品目全体を個別許可に転換するのは行き過ぎだということだ。
一方、産業通商資源部は「日本が韓国をホワイトリストから外すための意見取りまとめ日が24日まで」とし「その後、閣議決定を経て公布した後、21日が経過した日から(ホワイトリスト排除が)公式化する」と明らかにした。このために産業部は、24日以前に、両国の輸出統制当局者間の会議を推進中だ。」
中央日報の報道の引用は以上であるが、日本政府は輸出規制強化の理由として3品目をめぐり「不適切な事案」があったと主張している。これは何なのか。日本側は具体的な内容を明らかにしておらず、12日の会合でもこれまで以上の説明はしなかった。この中央日報の報道でもその点はなお不明である。
一般論として、日本側が「不適切な事案」の内容を公表できないとしても不思議でない。その事案にはあまりにも機微な問題があるかもしれないことはわれわれ一般国民としても理解すべきである。
しかし、韓国政府には説明が必要である。リークの危険もありうるが、「不適切な事案」があったか否かは日本側の措置の適否を左右する極めて重要な問題であり、日韓で問題を共有しなければならない。日本側が「何も説明できないが不適切な事案があった」というだけでは、国際的にも理解は得られない。この点に関しては、日韓双方とも周辺的なことは主張しているようだが、お互いに説得できていない。やはり本丸についての事実関係の共有が必要である。共有できなければ、あるいは共有できるようになるまでは、お互いに一方的な非難は差し控えるべきである。
対韓輸出規制に関する日韓事務レベル会合
韓国向け半導体材料の輸出規制強化問題に関し、7月12日、日韓の事務レベル会合が開かれた。その内容を正しく、偏ることなく、隠すことなく伝えることが日韓双方に求められる。韓国政府(会合に参加した担当者と関係当局を含む)の姿勢には問題があり得る。というのは、日本の経済産業省は13日、会合後の韓国側当局者の発言が、会合において双方で合意した公表範囲を超えていたり、違っていたりして「遺憾だ」と在日韓国大使館を通じて韓国側に抗議したからである。
日本側が問題視したことには、今回の会合を「協議」と呼ぶべきか否か、韓国側が規制撤廃を求めたか否かなどが含まれているが、これらは担当者以外にとってはさほど重要でない問題だ。韓国政府の姿勢はWTOなどですでに明らかになっているからである。
ただし、会合の当事者が発表ぶりについて合意したことは、説明するのでなく、そのまま公表するほうが事実を正しく伝えるために望ましい。日韓双方について言えることである。
そんななか、以下の韓国側報道には事実を客観的に伝えようとする姿勢が感じられる。ただし、この報道の基礎となった情報が韓国政府からリークされたとすれば問題であるが、報道機関の姿勢としては問題ないどころか、褒められてよい。
「中央日報7月15日付報道
日本政府の韓国に対する輸出規制強化措置に関連し、12日、東京で両国の課長級による初の実務会議が開かれた。この席で日本側は今回の輸出規制強化の根拠として3種類の理由を挙げた。
▼韓国の「キャッチオール(Catch All/戦略物資・民需物資を大量破壊兵器として転用する可能性がある国家に対する輸出規制)」制度が不十分という点、▼過去3年間で二国間協議が行われておらず両国間の信頼関係が損なわれている点、▼韓国企業が半導体材料3大品目に対する納品期限を短く要請していることに伴い、日本の輸出管理が難しくなっている--というのがその根拠だ。果たして合理的な理由だったのだろうか。日本側の主張をファクトチェックした。
◆2003年から16年間適用中の「キャッチオール制度」
まずはキャッチオール制度だ。日本側は会議で韓国のキャッチオール制度の運用が不十分だと主張しているが、その事例に対しては口を閉じた。ただし、フジテレビや産経新聞など日本メディアが、韓国が過去4年間に武器として専用可能な戦略物資を156回にわたり密輸出したと主張したことを考慮すれば、韓国の戦略物資統制の履行が不十分だという主張だと専門家は見ている。
しかし韓国は大量破壊兵器だけでなく在来式武器に対してもキャッチオール制度を適用している。2003年1月に該当の制度を導入して今年で16年になる。戦略物資管理院のリュ・セヒ制裁対応室長は「過去にイランなどに対して工作機械など多数の民需物品に対してキャッチオール規制を適用した事例がある」とし「秘密遵守義務を守る条件で事後調査をするか問題になる物資輸出を返還している」と説明した。
産業通商資源部関係者は「(キャッチオール制度により)輸出以降も民需物資などが武器に転用されそうな兆候が確認された場合、該当国家に再度許可を申請・報告書の提出をさせている」とし「年間10件余り審査を進めるなど日本よりかえってキャッチオール制度運用水準が高い」と明らかにした。
◆日本の経済産業省側と毎年会合…3月以降、二国間協議することで合意
2016年以降、二国間協議が中断されて信頼が損なわれたという主張はどうだろうか。戦略物資統制に関連した二国間協議は2008年から現在までソウルと東京を交互に計6回行われた。最後の協議は2016年6月に局長級で行われた協議だった。しかし2018年2月には日程だけ調整して実際の協議が行われなかった。このため2016年6月以降、二国間協議が実施されなかったという主張は正しい。
しかし韓国政府は「今年3月以降、二国間協議を持とうと昨年末すでに合意をしている以上、協議が中断されているわけではない」とし「これまで協議が行われなかったのは両者が相互に日程を調整したが合わなかったため」と明らかにした。一方の責任と見るのは難しいということだ。
二国間協議は行われなかったが、韓国側は2013~2018年まで毎年アジア輸出統制セミナーを開いて経済産業省と接触してきた。2016年と2018年にもソウルで産業通商資源部の貿易安保課長と経済産業省側が国連安全保障理事会議の対北朝制裁決議に関連して別にセミナーを持った。このため、協議がなくて両国の信頼関係が損なわれたとみることも無理があるというのが政府関係者の説明だ。
◆納期日、韓日企業間の問題…包括許可期間は日本の国内問題
韓国企業の短い納期要請による半導体材料の輸出管理問題は、原因と結果が別々に回っているというのが専門家の分析だ。今回の輸出規制品目に該当するフォトレジスト・高純度フッ化水素・フッ化ポリイミドは包括許可対象だ。政府に個別許可を経なくても日本企業が韓国企業に輸出することができるように日本政府が許可したものだ。更新周期は3年に一度であり、該当の手続きには90日余りを要する。
ところでこの許可は日本企業が日本政府から受けている。戦略物資管理院側は「このため韓国企業が日本政府に許可手続きを早く処理してほしいと求めるというような構図は成立しえない」と説明した。
もし日本側が言及した納期日を韓国企業が日本企業に要請したと解釈しても、これは企業と企業間の問題に該当するため、これを理由にホワイトリスト品目全体を個別許可に転換するのは行き過ぎだということだ。
一方、産業通商資源部は「日本が韓国をホワイトリストから外すための意見取りまとめ日が24日まで」とし「その後、閣議決定を経て公布した後、21日が経過した日から(ホワイトリスト排除が)公式化する」と明らかにした。このために産業部は、24日以前に、両国の輸出統制当局者間の会議を推進中だ。」
中央日報の報道の引用は以上であるが、日本政府は輸出規制強化の理由として3品目をめぐり「不適切な事案」があったと主張している。これは何なのか。日本側は具体的な内容を明らかにしておらず、12日の会合でもこれまで以上の説明はしなかった。この中央日報の報道でもその点はなお不明である。
一般論として、日本側が「不適切な事案」の内容を公表できないとしても不思議でない。その事案にはあまりにも機微な問題があるかもしれないことはわれわれ一般国民としても理解すべきである。
しかし、韓国政府には説明が必要である。リークの危険もありうるが、「不適切な事案」があったか否かは日本側の措置の適否を左右する極めて重要な問題であり、日韓で問題を共有しなければならない。日本側が「何も説明できないが不適切な事案があった」というだけでは、国際的にも理解は得られない。この点に関しては、日韓双方とも周辺的なことは主張しているようだが、お互いに説得できていない。やはり本丸についての事実関係の共有が必要である。共有できなければ、あるいは共有できるようになるまでは、お互いに一方的な非難は差し控えるべきである。
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